初登場からギルガルドが好きで毎作品使っているんですがSVでまさかの出禁。
そしてZAの弱体化で泣いた……。
でもチャンピオンズでまさかの【ポルターガイスト】習得により火力強化!
ありがとうゲーフリ!!
そんな時ふと思った。
あれ? ギルガルドって確か呪われた剣がモチーフだったよな?
もし呪術廻戦にいたら間違いなく特級呪具じゃね?
◇◆◇
おす! 何かよく分かんねぇうちに王剣ポケモン、ギルガルドになってた元人間です!
あ? 詳細情報を求むって?
それは無理だ。なんたって俺も何でこんなことになってるのか分かんねぇからな。
元人間だったという感覚はあるけど記憶がはっきり残っているワケじゃねぇし。
まぁいいか。俺ギルガルド大好きだから何も問題はない。
…………………いや、大いにあるわ。
俺がいる世界にポケモンがいない。
何でや!! 俺がポケモンなんだから普通いるだろ!?
でも本当にいない……。
しかも時代も中世っぽくて俺が生きていた時代より大分昔みたいだ。
どうしようかと考える間もなく俺は俺を使っている人間の生気をムシャムシャしております。
ゴーストタイプなので俺の主食は人間の生気。
ギルガルドには王の素質を持った人間を見抜く力があり、ギルガルドに認められた人間はやがて国を統治する存在になれる。
ギルガルドを従わせているだけで王の証だ。カッコいいだろ?
だがその反面、ギルガルドには霊力で人間やポケモンの心を操り従わせる力がある。
その力を使って人間やポケモンを操って自分にとって都合のいい国を作った挙句、自分が認めた主の生気さえ吸い取ってその国を滅ぼしたという伝説のポケモンもびっくりな伝承を持っている。
俺も元人間ではあるけどギルガルドとしての本能が強い。
あれよあれよという間に人間を操っていって……………そして国が滅びた。
やっべ、やりすぎた。
でも俺が美味しいって思う生気を持つ人間がほとんどいないんだから仕方ないだろ。
生気が美味しいかどうかは直接吸い取らないと分かんねぇから、俺を持ってもらって生気を吸い取るって方法で探していたら国が滅んでしまった。
これからどうしようと悩んでいたら明らかに日本人であろう白髪の人間がやってきた。
今までいたのが全員西洋人だったから日本人見たの久し振りだな。
何でここにいるんだろうと思っていたらいきなり攻撃してきた。
すぐ応戦したんだけどめっちゃ強い。
俺の攻撃が効かない上に【きあいだま】みたいな攻撃までしてきた。
ゴーストタイプの技なら通じると分かった時にはもう遅く、伸されてしまった。
そして何かでグルグル巻きにされた後に運ばれて暗い場所に閉じ込められた。
えー、何この布。身動きが取れないどころか力が奪われていくんですけどー。
これは封印されたな。まぁ一国滅ぼせばそうなるか。
大人しく受け入れよう。
しかしあの白髪の人間本当に何者だ?
あんな強い人間、元の世界にもポケモンの世界にもいない。
魔法とかがあるファンタジーの世界に生まれたにせよ……マジで強かったから……、できれば、リベンジして……………やりてぇ、な……。
——ゴトン
「……?」
物音を聞いて深く沈んでいた意識が戻った。
久し振りに当たる光でよく周りが見えない。
何だ? 誰か入ってきたのか?
「お、コイツだな。国滅之剣(こくめつのつるぎ)は」
誰かが俺を持ち上げると全身に巻かれている布を剝がし始めた。
俺を封印してた布ってそんな簡単に剥がせるものなのか?
俺が何してもビクともしなかったのに年月が経って劣化してた?
どれくらい年月が経ってるか知らねぇけど。
「呪力を吸い取る呪符でかなり念入りに封印されてんな。術師は触ることもできねぇだろうが俺には関係ねぇ」
全ての布が剥がされてやっと俺の封印を解いた人間の顔が見られた。
……うわぁイケメェン………。
口に傷があるのが危ない感じがするが顔はモロタイプ。
雌で良かった。この顔に見惚れていても問題ない。
話し方で俺を雄だと思った奴ら、残念だったな。
俺は正真正銘の雌だぜ。(ギルガルドの雌雄確率は50%)
「400年前ヨーロッパにあった大国を滅ぼした特級呪具。どんな力があるのか楽しみだぜ」
でもそれはそれ。
随分長い間生気を吸えていなかったからめっちゃ腹が減ってる。
イケメン君の生気を頂くぜ!
