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緋紗奈のブログ

このブログではモンハンやデジモン
日常で起こったことを自由気ままに
マイペースで描いています

こんにちわ、緋紗奈です。

少し遅れましたが明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 

いやはや……去年も色々とありました。

今年はもっとのんびり過ごしたい。

抱負でもなんでもないけど穏やかに生きたいです。

 

そんなこんなでもある計画が始められそうになったのでちょこっと報告。

出来上がってから正式にお知らせしますが、ようやく構想が練れました。

 

 

いやー………うん……

 

 

大分変わったな。

 

 

ストーリー自体に変更はないけど変わった。

登場人物……いや登場デジモンも少し増えた。

めっちゃ増えたというワケではないけど。

 

しかし真冬の夜中に絵を描くのはしんどいのう。

手が悴んで上手く描けん。

電気代が勿体なくて暖房も設定温度高く出来ないし。

あー、春が待ち遠しい。

後3ヶ月の辛抱だ。

 

とりあえず雪これ以上降らないで欲しいなぁ……w

 

 

 

やあ、とてつもなく久し振りにブログを書く緋紗奈です。

 

いや、だってね……雪がヤバいんですよ。

あまりにも雪降りすぎて会社行けなくて休みましたもん。

一晩で50cm強積もりましたからね。

12月でこんなに降ることあったかな?

今ほど家の前の除雪を終えました。

 

……体痛い、腰痛い。

 

天気予報見るとまだ降るんですよね。

明日までの辛抱だけど……仕事行きたくないです。

 

 

 

 

後全然この話題と関係ないけどテツノカイナの色違い2匹もいらねぇ!!

ゼロエリアで努力値上げしてたら目の前にいるとか、どう反応すればいいの!?

 

私はテツノイバラとテツノコウベの色違いが欲しいんじゃああぁぁぁぁ!!

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

両面宿儺との激突から2年くらい経ちました。

宿儺はどうしているのかと言うと……。

 

「宿儺それ取ってくれ」

 

「分かった」

 

俺と一緒に農作業しております。

俺がした提案っていうのは極単純、俺の部下になれってヤツだ。

30日に1度必ず戦って上下関係をハッキリさせるという条件付きでな。

場所は何もない近くの海岸(近くって言っても人間の足だと半日かかるが)

ここならガチ戦闘してもそこまで被害は出ない。

宿儺は宿儺で対処法を学んでより厄介になったけど、俺は俺で完全体での戦闘に慣れて宿儺をガンガン押していけるようになった。

今のところ負けなしだぜ!

そして戦っていて分かった。

デストロイアとしての本性か俺割と戦闘狂。

戦う前は「あー、またやるのか。嫌だなー」なんだけど、いざ戦闘が始まるともうノリノリなのよ。

お陰で戦い終わってすぐは気持ちが昂ぶりすぎて誰彼構わず攻撃したくなる。

一旦クールタイムを設けないと村人と顔を合わせられない。

しかしマジで強ぇな宿儺は。

動きが速いからゴジラはゴジラでもファイナルウォーズのゴジラと戦ってる気分だ。

 

「こんなものが食べられるとは思えなかったが、中々美味よな」

 

「まあ一見泥臭そうだもんな」

 

今村総出で収穫しているのは蓮根である。

前に近くの沼地で自生しているのを見つけて持ち帰った。

誰も食べられると知らなかったからまだ蓮根を食べるという文化がないんだろう。

歴史変えちゃったかもしれないけど許してくれ。

蓮根は切らなければ長期保存できる食材なのよ。

ちなみに蓮は種も食べられる。

これが結構美味い上に栄養価の高い優れもの。

蓮は捨てるところがない。葉もお茶に加工出来る。

何でこんなに詳しいかというと前世の祖父母が蓮根農家で色々教えてくれたからです。

 

「宿儺様すぐ調理しましょうか?」

 

「任せた」

 

宿儺が裏梅に料理を任せて沼地に入る。

蓮が栽培可能な深い沼地を作ったからある程度背が高くないと泥に足を取られて動けなくなってしまうのよね。

誰がこの沼地を作ったかって? 勿論俺です。

【ミクロオキシジェン】で地面を緩くして、そこに山から引いた水を入れればお手軽沼地の完成!

ここまで立派な蓮の群生になるには大分時間がかかったが、初夏には綺麗な蓮の花が見られるようになったから蓮の花が満開になったら村人全員でお花見するのが恒例になってる。

しばらくすると裏梅が料理を終えて戻ってきた。

ここで小休憩だな。

 

「ふむ。やはり美味いな」

 

「これも食ってみるか?」

 

「何だこれは?」

 

「試しに作ってみた辛子蓮根ならぬ山葵蓮根(辛子を見つけられなかったので山葵で代用)」

 

「ぐっ!?」

 

「おお! 宿儺でもこれ辛いか。その顔笑えるな」

 

「緋蓮(ひれん)、オマエ今すぐ殺してやる……」

 

んで、あれから皆俺のことを緋蓮熾翅神(ひれんおきしじん)と呼ぶようになった。

完全体になって姿がガラッと変わって虫っぽいところが尻尾くらいしかなくなったから、皆で話し合って考えたらしい。

別に呼び方なんかどうでもいいんだけど神から離れね?

 

「はいはい。そういうのいいから鼻から息吸って口から吐きなさい。刺激収まるから」

 

竹で作ったコップに水を入れて宿儺に渡す。

宿儺俺の言うことちゃんと聞いて実践してるな。

山葵の辛さで鼻がツーンとした時はこの方法が一番。

宿儺には俺の部下でいる間は絶対人間を殺さないように言ってある。

代わりにどうしてもイライラして鏖殺したくなったら俺が相手することになってる。

最初のうちは数日に1回とか結構な頻度だった。

けどここ最近はほぼ戦わなくなった。

宿儺の心境に何かしら変化があったらしい。

俺の接し方が良かったかな?

宿儺は見た目のせいで親から愛情を貰えなかったんじゃないかと考え、俺はずっと家族と同じように接していた。

宿儺だって人間だ。

人間ってのは愛情を求める生き物。

愛されたい、愛して欲しいと思うのが普通。

けど宿儺はどんなにそう思っても恐れられてしまい愛されることがなかった。

だからその欲求を別の欲求に置き換えているんじゃないかと思った。

この様子だと正解だったっぽいな。

なんか反抗期の弟みたいな感じ。

宿儺は俺のことどう思ってるか知らんけど。

 

 

 

 

それからしばらく。

これも恒例行事になりつつある30日に1度の宿儺との激突の日がやってきました。

はー、またかー、やっぱ嫌だなー。

そう思いつつ始まったらノリノリになるんだろうが。

 

「そろそろ行くか宿儺」

 

呼び掛けるが宿儺は寝っ転がったまま動かない。

あれ、どうした?

いつもならこう言えば意気揚々とするのに。

 

「……いい」

 

「ん?」

 

「このままオマエの下で良い」

 

え、ええええええええええ!?

何で!? どうして急にそんなこと言うの!?

そんな素振りなかったじゃん!

 

「前々から考えていたことだ。オマエの傍は居心地が良い。このままオマエの下であっても悪い気はせん。……それ以前にオマエは部下だと言いながら俺を部下ではなく対等なものとして接してきた。どれほど戦いで上下関係を決めようが、これからもそれは変わらんだろう?」

 

「まぁな。俺にとって宿儺はもう家族だから」

 

「……」

 

俺のその発言に宿儺は無言になってしまった。

どうしたのかと思ったら宿儺の顔が少し赤くなっていることに気が付いた。

俺が家族だと言ったことに照れてただけか。

そう言われたことないから反応に困ってるんだろうな。

 

「……緋蓮」

 

「何?」

 

「兄上……と呼んでもいいだろうか?」

 

「…………………………………………………………………へ?」

 

マジですか。

宿儺が俺のことどう思ってるか分からなかったが、そんな風に思ってくれてのか。

俺の接し方間違ってなかったんだ。

わー嬉しいなぁ。

 

「駄目か?」

 

おっと、嬉しすぎて思わず立ち尽くしちゃった。

いかんいかん。

しょんぼりしてる宿儺の顔がちょっと可愛いけど早く答えてやらないと。

 

「勿論いいぞ。じゃあ俺も宿儺のこと弟として接するな。遠慮なく兄として頼ってくれ」

 

「ああ、分かった」

 

それから宿儺の態度が更に軟化した。

俺も甘えたそうにしてるなーとか分かるようになったし、そういう時は傍にいてあげる。

当たり前だけど宿儺甘えるの下手だからな。

俺ののんびりまったり生活にもすっかり慣れて一緒に昼寝したりとかもするようになった。

平和だなー。

やっぱ平和っていいね。

そんな平穏な日々が5年ほど続いたある日……

 

 

宿儺が村から姿を消した。

 

 

裏梅もいない。

気配も呪力の痕跡もない。

村人に聞いても誰も分からないとの回答だった。

何か変な事件に巻き込まれたのだろうか?

嫌な予感がして捜しに行こうとしたのに邪魔が入った。

呪術師が村に押し寄せてきた。

 

「ここに緋蓮熾翅神という名の化け物がいるそうだな。ここに連れて来い」

 

かなりの数だ。

数十人はいるな。

しかし化け物か、久し振りにそう呼ばれたな。

近くの村の人からも神様と呼ばれてるから。

とりあえず対応は村人達に任せる。

 

「緋蓮様は今弟君がいなくなられてオマエ達の相手をしている場合ではない。お引き取り下さい」

 

「その弟とやらは呪いの王両面宿儺だろ。はっ、呪いの王を弟と呼ぶなどその神も大したことないな」

 

呪術師の発言にイラッと来たのは俺だけではない。

宿儺が呪いの王と呼ばれているのは知ってるが今それ言うか?

対応していた村人もかなりイラッと来たみたいで何時ぞや同様早く帰れオーラがダダ漏れになっている。

いや、俺のこと化け物と呼んでた時からイライラしてたけど。

 

「貴様らも紛いものに騙されているのだ。世にも恐ろしい姿をしているらしいな。そのような見目の神などいるわけなかろう。いたとしても邪神だ」

 

「緋蓮熾翅神様は我らを騙していません。農耕を教え、厄災から守って下さった。神でなかったとしてもこの村の守護者であることに変わりありません」

 

「そうだ! 緋蓮熾翅神様は死にかけてまでも私達を何度も救って下さった素晴らしいお方だ! 何も知らぬ余所者が緋蓮熾翅神様のことをとやかく言うな!」

 

力説してるのはいいんだが恥ずかしいから止めてくれない?

俺そういうつもりでここにいるんじゃないです。

 

「可哀想に騙されきっているようだな。後で考えを改めさせる必要があるな。とにかく、邪神であろうが呪霊であろうが呪いの王を倒してしまうほど強大な力を持つ存在を野放しにはしておけない。聞こえているか緋蓮熾翅神とやら、我らに従うか封じられるかどちらか好きなほうを選べ」

 

2つしか選択肢ねぇのかよ!

頭おかしいんじゃね!?

……不味い。

今にもキレそうだけど俺キレると自動的に破壊衝動に支配されてしまうから怒りを抑えないと。

 

「緋蓮熾翅神様を奪おうと言うのか!?」

 

「酷い…」

 

「緋蓮様を貴様らなどに奪われてなるものか!」

 

村人の1人が呪術師の胸ぐらを掴んだ。

それが気にくわなかったのかその呪術師が村人を殴ろうと拳を振り上げる。

戦う力のない一般人が呪術師に殴られたらひとたまりもない。

俺は飛び出し、騒動の中心部に降り立った。

 

「緋蓮熾翅神様!」

 

「その手を下ろせ。用があるのは俺だろう」

 

驚いたのかその呪術師は振り上げていた手をゆっくり下ろす。

そういや呪術師に姿を見せるのはこれが初めてか。

写真なんてない時代だ。姿なんて人伝に聞いた情報しかないだろう。

この反応を見るに聞いていた姿と全然違ったらしいな。

 

「こ、これが神だと?」

 

「本当に呪霊ではないのか? 今まで見たどんな呪霊よりも禍々しいぞ」

 

失敬な。デストロイアの姿格好いいだろう。

キモい呪霊なんかと比べんな。

俺は尻尾で村人にもっと下がるように指示を出す。

いつ戦闘になってもいいように身構え、威嚇の意味を込めて翼を目一杯広げて体をより大きく見せる。

それだけなのに数人が怯えて後ろに下がっていく。

思ってたより小物みたいだな。

 

「で? 聞いていたんだが随分と勝手な要求だな。勿論俺はどちらも選ばない。俺は自分のいる場所を守りたいだけだ。オマエらに迷惑を掛けた覚えなんかない。分かったらさっさと帰れ」

 

「い……言っただろう。これまで数多の呪術師が何度挑んでも敗れ続けた呪いの王を倒し、しかも従えてしまう存在を野放しにはしておけんと」

 

「従えてねぇよ。宿儺は俺の家族だ。もう呪いの王じゃない。次その言葉言ったらぶっ飛ばすぞ」

 

宿儺を呪いの王と呼んだ呪術師を睨み付ける。

矜持だけは高いようでビビっているのに睨み返してきた。

 

「だとしたら貴様は呪いの神だな。呪霊以上の異形な見目、両面宿儺を倒す実力。最早疑いようがない。哀れだな、両面宿儺を倒したばかりに貴様はこれからそう呼ばれることになるのだ」

 

「呪いの神なら倒さねばならん。人の負の感情から生まれた神などこの世にいていいハズがない。今後はオマエを倒すために多くの呪術師がここへ訪れるだろう」

 

うーん、それは嫌だな。

てか俺この村でのんびり過ごしたいだけだからほっといて欲しいんだけど。

 

「両面宿儺の存在が貴様の足枷となるのだ。面白かったぜ、そう伝えた時の呪いの王の顔と来たら…」

 

「あ゛?」

 

悠長に考えていたんだが、その発言を聞いた瞬間ブチッと何かが切れた音が聞こえた。

重力が何倍にもなったような異様な空気が辺りを包み込む。

 

「何だって?」

 

「あっ……」

 

「宿儺に何て言ったって?」

 

自分を落ち着かせるために極めて冷静にそいつに問い質す。

今キレたら駄目だ。村人も巻き込んでしまう。

 

「だ、だから両面宿儺の存在が貴様の足枷になると言ったのだ。他にも何か言ったが両面宿儺の反応が面白くて覚えてないな」

 

「へえ」

 

なるほどね。

宿儺が姿を消した理由はそれか。

ここ数年人間らしい感情が出て来ていたから、コイツに言われたことが余程ショックだったんだろう。

 

――ボトッ…

 

「は?」

 

そしてそれを知って平然でいられるほど俺は気性が穏やかではない。

爪を振るい、呪術師の腕を切り落とす。

角の攻撃が【ヴァリアブル・スライサー】という技名なら、こっちは【ヴァリアブル・クロー】とでも名付けようか。

角で出来るなら爪でも出来るんじゃね? と思って編み出した技だ。

威力はかなり落ちてしまうが使い勝手が良い。

 

「ぎゃああああ! 腕が…腕があああああ!」

 

「くそっ、コイツはやはり呪いの神だ! しかしこの人数では祓えるか分からん、封印しろ!」

 

「は!」

 

呪術師の1人が何か汚らしい箱を取り出した。

はあ? そんなので俺を封印出来るの?

でもかなりの呪力を感じるな。

これは放置しておいたらヤバそうだ。

 

「【オキシジェン・デストロイヤーレイ】」

 

というワケで迷わず汚らしい箱に向かってぶっ放す。

それを持っていた呪術師の手ごと箱が消滅した。

 

「ひ、ひぃ!? 嘘だろ、特級呪物が壊れるなんて……!」

 

「特級呪物だが何だが知らねぇけど俺に壊せないものはねぇんだよ」

 

もうすでに戦意喪失しているみたいだが、これだけでは俺の怒りは収まらない。

殺しはしない。

だが、二度と俺に挑もうと考えられない恐怖を与えてやろう。

 

「【デストロイ・フィールド】」

 

俺を中心にした半径50mに【オキシジェン・デストロイヤー】をばら撒く。

 

「……!? が、あ……?」

 

「い、ぎ……」

 

範囲内の酸素が破壊され無酸素状態になる。

酸素を取り込めなくなった呪術師達がパニック状態になり始めた。

この方法もう使わないつもりだったんだけど、宿儺に「勿体ないな。他に被害を出したくない兄上の気持ちは分かるが、それなら領域展開のように攻撃範囲を決められるようにしたらどうだ?」と提案された。

てなワケで宿儺と裏梅に教えて貰いながら【オキシジェン・デストロイヤー】をばら撒く範囲、濃度を調整できるように特訓したのだ。

今のところ半径200mまで選択可能。

もっと極めれば更に広い範囲を攻撃出来るな。

濃度は一瞬であらゆるものを破壊出来る高濃度から、大気中の酸素だけを破壊する低濃度まで調節出来るようになった。

呪術師の領域展開よりヤバい必殺技の完成である。

とはいえ使うのにかなりの体力と集中力がいるから、正直あんまり使いたくない。

 

「ああああああああ!」

 

「ひいいいいいい」

 

今回は恐怖を与えるのが目的だから呪術師達の表皮を破壊する。

相当な激痛が走っているだろうし、皮膚が溶けていくのが分かるから恐ろしいだろ。

呪力で強化しようが細胞に含まれている酸素を破壊しているから無意味だ。

【オキシジェン・デストロイヤー】を使ったデストロイアの攻撃は基本防御不能。

素で耐えられるのは多分スペースゴジラくらいだろう。

さて、呪術師達が完全に恐慌状態になる前に止めてやるか。

俺は【デストロイ・フィールド】を解く。

 

「二度とこの村に来るな。もし来たら……完全なる破壊が全ての呪術師に降りかかると上の連中に伝えておけ」

 

「は、はいいいいいいい!!」

 

転びながら逃げていく呪術師達。

あまりに滑稽なその様を見て怒りが収まった。

それと同時に悲しい気持ちが湧き上がる。

 

「……宿儺」

 

