「お楽しみ?」
友里は首を傾げ、瞬きをした。
「いい感じに見えたんで」
「バッカね、こんなオッサンといい感じなわけないでしょ」
「そうっすか?
俺の目にはいい感じっすけど」
鮎川は澄みきった黒目を輝かせ、オイラと友里の関係を興味深そうに観察している。
「別れた亭主、わかった?」
友里の愛想のない答えに、オイラは眉を下げ含み笑いをした。
いがみ合って別れたわけではないが、心構えなく再会すると複雑なものだ。
お互いにどんな顔で向き合えばいいのかわからない。
事情を知っているのだろう、鮎川は気まずそうに首筋を掻いている。
「字体違いの 〈探さないで下さい〉 と書かれた手紙を、アンタも持っているのね?」
「そうだよ」
「入るよ」
そう言うと、友里はオイラの部屋に突進した。
当然、鮎川も。
脱いで揃える余裕もない2人の靴は、子猫の額サイズの玄関に散乱している。
って・・・ 友里の奴、オイラの仕事靴の上でハイヒールを脱ぎやがった。
整理整頓の行き届かない部屋でも、礼儀をわきまえて欲しいものだ。
オイラは行儀の悪い奴は嫌いだぞ。
『探さないで下さい』→ 次話(18)