…………あれ?
な、何で?? 生気が吸えない。
嘘だろ!? 生気がない人間がいるはずない!!
生気を吸えないことに困惑していた俺をよそにイケメン君は妙な姿の化け物を俺を使ってバサバサ斬り始めた。
えぇ……。確かに俺は斬った相手の生気も吸えるけどコイツ超不味いんだよ。
封印される前にかつてのご主人様に憑りついて邪魔してたから斬ったついで吸ったことあるんだけど、あまりに不味くてそれ以降相手にしていない。
うううぅ……嫌だけど腹が減ってるから背に腹は代えられねぇ……。
仕方なく化け物の生気を吸って腹を満たした。
「ふぅん。斬った相手の呪力吸収すんのか。面白れぇ術式持ってんな。国を滅ぼせるとは思えねぇけど面白れぇからありがたくもらっておくぜ」
イケメン君は俺を使うと満足気な顔をした。自分の武器として選んだみたいだ。
うーん……。肉体的なパワーはあっても王の素質はねぇな。
本来なら王の素質がない奴が俺を手にした段階で即刻呪い殺しているところだけど、でも生気がない人間なんて初めて見るから興味がある。
………よし、決定。
イレギュラーだがこのイケメン君を俺の新しい主として認めよう。
よろしくお願いしますご主人様!
◇◆◇
ご主人様は甚爾という名前だ。
生気は持っていないが代わりに凄まじい身体能力を持っているようで、その身体能力を生かして人間や化け物を殺す仕事をしていた。
結構時代が俺が人間として生きていた頃に近い気がするからそんな仕事あんのか疑問に思うけど、実際あるんだから仕方ない。
俺は俺で話せるんだけどいきなり剣が話し出したら捨てられるんじゃないかと思ってただの剣のフリをしている。
だって観察してると面白いんだもんご主人様。
ヒモだし、ギャンブル癖がある実にダメな男ではあるけど見てるとマジ面白い。
あの時呪い殺さなくて正解だったな。
剣のフリをしながら観察を続けていると、なんとご主人様は人生のパートナーを見つけた。
笑顔の愛らしい女性だ。
その人に出会ってからご主人様は真面目に働き始めた。
人を好きになると人生が変わるって本当なんだな。
ご主人様が人も化け物も斬らなくなったから俺は生気が足りなくて毎日腹を空かせるようになっちまったが……幸せそうな顔をしているご主人様の顔を見るとご伴侶様の生気を吸おうとはどうしても思えなかった。
もう数年ご主人様の傍にいるけど、あんなに幸せそうな顔をしているご主人様見たことがない。
壊したくなかった。
壊したくなかったのに……。
子供を生んですぐにご伴侶様は逝ってしまった。
何があったのか分からない。
その場面を見ていない。
でもご伴侶様の遺影の前から動かないご主人様を見るとやるせない気持ちになる。
何かできることがあったんじゃないかと……。
隣の部屋でご子息が泣いている声が聞こえる。
聞こえているハズなのにご主人様は動かない。
本当に抜け殻のようだ。
ご伴侶様を亡くされたことがそれほどショックだったんだろう。
せっかくご伴侶様が残した宝なのにこのままだとご子息が危ない。
俺は収容されている化け物からずるりと抜け出してご子息に近付いた。
「腹が減ったのか?」
「うええぇぇん。えーん」
「うんうん。分かる。腹が減るのはしんどいよな。ちょっと待ってろ」
久し振りに動いて人の言葉を喋る。
俺も腹が減ってるけどこっちが優先。
説明書を読んでサッとミルクを作るとご子息を抱き上げてミルクをあげる。
元人間で良かった。じゃなきゃ完全に詰んでいたぜ。
ミルクを飲み終えたご子息の背中をトントンしてゲップをさせてからベッドに戻して完了。
人間の記憶はほとんどないのに妙に手際よくできたな。もしかしたら子供か年の離れた弟妹がいたのかも。
チラッとみるとご主人様はまだ動かずにいた。
俺が動いたことにも気付かないのは流石にヤバいだろ。全く仕方ない。
「【アイアンヘッド】」
「いっっっ!」
ある程度力を込めて後頭部に頭突きをした。
結構痛かったのかご主人様は勢いよく振り向いて、そして俺の姿を見て目を見開いて驚いた。
俺の一撃で少し正気を取り戻したみてぇだな。
「は……? 剣が、勝手に動いて……」
「さっきから動いてるわ。早く気付け。ご伴侶様を亡くして悲しいのは分かるけど子供を放置するな。あの子にはもうご主人様しかいねぇんだぞ」
「…………」
腹が減ってイライラしているのもあって少しきつめの口調で叱る。
ご主人様には俺の霊力操作も効かねぇからこうするしかない。
「……アイツ…最後に『恵をお願い』って……」
「分かってんならしゃきっとしろ! 育児のやり方が分かんねぇなら俺も手伝うから!」
無理矢理ご主人様を立たせてご子息のところへ向かわせる。
しっかしご主人様そっくりだな。でもご伴侶様の面影もちゃんとある。
控えめに言って可愛い。
女の子の名前だけど、そう名付けた理由を知ってるからOK!