何で相談してくれなかったんだよ。

オマエは抱え込みそうだから、なんかあったら相談しろっていつも言ってたのに。

捜しに行きたいけど、呪術師に敵と認定されてしまった状態じゃ無理だ。

絶対に邪魔される。

それにあの脅しだっていつまで効果があるか分からない。

いつか呪術師の軍勢が押し寄せてくるかもしれない。

そうなったらいくら俺でも村を守り切れないよな。

 

「なあ、ちょっと話があるんだ」

 

俺は決めたことを皆に説明することにした。

 

◇◆◇◆◇

 

「それはまことですか?」

 

「ああ、もう決めた。ほとぼりが冷めるまで俺は眠りにつく」

 

もうこれしか道は残っていない。

このままここいても村の皆に被害が行く可能性の方が高い。

なんてったって俺の攻撃は周りを巻き込んでしまうのがほとんどだ。

肉弾戦だけで倒せるほど呪術師も甘くない。

なら俺がいなくなるのが一番安全だ。

眠りにつく時も呪術師の連中に姿を見せながら海まで行く。

でもって深海……人間が絶対に見つけられない場所で眠りにつこう。

深海ならまず見つけられることはないからな。

 

「そんな……緋蓮様がいなくなられたら我らはどうすれば……」

 

「大丈夫だって。必要な知識は全部教えてただろ。俺がいなくても問題ないさ」

 

万が一俺が突然いなくなってもいいように教育はして来た。

実際最近は俺が指示しなくても皆自主的に動いていたから大丈夫なハズだ。

しかし村人全員不安げな顔をしている。

そりゃな。ここ十数年身近にいた守り神がいなくなるのは不安だろう。

いや本当に泣かないでくれ。

決意が鈍りそう。

 

「皆よ。不安な気持ちは分かるが緋蓮様は私達のことを思って眠りにつくことを決められたのだ。引き留めてはいかん。今までずっと私達を守って下さった緋蓮様に出来ることは、緋蓮様が心残りがないよう見届けることだ。そうであろう?」

 

すすり泣く声が聞こえる中、村長の息子が立ち上がって全員に問いかけた。

 

「し、しかしもし何か災厄が起こった時俺達だけじゃ……」

 

「何を言う。私達だけでも対処出来る方法を緋蓮様は教えてくれていただろう。その上緋蓮様は大雨が続いた時のために川幅を広げ、日照りが続いた時のために何カ所も溜め池を作り、敵襲があった時逃げ込め隠れられる場所まで作って下さった。これでも不足かもしれんと緋蓮様もおっしゃっていたが、だからといっていつまでも緋蓮様に甘えていてはならない。それでは緋蓮様は心さえ休まらん。オマエ達はそれでいいのか?」

 

「……」

 

次期村長の言葉に全員が黙った。

おおー、流石にしっかりしてるな。

5歳くらいの時から見てるけど、その頃からしっかり者なんだよね。

彼が皆をリードしてくれるなら安心だ。

 

「ありがとな。そう言ってくれて」

 

「滅相もございません」

 

「でもいきなりこんなこと言って混乱させてしまったのは事実だ。本当にすまない」

 

深々と頭を下げようとすると村の皆に止められた。

「緋蓮様に頭を下げさせるなんて」「そんなつもりじゃ……」「謝らないで下さい」

そんな声が聞こえてくる。

最初化け物と呼ばれたのにいつの間にかすっげー慕われてるな。

 

「緋蓮様、こんな時にまで私達のことを思って下さりありがとうございます。すぐに眠りにつかれるのですか?」

 

「いや色々準備したことがあるからそれが終わったらだ」

 

「分かりました。私達もそれまでに緋蓮熾翅神様がいなくとも大丈夫なように心を変えておきます」

 

「頼むな」

 

というワケで善は急げ。

話ながら思い付いたことを全部やるぞ。

先ずは村が全部入るくらいデカい俺の領域を作る。

これは前宿儺に教えて貰った結界術の応用。

領域というよりは縄張りって言う方が近いかもだけど、円を描くように印を置いて作っていく。

なるべく長く持つようにその印には俺の牙を使う。

牙を引っこ抜くのはめっちゃ痛いが、どうせ半日で生えてくるので我慢です。

ただ地面に埋めるだけにしようと思ってたんだけど、村にいる大工がちっちゃい祠を作ってくれることになった。

あらかじめ場所を指定しておいて祠が完成したらそこに牙を置く。

……牙置くだけだから質素でいいと言ったのにやたら立派だな。

祠を作るのも含め2週間かかったけどトータルで6ヶ所牙を置き準備完了。

そんでもって帳を下ろすような感じで印を結び領域を作る。

領域を作るために使うのは3年前から俺の中に宿ったよく分からん力だ。

宿儺も裏梅も感じたことがないらしい。

このよく分からん力が宿ってから【オキシジェン・デストロイヤー】の制御が楽になったんだよな。

よく分からん力に感謝です。

これで村人に危害を加えようと考えているヤツは非術師であろうが術師であろうが領域内にいる間ずっと圧迫感を感じることになる。

ただ呪霊の発生を抑制することは出来ないからそっちの対策には武器を作ることにした。

頭に生えている立派な一本角をバキッと折ります。

いってー! 前宿儺に角折られた時取っておけば良かった!

角も半日で生えてくるけど痛いものは痛い。

痛みに耐えながら折った角を槍に加工する。

リーチのある槍なら剣よりは安全に呪霊を祓えるハズだ。

柄の部分には俺の甲殻を使う。

これなら早々壊れたりしない。

なんか作ってたら楽しくなってきたな。もっとこだわって作ろ。

そしてお昼くらいから始めて夕方にようやく完成。

俺が見ても禍々しい見た目の槍。

突き刺さると微量の【オキシジェン・デストロイヤー】が放出するようにしておいた。

大抵の呪霊ならほぼワンパンだ。

宿儺が「特級呪具を易々と作るな」とか言いそうなものが出来たぞ。

やりすぎたー!

これ村人に渡して大丈夫? ドン引きされない?

 

「まさか緋蓮様が御身を削って武器を作って下さるなんて……。御神体として祀らせて頂きます!」

 

大丈夫でした。

俺の姿を受け入れてくれた人達だから心配なかったようだ。

 

「御神体にするなよ。強い呪霊が現れた時用に作ったんだから使えって」

 

「分かっております。もしその時が来たらすぐ使えるようにしておきます」

 

本当かな?

俺への信仰心がやたら強いから大事にしすぎて使わないんじゃないかと思っちゃうんだけど。

まぁ使うと言ってるんだし信じるか。

さて、これでやりたいことは終わったな。

準備の間に宿儺が帰ってきてくれたら良かったんだが、やっぱり帰ってこなかったな。

あの呪術師マジで宿儺に何言ったんだよ。

 

「俺はもう眠りにつく。もし宿儺が戻ってきたら“捜してあげられなくてごめん。けど何があっても宿儺は俺の家族だから、それだけは忘れないで欲しい”と伝えてくれ」

 

「分かりました。……緋蓮熾翅神様。私達はいつでも貴方様の帰りをお待ちしています。いつか目覚める時になったらまたここにいらして下さい」

 

やっべ。そんなこと言われたことないから泣きそう。

目覚めるのがいつになるのか俺にも分からないのに、それでも待っててくれるという言葉が嬉しい。

 

「……ああ、ありがとう。じゃあまたな」

 

もの凄く名残惜しいけど行かないと。

フワリと飛び上がって自分自身にも村人達にも後腐れないように急いで離れる。

絶対に後ろ振り返ったら駄目だ。戻りたくなってしまう。

振り返りたい気持ちを抑えるために正面だけを向いて、最高速度で飛び続ける。

俺飛ぶと【オキシジェン・デストロイヤー】ばら撒いてしまうからあんまり低い位置飛びたくないんだが、今回は俺の姿が見えるようにしないとだから細心の注意を払わないといけないな。

下で他の村人が「化け物だ-」って叫んでいる声が聞こえるけど想定内。

ようやく海まで辿り着くと、追ってきてたらしい呪術師が数人やってきた。

よしよし、計画通り。

 

「こ、こんなところまでやってきて何のようだ呪いの神!」

 

「何も? ただ俺はこれから寝るからオマエらにそれを知らせておこうと思っただけだ」

 

「……は? な、何故だ?」

 

「知らせておかないと俺を捜しに村まで来るだろ? だからだよ。これ以上村の皆に迷惑掛けたくないからな」

 

俺の発言に驚いた様子の呪術師。

コイツらあの時村に来てた呪術師じゃないな。

見かけたから追ってきただけみたいだ。

 

「貴様本当に呪いの神か? 呪いがそんなこと考えるなんて……」

 

「だから違うって言ってるだろ。確かに宿儺を倒したけど俺オマエらに何かしたか? ただあそこでのんびり過ごしたかっただけなのにいきなり押しかけて来やがって」

 

「……そうだな。我の耳にもオマエが人を殺めたという報告は入っていない。むしろ率先して非術師を守っていたと聞いておる」

 

おや? あの時のヤツらと違って話が通じてる。

一方的な意見押しつけるアイツらの印象が強すぎて考えてなかったけど、呪術師も千差万別みたいだな。

 

「その村ではオマエを農業の神として信仰しているそうだな。その姿とは似ても似つかないものだ」

 

「知ってること教えてたらいつの間にかな」

 

まんま鉄腕D○SHの知識だけどね。

他にも鯉の養殖とかしてたし(これはほぼ自分用)

 

「そうか。もっとよく調べるべきだったな。ただ呪いの王を倒した存在というだけで危険視するのは浅はかだった。すまない」

 

一番年上だと思われる呪術師が頭を下げ俺に謝った。

謝られると思ってなかったからビックリ。

けどこれなら言伝を頼んでも問題なさそうだな。

 

「悪いと思ってるなら村の皆にはもう手を出さないでくれ。そんでもって俺は海の中……誰も来られない深いところで眠りについたとお偉いさんに伝えて貰えるか?」

 

「承知した呪いの神……いや緋蓮熾翅神」

 

「頼んだぜ呪術師さん」

 

俺は海に飛び込んでとにかく深く潜る。

ここまで深いところに来るのは初めてだな。

けど元水中生物だから苦しくないし、水圧も硬い甲殻のお陰で問題ない。

そして光が一切届かない深い海底へ辿り着くと穴を掘ってその中に入る。

元々眠るのは好きだから苦じゃない。

いつ起きるか自分でも分からないほど意識を深く落とす。

冷たい海の底で俺は静かに眠りについた。

 

◇◆◇◆◇

 

眠り続けてどれくらいだろうか。

恐らく数百年単位で眠っているんだが、眠っている間にやらかしました。

状況から考えれば仕方ないことなのだろうが、眠っている時に

 

《Hey、そこの君! 条件満たしてるから神になっちゃわない?》

 

という声が聞こえた。

眠っていた俺は特に何も考えずに答えた。

ご自由にどうぞ、と。

そしたらギッチョン。

 

《じゃあOKってことでいいよね。やったぁー嬉しい! こういう場合本来は下位神からのスタートになるんだけど君の力でそれは勿体なさ過ぎるから僕の権限で最上位神にしてあげるNE☆》

 

 

…………。

 

 

What’s!?

 

え、え、ええ!?

ちょ……待って、それマジ!?

何て混乱していたら本当に神格化したらしい。

眠っているのに力がもの凄く強くなったのが分かる。

 

適当に返事するんじゃなかったーーーー!!!

 

い、いらない。いらないですそんな力。

今すぐお返しします!

 

《無理でぇーす♪》

 

ちっくしょー! 返却不可かよ!

てか何だよこの調子の良い神様は!

こんな神様いていいの!?

それよりどんな神になったんだ?

神なら何かしら司る力があるよな。

 

《破壊とね、後ずっと農業の神として信仰されてたからそっちの力もあるよん》

 

あっ、教えてくれるのね。それはどうも。

つまり破壊と農業の神ってことね。

元々持っていた力と何で信仰されてかで決まるっぽい感じか。

……いや、破壊と農業って全然分類違うじゃん! そういうのありなの!?

 

《ありだよー》

 

そうですか。

まぁなっちまったもんは仕方ない。

新米の神様として頑張るとするか。

 

《頑張ってね。応援してるよ♡》

 

あ、はい。頑張ります。

てかその前にいつ目が覚めるのか分かんないんですけど。

すっげー騒いでるけどまだ休眠中です。

どれくらい寝てるんだろ。

結構長い間寝てると思うが……。

 

その時宿儺の気配を感じた。

 

え? 何で突然宿儺の気配がしたんだ?

宿儺はあれだけ強くても人並みの寿命しかないって前に言ってたからもう死んでるハズ。

けどこれは間違いなく宿儺の気配だ。

でもすぐ気配が小さくなってしまってどこにいるかまでは分からない。

どこにいるんだ?

事情はどうあれ今度は捜しに行きたい。

捜して見つけて、あの時直接言えなかったことを言ってやりたい。

俺は休眠状態を解除し体を起こす。

流石に動き辛いな。

長年動いていなかったから当然か。

急いで捜しに行きたい気持ちを抑えてゆっくりと体を慣らす。

いきなり戦闘になることも踏まえて時間をかける。

ようやく問題ないと思えるくらい動けるようになると海面目指して浮上した。

ふう、久し振りに海から出たな。

全身が濡れていてうまく飛べなさそうだから泳いで海岸へ向かう。

陸に上がると改めて宿儺の気配を探るが、やはりどこにいるか分からない。

でもいるのは間違いないから身を潜めてまた気配が強くなるのを待つことにした。

山に入って斜面に穴を掘りそこに隠れる。

しかし大分眠ってたみたいだな。建物がもう近代的になってる。

今何年くらいだろう?

それを調べるには人里に降りないと何だが、この姿だと無理だよな。

神になったらしいけど見た目は全然変わってない。

デストロイアの姿好きだから嬉しいことだが、人の姿に変身とか出来ないみたいだ。

別に変身出来なくてもいいけど情報を得る手段が欲しい。

なんかいい方法ないかな。

うんうん考えていると宿儺の気配がまた強くなった。

今度はすぐ小さくなってないな。

これなら捜しに行ける。

隠れていた場所から出て宿儺の気配がする場所まで全速力で飛ぶ。

もたもたしてるとまた見失ってしまうから急がないと。

しばらくしてようやく宿儺がいると思われる場所までやってきた。

でも帳が降りていて入ることが出来ない。

どうしようかなー。

うん、悩んでいる時間勿体ないからぶっ壊そう。

帳下ろした人ごめんね。

尻尾で思いっきり叩くとバキンと大きな音を立てて帳が壊れた。

帳が壊れ、中の様子が露わになったその場所に宿儺がいた。

……あれ? なんか姿違う。

腕4本じゃないし、体も小さい。

けど宿儺であることは間違いない。

俺はすぐ宿儺の目の前に降り立つ。

 

「宿儺、やっと見つけた」

 

俺の姿を見て明らかに驚く宿儺。

目をこれでもかと言うほど見開いている。

 

「あ……緋蓮……」

 

しかし久し振りにあった宿儺は俺を兄とは呼んでくれなかった。

いや、呼ぼうとはしてたけど止めている。

 

「どうした? もう俺のこと兄と呼んでくれないのか?」

 

「俺は……オマエをもう兄と呼べぬ」

 

そう言った目はとても悲しいものだった。

やっぱあの呪術師9分の1殺しにするべきだったか。

宿儺にこんな目させやがって……絶対に許さねぇ。

え、それもう死んでるって?

聞こえないな。

 

「宿儺が呪術師から何か言われたのは知ってる。何を言われたんだ?」

 

「覚えておらん。ただ……いや、何でもない」

 

「宿儺?」

 

宿儺は完全に口を閉ざし黙ってしまった。

言おうか迷っているのではなく言いたくないんだろう。

……時間が経ちすぎたんだ。

もう元の関係には戻れないかもしれない。

 

「宿儺、ごめんな」

 

でもせめて償いはさせてくれ。

 

「は……? な、何故あ…緋蓮が謝る」

 

「弟のオマエを守れなかったからだ。俺は兄失格だ」

 

宿儺が一度や二度呪術師に何かを言われたくらいでショックを受けるとは思えない。

きっとそれより前に何かあったはずだ。

これまで一人で生きてきた宿儺は人に弱っているところを見せたがらない。

でも些細な変化くらいはあっただろうに俺はそれに気付いてやれなかった。

 

「苦しんでいるのに気付いてあげられなくてごめん。こんな不甲斐ない兄じゃ愛想尽いちゃうよな。なのにそれにも気付かずに兄貴面して悪かった」

 

「緋蓮……」

 

「けどやっぱ俺にとってオマエは大事な弟なんだ。最後くらい兄としてオマエを苦しみから救ってやりたい。勿論これはただのエゴだ。宿儺が嫌がるなら強制はしないし、もう二度と姿を見せるなって言うならその通りにするから」

 

「……」

 

俯いたまま動かない宿儺。

どんな顔をしているのか見えない。

しばらくしてようやく顔を上げてくれた。

……え? なんかめっちゃ泣きそうじゃね?

