「〈探さないで下さい〉 ―― 何よ、これ」
「あっ!」
友里が手にした便箋を見たオイラは、驚きの声を発した。
静かに盗み見するつもりだったが、不注意にも声が出てしまった。
オイラの声に、友里と男は眉間に皺を寄せ振り向いた。
こ、こ、怖い。
鋭い目つきに変貌した若い男に、オイラは委縮した。
友里を呼んだ時の彼は、装飾系のイマドキ青年だったのに、今は縄張りに侵入した敵を威嚇するアユだ。
アユ?
オイラは自分の発想にツッコミを入れた。
「おい、オッサン」
オイラは唾を飲み、後退りすると、
「鮎川くん、この人は気にしなくていいわ」
友里は右手を額に当て、口の端を歪めた。
オイラの存在を面倒に感じているのが手に取るようにわかる。
それにしても、この若い男の名前が鮎川とは、調子のいい話だ。
オイラの比喩もあながち間違っていなかった。
はっはっは。
「でも」
鮎川は一層、目を険しめた。
「ただの隣人よ」
「は、はぁ・・・」
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