「俺に似ねぇ方が良かったと思うけどな」
「何言ってんだ。ご主人様イケメンなんだから似てていいだろ。王の素質はねぇけど将来有望だぞ」
「はっ……何だよそれ」
声が震えていたから顔を見たらご主人様は泣いていた。
すやすや眠るご子息を見て、やっとご伴侶様の死を受け入れることができたらしい。
「ご主人様が仕事に行っている間、俺が恵を見るな。細かいことは無理だけどある程度のことはできるから」
「……何か変な感じがする呪具だとは思ってたけどまさか自我を持ってるとはな。何で今まで動かなかったんだ?」
「そりゃあ剣が喋るなんて普通はあり得ねぇからな。急に動き出したら捨てられるんじゃないかと思ってただの剣をフリをしてたんだ」
「特級呪具捨てるアホいねぇだろ。オマエ売ったら軽く20億はするぜ」
「……前から俺のこと呪具って言ってるけど呪具って何だ? 俺は王剣ポケモン、ギルガルド様だぞ」
「はぁ?」
ずっと思っていたことを言ったら豆鉄砲食らったみたいな顔をされた。
え? そんな変なこと言ったか?
「呪具ってのは簡単に言えば呪いが込められた道具だ。オマエは400年前ヨーロッパにあった大国を滅ぼした特級呪具だ。“国滅之剣”って名前で当時の五条家当主の力で封印された後に日本に運ばれて禪院家の禁庫に保管されてたんだ。昔はギルガルドって名前だったのか」
「そうそう。“国滅之剣”って名前もカッコいいけどギルガルドの方が呼び慣れてるからそっちで呼んでくれ。本当は国滅ぼすつもりなかったんだけど、美味しい生気を持ってる人間が少なくてな。腹満たしたくて色々してたら国が滅んでたんだ」
「なんだそりゃ。つーか生気? オマエが吸ってるのは呪力だろ」
「? 呪力って何?」
「え」
「え」
互いの顔を見て互いに固まった。
「……まさかオマエ呪力を知らねぇのか ?」
「知りませんね」
「呪霊や呪術師は?」
「聞いたことないですね」
「マジかよ。そこまで知性があるのに何も知らねぇなんてあんのか」
「今現在進行形てあり得てるな。まぁ今まで王の素質を持つ奴にしか興味なかったのと、俺は人間を操る力があってな。自分の都合の良いように国を動かしてたのが原因だと思う。ご主人様には何でが効かねぇけど」
「その力で国を滅ぼしたのか。とんでもねぇ呪具だな。マ、恵の件で礼があるし、特別に教えてやるよ」
ご主人様から呪力、術師、呪霊のことを聞いた。
俺が生気だと思ってたのは呪力だったのか。
呪力の源流は負の感情で、あの化け物は人の負の感情の塊だから不味かったのか。
美味しい呪力を持っていたのは恐らく術師だ。でも海外じゃ日本より少ないらしい。
そしてご主人様にはその呪力が一切ないから、俺は呪力を吸えなかったということわけだ。
「じゃあ俺の操作も効かないのも納得だ。多分ご主人様は呪力がないから、呪力に対し何かしらの耐性があるんだろう。じゃなかったら今頃呪霊にあれやこれやされてる」
「結構頭キレるな。マ、俺の場合は天与呪縛だから特別ってだけなんだけど」
「とにかく俺の主食は呪力なんだよ。術師と違って自分で生成できねぇから、外部から取り入れるしかねぇ。でも最近食ってなくてそろそろ限界なんだ。マジで限界を迎えるとどうなるか分かんねぇから何か食わせてくれねぇか? 呪霊でいいから」
「分かったよ。近くに呪霊がいる場所があるから連れてってやる」
ご主人様にそこへ連れて行ってもらい、呪霊を片っ端から斬り刻んだ俺は久し振りに満腹になれた。
まっっっずいけどまだ赤ん坊の恵からもらうワケにはいかねぇからな。しばらくは呪霊で我慢しよう。
「俺が持たなくても技使えるんだな」
「普通に使えるぞ。マジで俺のこと知られてねぇな。別に隠してなかったのに」
「それだけ当時混乱してたってことだろ。記録によると、そん時いた呪術師じゃ手も足も出なかったからわざわざ日本まで来て救援を求めたらしい」
「それがさっき話してくれた五条家の当主か。確かに相当強かったな」
「ただ何で五条家の当主が封じたギルガルドが禪院家の禁庫に保管されてたのかは知らねぇな。マ、国が滅んでんだから正確に記録が残ってないのも無理ねぇが」
「今でもやろうと思えばできるぞ。事情を知って手っ取り早く効率的に腹を満たせる方法が分かったからやるつもりねぇが」
「おっかねぇ呪具だなオイ」
俺と会話したお陰か、ご主人様はある程度元気を取り戻したみたいだ。
これで一安心かな?