 

「緋蓮を不甲斐ないと思ったことなど一度もない。むしろ……尊敬していた。村にいる全てのものから慕われ、畏れられる偉大なものだ」

 

すっかり重くなった口を宿儺はようやく開く。

おお? 宿儺が素直にこういうこと言うの初めてだな。

その証拠に顔が若干赤い。

 

「いつからか自分でも分からん。だが気が付けば俺は緋蓮を兄のように慕っていた。緋蓮の傍にいるのが心地良い。何があっても守ってくれるのだと安心する。弟だと言ってくれる度に嬉しいと思うようになった」

 

確かに弟って言うと嬉しそうな表情してたな。

最初のうちは恥ずかしいって気持ちのほうが勝ってたみたいだけど。

 

「だがそれと同時にかつて緋蓮の家族を殺した自分が憎くなった。緋蓮が愛している家族を身勝手に殺した己を呪わずにいられなかった」

 

「……」

 

あの襲撃の時のことか。

宿儺は村人を何人か殺している。

実際身内を殺された村人は宿儺を村に置くことに反対していた。

最終的には納得してくれたけど、それでもしばらくは宿儺に対しかなりの憎悪を持っていた。

変わった宿儺を見て、いつの間にかなくなっていたらしいが……そうか。

ずっと罪悪感を感じていたのか。

 

「だが償い方など知らぬ。どうしていいか分からなかったが、このようなことを緋蓮に言っても良いのかどうか迷っておった。そんな時に呪術師が村に来るようになった」

 

「俺を封印するためにだろ。そう言ってたし。……もしかしてかなり前から村に来てたのか?」

 

「ああ。呪術師には面倒なヤツがおらん。そんなヤツらとただ穏やかに過ごしていたいだけの緋蓮を接触させたくなかった。だから追い返していた。その中の一人に何かを言われたのだが……本当に何も覚えておらん。気が付いたら裏梅を連れて村から離れていた」

 

覚えていないのはあまりにもショックが大きすぎて記憶から消してしまったんだろう。

しかも気が付いたらって……それほどショックだったのか。

 

「それからは夢現のような感じで……久方振りに意識が戻ったと思えば1000年以上経った時代に受肉していた」

 

それまで意識もほとんどなかったってこと?

精神状態ヤベぇだろ。

てか1000年以上も俺寝てたのかよ。

いくら何でも寝過ぎー!

 

「夢現の間、自分が何をしていたのかも分からぬ。もしかしたら緋蓮の言いつけを破っているやもしれん。緋蓮の信頼を裏切っておる俺に緋蓮を兄と呼ぶ資格などない。……さっき言ったのはそういうことだ。だから緋蓮も俺を弟などと呼」

 

「あ、それは無理」

 

「は?」

 

宿儺の言葉を即刻切って声を出す。

久し振りに「コイツ何言ってるの?」って顔してるが、無理なものは無理だ。

 

「な、何故だ? 今の俺の言葉を聞いていただろう」

 

「聞いたぞ。でもそれを聞いても俺の気持ちは変わらない。それよりごめんな。やっぱあの時すぐ捜してやるべきだった。そうすればオマエはここまで苦しまなかっただろう。すまない」

 

事情を聞いても宿儺が俺にとって大事な家族であるという気持ちは揺るがない。

むしろ本当に申し訳なく思う。

あの時の状況を考えれば仕方なかったことだけど、それでも待たずに捜してやるべきだった。

 

「緋蓮が謝る必要なかろう。緋蓮はただでさえ守るものが多いのだ。俺にばかり気をかけていられないのは当然だ」

 

「それでもさ。それに守るものが多いって言ってもオマエは特別だ。村の皆を家族って言っていても弟だとハッキリ身内と呼んでいるのはオマエだけなんだぜ。裏梅は弟の友達って感じだな」

 

村の皆のことも大事だけど、近しい名称で呼んでいたのは宿儺だけだ。

だから村の皆も宿儺のこと弟君って呼んでた。

 

「……何度も言うが裏梅は友ではないぞ?」

 

「そういう感じだって。だから優先するのは当たり前だろ。でもあの時それを選択しなかった。本当に兄失格だな」

 

ゆっくり宿儺に近付く。

そして宿儺の真正面まで来ると膝を地面についてしゃがみ、宿儺と視線を合わせる。

ふいっと目を逸らすが嫌がっている様子はない。これなら大丈夫そうだな。

俺は腕を宿儺の背中に回してそっと抱き締める。

 

「何をしている。離せ」

 

そうは言っても振り解く素振りはない。

本気で嫌な時はすぐ拳が飛んでくる。そうしない時は宿儺が甘えたい証拠だ。

 

「離しません。なぁ宿儺、もう一度チャンスを……機会をくれないか? 今度は兄としてしっかりするから戻ってきてくれ。1000年以上経ってる今じゃ俺の家族はオマエしかいないんだ。オマエまでいなくなったら寂しいよ」

 

あの村はどうなっているか分からない。

もしかしたら過疎化でなくなっているかもしれない。

子孫は残ってるだろうけど、俺の知っている人達じゃない。

俺が家族と呼んだ人はもう宿儺だけ。

宿儺までいなくなったら俺マジで立ち直れる自信がない。

 

「……機会も何も俺は緋蓮を見限っていない。緋蓮こそこんな呪われた俺を弟と呼んで良いのか?」

 

「呪いなら祓えるだろ。オマエにかかっている呪いの量を考えれば時間はかかるだろうけど俺も協力する。オマエ1人で背負う必要はないんだ」

 

「……」

 

「それに俺は破壊の神だから宿儺の呪いも壊せるかもな。だから大丈夫。いつか普通に生きられる時が来るさ」

 

宿儺の体から力が抜けて俺に完全に寄りかかる。

チラッと宿儺を見ると泣いていた。

下手くそな泣き方だ。

泣いたことがないってすぐに分かるな。

見られるのは絶対に嫌だろうから翼を使って姿を隠す。

それに安心したのか宿儺は話し始めた。

 

「緋蓮の部下になって俺は知らなくて良かったことを知った。誰かに守られている安心感というものを初めて感じ、無償の愛情を与えられる幸福感を知った。……もう知らなかった頃には戻れぬ」

 

知らなくて良かったことか。

そうだよな。

あの村に来て俺と対峙し、敗れなければ恐らく永遠に知らなかったことだ。

全うに愛されて嫌な思いをするヤツはほとんどいないとは思ってるけど、宿儺もそうであって良かった。

 

「何かあったら相談しろと言われていたのに、何も言わずにいなくなって悪かった……。

 

兄上の信頼を……裏切ってしまって、すまない。

 

勝手な、ことだとは重々…は分かっておる。

 

だが、俺を……見捨てないでくれ。

 

今兄上に見捨てられたら俺は……どう歩んで良いのか分からん……」

 

まるで迷子の子供のように宿儺は泣きじゃくる。

というかそのものだな。

生きる指標さえ失っていたんだな。

唯一残されたものに縋るのは当たり前だ。

 

「心配しなくても見捨てたりしないよ。自分の道が見つかるまで俺の傍に良いし、俺もちゃんと協力してやるからな」

 

「ありがとう……」

 

「うん。じゃあ喧嘩してたワケじゃないけど仲直りな」

 

「ああ……」

 

もう宿儺泣き止んでるし、これで一件落着かな。

宿儺の頭をそっと撫でて腕を解いた。

そして改めて冷静になり、周囲を確認した俺は宿儺に訊いた。

 

「ところでこれどういう状況?」

 

「……」

 

目が覚めてから宿儺を捜すことしか考えてなかったから今どういう状況なのか全く分からん。

なんか所々戦闘した痕跡はあるけど何があった?

 

「てか今気付いたけどオマエ何で胸に穴空いてんの!? 心臓ないじゃん! 誰にやられた!?」

 

「これは自分でやった」

 

「何でだよ! とりあえず痛々しいから今すぐ治せ!」

 

「しかし……」

 

「早くしろ!」

 

「……はい」

 

宿儺が反転術式で胸の傷を治したのをしっかり確認する。

よしよし。心臓もちゃんと動いてるな。

これで心置きなく話せる。

 

「で。何があったんだ?」

 

「いや……」

 

言い淀んでいるってことはなんか悪いことしたな。

俺に絶対怒られるのを。

ここは後ろにいるヤツに訊くとするか。

 

「おい、そこに少年。何があったか話せるか?」

 

後ろにいるのはウニみたいな癖毛の中学生……高校生1、2年生くらいの少年。

怪我してるけど重傷ってワケじゃないし話せるだろう。

 

「訊いてどうするつもりだ緋蓮熾翅神」

 

「それはこれから決める。とりあえず話してくれないか?」

 

「……分かった」

 

そして俺はその少年、伏黒恵から何があったのか詳しく聞いた。

ふむふむ。成る程ね。

よーく分かりました。

 

「宿儺」

 

「兄上……これは」

 

「俺に迷惑掛けるのはいいが人様に迷惑掛けるんじゃない!!」

 

――ゴツンッ!!

 

「っ!!」

 

宿儺の頭に怒りの一撃をぶち込む。

何だそりゃ!

道を見失って自暴自棄になっていたのだと思うけど、どう考えてもやり過ぎだ!

 

「虎杖悠仁って子はオマエの指取り込まざるを得ない状況だったんだろ!? なのにどういう言い方だよ! もっと別の伝え方あるだろ!」

 

「し、しかし此奴は呪いのことを甘く見過ぎていたから身の程を分からせようと」

 

「これまで呪いに全く触れてこなかった一般人が2週間足らずで呪いの怖さなんか分かるか!! 今すぐ悠仁に謝れ!!」

 

「わ、悪かった小僧」

 

「はい! 名前で呼ぶ!」

 

「……すまん虎杖悠仁」

 

約1000年振りのお説教。

多分女性のこと小馬鹿にして以来だな。

俺が宿儺に説教しているのを見た恵が宇宙背負ってるみたいだが、呪いの王として有名な宿儺が説教受けているのを見たらそうなるか。

 

「よし。じゃあ俺も謝るから悠仁に変わってくれ」

 

「は? 何故兄上が」

 

「オマエが自暴自棄になったのは俺のせいだからな。変わってもオマエ話せるんだろ?」

 

「ああ。分かった」

 

すうっと体から刺青のような模様が消え、髪も落ち着いた感じになる。

顔もなんか年相応の少し幼げな印象になった。

 

「虎杖悠仁君でいいかな?」

 

「お、おう」

 

「俺は……」

 

と、自己紹介しようとして今世で自分から名乗るのは初めてだと気が付いた。

どう言ったらいいんだろう?

まぁ思い付いた通りに言うか。

 

「俺はデストロイア。神としての名前は緋蓮熾翅神。どっちでも好きなほうで呼んでくれ。個人的にはデストロイアのほうが嬉しいけど」

 

「じゃあデストロイアって呼ぶな。アンタが五条先生が言ってた両面宿儺を唯一倒したっていう神様か。悪魔とドラゴンが混じったみたいな姿してるらしいって聞いてたけど、かっこいいな!」

 

「お! それは嬉しいね。あの時代だと化け物って呼ばれることがほとんどだったから。それよりすまなかった。俺のせいで酷い目に遭わせてしまった。申し訳ない」

 

頭を下げる俺を見て後ろにいる恵が驚く。

俺が頭下げると大抵の人驚くんだよなー。何でだ?

 

「いいって。俺が自分で選んだんだから。それよりずっと宿儺が寂しがってるっていうか、無理してるような感じしてたから不思議に思ってたんだ。今日謎が解けたよ。案外寂しがり屋だな宿儺って」

 

「……何をふざけたことを言っているのだ小僧。そんなワケなかろう」

 

「デストロイアに会えないからヤケクソになってたんだし実際そうだろ? 宿儺すっげーデストロイアのこと大好きじゃん」

 

「はっ!? 小僧、いい加減なことを」

 

「俺も宿儺のこと好きだぞ。大事な家族だからな」

 

「……チッ」

 

「めっちゃ分かりやすく照れてるな」

 

「はははは。宿儺そう言われるの慣れてないから仕方ない。俺は母親がアメリカ人だったから慣れっこだけど」

 

「え? デストロイアって親人間なの?」

 

「前世が人間だったんだ」

 

「で!? マジ!?」

 

「マジマジ」

 

前世が人間であること、実はほぼ隠してない。

宿儺に以前「何故そんな知識を持っている?」と質問された時下手に隠そうとしたら逆にボロが出てしまったのだ。

それ以来うっかり口か滑ったりとか疑問に思われたりしたら隠さないで話してる。

とはいえ今までそれを話したのは宿儺と裏梅だけだが。

しかし悠仁は人懐っこい性格だな。

完全に宿儺と真逆。こりゃ俺が来るまで相当険悪な仲だっただろう。

 

「……兄上ほど人間臭いものはおらんぞ。しかし兄上に名があったのか。初めて聞いたが」

 

「特に訊かれることなかったし、言わなくても支障がなかったから言わなかったんだ。それに名前ってよりは種族名に近いしな」

 

「「種族名?」」

 

「そうそう。1995年に俺の同種が東京で大暴れしたことがあっただろ。あっちのほうが断然体大きいけど」

 

「??? え、そんな事件あったっけ? 俺知らないんだけど伏黒知ってる?」

 

「俺も知らない」

 

「へ?」

 

え、え、ええ!?

2人とも知らないなんて、そんなことある!?

かなりの大事件だよな? 東京壊滅しかけてるんだ。

今2018年だって恵言ってたし歴史にも載ってるハズ。

あ、もしかして発生した年代が違うとかある?

それなら知らなくて仕方ない。

 

「けど流石にゴジラの名前は知ってるだろ。大怪獣なんだから」

 

「「知らないな」」

 

「……」

 

……嘘だろ。

ゴジラの名前さえ知らないなんて俺がいた前世の世界ではあり得ない。

ゴジラ作品に興味がなくても絶対に一度は耳にしたことがある名前だ。

ゴジラがいる世界なら尚更あり得ない。

だって世界中が何とか倒そうと奮闘している脅威の存在。

考えられる可能性はただ一つ。

 

「まさか俺異世界転生して異世界転移してるの!? どういうことだよそれ!!」

 

俺の発言にこの場にいた全員が驚く。

過去にトリップしてるとは思ってたけど、異世界転移してるなんて誰が気付くか!

いや、でもよくよく考えれば気付ける要素はあった。

だってゴジラの世界に呪いという理があったら、ゴジラの世界は呪霊がわんさかいることになる。

映画観てるだけでも分かる。

怪獣が現れるだけでどれほど負の感情が発生するのか。

年単位で呪霊が大量発生することになるんだから、いくら呪術師がいても足りるワケない。

即行で過労死するわ!

それに絶対にいるじゃん!

ゴジラへの恐怖で生まれた特級呪霊とか!

……。

え、それなんて白目ゴジラですか?

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

・デストロイアに生まれ変わった主人公

死んだと思ったらゴジラの世界にデストロイア微小体の1体として転生。

転生後、他の微小体が起こしたシャフトの溶解による崩壊で発生した時空の歪みに飲まれ呪術廻戦の世界に転移した運が良いのか悪いのか分からない人。

実は界渡りの際【オキシジェン・デストロイヤー】の性質が変化していて酸素だけではなく呪いまで破壊出来るようになっている(本人知らず)

転生してすぐは生きることに必死だったが、幼体に成長後は食糧確保のために人間と交流しようと模索。

無事に交流出来るようになったので、牛を効率よく育てて貰おうとテレビで得た農業の知識を教えていたら神として信仰されるようになる。

最初は赤甲の蟲神。

完全体になってからは技名と、主人公が持ってきた蓮が赤い花を咲かせたことから緋蓮熾翅神と呼ばれるようになる。

村にやってきた1級呪霊を命からがら倒しその呪力を吸収して中間体へなり、そして呪いの王両面宿儺と対峙した際に両面宿儺のエネルギーを摂取したことと【開】の爆炎を受けたことで完全体へと進化。

1個体で成長したために分裂体になることは出来ないが、スペックは劇中のデストロイアとほぼ同じ。

快、不快でのみ判断する宿儺に人の情を教えようと接していたら本当の弟のように思うようになった。

人間だった時は5人兄妹の長男だったので根っからのお兄ちゃん属性。

あの両面宿儺でさえ主人公の前ではただの弟になってしまう。

間違いなく呪胎九相図1番の脹相と仲良くなる。

穏やかでのんびり屋だけど曲がったことが嫌いな性格。

特に身内を傷付けられることに激しい怒りを感じ、一度その怒りに火が付くと手が付けられないほど凶暴になる。

神格化後は制御出来るようになったが、それでも激昂すると大変なことになるので怒らせない方がいい。

破壊の神であるが、1000年以上もの長い間農業の神として信仰されていたのでそちらの力もある。

雨乞いや痩せた土地を蘇らせる力も持っているので農業の神の力も相当強い。

小説内で言っていた“よく分からない力”は信仰されたことで得た神性であり、この神性が宿ってから【オキシジェン・デストロイヤー】の制御が格段に楽になった。

しかし完全なる神へと至ったことでデストロイアとしての進化は止まっている。

とはいえ神の力はまだまだ昇華出来るので、すでに両面宿儺より強いのに成長の余地があるヤベーヤツ。

ちなみに村に作った領域は神格化した時から神域に変化しており、呪霊の発生もほぼなくなり村に危害を加えようという意識がないものにとってはもの凄く居心地の良い空間になっている。

生まれて1000年以上経ってようやく自分がゴジラという作品もゴジラもいない世界に転移していると気付いた。

本物のゴジラに会えるかも、とワクワクしていたからめちゃくちゃショックを受ける。

 

「俺の生涯の楽しみがーーーー!!!」

 

 

・お兄ちゃん大好きな両面宿儺

最強の呪いの王。

呪霊ではないのに異形な姿をした蟲神と呼ばれる存在がいるという噂を耳にし、興味本位で足を運び主人公に出会う。

敗れたからには勝者に従うのが自然と主人公の部下になったが、まさかあのように接せられるとは思わず最初は不快で仕方なかった。

だが自分を普通の人として扱ってくれる主人公に次第に絆されていき、いつの間にか兄のように慕うようになる。

主人公の前ではただの人として過ごせるので傍にいることを望んでいたが、かつて兄の家族を殺した罪悪感に苦しんでいる時にある呪術師に言われたことが原因で心神喪失状態になってしまう。

気が付いたら裏梅を連れて村から離れ、気が付いたら呪物となって眠っていた。

受肉の際に意識を取り戻したが、自暴自棄になっていたことで本編の宿儺と同じ行動を取っている。

主人公と再会し、受け入れて貰えたことでようやく落ち着きを取り戻す。

指摘されると怒るけど唯一の理解者である兄のことが大好き。

そしてそんな兄を「かっこいい」と言った虎杖悠仁に対して好感度が上がっている(大体初対面の人には化け物と呼ばれるため)

ので本編より仲良くなる。

 

「チッ、兄上に対し馴れ馴れしくするな小僧。まぁ無礼な態度を取るよりマシだが」

 

 

・こっちもいつの間にか絆されていた裏梅

両面宿儺の忠臣である呪阻師。

最初は警戒しまくっていたが、褒め上手であり分け隔てなく接する主人公に自然と心を許すようになる。

宿儺が村から離れた時、何度も帰ろうと進言していた。

宿儺が呪物となることも止めることが出来ず、自信を失いながら自分も呪物となって眠った(本編で明確な描写はないがそういうことにした)

現在は本編同様呪阻師側にいるけど、これは宿儺を完全復活させて主人公と再会させるためであり、その必要がないと分かれば主人公側に戻ってくる。

 

「宿儺様と緋蓮様を悪く言うものは殲滅してもよろしいでしょう?」

 

 

・スペキャしてた伏黒恵

目の前で行われているやり取りに理解が追いつかなくて宇宙を背負ってた人。

呪いの王を唯一倒した呪いの神と呼ばれる存在のことは知っていたが、まさか目の前に現れるとは思わず動くことが出来なかった。

突然声を掛けられ更に驚くも、見た目はともかく話しやすい感じがして今までのことを素直に打ち明けた。

 

「任務中すみません五条先生。今すぐに帰ってきて下さい」

 

 

・本編の主人公虎杖悠仁

宿儺と変われないし、心臓取られちゃったし、伏黒は死にそうだし、どうしたらいいのか分からなくなっていた所に悪魔とドラゴンが融合したような真っ赤なヤツが現れてビックリ。

しかもそれが五条先生が言っていたかつて宿儺を倒した緋蓮熾翅神という神様だと気付いて更にビックリ。

どんなヤツなのかと思いきや、ただの弟思いのお兄ちゃんで宇宙を背負った。

宿儺も一気に丸くなったし、こんないいお兄ちゃんが近くにいるなら大丈夫そうだと思ってる。

 

「いやいや。どんなに否定してもお兄ちゃん大好きオーラダダ漏れだからな」

 

 

・主人公を最上位神にした自由奔放な存在。

面白いのないかなーとうろうろしていたら、神格化の条件を満たしている主人公を発見。

この子が神格化したらめっちゃ楽しそう! と主人公に念話で話を持ちかけた。

 

「こんな人間臭い神いないんだよねー。僕の領域にやって来て欲しいな♪」

 

 

 

 

続かない☆

 

 

小説内で破壊した特級呪物は獄門疆ではありませんのでご注意を。

 

 

前編でも書いた通り、偶然見つけたゴジラのエナドリを兄に勝手に飲まれた怒りから生まれた小説です。

私はゴジラの敵怪獣でデストロイアがダントツ好きです。

他は甲乙付けがたいけど、強いて言うならメガギラスが2番目かな?

