いつもお世話になっている遊漁船は、タイミングなどが合えばクエ狙いで船を出して貰える。
クエは天然の瀬や、漁礁を住み家にして単独で行動しているらしい。
クエは、立松和平の短編「海の命」で、主人公の運命に立ちはだかる巨大魚として登場する。
世にある高級魚のなかでもとびきりの超が付く高級魚、一般の食卓に上るような魚ではないが、「海の命」が小学校高学年向けの教科書に載り、国語の教材に使われているらしく、関心を持つ子供もいるようだ。うちの子もクエと聞いて「知ってる!」と言っていた。
この短編、実に抒情溢れる美しいストーリーなのだが、釣り人目線でいうと、その感想は少々複雑である。
海の命のあらすじはこうである
(記憶に基づいており間違いあるかも)
時代は昭和初期かそれ以前、主人公の少年は、漁師の家に生まれる。
村一番の銛突きの名人であった父は、ある時、背の奥で溺死しているのが見つかるが、それは瀬の主である超巨大クエとの対決に敗れた末の死と思われた。
少年は母の反対を押して素潜り漁師となり父の仇討ちを誓う。
成長した主人公は、素潜りの達人となり、ついに父の仇である超巨大クエと、深い瀬の奥で対峙する。
しかし、物語のクライマックスその局面になって、主人公は復讐をなぜかとりやめる。
そして、瀬の主である巨大クエに向かってつぶやく
「お父さん、ここにいらしたのですね」
小学生児童は先生に、「どうして主人公はクエを獲らなかったのですか」という質問をされるらしい。
クエを釣り上げ有頂天になってしまう我々釣り人は、先生の質問にどう答えるんだろうか…