[漫画]
真鍋昌平「闇金ウシジマくん(26)」(2012年小学館ビッグコミック)
ファッション誌の編集者として多忙な日々を送る上原まゆみは、妹みゆきの結婚式が間近にせまるなか、フリーターの彼氏・ハシとは結婚するヴィジョンを描けず、将来についての不安をスピリチュアルカウンセラー・勅使河原に相談して気持ちを鎮めていると、ある雨の日、傘がなくて立ち往生しているまゆみに傘を差し出す男が現れ、その後で電話した勅使河原からは「運命的な出会いをする」と予言されるのだったが、まゆみはその後も男=神道大道とちょくちょく会い、ちょうど上司から薦められて始めていた皇居ランなどを一緒にするうち距離を縮めていくのだったが、そんな折、妹のみゆきは職場のガールズバーの客と新郎カズヤとの間でトラブルに巻き込まれ、助けて欲しいと連絡を受けたまゆみと共に現場へ向かった神道がその場を上手く収めてくれ、神道は上原家に招かれ姉妹の両親・重則と和子の信頼も得ていくのだったが、神道はまゆみと結婚を前提に交際を開始するなか、彼女の母親な和子ともこっそり関係を持つも、そんなこととはつゆしらないまゆみは、ある夜、神道とカズヤの三人での飲み会で、カズヤが結婚前から嗜んでいた大麻を神道にも背中を押されて手を出してしまうのだったが、上司から任された新しい企画に取り組むまゆみは職場の雰囲気から神道の婚約指輪を外していると、それを見逃さなかった神道は夜になって彼女の指をグラスで叩きつぶして本性の一端を露わに、時にカウカウファイナンスの牛嶋は顧客の老婆・金子を訪ねた折に彼女の客らしい勅使河原を見かけたり、部下のマサルが駐車場でいさかいを起こしたかどで神道と偶然接触しているのだったが、その神道には天見という名前の別の顔があり、詐欺を働いた天見を追う刑事たちは彼の元住居に不審なものを嗅ぎ取っていたのだった。
北九州監禁殺人事件に材を採ったと言われる、「ウシジマくん」史上最も陰惨な「洗脳くん」が遂に幕を開ける。
まずの教訓、皇居ランナーにろくな奴はいない(偏見)。
(2020/10/20)
真鍋昌平「闇金ウシジマくん(27)」(2013年小学館ビッグコミック)
神道は暴力からの甘い言葉でまゆみを支配するや、いよいよ金銭の要求を開始、500万円を用立てなければならなくなったまゆみは既に婚約している手前、面目を気にして神道から離れることもできず、やむなく会社の金を横領、神道は義弟のカズヤを信頼させて抱き込むと、まゆみの元カレのハシを排除する一方で、勅使河原を介して別の女とも結婚を申し込むなど多数の人物を管理下におき、狙いは彼らの財産の収奪らしいのだったが、まゆみは神道に食事を制限され彼の命じるがままの奴隷と成り下がり、知人友人との関係を切られた上に、カズヤと大麻を吸っていた証拠写真の入ったケータイを紛失したことを神道に責められていると、拾い主から連絡がありまゆみはお礼のつもりで向こうが条件と提示した「ゴミ捨て」をさせられるが、それは神道の奴隷のひとりで妹みゆきの同僚だった女・松田明日香が殺害した何者かの遺体の一部だったことがわかり、死体遺棄に手を染めてしまったまゆみは手首を切って自殺を図るが、神道はまゆみの母・和子のみならず妹みゆきとも関係を持ち、更にそれを疑うカズヤからは探偵料をせしめつつ、みゆきには探偵への口止め料を要求し、払えないみゆきが勅使河原を介して向かった風俗店には牛嶋がいるのだったが、一方まゆみは電気ショックで自分を縛る神道からの逃亡を図るも、彼の息がかかった家族全員から追いかけられた末に連れ戻され、神道はとうとう上原家全員を支配下に置くと松田明日香のアパートのリフォームを命じ、そこから明日香の父のものという歯を見つけてしまった一家は彼女の共犯者に仕立て上げられてしまうなか、神道は家族のヒエラルキーの頂点に立つ人物をカズヤと定めて、カズヤによるDSKK=電気ショック家族会議が幕を開けるのだった。
凄まじい神道無双。牛嶋でも誰でもいいから、こいつを何とかできる奴はいないのかと天を仰ぎたくなる展開が続く。
(2020/10/22)
真鍋昌平「闇金ウシジマくん(28)」(2013年小学館ビッグコミック)
上原家はまゆみの妹みゆきの旦那なカズヤがイニシアティヴを握り、父・重則へのDSKK が繰り返し行われるなか、神堂は一家ぐるみで犯行に手を貸す結果になった松田明日香の逃亡資金2000万円を、貯金・株の売却・親戚への借金で調達させ、更には2億8000万円相当の不動産も根こそぎ奪い取ることを目論むのだったが、土地売却の件で親戚を説得できない重則にカズヤは激しい電気ショック刑を与えたところ、重則はついに死亡、事態の発覚を恐れる一家は明日香がやった方法で重則の遺体を解体し遺棄、神堂は重則を殺されたことを根に持つ和子ら上原家の女を焚きつけ、次のスケープゴートと仕立て上げられたカズヤはあっというまに廃人と化し、今度は母・和子とまゆみ&みゆきの母娘が神道の口車に乗せられ憎しみをぶつけ合うなか、みゆきが働く風俗店で知り合った(牛嶋の顔なじみな)ヤクザ柏木は一家のアパートを訪ねるもあっさり返り討ちにされ肉団子になって海に消え、その頃、和子がみゆきをハメるために棄てた肉団子入りのミルク缶を警察が発見、缶の購入元から天見=神堂へ迫ろうとしているなか、母と姉妹がいよいよ最後の殺し合いを強要されそうになっていたまさにその時、かねてから金を貸していた上原姉妹と消えた柏木に不審を感じていた牛嶋がアパートに乗り込んでくるや神道をボコボコに成敗、有り金をむしり取られた神堂はアパートへ戻ったところを、実は廃人のフリをしていたカズヤが血文字で記した拷問記録を見つけた警察によって逮捕、事件はついに明るみとなり、神堂・勅使河原・明日香は死刑、上原家の人々は洗脳による心神耗弱が認められ、和子とみゆきは無期懲役求刑からの懲役28年、まゆみは懲役6年で刑が確定するのだったが、時が経ち、仮釈放で外の世界へ出てきたまゆみが最初に会った人物は、刑務作業の賃金を回収にやってきた牛嶋なのだった。
「洗脳くん」編、ああ、やっと終わった……。陰惨な描写という面では、作品の頂点を極めたシリーズとなった。
(2020/10/27)