ゴジラならFWゴジラが好きですね。

記憶はちょっと怪しいですが、最初に見たゴジラ作品はVSシリーズのゴジラVSモスラです。

でも映画はゴジラVSスペースゴジラが好き。

なるべくデストロイア本来の設定から逸脱しすぎないように資料を読み漁りました。

久々に調べ物しまくって楽しかったです。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

※注意事項※

 

・主人公に原作知識はありません。

 

・ゴジラとのクロスオーバーです。と言っても怪獣は彼しか出ませんが。

 

・キャラ崩壊あり。

・捏造及び原作改変を多く含みます。

・漫画・本誌のネタバレがあります。

 

 

以上がOKの方は続きをどうぞ!

 

楽しみに取って置いたゴジラのエナドリ兄に勝手に飲まれたー!

おのれ、許さんぞ! ソイツが私が一番好きなゴジラ怪獣だって知ってるだろー!!

という怒りから生まれたヤケクソの小説です。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

わー……ポックリ逝ったよ俺。

もうあっけないくらいポックリ逝った。

あまりにもあっさりすぎてなんで死んだか覚えてないけど、死んだという自覚はある。

家族にあの部屋見られるのやだなー。

だってゴジラグッズ満載。

ファンの方々なら歓喜の声を上げるだろうけど、家族はそういうの一切興味ないからコツコツ集めていたフィギュア全部捨てられるかもしれない。

お願いします。捨てるんじゃなくて誰か欲しいと言う方に譲ってあげて下さい!

もう手に入らないヤツ一杯あるんです!

なんて今言っても無駄だよなー。

はああああぁぁぁぁ……。

せめて遺言残しておくんだった。

後悔先に立たず。

ああ、叶うんなら……ゴジラ怪獣に生まれ変わりたいなー。

ゴジラに瞬☆殺されるヤツでもいいからさ。

無理だと思うけど、死ぬんならそれくらい願っても、いい…よね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

ん?

 

 

 

なんだこれ??

 

 

真っ暗なんだけど……。

なんか動き辛い。

ここどこ??

よく分かんねぇけどすっげー腹減ったな。

死んだのに腹が減るってどういうこと?

……。

あれ?

これもしかして記憶持ったまま生まれ変わった?

わー、二次創作で何度も読んだヤツだー。

けど仮にそうだとしたらどういう状況なの?

真っ暗で動き辛いのに腹減ってるとか意味不明なんだけど……。

 

――ズズズ……。

 

ボーッとする頭で考えていると突然揺れた。

比喩でも何でもなく全体が揺れた。

え、地震!?

ちょっと待ってくれ、動き辛いのにどうすればいいんだ!?

何も出来なくない!?

困惑している俺が自然現象に逆らえるハズもなく、土砂崩れらしき現象に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

はっ!?

 

ここどこ!?(2回目)

 

急に明るくなった。

地震と土砂崩れらしき現象に飲み込まれてそれからどうなった??。

とりあえず落ち着いて辺りを見渡すと今いる場所が水中だと分かった。

けど水中なのに苦しくない。

息しているか不明だけど、俺水生生物に生まれ変わったの?

どんな生物なんだ?

全く分からない。鏡なんてないから確認しようがない。

とりあえず自由に動けるっぽいから腹ごしらえしよう。

相も変わらず腹が減っているから何か食べたい。

のそのそと動き出すと自分が異様に小さいことに気が付いた。

地面にある石に見えたそれは石ではなく砂粒らしい。

そして頭上に見える魚。

多分鯵だと思うんだけどそれもかなりデカい。

仮にあの鯵がスーパーでよく見るサイズだとしたらどれくらい小さいんだ俺。

石に見えるこの砂が砂浜のと同じサイズなら今の俺は2ミリくらいか?

小さすぎない?

こんなミニマムサイズで何をしろと?

でも小さいが故にその辺にプカプカ浮いている動物性プランクトンでも十分ご飯になる。

まだ人間の感覚バリバリに残っているから大分抵抗があるんだが、これくらいしか食べられそうなものがないから我慢するしかない。

サッと捕まえてもぐもぐする。

何とも言えない味だな。美味しいと感じる日は来るのだろうか?

しかし1匹じゃ全然足りないな。

あれー? 俺今ミニマムサイズだよね?

1匹で十分だと思うのにまだ腹減りなんだが。

うん、深く考えてもしょうがない。

腹一杯になるまで食べますか。

何て暢気に考えていたら頭上にデカい魚が襲来。

あっ、ヤバい死ぬ。

咄嗟に深く潜ってやり過ごしたけど、弱肉強食の世界こえー。

生まれ変わったばかりで死にたくない。

せめて寿命を全うするまで生きたいです。

めちゃくちゃ怖えけど、人間の知識があるんだからそれで何とか頑張ろう。

 

当面の目標、とにかく生き残る。

 

 

◇◆◇◆◇

 

はい、あれから多分1ヶ月ほど経ちました。

最初の頃はちゃんと日数数えていたんだけど、生きるのに必死すぎて途中で止めちゃった。

でも何とか生きている。

何回かヤバい場面はあったけど。

んでもって数日経ったら体に変化がありました。

なんと脱皮したんです。

体がムズムズするなー、窮屈な感じがするなーっと思ったらな。

マジで蟹が脱皮するみたいな感じで、脱皮した殻がまんま残っていた。

しかし脱皮した殻を見ても何の生き物に生まれ変わったのか分からん。

三葉虫っぽいけど違うんだよな。

でも徐々に形が変わっていってる。

そして今回5回目の脱皮。

相変わらずムズムズするし窮屈な感じがするしで早く脱ぎたい!

人間の時に言っては絶対駄目な台詞だ。

メリメリと音が聞こえ、ポンッと古い殻を脱ぐ。

あー、スッキリした。

脱皮したてで体が柔らかい。この時は動きがままならないのでかーなーり危険。

だから比較的安全な岩陰に身を潜めている。

さーて、少しずつ姿が変化してるが今回の殻はどんな形かな?

 

 

 

 

……。

 

 

 

ん?

 

んん?

 

んんんんんんん!?

 

何かこの形見覚えがあるぞ!?

えぇ!? マジで!!??

甲殻の色がどんなのか分からないけど(今のところ白黒しか判別出来ない)まさかこれ……。

 

デストロイアの初期形態であるクロール体では!?

 

説明するまでもない。

デストロイアはゴジラVSシリーズのラスボス。

初代ゴジラを葬った兵器【オキシジェン・デストロイヤー】の化身とも言われる完全生命体である。

これは劇中で最初に出てきた姿であるクロール体にそっくりだ。

ということは今までのは地層から復活したばかりの姿である微小体!?

微小体は劇中では登場してなくて図鑑に説明が載っているだけだった。

けど思い返してみればこれまでの殻はその微小体の説明と一致している。

嘘だろ!? まさか俺はデストロイアに生まれ変わったのか!?

いやっほう! 超嬉しい!!

俺ゴジラ怪獣でデストロイアが一番好きなんだよ!

禍々しいのに格好いい姿。

一目で気に入っていた。

もう最高の気分です。

神様マジでありがとうございます!!

しかし冷静になった途端あることに気付いた。

 

俺ボッチじゃん! ……と。

 

デストロイアは単体では完全体にならない。

単体で成長出来るのは幼体までだ。

集合体もしくは中間体と呼ばれる形態は無数の幼体が合体することで変化する。

その中間体がゴジラジュニアから奪い取ったエネルギーと火力発電所の強い火炎を受けてデストロイアに進化するんだけど、ボッチの俺では精々幼体までしかなれない。

これまで結構な距離移動してきたけど、他に微小体らしき姿は見ていない。

クロール体なんて以ての外。

もう気分が駄々下がりである。

そんなー。折角デストロイアのクロール体に生まれ変わったのに、完全体になれないとか何の拷問だ。

あの格好いい姿になって自由に空飛んでみたいよ。

うぅ、ぐすん……。

 

 

……。

 

 

はい。うじうじTIME終了!

別にボッチだからって完全体になれないと決まったワケじゃないし、安易にあの姿になってもゴジラとGフォースの軍隊にボコボコにされるだけじゃん。

それにゴジラと戦いたいとは1ミリも思っていない。

なんならゆっくりのんびり生きたい。

そしてクロール体は【ミクロオキシジェン】を体内で生成出来るけどまだ弱い。

多分踏まれただけで死んじゃう。

そんな状態で先のことを考えるなんでアホくさい。

だから今までと同様生き延びることを考えよう。

うし、決定。

今日も張り切って行くぜ!

 

 

◇◆◇◆◇

 

季節が巡り巡って恐らく1年ほど経ちました。

今日の俺は陸地に来ております。

なんか猛烈に陸に上がりたい気分だったのよ。

これは……いよいよ幼体になるのか?

クロール体の姿は大分大きくなったからな。

何度も脱皮を繰り返して今は30~40cmくらい。

あの2ミリくらいからよくここまで大きくなったものだし、よく生き残れたもんだ。

我ながら天晴れだ。

けど異様に眠たい。幼体になるには睡眠が必要なのか?

何とか移動してるけどマジで眠いのよ。

一瞬でも気を抜いたら夢の世界に行くぞ。

けど陸地も外敵が多い。

ここで眠るのは自殺行為だ。

とにかく陸に上がった時に見えた小さな洞窟に行こうと踏ん張っている。

海に近いが、高台にあって多少海が荒れたくらいじゃ水没しなさそうな位置にある。

ここなら眠っても大丈夫だろう。

かなり時間が掛かったけど洞窟に到着。

そして洞窟の一番奥まで行くとようやく安心出来る場所に着いた。

起きたら天国じゃなくて、幼体になれてますように……。

そう思いながら視界を閉ざす。

あっという間に俺は深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

あー……真っ暗。

どれくらい眠っていたのか、やっと目が覚めた。

今までと違って何かに包まれている感覚がする。

俺を包んでいる何かを突くとベリッと音がして破けた。

破けたところから抜け出し、今の自分がどんな姿なのか確認するために洞窟から出る。

夜だったけど明るい。満月のようだ。

これだけ明るければ姿を確認出来るな。

視線が高いし、色彩が分かるようになっている。

これは期待大だ。

しばらく歩くと水溜まりがあった。

風もないため水鏡になっている水溜まりを覗き込むと期待通りの姿が映し出される。

節足動物のように足が沢山あって、先端が鋏のようになっている長い尻尾。

甲殻は赤く、顔はエイリアンのように不気味で大きな耳(?)もある。

間違いなくデストロイア幼体だ。

長かったー。やっとここまで成長出来た!

もしかしたらここで成長終わりかもしれないけど、ここまで来れば余程のことがない限り死なないだろう。

……しかし小さくね?

劇中で登場したデストロイア幼体の大きさは2mだった。

けど今の俺はどう考えてもそれより小さい。

多分中型犬くらい。

いくら何でも小さすぎない?

1個体だけで成長してた影響か?

うーん。分からん。

分からんけどとりあえず腹ごしらえするか。

めちゃくちゃ腹減った。

食料を求めて森へと入ると獣が食べ残したと思われる多分鹿の死体を発見。

これまでも魚の死体見つけたら食べていたから迷わず齧りつく。

【ミクロオキシジェン】で溶かしながら啜るように食べる。

噛み砕くという行為が出来ないからな。

それが出来るのは飛翔体と完全体だけだ。

ものの数分で全部食べ尽くしたけど全然足りない。

幼体になっても大食漢なのに変わりはないか。

頑張って狩り出来るようにならないと餓死するかもしれん。

まぁ後は明るくなってから考えるか。

ここが何処かも知りたいし、一旦空腹を誤魔化すために寝よう。

木の上によじよじ登って寝ます。

お休み~。

 

◇◆◇◆◇

 

明るくなったので獲物を探すがてら辺りを散策した結果、どうやらここがかなり昔の日本らしいことを知った。

歴史に詳しくないんだけど、見かける人の服装とか建造物見るとめっちゃ古そうなのよね。

江戸よりも前だとは思うんだけど、どれくらいなんだろ?

もしかして地震と土砂崩れらしき現象に巻き込まれた時に時代遡っちゃった?

だとしたら俺しかクロール体がいなかったのも納得する。

人外に生まれ変わってすぐに過去にトリップしちゃうとか俺運悪すぎー。

……いや、逆に運いいのか?

だってあのままあそこにいてもバーニングゴジラにフルボッコにされるだけだ。遅かれ早かれ死んでる。

時代を逆行したことで今の俺はボッチではあるが、少なくともゴジラとGフォースに殺されることなくまったりと出来るハズ。

割と良くない?

けど一つ気になるのが……人里近くに行くと変な生き物がいることだ。

キモイーナ。これかなりキモい。

もう見た目が俺以上にアウト。

目が沢山あったり、ウネウネぐねぐねしていたりである意味ヘドラよりキモい!

一体どんな生き物何だ?

簡単に捕まえられるから食べてみたら死ぬほど不味くてすぐに吐き出しちゃったよ。

ミクロオキシジェンを浴びせれば倒せるヤツがほとんどではあるんだが、この間エラい強いヤツに遭遇してしまって全速力で逃げた。

何なのアレ。この姿じゃ勝てねぇよ。

でもキモいヤツは人里近くに行かなければ出会わないので俺は山奥に引っ込んでいる。

最初はぎこちなかった狩りも大分上達して、鹿とか猿とか猪を捕まえて食べてます。

結構悠々自適に暮らしていたんだけど、ここで問題発生。

大食漢なのが災いして辺りに獲物がいなくなってしまったのだ。

これはアカン。

移動してもいいんだけど、それだといつか生態系そのものを破壊しかねない。

それがキッカケで人間に敵として見られたら尚ヤバい。

大分大きくなって今は150cmくらいになったけど、人間に集団で襲われたらひとたまりもないからな。

じゃあどうするべきか。

元人間だから人間は食べたくないし、そしたら食料を自分で育てるのがいいか。

けどこの俺の体で育てられるか?

手ないから無理だろ。

人間に育てて貰うのが最も効率的だけど、1回この姿を見られた時「化け物」と呼ばれて逃げられたのよね。

分かってはいたけど、実際そう言われたらショックだったなぁ……。

そもそも何の対価もなしに家畜を育ててくれるハズない。

何か価値があるものとの交換が一番良い。

俺が手に入れられそうな価値があるもの……蜂蜜とかどうだ?

蜂蜜って結構な値段するのがあるし、養蜂もしていなさそうなこの時代ならかなり良い値段がするのでは?

俺は平気だけど防具もないのに蜜蜂の巣に突撃する猛者もいないだろ。

決まりだ、蜂蜜を取ろう。

遠心分離機なんてないから蜜蝋ごとの交換になっちゃうけど。

山を散策して蜜蜂の巣を見つけ、必要な分だけ失敬する。

越冬のために働き蜂が一生懸命溜めてるものだしな。

取るのはほんの少しだ。

蜂蜜を取ると目星を付けていた山間にある村へ行く。

小さな村だが、農業のために牛や馬を飼っている。

皆農作業の真っ最中で申し訳ないんだけど、覚悟を決めていざ飛び出す。

 

「ぎゃあああああ!! 化け物ぉ!!」

 

「女子供を逃がせ! 男は前へ出ろ!」

 

ああ、うん。そうなるよな。

村にいた男が鍬とか持って向かってくる。

あんまり戦闘はしたくないから、一発ビビらせてやるか。

 

――ドスンッ!

