卵巣腫瘍の頻度を調べるため、広島県腫瘍登録報告書を引用する。
日本産科婦人科学会の腫瘍登録もあるが、この報告書は良性も記載されているのが良いので、まずはこちらをとりあげた。
卵巣腫瘍は種類が膨大なため、まずは上位のものを見てみる。
1973~2001年の間に新規登録された卵巣腫瘍は14119例あり、良性が11079例 (78.5 %)、境界悪性359例 (2.5 %)、悪性2681 (19.0 %) だった。
1973~2001年の間に登録された卵巣腫瘍 (n=14119)
(2 %以上のもの)
◯奇形腫、良性 |
5510 (49.7 %) |
◯粘液性嚢胞腺腫、NOS |
2283 (20.6 %) |
◯漿液性嚢胞腺腫、NOS |
1409 (12.7 %) |
●漿液性嚢胞腺癌、NOS |
970 (8.8 %) |
●粘液性嚢胞腺癌、NOS |
595 (5.4 %) |
◯皮様嚢胞 |
513 (4.6 %) |
◯線維腫 |
467 (4.2 %) |
●類内膜腺癌 |
250 (2.3 %) |
●明細胞腺癌 |
225 (2.0 %) |
◯:良性、◎:境界悪性、●:悪性
広島県腫瘍登録委員会. グラフで見る1973~2001年の卵巣腫瘍. 広島県腫瘍登録報告書 (No.29), p38–64. から引用
上位3種で約65%、上位9種で約87%を占めている。
良悪性の割合だが、経膣USの国際多施設共同研究であるIOTA phase 2では、良性 72.0 %、境界悪性 5.7 %、悪性 22.2 %になっている (n=1938)。
IOTA phase 3では、良性 59.2 %、境界悪性 6.4 %、悪性 34.4 %になっている (n=2403)。(この研究の"良性"は内膜症性嚢胞など非腫瘍も含まれる)
この報告では良性78.5 %、境界悪性2.5 %、悪性19.0 %であった。
上記と比べるとやや良性が多めで、悪性が少ない印象ではある。
下記によれば、漿液性嚢胞腺腫は良性卵巣上皮性腫瘍の2/3を占めるらしいので、この割合は少し不思議ではある。
しかし広島県腫瘍登録報告書の本文で長崎腫瘍登録委員会の資料が引用されているが、やはり粘液性が漿液性を上回っているらしい。
1973~2001年の間に登録された卵巣腫瘍 (n=14119)
(上記の続き)
●腺癌 |
197 (1.8 %) |
|
●新生物、悪性 |
4 (0.0 %) |
◯莢膜細胞腫 |
192 (1.7 %) |
|
●線維肉腫 |
4 (0.0 %) |
◎粘液性嚢胞腫瘍、 境界悪性 |
178 (1.6 %) |
|
◎ブレンナー腫瘍、 境界悪性 |
4 (0.0 %) |
◯嚢胞腺腫、NOS |
126 (1.1 %) |
|
●移行上皮癌 |
3 (0.0 %) |
◯ブレンナー腫瘍 |
124 (1.1 %) |
|
●アンドロブラス トーマ、悪性 |
3 (0.0 %) |
◯卵巣甲状腺腫 |
101 (0.9 %) |
|
●平滑筋肉腫 |
3 (0.0 %) |
◯漿液性乳頭状 嚢胞腺腫、NOS |
97 (0.9 %) |
|
●混合性胚細胞腫瘍 |
3 (0.0 %) |
●未熟奇形腫 |
90 (0.8 %) |
|
◎漿液性乳頭状嚢胞 腫瘍、境界悪性 |
3 (0.0 %) |
◎漿液性嚢胞腺腫、 境界悪性 |
67 (0.6 %) |
|
◎類内膜腫瘍、 境界悪性 |
3 (0.0 %) |
◯漿液性腺線維腫 |
61 (0.6 %) |
|
◎類内膜腺線維腫、 境界悪性 |
3 (0.0 %) |
◯平滑筋腫 |
58 (0.5 %) |
|
◯漿液性表在性 乳頭腫 |
3 (0.0 %) |
◎顆粒膜細胞腫 |
56 (0.5 %) |
|
◯粘液腫 |
3 (0.0 %) |
