谷川一巳「空港まで1時間は遠すぎる!? 現代「空港アクセス鉄道」事情」(新書判、全288ページ、交通新聞社新書2013年8月16日発行、定価800円+税)
鉄道やバスによる、都心から空港へのアクセス状況を記したものだが、単なる事実の記述に終わっていて、鉄道ネタ的な掘り下げた記述が無く、読み物として平坦。
椎橋章夫「ペンギンが空を飛んだ日 IC乗車券・Suicaが変えたライフスタイル」(新書判、全232ページ、交通新聞社新書2013年8月16日発行、定価800円+税)
JR東日本のSuicaを開発した当人による、プロジェクト立ち上げから現在に至るまでの経緯を記したもの。前半はICカードの技術的な話が多く、後半になると、システム構築や運用と言ったソフト面の話になってくる。
技術者が書いた本ということで、冒頭などは情報が詰まった感じがするが、全体的には手頃な読み物として良く書けている。
全く新規のプロジェクトということで、面白い話も多数ある。
今では当たり前になっている「タッチ・アンド・ゴー」だが、元々は処理時間を稼ぐためのものであり、その言葉が広まるのに合わせて、実際に行動も広まった、とのこと。
Suicaと言えば、以前ネットのニュースで、システムとして動いているのが信じられない、と専門家から言われたとのものがあり、本書でもそれに触れられている。仕組みとしては、p90にある、システムをメインシステム、駅のシステム、端末と三層化構造にすることであり、こういう発想は、普通のネットワークシステムには無かったものだろう。
あと、今年(2013年)の3月に全国の交通系ICカードが共通で使えるようになったのだが、この時期になったのは、サーバーの置き換え時期を見計らってのこと。
このように、技術的、プロジェクト進行という面では、なかなか面白い本と言える。欲を言えば、振り替え輸送の対象にはしないと言った、運用面でどのような判断がなされたかも、関係者の話を交えて記して欲しかった。
佐々木洋子「ハプスブルク帝国の鉄道と汽船 19世紀の鉄道建設と河川・海運航行」(A5判、全228ページ、刀水書房2013年8月14日発行、定価5000円+税)
本書の元となっているのが、著者の博士論文ということで、鉄道書というよりかは、歴史を中心とした学術的なものとなっている。情報量は多く、現地の資料も多数当たっているため、調べるための資料としては良いが、読み物としては敷居が高い。索引も無いし。
当時のオーストリアの鉄道を軸とした社会情勢は、終章にまとめられているので、本書を手にする機会があれば、そこだけ目を通すのも良いかもしれない。