針結び 結目の構造 漁師結び | クラゲ日誌(沖釣り備忘録)

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日本海島根県西部(石見地方)、瀬戸内海(周防大島~芸予諸島)で遊漁船に乗ってます。
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直径2mmのウレタンチューブで作成したモデル

 

漁師結びは、必要と経験が編み出した「知恵の塊」のような結び方だ。

 

糸が軸を巻いている回数は僅か3回。端糸は短くても結べるので、必要な糸は極端に短い。これで十分な強度が出るのは驚き。

 

ナイロンが実用化されるまで、ハリスは非常に高価かつ貴重な天蚕(テグス)が使われていたとされ、短い糸で強力に結べる漁師結びが考案されたのだろう。

 

結びの構造は複雑で糸を辿っても理解しにくい。

 

本線と端糸を反対方向にいくら引っ張っても、全体ががっちり締めこまれることは無い。

 

しかし、本線だけ引っ張っると、本線は端糸を押えながら、叩きに接する輪を絞る。叩き方向に本線を引っ張っても、針がすっぽ抜けることは無い。締まりの緩い結びであるのにすっぽ抜けには非常に強く、不思議な感じがする。

 

また、ラインにかかる負荷が一部に集中せず、各パートに効率よく分散するためか、結束強度は安定して55~60%をマーク。

 

このように経済性と、結束強力という点からはパーフェクトと評価できる漁師結びだが、採用している釣り人は少なく、広く浸透しているとは言い難い。

 

少なくとも、私の周囲で漁師結びを使っている釣り人はほとんど見たことがない。

 

欠点としては、

 

まず、締め込みが効かないので、結び目の中で軸を中心に針が回転する。

本線が針のフトコロ側に入らないと、針本来の性能を発揮しない。

てこの原理を利用したフッキングや、針掛かり後のバラシなどに影響が出る。

 

次に、結びから出る本線の方向が、軸に沿わず立ち上がってしまう。

針の回転も加わり、針先がおかしな方に向き、針掛かりに影響しそうに思える(実際に針掛かりに悪影響があるかは不明)。

見た目の不自然さは、子供時分に結んだコブ結びそっくりだ。

 

最後に、個人的には結束が難しく、ストレスを感じる。

 

・ ラインの重ねを上下逆にして2回輪を作り軸に巻き付ける手順

・ 結びが安定しないまま、針軸とラインを押えながら、左手から右手に持ち替える手順(右利きの場合)

・ 結びが安定しないまま、口と手を使って本線・端糸を同時に引いて完成させる手順

 

これらは他の結び方には無い手順であり、初めてやるとかなり面食らう。結びが安定しないときに力加減を間違えると、簡単に解けてやり直しとなる。

 

漁師結びの紹介には、簡単かつ最速の結びと宣伝されるが、この結びを最短時間で安定して結べるようになるには、相応の練習が必要だろう。

 

個人的には、非常に優秀な結束方法と認めつつも、欠点に挙げた針の回転が気に入らないので採用していない。