●未分化胚細胞腫 |
55 (0.5 %) |
|
◯腺線維腫 |
3 (0.0 %) |
●癌 (腫)、NOS |
44 (0.4 %) |
|
●腺扁平上皮癌 |
2 (0.0 %) |
●乳頭状嚢胞腺癌、 NOS |
38 (0.4 %) |
|
◎アンドロブラス トーマ、NOS |
2 (0.0 %) |
◯粘液性乳頭状 嚢胞腺腫、NOS |
36 (0.3 %) |
|
◎甲状腺腫性 カルチノイド |
2 (0.0 %) |
●卵黄嚢腫瘍 |
34 (0.3 %) |
|
◯明細胞腺腫 |
2 (0.0 %) |
●顆粒膜細胞腫、 悪性 |
32 (0.3 %) |
|
◯明細胞腺線維腫 |
2 (0.0 %) |
●悪性添加を伴う 成熟奇形腫 |
24 (0.2 %) |
|
◯海綿状血管腫 |
2 (0.0 %) |
●ブレンナー腫瘍、 悪性 |
18 (0.2 %) |
|
●腺棘細胞癌 |
1 (0.0 %) |
◯乳頭状嚢胞腺腫、 NOS |
18 (0.2 %) |
|
●混合細胞腺癌 |
1 (0.0 %) |
◯腺線維腫 |
18 (0.2 %) |
|
●粘液性腺癌 |
1 (0.0 %) |
●癌肉腫 |
12 (0.1 %) |
|
●粘液性腺癌線維腫 |
1 (0.0 %) |
◯粘液性腺腫 |
12 (0.1 %) |
|
●類内膜腺癌線維腫 |
1 (0.0 %) |
◎充実性奇形腫 |
11 (0.1 %) |
|
●好酸性細胞腺癌 |
1 (0.0 %) |
●胎芽性癌 |
10 (0.1 %) |
|
●乳頭状移行上皮癌 |
1 (0.0 %) |
◎性索・間質性 腫瘍、境界悪性 |
10 (0.1 %) |
|
●セルトリ・間質細 胞腫瘍、低分化型 |
1 (0.0 %) |
◯粘液性腺線維腫 |
10 (0.1 %) |
|
●セルトリ細胞癌 |
1 (0.0 %) |
◯Sertoli-Leydig 細胞腫 |
10 (0.1 %) |
|
●子宮内膜間質肉腫 |
1 (0.0 %) |
●未分化癌 |
9 (0.1 %) |
|
●小細胞肉腫 |
1 (0.0 %) |
◯類内膜腺線維腫 |
8 (0.1 %) |
|
●腺肉腫 |
1 (0.0 %) |
●ミュラー管 混合腫瘍 |
7 (0.0 %) |
|
●悪性奇形腫、未分化 |
1 (0.0 %) |
●中胚葉性混合 腫瘍 |
7 (0.0 %) |
|
●神経内分泌癌 |
1 (0.0 %) |
◎顆粒膜・莢膜 細胞腫 |
7 (0.0 %) |
|
●絨毛癌 |
1 (0.0 %) |
●嚢胞腺癌、NOS |
6 (0.0 %) |
|
◎セルトリ・間質細 胞腫、中分化型 |
1 (0.0 %) |
●漿液性表在性 乳頭状癌 |
6 (0.0 %) |
|
◎漿液性表在性 乳頭腫、境界悪性 |
1 (0.0 %) |
◎漿液性乳頭状嚢胞 腺腫、境界悪性 |
6 (0.0 %) |
|
◯腺腫、NOS |
1 (0.0 %) |
●扁平上皮癌 |
5 (0.0 %) |
|
◯脂質細胞腫瘍 |
1 (0.0 %) |
●奇形癌 (胎芽性癌 および奇形腫混合腫瘍) |
5 (0.0 %) |
|
◯門細胞腫 |
1 (0.0 %) |
●悪性リンパ腫 |
5 (0.0 %) |
|
◯間質性黄体腫 |
1 (0.0 %) |
◎カルチノイド |
5 (0.0 %) |
|
◯青色母斑 |
1 (0.0 %) |
◯線維腺腫、NOS |
5 (0.0 %) |
|
◯血管腫 |
1 (0.0 %) |
◯:良性、◎:境界悪性、●:悪性
広島県腫瘍登録委員会. グラフで見る1973~2001年の卵巣腫瘍. 広島県腫瘍登録報告書 (No.29), p38–64. から引用