 

「キュアアアアアアア!!!」

 

「「「!!??」」」

 

目一杯の咆哮をし、尻尾で地面を思いっきり叩く。

それに向かってきていた男達が怯んだ。

デストロイアの声って幼体でも結構不気味なんだよね。

俺は好きなんだけど、初めて聞く人はビビるだろう。

 

「あ……ひぃ」

 

けどちょっとビビらせすぎた。

完全に腰抜かしちゃった人までいる。

大丈夫かこれ。交渉出来る?

やれるだけやってみるか。

 

「……オ、イ。聞こ、エ……カ?」

 

「!?」

 

そう、転生者特典なのか一応話せるのだ。

とはいえかなりの片言&濁声なので通じるか心配だったけど通じてるみたいで一安心だ。

俺は足に引っかけていた蜂蜜が入っている植物の葉で作った袋を腰を抜かしている男にやる。

 

「は? へ??」

 

「ソレ……ヤル」

 

「これ、は?」

 

「ハチ、ミツ…」

 

「!!??」

 

それが蜂蜜だと伝えた途端その場にいる全員が驚いている。

やっぱこの時代だと蜂蜜は結構な価値があるらしいな。

この時俺は知らなかった。

まさかこの時代の蜂蜜が天皇への献上品になるほど貴重なものであることを……。

 

「ブツブツ…交換。ソレ…ヤ、ルカラ、牛ヲクレ」

 

「う、牛ですか!? 何頭欲しいのです?」

 

「一頭デ、イイ。次ノ、満月ニマタ…蜂蜜ヲ、持ッ…テ来ル。ソレ、マデニ牛ヲ……育テテ、オイテク…レ」

 

1ヶ月と言って伝わるのか分からなかったので月齢で示すことにした。

本当はもっと欲しいけどそうほいほい育てられるものじゃないしな。

 

「は、はい。分かりました。必ず用意しておきます。おい、誰か牛を持ってこい!」

 

「た、只今お持ちします」

 

「急ガ、ナク…テイイ……ゾ?」

 

農民の1人が牛を連れて来た。

暴れられると面倒なので脳天に噛み付き【ミクロオキシジェン】を注ぎ込んで即死させる。

こういうのは苦しませないのが大事よ。

 

「感謝スル。デハ、ナ」

 

用事が終わったので牛を持って森に帰る。

これで1週間くらいは持つかな。

1週間しか持たないとも言うけど。

足りない分は海行って魚でも捕るか。

それも取り過ぎたらヤバいんだけど。

大食漢ってやーね。

んじゃ人気がなくなったところでいただきまーす。

 

◇◆◇◆◇

 

その村との交流が始まり、蜂蜜と牛もしくは馬を交換するようになって数年ほど経った。

すでに劇中のデストロイアより長生きしているぜ。

食料問題が安定してきたからまったりと暮らしていたんだが、気が付いたら村人から……。

 

「赤甲(せきこう)の蟲神様がおいでになったぞ。全員でお出迎えしろ!」

 

と呼ばれるようになった。

何故こう呼ばれるようになったかというと……牛や馬を効率よく育てて貰おうと鉄腕D○SHで得た農業の知識を教えてたから。

まぁ、この時代で実際に教えられることは少ないんだけどな(歴史をねじ曲げない程度に教えてる)

他にも落ち葉を集めて作った腐葉土を持って行ったり、井戸掘ったりとかしてた。

そしたらいつの間にか「赤甲様」とか「蟲神様」と呼ばれていたワケです。

俺神様じゃないんだけど、今更名乗るのはなー。

けど別にいいかと思ってそのまま呼ばせてる。

 

「蟲神様。期日にはまだお早いようですが、いかがなされましたか?」

 

「アケビ見ツケタ。食べ頃ダト思ウカラ、皆デ食ベテクレ」

 

今日は沢山実っていたアケビを持って来ただけです。

交換時以外でも山で見つけた食べられる野草や果実を持って村人にあげている。

これも鉄腕D○SHの知識。

アケビ美味しいのに肉しか食えない今の体で食べても美味しく感じないんだよな。

 

「蟲神様いつもありがとうございます。早速全員に配ります。ついでで申し訳ありませんが次の供物は鯉にしてもよろしいでしょうか? まだ牛が育ちきっておりませんので」

 

供物って何ですか?

蜂蜜とのブツブツ交換だから供物とは言わなくない?

あっ、季節の関係で蜂蜜が手に入れられなかった時は塩とか海の魚とか山の恵みを大量に持って行ったりしてるぞ。

 

「イイゾ。イツモ悪イナ」

 

「寛大なるお心、ありがとうございます。蟲神様が満足できる量をご用意いたします」

 

「無理シナクテイイカラナ。ジャアコレデ」

 

何か恥ずかしくなったのでそそくさと山に帰ります。

ここまで敬われると照れるな。

神様扱いされるほど大したことしてないと思うのに。

けど幼体になってから数年経つのに見た目に変化全然ないな。

脱皮もしなくなった。

はあああぁぁぁぁ……。

この様子だとやっぱ幼体で成長は打ち止めっぽいな。

ボッチだから仕方ないんだが。

軽く落ち込んだ状態のまま満月の日を迎えた。

いつも通り蜂蜜を持って村へ向かっていると。

 

「きゃああああああ!」

 

小さい子供の悲鳴が聞こえた。

何だ? 村の皆はもう俺の姿を見ても悲鳴なんてあげないぞ。

嫌な予感がして急ぎ村へ向かうと、あの気持ち悪い生き物が村人を襲っていた。

百足の体に目が無数についている。

今まで見た中で一番大きいし強そう。

幼い子供が、その百足に食われる一歩手前だった。

咄嗟に飛び出し子供を助ける。

手がないから子供に尻尾を巻き付けて引き離す。

何とか助けられたけど、邪魔をされたのが気にくわなかったのか百足の標的が俺に向いた。

 

「赤甲様……」

 

「逃ゲロ。急イデ離レルンダ」

 

「は、はい」

 

村人を逃がすために俺は百足と相対する。

【ミクロオキシジェン】を吐いて百足にぶつけるが、装甲が予想より硬いみたいであまり効きが良くない。

くっそ! 【オキシジェン・デストロイヤー】なら一発なのに!

チラッと後ろを確認。

怪我をした人がかなりいた。

足をやられている人もいる。あれじゃ遠くに逃げるなんて無理だ。

倒しきるしかない。

初めての格上、初めてのまともな戦闘。

どこまで出来る?

分かんねぇけどやってやる。

こんな見た目の俺を受け入れてくれている人達のために!

【ミクロオキシジェン】の効きは悪いが手がないワケじゃない。

百足の攻撃を避けながらある一点を狙い【ミクロオキシジェン】を当てる。

動きが予想より速くて中々当てられない。

次第に息が上がってきた。

そこで地面に【ミクロオキシジェン】を吐いて地盤を緩くし、百足の足場を泥状にして動きを鈍化させる作戦に出た。

足場の悪い海底でも動き回っていた俺と違うことを願っての作戦だったが上手くいったぞ。

百足の動きが鈍くなっていく。

更に一点集中で【ミクロオキシジェン】を当て続ける。

ようやくその場所の装甲が壊れて柔らかそうな部分が剥き出しになった。

俺が狙っていたのは人間で言う首の下辺り。

少しでも装甲を破って体内に直接【ミクロオキシジェン】を注ぎ込めば倒せるかもしれない。

俺は装甲が壊れた部分にしがみつき、思いっきり噛み付いてありったけの【ミクロオキシジェン】を注ぎ込む。

 

「ギャアアアアアア!!」

 

流石に効いているらしい。百足が苦しんで無茶苦茶に暴れ出した。

引き離そうと俺が張り付いている部分を地面に叩き付ける。

いってぇ! けど絶対に離すか!

 

「む、蟲神様!」「赤甲様が!」

 

村人の悲痛な声が聞こえてくる。

何度も地面に叩き付けられた俺はあちこちから体液が流れかなり悲惨な状態になっているらしい。

少しでも体が持つよう【ミクロオキシジェン】を注ぎ込むのと同時に溶かした百足の肉を吸っているが、死ぬほど不味くて今にも吐き出しそう。

けど吐いたら口まで離してしまうから必死で耐える。

頼む、早く倒れてくれ!

もう、……げんか……い。

 

「グガアアアァ、ァァァァ……ア……」

 

――ズウゥゥン……。

 

願いが届いたのか百足の体が地面に倒れ、塵になって消えた。

はぁ、はぁ……やった。倒した。

見たかー! やり方次第で幼体でも格上に勝てるんだぜー!

 

「赤甲様が勝ったぞ!」

 

「蟲神様ばんざーい!!」

 

村人から歓喜の声が上がる。

振り返ってやりたいところなんだが、俺HP1くらいしか残ってないのよ。

俺はその場にパタリと倒れた。

なんか村人が言ってるけど、意識を保つこともままならず答えられない。

悪い。今は眠らせて、く……れ。

そのまま俺は意識を完全に失った。

 

◇◆◇◆◇

 

目が覚めるとすぐに体がムズムズして窮屈な感覚に襲われた。

何か久々の感覚だな。

しかし前よりも窮屈だと強く感じる。

早く古い殻を脱ぎたい。

動くとメリメリと音を立てて殻が割れる。

これならすぐに脱皮出来ると判断し、更に大きく動く。

バリッといい音が響いて俺は脱皮をした。

あー、スッキリしたぜ。

ところで俺どうなった?

 

「今の音は何だ!」

 

「赤甲様に何かあったか!?」

 

と、外から村人の声が聞こえてきた。

そういえばここ建物の中だよな。

意識を失った俺を村人が運んでくれたのかな?

ガラッと勢いよく戸が開く。

 

「おお! 蟲神様がお目覚めになられておる!」

 

「皆よ、集まれ! 蟲神様がお目覚めになられた!」

 

俺が目を覚ましたことに気付いた村人の皆さん大喜びである。

大袈裟だなー。疲れて眠ってただけなんだから。

村長である男が深々と頭を下げる。

 

「回復をお喜び申し上げます。10日も目を覚まされないので一同心配しておりました」

 

10日も眠ったままだったの!?

それは誰でも心配するわ! 全然大袈裟じゃなかった!

 

「悪カッタ。心配カケタナ」

 

「いいえ。お目覚めになられて嬉しゅうございます。ところで姿が少々変わっておられるようですが、どこか体に不調などございませんでしょうか?」

 

へ? 姿変わってるの?

一回り大きくなったなーくらいしか自分じゃ分からなかったけど……まさか。

チラッと下に視線を向けると今までなかった蟹のような鋏があった。

そして背中からは大きな触手が伸びている。

えっ!? もしかしなくてもこれは……デストロイア中間体になってる!?

何で!?

数年変化なしだったのにどうして急に中間体になるの!?

何か俺特別なことしたっけ??

あっ! もしかしてあれか!?

あの百足食ったから!?

キモいし不味いから今まで食べたことなかったけど、あの時はかなりの量を食った。

いやー、マジか。

格上だったからとか他にも要因ありそうだけど、嬉しい誤算だ。

……しかし相変わらず本来の中間体に比べたら小さいのが気になる。

劇中だと中間体は全高が40m、全長60mもあった。

今の俺はどんなに大きく見積もっても2mくらい。

ちっっっっっさ!

これだと完全体に仮になれたとしても3m~4mくらいじゃね?

ボッチ故の弊害か……。

まぁ、本来のデストロイアは全高120mとかなりの巨体だ。

あんまりデカすぎると動き辛いかもしれないから、ある意味丁度良いのでは?

 

「蟲神様?」

 

おっと、思考の渦に飲まれすぎて村長さんのこと疎かにしちゃったよ。

いかんいかん。

 

「大丈夫ダ。コレハ成長シタダケデ不調ハナイ。皆モ怖ガラナクテ良イゾ」

 

「そうでしたか。それは安心いたしました。あの……あの化け物が現れた日は鯉を献上する予定の日でしたよね。良ければお持ちしましょうか?」

 

それはありがたい。

中間体になったのも相まってかなり腹減ってたんだよな。

 

「デハ頼ム」

 

「かしこまりました。すぐにご用意いたします」

 

サッと村長さんが用意のために離席した。

けど戸が開きっぱなしだったので村人がチラチラ俺を見ている。

止めて下さい。そんなに大勢の人に見られたら流石に恥ずかしいです。

しかし今まで以上に人間と接するの気をつけないといけないな。

力も強くなってるだろうし、何より生成する物質が【ミクロオキシジェン】から【オキシジェン・デストロイヤー】に変わっているハズだ。

下手に使うと辺り一帯の生物を全滅させてしまう。

戦う時もなるべく使わないようにしないといけないな。

 

「お待たせしました蟲神様」

 

戻っていた村長さん達が持っている籠には大振りの鯉が数十匹入っていた。

わーお。こんなに集めるの大変だったろうに申し訳ない。

戦ってる最中に蜂蜜無くしちゃったけど、村を守り切ったからWINWINってことでいいのかな?

まぁこんな新鮮な鯉を食べないという選択肢はないな。

折角持って来てくれたんだし。

それではいただきます。

 

◇◆◇◆◇

 

百足襲撃から10年ほど経ちました。

あの時俺が助けた子供もすっかり大人になってもう結婚・出産までしている。

生まれたばかりの子を見せに来てくれたんだよね。

可愛かったです。

百足の事件以降、村人は俺のことを完全に守護神だと思って信仰している。

社まで作られてマジモンの神様扱いだ。

未来だと破壊神とか悪魔とか言われてるんだが、まぁいいか。

神様と同じように信仰されてからは更にまったりのんびり過ごしています。

別にサボっているワケではないよ。

ちゃんと有事には動いてるし、農業だって進んでやってる。

けど自分がやりたくてやっていることだからストレスゼロなのだ。

こんな生活人間だった時は考えられなかったなぁ。

いやー平和って素晴らしい。

 

「今日は蟲神というヤツはいるか?」

 

けどここ最近ちょっと問題があって、妙な連中が村にやって来るようになったのだ。

身なりが良くてどう考えてもこの辺りの人間じゃない。

それに何となく強いのが分かる。

本気出せば一捻り出来るんだけど、素性が分からないヤツと戦って逆恨みされたらヤバい。

俺はともかく村人に被害が行くのは絶対に嫌だ。

だから気配を察知したら即座に身を隠すようにしている。

村人もいつもなら社に誰かが近付いたらすぐに顔を出す俺がいないから警戒してて早く帰れオーラが凄い。

 

「蟲神様はここしばらく姿を現しておりません。次にいつお見えになるかも私達には分かりません」

 

「その蟲神とやらはかなり友好的でよく姿を見せると聞いているが?」

 

「そう言われても分からないものは分からないのです。どうぞお引き取り下さい」

 

村人にそう言われ、渋々帰る妙な連中。

気配を完全に感じなくなったのを確認してから、俺は村人の前に姿を現した。

 

「イツモ対応サセテシマッテ悪イナ」

 

「滅相もありません。蟲神様にはお世話になっておりますので」

 

そう言われてもここのところずーっと何だよな。

酷い時は毎日のようにやって来るから俺もやりたいことが出来なくなっててかなり困っている。

どうしたら来なくなってくれるんだろう?

いっそのこと姿を見せた方が良いのかな?

そんなことを考え始めた時だった。

 

「こちらがその村です」

 

「ほう」

 

聞いたことがない声に知らない気配が2つ。

またあの連中が来たのかと思い、隠れながらその姿を確認して俺は息を呑んだ。

1人はおかっぱの白い髪で男か女か分からない見た目だったんだけど、もう1人がヤバい。

4つの目に4本の腕。

全身に入れ墨のような模様がある大男。

この時代の人は皆小柄なのに、その男は2mはありそうなくらいデカい。

え、あれ本当に人間!?

 

「ここに蟲神と呼ばれるものがいるそうだな。宿儺様がそのものをお望みだ。ここに連れてこい」

 

「い、いいえ。今蟲神様はこちらにはおられません……」

 

その異様な雰囲気に村人も怯えている。

けどいつものように俺はいないと言った瞬間だった。

村人の体がバラバラに粉砕された。

 

「……ハ?」

 

何が起こった?

やったのは大男のほうだと思うんだけど手を少し振っただけだ。

それなのに何で人間の体がバラバラになるの?

 

「宿儺様。貴方様が手を下さずとも私が」

 

「見え透いた嘘を張るからな。身の程を知らせてやった」

 

「ひっ、ひい!?」

 

「もう一度訊くぞ。蟲神はどこだ?」

 

「む、蟲神様はおられませ」

 

「くどい」

 

今度は言い切る前に首から上が微塵切りにされた。

こいつらヤバい!

姿を隠してる場合じゃない。

俺は森から飛び出し、大男達の前に出た。

 

「蟲神ト呼バレテイルノハ俺ダ。村人ニ手テ出スナ」

 

飛び出したのはいいけど、目の前にして分かった。

こいつ今まで見た中で一番強い。

今の俺では絶対に勝てない。

生まれ持った本能がそう告げる。

本音言うと全てを投げ捨てて逃げ出したいくらいにビビっている。

けど逃げられるか。

村にいる人達のこと俺は家族のように思っている。

家族を見捨てて逃げることなんか出来ない。

 

「オマエが蟲神か。……なるほど。噂通り微かに呪力を持っているようだが呪霊ではないか。このような生き物がいるとは驚きだ」

 

宿儺と呼ばれた大男はジロジロと俺を観察している。

呪力? 呪霊? 何のことだ?

ていうか俺の存在噂になっていたのか。

最近妙な連中が来るのはその噂のせいかよ。

 

「しかしそこらの呪霊や呪術師より力を持っているように見受けられます」

 

「そうだな。ここ最近は手応えのないヤツの相手ばかりだった」

 

――キンッ!

 

「!!??」

 

男が手を軽く振った瞬間、右耳が斬られ地面に落ちた。

いってぇ! 何だ今の……。

まさか見えない斬撃?

嘘だろ。チート技じゃん。

 

「オマエはそこそこ楽しませてくれそうだ」

 

「グッ……。全員逃ゲロ。ナルベク遠クヘ行ケ!!」

 

「は、はい!!」

 

大男が俺に向かってくる。

戦闘は避けられないと判断し村人に指示を出す。

前もって戦闘になった時は遠くへ避難するように言ってある。

何せ俺の戦いは周りをかなり巻き込んでしまう。

核兵器よりヤベぇんだよ【オキシジェン・デストロイヤー】は!

