椎橋章夫「ペンギンが空を飛んだ日 IC乗車券・Suicaが変えたライフスタイル」(新書判、全232ページ、交通新聞社新書2013年8月16日発行、定価800円+税)
JR東日本のSuicaを開発した当人による、プロジェクト立ち上げから現在に至るまでの経緯を記したもの。前半はICカードの技術的な話が多く、後半になると、システム構築や運用と言ったソフト面の話になってくる。
技術者が書いた本ということで、冒頭などは情報が詰まった感じがするが、全体的には手頃な読み物として良く書けている。
全く新規のプロジェクトということで、面白い話も多数ある。
今では当たり前になっている「タッチ・アンド・ゴー」だが、元々は処理時間を稼ぐためのものであり、その言葉が広まるのに合わせて、実際に行動も広まった、とのこと。
Suicaと言えば、以前ネットのニュースで、システムとして動いているのが信じられない、と専門家から言われたとのものがあり、本書でもそれに触れられている。仕組みとしては、p90にある、システムをメインシステム、駅のシステム、端末と三層化構造にすることであり、こういう発想は、普通のネットワークシステムには無かったものだろう。
あと、今年(2013年)の3月に全国の交通系ICカードが共通で使えるようになったのだが、この時期になったのは、サーバーの置き換え時期を見計らってのこと。
このように、技術的、プロジェクト進行という面では、なかなか面白い本と言える。欲を言えば、振り替え輸送の対象にはしないと言った、運用面でどのような判断がなされたかも、関係者の話を交えて記して欲しかった。