「この辺だけ焦げてる…なんで?」
上地が指差す場所は、周囲と比べて確かに黒く焦げていた。
「…火事じゃよ。」
「火事?」
上地の問いに、老人が答える。
「昔、ここには学校があったんじゃ。子供の笑顔が溢れとった…」
しかしその学校が、火事で燃えてしまったらしい…。
木造校舎で、火の回りも速かった。
下校時間を過ぎていた為、残っていた生徒は少なくすぐに避難。
しかし…
「1人だけ…中に残っておった。」
燃えさかる校舎内に、1人の男の子が取り残されていた。
火の勢いが強く、誰も近づけなかった…。
そして誰もが、最悪の事態を想像していた…。
「そんな…」
「それで…その男の子はどうなったんです?」
つるのが老人に聞くと
「火事で校舎は崩れ落ちた…でもその子は生きておった。」
校舎が焼け崩れ、炎はようやく消火された。
その後の捜索で男の子は無事発見、保護された。
その男の子が見つかった場所、それが…
「この桜の木の下じゃった。」
男の子の怪我はかすり傷程度で、ここで眠っていたという…。
この桜の木は、校舎から近い場所にあった。
普通ならこの木も燃えてしまっていただろう。
しかし…この木は無事だった。
まるで男の子を守るように…しっかりと立っていたのだ。
「それはまだ寒い季節だったが…桜の花が咲いておった。」
春はまだ先なのに、この木だけ桜が満開だった。
まるで、この子を早く見つけてくれと言っているように…。
季節外れの桜は、とても綺麗だった。
「その日から、この木は奇跡の木だと皆に慕われた。」
「すっげぇー…」
「なんだか…伝説みたいなお話ですね♪」
黒焦げている場所は、その時少し焼けてしまった所だろう。
「お前すげぇなぁww」
上地はそう言いながら、桜の木の幹を優しく撫でた。
何だか少し温かい気がした…。
【気安く触るな、よそ者がッ!!】
「…へ?」
「ん?どうした雄輔?」
「いや…今何か言いました?」
「僕ら何も言ってませんよ?」
「…?」
確かに声が聞こえた気がしたが…気のせいか?
上地は不思議に思いながらも、桜の木に寄り掛かった。
『触るなと言っておるのだっ!!馬鹿者がッ!!』
「!?」
さっきより大きく、はっきりと聞こえた声。
上地は驚いて、声のした方を見た。
「な…何してんの?君。」
木の上を見上げると、ワンピース姿の少女がいた。
薄いピンク色のワンピースを着て、腕を組んで仁王立ち。
「女の子が木登り…?」
『お前…わしの姿が見えるのか?』
「はぃ…?」
少女は大きく目を見開いて、上地を見下ろしている。
そして突然、木の上から飛び降りた。
「ちょ、危ないッ!!」
上地は思わず大声を上げた。
しかしその心配をよそに、勢いよく飛び降りたはずの少女はゆっくりと地面に足をつけた。
「…は?どゆことっ!?;」
目の前で起きた出来事が理解できないでいると、
「雄輔…さっきから誰と喋ってんだ?」
「大丈夫ですか???」
「!?」
3人の目の前には1人の少女。
しかし、つるのと野久保には少女の姿が見えていないようだった…。
-つづく-