 

「【解】」

 

大男は俺に向かい指を差す。

するとバツンと体が裂けた。

マジでいてぇ! これさっきの見えない斬撃か!

しかも一度に複数の斬撃が飛んでくる。

見えねぇから避けようがない。

 

「並みの術師なら今ので死んでいるが、オマエは頑丈のようだな」

 

「ソレハドウモ!」

 

避けられないなら、狙いを定められないように動くしかない。

この姿になると逆に格好の的になるかもしれないが、動きが速いのはこっちだ。

俺は飛翔体に変化する。

 

「ほう、そのようなことも出来るのか」

 

「アマリナリタクナイガナ」

 

飛翔体になると飛んでいる時に【オキシジェン・デストロイヤー】撒き散らすから辺りが大惨事になるのよ。

体が小さいから劇中よりは大したことないんだけど(劇中では全長65m、翼長80m。今は2m、翼長も2,5mほど)それでも農作物が大変なことになる。

だが今はそんなこと気にしてられねぇ。

なるべく速い速度で動き、これもあまり使いたくはないが。

 

「【オキシジェン・デストロイヤーレイ】!」

 

口から【オキシジェン・デストロイヤーレイ】を発射する。

手で防ごうとしているみたいだが無駄だ。

 

「!?」

 

「宿儺様!」

 

大男の腕が消し飛んだ。

バーニングゴジラの再生能力がえげつなくなっていただけで、生き物が防げるような品物じゃない。

……内心効いて良かったと思っている俺がいるけど。

 

「呪力による攻撃でもないのに防げんとは、面白い力を使うな」

 

ニヤリと笑う大男。

ボコボコと腕の肉が盛り上がり、あっという間に消し飛んだ腕が元に戻った。

嘘やん! バーニングゴジラ並みの再生力持ってる人間がいて良いの!?

なんて驚いていたら尻尾が斬られた。

くっそ。驚いてる暇もない!

けどノーリスクであれだけ体を再生出来るハズないよな。

バーニングゴジラだってメルトダウン寸前の状態だったからだし。

なら空中から【オキシジェン・デストロイヤーレイ】を当て続ければなんとかなるかも。

なるべく大男にだけ当たるように位置を調節しながら【オキシジェン・デストロイヤーレイ】を連発する。

 

「チッ、つまらん戦い方をするな」

 

と、大男の姿が消えた。

何処に行ったのかと思ったら飛んでいる俺の真上にいた。

どんな跳躍力!?

なんてやっぱり驚く暇もなく、思いっきり蹴られて地面に叩き落とされた。

斬撃だけが脅威なのかと思ったらコイツ身体能力自体もヤベぇ!

背骨折れたかと思ったぞ!

俺背骨多分ないけど!

叩き落とされたので仕方なく中間体になる。

けどここからどう戦えば良いか分からない。

ゴジラジュニアと戦った時の戦法なんて通用しないだろう。

離れていたら見えない斬撃が飛んでくる。

肉弾戦に持ち込もうとしても50mくらい余裕でジャンプする身体能力を持っているから恐らく何発も耐えられない。

百足の時と違って打つ手がない。

せめて完全体ならなんとかなると思うのに……。

 

「……村ヲ捨テテ逃ゲロ。時間ハ俺ガ稼グ」

 

「蟲神様……」

 

もう村人全員を生き残らせるにはこれしかない。

どんなに頑張っても俺は完全体になれなかった。

いくらあのキモいヤツを食おうが、村人に頼んで火をおこして貰ってそこに飛び込んだりとかしてたけど変化しなかった。

多分火力が足りないんだろう。

劇中で完全体になった時の火は火力発電所の強力なヤツだった。

この時代にそんな火力出せるハズがない。

俺は覚悟を決めた。

 

「キュアアアアアアアアア!!」

 

咆哮を上げ俺は大男に突っ込む。

肉弾戦のほうが時間を稼げると思ったからだ。

触手を振りかざし、大男の注意が村人に向かないようにする。

おかっぱのほうは見ているだけっぽいから後回しだ。

触手の一撃を余裕とばかりに片手で受け止める大男。

ムカつくぜ。こっちは必死だってのに!

 

「実力差を理解していながら向かってくるか、面白いヤツだ。良い良い。望み通り遊んでやるとしよう」

 

拳が俺に向かってくる。

避けたくても早すぎて避けられない。

顔面に食らってしまい、体がグラリと揺れる。

倒れそうになるのを気合で堪え、もう片方の触手も振りかざす。

大男はそれをガシッと鷲掴みにすると思いっきり捻り、千切り取った。

 

「グガッ!?」

 

マジかよ。本当にどんなパワー持ってるんだ!?

関節部分を捻ったワケじゃないのに!

しかも次の瞬間には残っていたもう片方の触手も千切り取られていた。

激痛で意識が飛ぶ。

 

「次はどうするつもりだ? ほぅら頑張れ頑張れ」

 

けど大男の小馬鹿にするような発言が意識を浮上させる。

こんなヤツに家族殺されてたまるか!

俺は思いっきり体当たりをした。

読み通り余裕ぶっこいて受け止める大男。

この位置なら届く。

口を開け、インナーマウスを伸ばして大男に食らい付き【ミクロオキシジェン】を注ぎ込む。

 

「ぐっ!?」

 

ここで初めて大男の顔が歪む。

流石に効いたか。

ついでに【ミクロオキシジェン】で溶かした肉も食らってやったぜ。

一線を超えてしまった感が否めないが、こうでもしないとダメージを与えられない。

もう少し【ミクロオキシジェン】を注ぎ込んでやりたかったが、すぐに蹴りを食らって吹き飛ばされてしまった。

ただの蹴りなのに甲殻に罅が入る。

 

「肉弾戦で攻撃を食らったのは久しいな。【捌】」

 

――ズバンッ!

 

「ーーー!!」

 

気が付いたら胴体が真っ二つにされていた。

さっきの【解】と言った斬撃とは威力が全然違う。

どちゃりと上半身が地面に落ちる。

痛い。

痛い。

痛い。

 

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い

 

痛い。

 

嫌だ。

 

死にたくない。死にたくない!

 

 

「褒美としてこれで止めを刺してやろう。【開】」

 

男が弓を引くような動作をしている。

何か強力な一撃が来る。

けどそれを避けることなんて俺には不可能だった。

こんな状態なのに生きてるとか……生命力が強すぎるのも考えもの、だ……な。

全員、逃げ切るまで…時間を稼ぎたかったのに、ごめん……みん、な。

 

 

薄れいく意識の中で俺の体は業火に包み込まれた。

 

 

◇◆◇◆◇

≪両面宿儺視点≫

 

「つまらんな。これで終いか」

 

呪霊でもないのに異形な見た目をした蟲神と呼ばれる存在がいるという噂を耳にし、興味本位で噂を確かめに行くとそこにいたのは臙脂色の甲殻を持つ蟹のような生き物。

しかしそんじょそこらにいる呪霊や呪術師よりも力を持っている。

久し振りに楽しめそうだと思ったが大したことなかったな。

食われた部分を反転術式で治すと裏梅が近付いて来た。

 

「いかがいたしますか宿儺様」

 

「そうだな。とりあえず此奴が守ろうとした村の連中を食らうとしようか。美味そうだからな」

 

蟲神の加護か、山間にある小さな村だが相当栄えているようだ。

ここ数年飢饉が続いて美味くなかったが、こちらは満足できそうだ。

手を振るい【解】を放つ。

それだけで数人が鮮血を撒き散らして倒れた。

その回収を裏梅に任せて俺は恐怖のあまり動けなくなっている赤子を抱えた女の所へ歩を進める。

 

「あ、嫌……。助けて赤甲様……」

 

「オマエらを守っていた神は俺が殺した」

 

この女にも【解】を放とうと手を振るおうとした時だった。

ズシリと重い異様な威圧感が辺りを覆い尽くす。

 

「何だ?」

 

威圧感は先程蟲神に【開】を放った場所から感じる。

後ろを振り返ると、【開】で上がった炎が更に大きさを増していた。

その炎が一層大きく周囲へ広がり飛散する。

炎の中心部、蟲神を殺した場所から何かが起き上がった。

まぁ蟲神以外考えられんが。

 

「まだ生きていたのか。【開】を耐える力など残ってなさそうだった……が……?」

 

だが炎が収まり、ようやく見えたその姿が一変していた。

コウモリの様な翼。

橙色の一本角。

先程まではなかった太い足。

3本爪の手。

全身を更に頑丈そうな臙脂色の甲殻が覆い、口にはまるで鰐のような牙が並んでいる。

体高は10尺(およそ3m)を超えていた。

長い尾も含めると16尺はありそうだ。

 

「アアア、アア……ァ…………アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

これまで聞いた中で最も不気味な咆哮を上げるソイツは普段見る呪霊より禍々しい姿をしていた。

 

「……壊ス、こ…わす、壊す。壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す!!!」

 

変異した蟲神は狂ったように叫び、その目が俺を捉える。

 

「マズは…オマエか、ラだ」

 

蟲神が俺に標的を絞って向かって来た。

変異前よりも巨体になっているのに動きが速い。

 

「【解】」

 

試しに【解】を放つが、甲殻を僅かに傷付けただけに終わる。

やはり変異前より頑丈になっているな。

【捌】でなければまともに傷を付けられないか。

 

「【オキシジェン・デストロイヤーレイ】!!」

 

口からまたあの光線を放ってきた。

身を翻して避ける。

光線の速度は同じだ。

だが威力が段違いに上がっている。

地面が大きく抉れて、吹き飛んだ。

避けねば俺でも危ういな。

蟲神は俺の眼前まで来ると鉤爪のついた巨大な翼を叩き付けてきた。

これを後ろへ飛んで避ける。

が、次に長い尾を俺の脚に巻き付けてきた。

尾を巻き付けたまま空中へと浮かび上がって一回転し、その勢いで地面へと叩き付ける。

 

――ズドォンッ!

 

「っ!」

 

ただ叩き付けられただけにも関わらず、呪力で強化した体が軋む。

力も上がっているか。

そこらの術師なら今ので全身の骨が砕け散っている。

 

「宿儺様! おのれ貴様ぁ!」

 

「邪魔するな!! 【ヴァリアブル・スライサー】!!」

 

蟲神の角が光を帯びて伸び、裏梅に斬りかかる。

一瞬にして裏梅の両腕が斬り落とされた。

もう少し近かったら恐らく胴体ごと真っ二つになっているな。

僅かに怯んだ裏梅の首を尾の先端についている棘の付いた鋏で掴み、遠くへと投げ飛ばす。

裏梅という邪魔者を排除すると再び俺に狙いを定める。

あくまで狙いは俺か。

いいだろう。

何があったか知らぬが、ここまでの相手は初めてだ。

 

「領域展開」

 

手で印を結び、必中必殺の奥義を使う。

 

「【伏魔御廚子】」

 

―キン!

 

必中効果の範囲内、呪力のないモノには通常の斬撃【解】が、呪力を帯びたモノには呪力差、強度に応じ一太刀で対象を卸す【捌】が【伏魔御廚子】が消えるまで絶え間なく浴びせられる。

蟲神は僅ながら呪力を宿していた。【捌】が当たり続けるハズだ。

【伏魔御廚子】が消えたその場所に全身を【捌】により斬り刻まれた蟲神がその体を横たえる。

 

「グウゥ……ガアア、アァ」

 

傷口から黄緑色の血が流れているが、少しずつ塞がっている。

反転術式ではなく素の再生力のようだ。

この様子ならすぐに完全再生するな。

まあその時間を与えるつもりはない。

【開】を受けたことで変異したと考えれば、再び【開】を使うのは愚策。

なら頭を踏み潰すのが確実だ。

今度こそ止めを刺そうとした歩み出した時……

 

 

突然息が出来なくなった。

 

 

「!? ……っ!! ………ーーーーあ!!!」

 

な、ん……だ?

息が吸えない。

いや、正確には吸うことは出来ているがそれが出来ないのと同じような状況にいるような感覚……。

ふと蟲神を見ると、全身から何かが噴き出していた。

何をしているのだ?

不味い、早く止めを刺さねばならんのに動くことさえ出来ん!

完全再生した蟲神がゆっくりと体を起こす。

 

「殺す、壊す……【オキシジェン・デストロイヤーレイ】!!」

 

地面に大穴を開ける光線が放たれ、俺の腹部を貫いた。

腹に風穴が空き、全身から力が抜ける。

負けた……のか?

まさか呪霊でも呪術師でもないものに敗れるとは思わなんだ。

生まれて初めてだろう敗北感。

思っていたより悔しいと感じるものなのだな……。

そんなことを考えながら俺は地面へ倒れた。

 

◇◆◇◆◇

 

 

熱い。

 

熱い。

 

熱い。

 

熱い。

 

何がどうなった?

体が異常なくらい熱い。

視線を下に向ける。

手がある。

3本の爪が伸びる手。

刺がある太い足も見える。

まさかデストロイア完全体になっているのか?

あの大男が放った炎が俺に急激進化をもたらすほど強力だったと?

それ人間が使っていい技じゃねぇだろ。

その技を使った大男は腹に穴が空いて倒れている。

倒せた。

何人か守り切れなかったけど、これ以上犠牲者が出ることはない。

そう……。

 

 

俺が破壊衝動を制御出来れば。

 

 

「がっ……。はあ……はあ……」

 

壊し足りない。

目に映るものを全て破壊尽くしたい。

そんな衝動が頭を駆け巡る。

【オキシジェン・デストロイヤー】の化身。

完全生命体デストロイアとしての本性。

なんとか抑えないと……生き残った村人を皆殺してしまう。

早く……早く収まれ……。

 

「赤甲様……」

 

必死に破壊衝動を抑えようとしていると村人の1人が近付いて来た。

百足の襲撃の時に俺が助けた女性だ。

腕にまだ生まれて数ヶ月の赤ちゃんを抱えている。

 

「寄、るな。今の俺は何もかも破壊し尽くしかねない……。早く離れろ」

 

振り返ってあげたいのに、目に映った瞬間に殺してしまうかもしれないから振り返られない。

苦しい……。この苦しみから解放されたい。

でもそれを選択したら、俺は本当の破壊神になってしまう。

それだけは絶対に嫌だ。

家族を、殺したくない……。

 

「赤甲様。御身を顧みず助けて下さいましてありがとうございます。もうこの村を荒らす敵はおりません。どうぞ気をお鎮め下さい」

 

「蟲神様……いや、もう姿がそう見えないから別の呼び名を」

 

「呼び方なんか今どうでもいいだろ。蟲神様、また我らを救って下さりありがとうございます」

 

「赤甲様」

 

寄るなと言ったのに、村人が次々と集まり俺に感謝を述べる。

それを聞いているうちに少しずつ気持ちが落ち着いてきた。

村人全員が集まる頃にはすっかり破壊衝動が消えていた。

……もう大丈夫かな?

俺は立ち上がって集まった村人へと体を向ける。

 

「赤甲様」

 

「悪かった。心配掛けたな。俺はもう大丈夫だ。……それよりごめんな、怖い思いさせて」

 

「滅相もございません。蟲神様がおられなければ村は全滅しております」

 

そう言われてもアイツらが来たのも俺のせいだからなぁ。

ていうかアイツらマジでなんなんだ?

完全体にならないと勝てない人間とかどんなヤツだよ。

しかし……予想はしてたけど完全体の姿ちっっっっさ!!

 

「ケヒ、クックック」

 

そんなことを考えていたら後ろからあの大男の笑い声が聞こえた。

うっそ! 何で生きてんの!? 腹にドデカい風穴空いてるじゃん!

慌てて振り返ると腹の風穴が完全に塞がった大男がいた。

ちょっとー! その再生力意味分かんないんですけど!

コイツともう一戦交えないと駄目っすか!?

 

「ああ、安心しろ。戦うつもりはない。今の反転術式で呪力をほぼ使い果たした俺ではオマエに勝てんからな。ここは素直に負けを認めてやる」

 

と思ったんだけど、どうやらその気はしているらしい。

それは良かった。あんな死闘二度とごめんだからな。

 

「しかしオマエ本当に何者だ? 呪術師でもなければ呪霊でもない。俺の腕を一瞬にして消失させる力も術式ではないようだが」

 

「……あのー、呪術師とか呪霊って何?」

 

「は?」

 

疑問に思っていたことを訊いただけなのに「コイツ何言っての」って顔された。

俺そんな変なこと訊いた?

 

「オマエ呪霊を見たことがないのか? いくらこのような小さな村でも蠅頭くらいいるだろう」

 

「だからそれが分かんないんだけど……」

 

「あれのことだ」

 

「へ」

 

大男が指差す先にいたのはウネウネぐにょぐにょしたあのキモいヤツだった。

 

「ああー、あれ呪霊って言うの? 今まで名称知らなかったわ」

 

「……」

 

そう言うと大男が「コイツマジか」という顔をしていた。

んな顔されたって本当に今初めて知ったんだけど。

そういや完全体になったからか流暢に喋れるようになってるな。

いやー爽快爽快!

 

「オマエ生まれてからどれくらいだ?」

 

「正確には分かんねぇけど15、6年は経ってるかな」

 

「呪霊が見えているのによく何も知らずに過ごせたものだ。どれ、今は気分が良い。この俺が直に教えてやろう」

 

ということで大男こと両面宿儺から詳しく教えて貰いました。

わーい、そうだったの。

自然災害が発生するとあのキモいの……呪霊やたらが増えると思ったけどそのせいか。

そして最近来ていた妙に身なりの良い連中は俺が呪霊かどうか確かめに来た呪術師だったらしい。

 

「そっか。色々教えてくれてありがとうな宿儺」

 

「今度は俺の質問に答えろ。あの時何をした」

 

「あの時?」

 

「俺の息を止めていただろう。全身から何かが噴き出しているのは分かったのだが、それ以上のことが分からん」

 

「ああ、あれか。あれは【オキシジェン・デストロイヤー】をばら撒いて大気中の酸素を破壊して無酸素状態にしてたんだ」

 

「……意味が分からん」

 

ですよねー。

科学なんて全くないこの時代にこんな説明しても理解出来ないよな。

大気中の酸素だけを破壊するように【オキシジェン・デストロイヤー】の濃度を調節するの結構大変だったんだけど。

どう言えば伝わるかな?

