[特撮]

ニコニコ動画で、「特捜ロボ ジャンパーソン」(1993年)

#9「パパは怪物だ!」

平和銀行を強盗が襲撃(この銀行、1話でも2億円を奪われている。とりあえず名前を変えた方が……)、犯人を追跡するジャンパーソンは相手がロボットとわかるや躊躇なくジャンデジックで銃撃、すると体勢を崩した強盗犯は持っている銃を乱射し、ちょうどジャンパーソンの背後を歩いていた男が蜂の巣にされてしまい、もう手加減しないとジャンパーソンはジャンブレイカーで強盗犯の片腕を切り落とすと、彼は自分がロボットであることに驚愕したまま爆発四散し、自分を人間と思い込んでいた様子にはジャンパーソンもびっくりで、この間に先の撃たれた男は何事もなく立ち上がるとその場を立ち去っていて、ジャンパーソンのリプレイ解析によれば極東航空のパイロットらしい彼もまたロボットだったようなのだが、さてテレビのニュースが強盗事件に続けて世界中から集められた核廃棄物が太平洋の小島の地下に封印されたと報じるなか、パイロットの男は半年ぶりのフライトを明日に控えてどこか体調が悪そうで、ジャンパーソンにマークされているとは知らず家に帰ると三年前に病気でこの世を去った妻の位牌に手を合わせ、二人暮らしな息子のヒデオへ「自分に何かあれば九州の祖母のところへ行くこと、パイロットの仕事は自分の誇りであり命であることを覚えておいてほしい」と語り、ヒデオは父が半年前に自分をかばって車に轢かれながら奇跡的に回復したものの、それ以来、新聞を逆さに読んだりタバコを火傷するまで吹かしていても涼しい顔をしている姿に不審を抱いていたのだったが、父親自身もまた、強盗犯に撃たれたメタルな傷痕を見て自分は一体何者なのか一人苦悩しているおり、彼の行動をモニターしているネオギルドのジョージ真壁はロボットスリーパー計画の順調ぶりを確認、実は父親がかつぎ込まれた病院はネオギルドの息がかかっており、瀕死の患者の中から選ばれた父親の意識と記憶をデジタル化した上でロボットとして蘇生、しかし人間であるという自覚は残しておいて、いよいよ明日、増幅させたコントロール電波で人間の意識を消した父親の最後の仕事は、操縦する飛行機を核廃棄物が満載の島へ突っ込ませることなのだったが、その翌日、父親は体の異変に家を飛び出しヒデオも後を追うなか、計画の担当者で父親の主治医に成り済ましていた真壁の部下・ファルコン13によりコントロール電波は増幅され、完全にロボットと化した父親はヒデオの制止の声も聞かず現れたジャンパーソンへ襲いかかり廃工場で大暴れ、計画の遂行を求めるファルコン13は父親を空港へ急がせるべく人間体から戦闘ロボットへと姿を変えてジャンパーソンに立ち塞がり、意外に強いファルコン13に苦戦するジャンパーソンだったが新武器ジャンバルカンを投入して形勢逆転、その頃ジャンパーソンに隠れていろと言われたヒデオは父親に遅れて空港にたどりつき、「お父さんの仕事と誇りを汚させない」と首を絞められながらも必死に呼びかけると、人間としての意識が増幅電波を上回った父親は正気に返るが、ロボットとしての肉体機能もまた停止してしまい、二度も父親の死を目の当たりにして哀しみに暮れるヒデオへ、ジャンパーソンは「君の胸の中に父親は生きている」と励まし、九州の祖母の元へ旅立っていく少年の姿を見送るのだった。

 

人間型のロボットがふつーに人間と共生している世界観な本作における、主人公のジャンパーソン含むロボットのアイデンティティが提示されるエピソード。ジャンパーソンも含め、この世界のロボットたちは自分がロボットであると認識していることが正常らしい。

ネオギルドのロボットスリーパー計画、人間の自覚をわざわざ残すことには何のメリットがあったのか。結局、今回の父親(名前は早見だが、劇中では明かされず)のような問題が起きることは、容易に予想できたはずだけれど。

ロボットと見れば容赦ないジャンパーソンに対し、たとえロボットであれ息子にとっては必要な存在である父親を敵として葬れるのかと、心理的に揺さぶっていくこともできたろうに。ジャンパーソンの倒すべき敵は、いつの間にかファルコン13にスライドされ、親子の絆という便利な奇跡で両者の激突は回避される。

向かうべき道に進まないやや歪な展開は、9話にしていまだ謎なヒーローなジャンパーソンのキャラが、作劇の枷になっていることを示しているかも。

父親・早見を演じるのは高杉俊介。特撮ファンには「仮面ライダースーパー1」で有名だが、近年、夢を壊すスキャンダルが報道され、残念な昭和ライダー俳優の仲間入り。

(2022/07/16 )