 

「えっと……。めちゃくちゃ簡単に言うと、生き物が吸っているこの空気を壊して吸えない状態にした。俺は平気だけど人間はひとたまりもないだろ?」

 

「確かにな。息が出来なければ人間は生きていけぬ」

 

けどもう二度とやらないぞ。

マジで全ての命を消滅させる方法だからな。

体が再生するまでの時間稼ぎでやったけど、今後は封印します。

 

「で、宿儺は何でここに来たんだ? 噂を確かめに来たってだけじゃないんだろ?」

 

「何、ただの暇潰しだ。ここ最近は不作が続いて食い物が不味い状態が続いた故、不快で仕方なかったのでな」

 

そういやここ数年冷夏でまともに作物が取れなくなってたな。

この村は俺が作った氷室で野菜保存したりとか、海から魚やら海藻やらを取ってきてたから大丈夫だったが。

 

「それは気の毒だとは思うが、それで何で村人殺したんだよ」

 

「食うために決まっておろう」

 

「……はぁ?」

 

チョット待ッテ下サイ。意味ガ分カリマセン。

 

え? 人間食うの? 嘘だろ? 絶対に不味いじゃん。

雑食性の動物って不味いって聞いたぞ。

 

「そこにいる裏梅が美味く調理出来てなぁ。だから連れて歩いておる。オマエも腹が減れば人間も食うだろう?」

 

「オマエと一緒にすんなよ。確かに大食漢だが、仮に他の食べ物がなくなったとしても食べるか」

 

「なら美味さも教えてやろうか。丁度そこにいい材料がいる」

 

宿儺が指差す先には村人の姿があった。

急に話題に出されたから全員怯えている。

 

「ふざけんな。次俺の家族傷付けようとしたら本当に殺すぞ」

 

殺意を込めて宿儺を睨み付ける。

それに宿儺の後ろにいた裏梅とか言うヤツは一歩下がった。

宿儺は微動だにしてないが。

 

「大体何で人間食おうと思ったんだ? 普通に生きてたらそんな思考にならないと思うけど」

 

「他に食い物がなかったからな。俺のようなものに誰も食料など恵まん」

 

「……」

 

それはやっぱり見た目のせいか?

4つ目、4本の腕に全身にある入れ墨のような模様。

腹の所には大きな口がある。

どう考えても人間の容姿じゃない。

差別されてきたのだと容易に想像出来る。

人間ってのは理解出来ないものを排除しようとする傾向があるからな。

俺は前世の記憶があるから受け入れて貰える方法を考えられたけど、普通は無理だろう。

 

「(どうするかなこれ)」

 

この場で宿儺を殺すことは俺なら簡単に出来る。

けど何も知らないまま死なせるのはどうかなー。

コイツがどれだけ殺してきたのかは知らないが、あれだけあっさり人を殺せるんだから相当数だろう。

でもパッと見まだ若いんだし更正の余地はあると思うんだよな。

うーん……。

よし、決めた!

 

「宿儺。俺の提案受け入れられるか?」

 

「あ?」

 

行き当たりばったりだけど、何とかなると思う。

殺すのは数年様子見て駄目だったらの最終手段だ。


◇◆◇◆◇後編に続く◇◆◇◆◇

「到着しました。ここが現場です」

 

伊地知の運転でやって来た任務先は数十年前に一族全員が殺し合ったといういわくつきの廃墟。

この辺りではかなり有名な心霊スポットで、その分呪霊も湧きやすい。

……ハズなんだけど。

 

「(報告にあった通り見る限り呪霊は4級が3体、残り数十体は全部蠅頭。いくらなんでも少なすぎる)」

 

このレベルの心霊スポットなら1級が数体いてもおかしくないのに、いるのは雑魚ばかり。

増えることはたまにあるそうだけど、呪術師を派遣していないのに数日もすればほぼいなくなるらしい。

 

「(上の予想では呪霊を食らう1級以上の呪霊がいるか、もしくは未登録の術師がいるのではないかってことだけど術師でないのは間違いないな。呪力の残穢がない)」

 

残るは1級以上の呪霊いるって予想だけど、それも考えにくい。

六眼で視てもそれらしく呪力はない。

 

「まっ、入ってみれば分かるか。じゃ、行ってくるよ」

 

「はい、お気を付けて」

 

伊地知に帳を下ろすのをまかせて廃墟の中へ入る。

数十年ほったらかしの廃墟だから中は荒れ放題。

けどかつては大商人の家だったからか豪華な装飾がちらほら見える。

 

「(かなり大金持ちだったみたいだね。一体何があったのやら……)」

 

奥へと進んでいくと一際荒れている大部屋へと着いた。

一見荒れ果てただけの部屋に見えるけど、僕の目は誤魔化せないよ。

 

「かなり巧妙に隠されてるけど畳の下に地下に通じる扉があるね。そこらの術師じゃ見つけられないワケだ」

 

とはいえ建物自体大分脆くなっているから少し強く力を込めるだけですぐに壊れた。

ポッカリと空いた地下への入り口。

そこに入って中を確かめる。

思っていたよりも広い地下の一番奥で何かが動いた。

 

「ダ……れ?」

 

「……」

 

声を発したそれは雑魚の呪霊ではない。目隠しを外して臨戦態勢に入る。

相当な呪力量だ。

1級ではなく、間違いなく特級。

いつ攻撃が来てもいいように身構えていたけど、その気配が一切見られない。

というかその場から全く動かない。

何かあるのか?

 

「……どうしてそこから動かないの?」

 

「うご、ケない……から……」

 

声を掛けてみると弱々しくだけど返事が来た。

動けないなんてどういうだろうとゆっくり近付く。

姿を確認出来る位置まで近寄ったところで足が止まった。

あまりにも悲惨な姿だった。

ボロボロの最早布とは言えないようなものを身に纏いて、両足には呪符が巻かれた巨大な釘が刺さっていた。

とても強力な呪符だ。これじゃいくら特級でも動けない。

腕は肘辺り、脚は膝辺りまでびっしりと鱗と甲殻が生えている。

爪もかなり鋭くて特に手の爪は15cmはありそう。

ボロ布からチラリと見える胴体はほぼ人間だ。

背中には羽毛みたいなのが生えてるけど………気のせいじゃないよね。胸に膨らみがある。

 

「え、女の子?」

 

「……」

 

僕の声に反応したのか俯いていた顔がこちらを剥いた。

泥や埃で汚れているけどそれでも分かる整った顔立ち。

間違いなく女の子だ。

瞳は紫色でアメジストみたい。

目の周りに瞳と同じ色の玉が3つ。

一つは額に、残り2つは目の横にある。

宝石のように見えてどうやらこれも目らしい。

でも言われなければ目だと分からない。

むしろ彼女の美しさを引き立てる装飾のようだ。

異形な姿しかいない呪霊とは思えない見た目。

ま、それもそうか。

ここまで近付いてやっと分かった。

ただの呪霊じゃない。この子は……。

 

「まさか呪胎九相図以外にいるとはね。人間と呪霊のハーフが」

 

この子は人間と呪霊のハーフだ。間違いない。

しかも呪胎九相図は胎児の姿で呪物化しているのに、この子はしっかり成長し成人している。

なんでこんなところに半人半呪霊の子がいるんだ?

調べたいことが多すぎるけど、とりあえずやるべきことは一つ。

 

「君、良ければ僕と一緒に来ない?」

 

ここから連れ出す。

敵意は感じないし、例えあったとしても僕なら何とかなる。

 

「な、んで?」

 

「だってずっとここにいるのは気分悪いでしょ? 真っ暗ーなとこにいても楽しくも何ともないじゃん」

 

「……」

 

考えているのか折角上げた顔がまた俯いてしまった。

無理矢理連れ出すことも出来るけど、確認出来るなら意思を尊重したい。

 

「お…カあ様が、出ちゃ駄目って言って、たケド……出ていいノ?」

 

「そのお母さんはもういないでしょ? だから君がどうしたいか知りたいの」

 

「じゃあ…出たい。デモこれ、自分じゃ取れない……」

 

そう言った視線の先には足に刺さった呪符に巻かれた巨大な釘。

半呪霊である彼女では触れることも難しいものだ。

僕ならちょちょいのちょいだけど。

 

「大丈夫だよ僕が取ってあげる。とはいえ結構深く刺さってるから取る時痛いだろうね。我慢出来る?」

 

「……ウン」

 

「じゃあ取るよ」

 

あまり痛みを与えないように素早く釘を抜く。

やっぱり相当痛かったのか顔が歪む。

でも一切動かず、声を上げないで耐えきった。

 

「よく我慢出来たね。偉い偉い。じゃあ行こうか」

 

釘を引き抜いた傷口から血がダクダク出ている。

深い傷だけど、反転術式も使えないみたいだし早く治療してあげないと。

着ていた上着を脱いで彼女に被せ、ひょいっとお姫様抱っこする。

ただの呪霊ならこんなことしないんだけど女の子だし、半分人間だから長期間こんな状態なら歩けないだろう。

現に脚はかなり痩せ細っている。立ち上がることも出来なさそうだ。

 

「ドコ行く、の?」

 

「僕が所属している学校だよ。君の状態を詳しく知りたいからね。まずはそこに連れて行く。あ、自己紹介がまだだったね。僕は五条悟。君の名前は?」

 

「……覚えテない」

 

「え?」

 

「あった気が、スルけど……忘れちゃっタ……」

 

えー……自分の名前さえ忘れちゃうくらいこの場所にずっと独りでいたってこと?

話し方もそれを頷けるように小声で片言だし、食べ物とかどうしてたんだろう?

そこまで考えて、廃墟の調査報告を思い出した。

 

「もしかしなくても君、呪霊食べてた?」

 

普通の人間が呪霊なんて食べたら猛毒を口にしているようなものだけど、この子は半人半呪霊。

食べても死にはしないし、完全な栄養にならなくても生命維持くらいは出来る。

 

「お腹、空いて食べてた。デモ美味しく、ない…」

 

「だろうねぇ」

 

やっぱりそうだったか。

空腹に耐えかねて彼女が廃墟に発生した呪霊を食べていたから呪霊が異様に少なかったのか。

それにしても食べた呪霊相当不味かったみたいだね。

長年独りでいたから表情筋が死んでるんだけど、それでも分かるほど顔が歪んでる。

高専に帰ったらお粥くらい作ってあげようかな。

 

「お帰りなさいませ五条さん。え、その子は?」

 

なるべくこの子に負担をかけないようにゆっくり歩くこと数分。伊地知が待つ場所まで戻ってきた。

伊地知は僕が抱えている子に驚いている。

任務に行った僕が女の子連れて戻ってきたら誰でも驚くよね。

 

「詳しい説明は移動しながらするよ。それより毛布ある? 後包帯。応急処置だけでもしてあげたいんだ」

 

「わ、分かりました。すぐに準備します」

 

毛布はなかったけど膝掛けはあったから、それで脚を包む。

包帯を受け取ると血が出ている部分に巻いた。

ここで出来るのはこれくらいだ。

後は硝子に任せよう。

 

「ていうことなんだ。とりあえず高専に戻って、ノンストップで」

 

「はい。あの……大丈夫なんですか? その方は半分呪霊なんですよね? 攻撃してきたりとかは……」

 

「大丈夫大丈夫。確かにこの子は【毒操術】と【糸操術】って2つの術式を持ってるけど使ってくる様子はないし、仮に使ってきても僕がすぐ拘束するから」

 

「そ、そうですか……って術式を2つも持っているんですか!?」

 

「持ってるね」

 

この子は【毒操術】と【糸操術】という2つの術式を持ってる。

【毒操術】は体内で様々な毒を作りだし、それを操る術式。

対人間ならほぼ敵なしの術式だ。

【糸操術】は自身の呪力から糸を作り出して操る術式。

目視できないほどの極細の糸まで作り出すことが出来て、強度も目に見えないほど細いのにその辺のワイヤーよりある。

しかもこの2つの術式は併用可能。

毒を含ませた糸も作れるから、もし殺すつもりなら伊地知なんかとっくの昔にあの世行きだ。

ま、そんな心配しなくても……。

 

「すー、すー」

 

彼女は僕の肩に寄りかかってすやすやと寝息を立てている。

弱っていたからだ思うけど流石に警戒心なさすぎじゃない?

別の意味で心配になるんだけど。

にしても綺麗な子だな。

こびり付いている汚れ全部落としたらもっと綺麗になるよ。

なんて考えている間に高専に到着。

眠っている彼女をまた抱きかかえて硝子のところへ向かう。

 

「ついに未成年誘拐をやらかしたか、このクズが」

 

「違うからね! 連絡しておいたでしょ! この子が半人半呪霊の子だよ!」

 

抱きかかえた時に目を覚ました彼女をベッドへ下ろす。

体を包んでいた僕の上着と膝掛けを取って硝子に見せる。

ついでにほとんど意味をなしていないボロ布も取った。

 

「おい。いくら半分呪霊とはいえ準備もしてないのに女の子を全裸にするな変態」

 

「これ不可抗力でしょ!?」

 

「言い訳不要だ馬鹿。しかし大分痩せてるな。相当長く放置されてたみたいだな」

 

硝子は入院着を持ってきてサッと彼女に着せる。

僕は汚れを少しでも落とそうとお湯で濡らしたタオルを用意して顔を拭いてあげた。

うーわー、一瞬でタオルが黒くなるー。

 

「かなり痩せてるし、長年動かなかったから筋力が落ちてる。根気強くリハビリしないと日常生活は送れないな。けど外傷は釘が刺さってたっていう足の部分だけ。反転術式かけてあげたいけど、半分とはいえ呪霊に正エネルギー浴びせたらヤバいか。普通の治療するしかないな」

 

「はんてんじゅつしきって?」

 

「それは追々教えるよ。けど君爪短く出来るんだね。伸縮自在なんだ」

 

さっきまで15cmはあろうかという手の爪が今は1cmくらいの長さになっている。

鋭いことに変わりないけど、これなら普通の人間と同じように暮らせる。

 

「だって、治療に邪魔そう…ダッタから……」

 

「そっか。優しい子だね」

 

ポンポンと頭を撫でてあげると気持ち良かったのかウトウトし始めた。

いや、本当に警戒心なさ過ぎでしょ。

初対面の人がいて、全然知らない場所に連れてこられてるんだからもっと警戒しないと駄目でしょ!

会って数時間なのにもう目が離せない!

なんて思っているうちに完全に眠ってしまった。

 

「それだけ弱ってるんだろ。まぁ確かに警戒心なさ過ぎだけど。とりあえず水分と栄養補給の点滴してやるか。半分人間なら効果あるだろ。体は私が拭くから五条は部屋から出てけ」

 

「はいはい」

 

ということなので僕は部屋から出て今回の件の報告のために行きたくない場所に向かう。

言われることは大体分かってるけど、案の定「治療する必要はない。即刻死刑にしろ」だった。

やっぱ腐ったみかん共は自分の保身以外何も考えてないな。

殺す前に調べないといけないことがあるでしょ。

どうして半人半呪霊の子が生まれたのか、何故あの場所にいたのか。

彼女の口からしか分かり得ないことだってあるのに、本当に腐ってる。

散々議論した結果、治療する条件として呪力を封じる呪具を必ず付けることになった。

妥協案だけどこれで彼女は自由に動ける。

死刑は延期になっただけでまだ撤回されてないけど、何が何でも撤回してみせる。

今のところ敵意も悪意もないんだし、呪術界に有益な存在だって分かれば撤回されるハズだ。

そのためにも彼女には元気になって貰わないと。

 

「戻ったよー。どう硝子。その子の様子は」

 

帰ってすぐにあの子のところへ向かう。

体を拭いて貰って少し綺麗になったあの子がベッドで眠っている。

こびり付いてる汚れだから拭いただけじゃ全部は落とせないよね。

 

「点滴の効果が出てるからさっきより良いぞ。で、どうだったんだ?」

 

「硝子のお察しの通りだよ。力を封じる呪具を付ければ治療してもいいってことにはなったけど死刑は延期になっただけ」

 

「そうだろうな。……にしても綺麗な子ね。どんな呪霊と交わったらこんな綺麗な子が生まれるんだ? 絶対母親似だろ」

 

それは僕も同意見だ。

汚れが多少落ちたことで更に綺麗になった子。

目や背中、手足は呪霊だけど他は人間だ。

けど目なんて言われなければそうだと分からないし、背中と手足隠しちゃえばそこにいるのは絶世の美女。

僕でも見惚れちゃうくらいだ。

 

「その子のこと硝子に任せていい? 僕これから任務があるんだ。3日で戻ってくる予定。なるべく早く終わらせるから」

 

「いいよ。私もこの子のこと気になるし面倒見てあげる。そういや呪具は?」

 

「明日上の人が持ってくるって。呪力を封じるだけの呪具だとは思うけど、もしこの子が苦しむようなら外してあげて」

 

「無茶言うな。ま、あんまり辛そうなら主治医権限で外してやるよ。ただでさえ弱ってる子にこれ以上苦痛を与えたくないし」

 

「じゃ、よろしく」

 

硝子に彼女を、伊地知には調査を依頼して僕は任務に出発した。

本当はずっと僕が傍にいたほうがいいと思うんだけどこればかりは変更出来ない。

サクッと終わらせて戻るとしよう。

 

◇◆◇◆◇

 

3日後。

即行で終わらせて即行で高専に戻ってきた。

急ぎ足であの子の所へ向かうと……。

 

「あっ、五条様です!」

 

と、ベッドの上からあの子が呼び掛けてくれた。

まだ小声だけど片言じゃなくなってる。

近いうちに普通に話せるようになるね。

というかもっと美人になった。

お風呂に入ったみたいで汚れが完璧に落ちて雪のような白い肌が露わになってる。

黒い髪の毛も艶々でまるで塗り立ての漆だ。

腕に付いている呪具が禍々しい見た目でかなり損してるけど。

 

「やっと来たか。マジ大変だったぞ」

 

「え、何が?」

 

硝子から話を聞いてびっくり仰天。

 

 

 

「ガアアアアアアアアアア!!」

 

「は!? ちょっとどうしたんだよ! 待って、落ち着いて!!」

 

呪具を持ってきた上の人の姿が見えた瞬間、あの子の様子が一変。

呪霊の凶暴性が表面化して上の人に対しとんでもない警戒心と敵意を剥き出しにした。

手の爪が伸び、今までなかった頭部の角まで生えてきた。

幸い威嚇するだけで攻撃はしなかったけど後一歩でも上の人が近付けば術式を使いかねないほどの状態。

硝子がなんとか落ち着かせて、上の人から呪具を受け取って事なきを得たそうなんだけど……。

 

 

 

「来た上のヤツが小心者だったら失神してるだろうね。特級呪霊と同格の呪力で威嚇されたんだから」

 

「えぇー……。僕と伊地知、硝子にはそんな反応示さなかったのにどうして?」

 

「黒いから……」

 

「ん?」

 

「あの人オーラが黒くて気持ち悪い。私を殺そうとしてるのかと思って…」

 

「だそうだよ」

 

「はあ??」

 

どうやらこの子には呪力とは違う人のオーラが見えるらしい。

黒オーラを持つヤツは自分を殺そうとする敵だという認識で、僕や伊地知、硝子はオーラが黒くないから平気だったそうだ。

 

「じゃあ僕のオーラって何色?」

 

「金色です。キラキラしてて私には少し眩しすぎます」

 

「硝子は?」

 

「家入様は桃色。優しい色でホワホワします」

 

「ふーん。じゃ伊地知はどうなの?」

 

「伊地知様は亜麻色。穏やかな色です」

 

当てはまってるウケるね。

何でそんなのが見えるんだろう?

半人半呪霊ってのは関係なさそうだから、生まれ持った能力なのかな?

 

「それでな。発音の練習がてらこの子の生い立ちについて覚えている範囲で教えて貰ったんだけど、中々にヘビーな内容だったよ。伊地知が調べた報告とも相違なさそうだし、よくここまで生きてるなって思ったね」

 

その子の話を硝子がまとめると。

 

 

 

“物心付く前からあの地下にいて、ずっと母が傍にいた”

 

“母は一族で一番美しい人で、その母は幼い頃から家の一室で監禁されていた”

 

“その理由は完璧な純潔のまま名家に嫁がせるため。話し相手さえいない部屋に独りぼっちで母はとても寂しい思いをしていた”

 

“そんな時に異形の化け物がやって来た。それが私の父である呪霊”

 

“父は気まぐれにやって来ては母と話をしてくれた。母はそれがとても嬉しかった”

 

“好意は持ってなかった。でも縁談の話が来て、顔も知らない男に嫁ぎ純潔を捧げるくらいなら、たとえ姿が化け物でも自分に話し掛けてくれた存在に純潔を捧げたいと父に身を許した”

 

“父も興味本位で母を抱いた。まさか身籠もるとは母も父も思っていなかった”

 

“面白そうだからと父は私が生まれてくるのを楽しみにしていたそうだけど、私が生まれる少し前に力のある人に殺されてしまったと母は言った”

 

“母は1人で私を生んだ”

 

“化け物と交わり、異形の子供を産んだ母を隠すために一族の人達は母と私を地下に放り込んだ”

 

“食事だけ与えて後は放置という状態だったけど、私が10歳くらいの時に一族で不幸な出来事が相次いだために、それを母と私のせいだと思った一族の人が殺しに来た”

 

“母は刀で斬り殺され、私も足にあの釘を打たれ惨たらしく殺される寸前、怨霊へと変じた母が一族全員を呪った”

 

“母に呪われて一族は正気を失って殺し合った”

 

“私を殺す人はいなくなったけど、足に打たれた釘のせいで動けなくなった。私は勿論、怨霊になった母も釘に触ることが出来ない。私は一生このままの状態になった”

 

“怨霊になった母だけど人だった時の記憶は残っていたから、動けない私の世話をずっとしてくれていた”

 

“けれど5年ほど経った時に母は偶然会ってしまった術師と戦い致命傷を負った”

 

“死を悟った母は残った力を私に与えるために消えかけの体で戻ってきて「私を食べなさい」と言った”

 

“私は泣きながら母を食べた”

 

“力は強くなったけど、ずっと1人で寂しくてひもじくて苦しかった”

 

 

 

いやいや、ヘビーすぎるでしょ。

いくらなんでもまだ中学生くらいの年齢で経験することじゃないって。

 

「一族が殺し合ったという事件が起こったのは30年前。その10年前に近辺で天狗の姿に似た特級呪霊が祓われたという記録が残っています。それが恐らくその子の父親かと思われます」

 

「天狗ねぇ……。手足が鳥っぽいのはそのせいかな? というか父親やっぱり特級呪霊か。そいつの術式とか記録に残ってる?」

 

「はい。どうやら【糸操術】のようです。なので母親のほうの術式が【毒操術】かと思われます。恐らく怨霊へと変じた母親を食べた際に術式を引き継いだのではないでしょうか?」

 

そうとしか考えられないね。

監禁されてたって話だし、恐らく母親は力の使い方を知らなかった。

死後呪霊に転じて初めて術式をまともに使えるようになったんだろう。

 

「この子が呪霊のことをどう思ってるか聞いた?」

 

しかし呪霊に転じた母親に育てられていたのなら気になるのはこれだ。

もし呪霊を味方みたいに感じているのなら庇いようがない。

 

「ああ。ドス黒いオーラを纏ってる敵だと思ってるみたいだよ。母親は特別だって認識のようね」

 

それを聞いて安心した。なら呪術師としてもやっていける。

後はこの子の意思次第だ。

 

「君はこれからどうしたい?」

 

「……分かりません。これまでずっと1人だったので。けど私に優しくしてくれた人も綺麗なオーラを纏っている人も、お母様以外では皆さんが初めてです。なので皆さんの役に立ちたいとは思っています」

 

「そっか」

 

なら問題なさそうだ。

任務に行っている間、考えていたことが実行できる。

 

「まだ本家からOK貰っていないんだけど、呪術師になるという条件で僕の養子にならない?」

 

「……五条様のですか?」

 

「そ、僕の養子になれば大抵のことはなんとかなるし、お金にも困らない。その代わり絶対に呪術師にならないといけないんだけどどうかな?」

 

万年人手不足の呪術界だ。

ほぼ間違いなく特級呪術師になれる彼女が手に入るのなら、死刑も取り消すことが出来るハズ。

他にも条件は付くと思うけど、半人半呪霊でもの凄く長命だろう彼女は貴重な人材だ。

しかも調べた結果、彼女の母親にものすごーく薄らだけど五条家の血が入ってると分かった。

つまり僕の超遠い親戚。

どうやら昔呪力を持たない子が生まれたらしくて、たまたま大商人の目に止まったその子をそこへ嫁に出してたみたい。

金目当てだったらしいけど、昔から腐ってるねー。

つまり母親が呪力を持っていたのは先祖返りってことだ。

このことを知れば流石の本家も養子の件で文句は言わないだろう。

 

「五条様のご息女になれるのですか?」

 

「うん。でも呪霊と戦わないといけなくなる。君が死ぬまで永遠にだ。それが嫌なら別の方法を考えるけど」

 

「いいえ。あの黒い塊は視界に入るだけでも鬱陶しかったので率先して戦えるのなら、それで五条様のご息女になれるのなら喜んで受け入れます」

 

「いいの?」

 

「はい」

 

「分かったよ。じゃあ君に新しい名前をあげるね。今から君は五条紫織だ」

 

彼女の名前として考えた“紫織”は紫色の目と【糸操術】から思い付いた。

気に入ってくれるといいんだけど。

 

「紫織。私の新しい名前……ありがとうございます」

 

まだ表情は硬いけど笑みを浮かべる紫織。

え、何これ。笑うとめっちゃ可愛いじゃん。

 

「へぇ。五条にしてはまともな考えと名前で安心したよ」

 

「それどういう意味? 僕はいつだって真剣に考えてるからね」

 

「どうだか。紫織もしコイツに変なことされそうになったら私か伊地知に言うんだよ。必ず助けてやるから」

 

「? 五条様はそのようなことなされないと思いますけど……あ。私五条様のご息女になるんですよね。なら……お父様とお呼びしてもいいですか?」

 

「えっ!? も、勿論いいよ!!」

 

笑った紫織から光が舞っているように見えた。

何だこの破壊力抜群の攻撃は!

ヤバい。娘にしたの間違えた!?

いや、僕の娘になったのならハグくらいは許容範囲と思えば良いか?

美人な上に可愛いとか非の打ち所がない!

絶対嫁には出さないぞ!

 

「……お父様、大丈夫ですか?」

 

「(手で顔を覆って悶絶するとかやっぱコイツ変態だった。マジで引くわー) 駄目だよ紫織。こういうのはケダモノって言うの。無闇に近付いたらいけない」

 

「はあ……」

 

何か硝子が言ってたけど気にならない。

よし、紫織を養子にするために頑張るぞー。

腐ったみかん共の相手もなんのそのだ!

 

◇◆◇◆◇

≪家入硝子視点≫

 

あれから2ヶ月。

紫織は正式に五条の養子になった。

養子になる条件として呪術師になることともう一つ、必ず位置が分かる呪具を身に付けることになっている。

指輪の形をしたこの呪具を1時間以上外したら即刻秘匿死刑なってしまう。

けど五条が上手く上の縛りを誘導してくれたから、上の命令に従うということは明記されていない。

こればかりは五条じゃないと無理だった。

とりあえず紫織は自由の身となり、呪力を封じる呪具は外され今はリハビリの真っ最中。

30年もの長い間動けなかったから、運動機能がヤバいくらいに落ちている。

普通の人間なら1年はリハビリが必要だ。

けど紫織は半人半呪霊だから回復が早く、もう自力で歩けるようになった。

 

「硝子さん。今日は何をすればいいですか?」

 

「んー、ちょっと待ってね」

 

しかしリハビリを終えても問題は山積みだ。

これまで呪術師としての訓練はおろか、一般教育も受けていない紫織はすぐ呪術師になれない。

母親から多少教えて貰っていたそうだけど、その母親もずっと監禁されていた身だから出来るのは簡単な読み書きくらいなもの。

まるで無垢な子供のようだ。

どうしようかと悩んでいたら学長が「1年間家庭教師をつけて、ある程度一般教育を受けさせてから高専に通わせるのはどうだ?」という案を出してくれた。

これには満場一致で可決。

家庭教師の人選を考えないとだけど、これ以上の名案はない。

高専に通わせるのもメリットのほうが多いし。

丁度五条が後ろ盾になっている伏黒恵と同じ年に入学することになるな。

とはいえ家庭教師をつけて勉強させるにはまだ数ヶ月かかる。

歩けるようにはなったけど、まだ不安定でよく転んでしまうからな。

日常生活に支障がない程度に回復するにはまだまだだ。

今はリハビリに専念しないと。

けどすっかり元気になったな。

足の怪我も治ったし、食事もちゃんと取れるようになったから肉付きも大分マシになった。

まだ細身だけど、もう少しで健康的な体に戻るだろう。

 

「家入さん、少し良いですか?」

 

紫織のリハビリをしていると後ろから声が聞こえた。

この声は七海か。

振り向くと腕に切り傷を負った七海がいた。

七海が怪我をするなんて珍しいな。

 

「先に連絡をしようと思ったのですが、すぐに着く距離だったので直接伺いました」

 

「いいよ。ほら、腕を出して」

 

七海に反転術式をかけて怪我を治す。

そこまで大きい怪我じゃなかったからすぐに治った。

 

「ありがとうございます」

 

「もしかしてすぐにまた任務なのか? でないとこれくらいの傷で来ないでしょ」

 

「ええ」

 

ホントに五条ほどじゃないけど忙しいな七海は。

それだけ七海が信頼されてる証拠だろうけど。

 

「……家入さん。その子は?」

 

と、七海が座っている紫織に気付いた。

そういや会ったことなかったな。

 

「聞いてないか? 五条の養子になった半人半呪霊の子だよ」

 

「!! この子がですか。パッと見は普通の人間のようですが」

 

「見た目はね。でもこれも目だし、手袋外すと呪霊の部分が見えるよ。けど呪霊(と黒いオーラのヤツ)がいなければ大人しい女の子だ。ほら、挨拶しな紫織」

 

これだけ紫織が大人しいんだから七海のオーラは黒くないんだろう。

七海のオーラが黒だったら天地がひっくり返るけど。

……にしても大人しすぎるな。どうした?

気になって紫織を見たら紫織が七海をめちゃくちゃガン見していた。

え、今までにない反応なんだけど。

声を掛けるがその視線は七海から離れない。

 

「紫織?」

 

「……綺麗」

 

「へ?」

 

「とても綺麗なオーラ。こんなオーラを持つ方初めて見ました」

 

どうやら七海のオーラが見える紫織からするととても綺麗らしい。

それでずっと七海を見ていたようだ。

 

「ずっと見てしまって申し訳ありませんでした。私は五条紫織と申します。春の日差しの方、お名前を教えて下さい」

 

「1級術師、七海建人です」

 

「七海様ですね。お目にかかれて光栄です」

 

七海に頭を下げる様はまるで淑女のようだ。

礼儀作法だけは母親からきっちり教えられていたらしい。

それより紫織……頬少し赤くなってないか?

なってる、よな。

えっ、もしかしなくても七海に惚れた?

 

「では私は任務がありますのでこれにて。五条君……と呼ぶと少々語弊がありそうですので紫織君、リハビリ頑張って下さい」

 

「はい。ありがとうございます七海様」

 

去って行く七海を見送る目は完全に恋する乙女だった。

マジかよ。まさか七海に一目惚れするとは。

いや、むしろ七海で良かっただな。

他の呪術師の男共まともなヤツがいない。

七海は実力も申し分ないし、何より人格者だ。

呪術師だからイカれてる部分はあるけど、御三家の誰かと政略結婚させられるより1億倍良い。

それに七海なら紫織が半人半呪霊でも惚れさえすれば大切にしてくれるだろう。

 

「応援するぞ紫織。頑張って落とせよ」

 

「はい?」

 

おっと、まだ自分の恋心に気付いていないか。

でもそのうち気付くだろうからあえて言わないでおこう。

めんどくせぇのは五条だな。

アイツ紫織のこと溺愛してるから「嫁に出すのヤダー」って絶対駄々こねる。

五条には気付かれないようにしないとな。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

五条紫織

人間の母親、呪霊の父親を持つ半人半呪霊。

母親に五条家の血が薄ら入っているので五条悟の養子になった。

人間と呪霊の二面性を持っており、基本は人間の面が出ているためとても大人しくお淑やか。

しかし呪霊、もしくは黒いオーラを持つ人間を目の前にすると呪霊の凶暴性が表に出て非常に気性が荒くなる。

【毒操術】と【糸操術】という2つの術式を持ち、どちらも汎用性が高い。

今はまだ使いこなせていないが、呪術師最強の義父がいるので近いうち使えるようになる。

5つの目を持ち、人間の目の横にある目でオーラ見て、額の目で呪力の流れを見る。

六眼の劣化ではあるが、かなり便利な天眼。

しかし全てを見ようとすると情報量が多すぎて酷い頭痛を起こしてしまうため普段額の目は閉ざしている。

呪術師になるためにリハビリをしていたら偶然やってきた七海建人に一目惚れした。

自分の気持ちに気付いていないけど、純粋故に無自覚に七海へアタックしていく。

身長は168cm。

推定年齢40歳。でも見た目は18歳くらい。

顔は母親似。腰まで届く長い黒髪で紫色の目。

背中には茶色の羽毛が生えており、手足の構造自体は人間と変わりないが硬い鱗と甲殻に覆われている。

戦闘時には手から鋭い爪が伸び、2級呪霊程度なら術式を使わなくとも爪だけで楽に祓える。

 

【毒操術】

体液をあらゆる毒に作り変え操る術式。

血だけでなく、汗や涙も強力な武器になる。

生成した毒を注ぎ込んだ相手の体を操ることも可能。

【糸操術】

呪力から糸を作り出し、その糸を操る術式。

普通の糸も呪力を宿せば操ることが出来るが、自分で作った糸のほうが使い勝手が良い。

【毒操術】との併用可能で糸に様々な効果を付与できる。

 

 

五条悟

自他共に認める呪術師最強。

奇妙な任務に行ったら囚われのお姫様を発見。

あまりに警戒心なさ過ぎて庇護欲をそそられた。

調べた結果五条家の血が流れていることが判明したので、養子することにした。

紫織が嫌い敵対心を持つ黒いオーラのヤツが大抵腐ったみかん=悪意を持つ人間なので「この能力便利~」と思ってる。

逆に黒いオーラを持たない人は信用に値すると分かるのでよく絡んでいくようになった。

嫁に出すつもりは全くない。

 

 

家入硝子

五条悟の同級生で反転術式の使い手。

突然同期がボロボロの女の子を連れて来て「もしもし、ポリスメン?」するところだった。

半人半呪霊とは思えないくらい大人しいし素直で良い子なので妹のように思っている。

紫織が七海に一目惚れしたことにすぐ気付いたけど「七海ならOK!」と応援することにした。

知ったら絶対妨害してくるであろう同期をどうやって阻止しようかと模索中。

 

 

七海建人

五条悟の後輩の1級術師。

任務で不覚にも怪我を負ってしまい、治療して貰おうと家入のところへ行ったら噂の半人半呪霊に出会う。

第一印象は「半分呪霊とは思えないほど大人しく礼儀正しい子」。

まさか一目惚れされているとは思わず、無自覚にグイグイ来る紫織にたじたじになる。

 

 

 

 

 

 

 

続かないよ?