それから俺が家で恵の子守り。
ご主人様がそれまでの伝手を使ってまともな仕事をし始めた。
これは「恵の将来のために後ろ暗い仕事はすんなよ」と俺が言ったからだ。
基本日雇いみたいな仕事ばかりだけど、人殺ししてた頃に比べればいいだろ。
「ご主人様!! 競馬するなとは言わねぇけど今日の分の稼ぎ全部使うなよ!! 子供が成人するまで最低でも1000万かかるんだぞ!!」
「うっせーな。今日はいけると思ったんだよ。いいじゃねぇか。俺が稼いだ金なんだし」
「昨日も同じこと言ってただろうが!! ちくしょー!! 俺の霊力操作が効くなら今すぐにでも使うのに!!」
「残念だったな。ちなみに今日の晩飯はなんだ?」
「後先考えずにギャンブルする人には肉じゃがしかあげません!!」
「肉じゃがくれるとか随分優しいな」
◇◆◇
あれから数年が経ち、恵は健やかに成長した。
少し前にご主人様を追っかけていたストーカーが自分の子供をご主人様の家に放置して行方をくらますという事件があった。
身寄りがいないその子を見殺しにするのは流石に嫌だったので家族会議をした結果うちで引き取ることになった。
引き取った子の名前は津美紀。歳は恵の一つ上だ。
津美紀は物怖じしない子で、子供なら馬鹿でかい剣が動いて喋っているのを見たら怖がって近付かないだろうに、津美紀は驚いただけで数日で慣れて普通に接してくるようになった。
非術師なのに肝座りすぎじゃない?
「お母さんただいま」
「はいはい、お帰り。でも私はお母さんじゃないですよー」
「ただいま母さん」
「……だから母親じゃないって」
いくらそう言っても恵も津美紀も私を母親と呼ぶのを止めてくれない。
一応子供育てるんだから荒々しい言葉使いじゃ不味いと思って直した。
一人称も俺から私に変えた。
ブチ切れると戻ってしまうが及第点だろう。
でも何で私を母親と呼ぶんだろう?
確かに育ての親だけど姿は人外どころか生き物ですらないよ?
「え? そういうのはもうやらないって約束したじゃんか……」
二人が寝静まった後に帰ってきたご主人様に衝撃的なことを言われた。
今日は帰り遅いなー、と思ってはいたけれど……。
「しょうがねぇだろ。受けねぇと恵が危ねぇんだ。まだガキのアイツじゃ身を守る術がねぇ」
「何考えてんだソイツら……。そんなふざけた理由で子供を殺すのか?」
依頼の内容は星漿体の抹殺。
その依頼主はご主人様がいくら断っても一歩も引かないどころか、恵を使って脅しまで仕掛けてきたため受けるしかなかったらしい。
それだけでもブチ切れ案件なんだけど、話を更に聞くとその星漿体がまだ中学生であることが判明。
しかも抹殺したい理由が天元とかいう術師と穢れが同化するのが許せないからだという。
怒りのあまり口調が昔に戻る。
赤ん坊の頃から恵を育てたことで子供を愛おしく感じるようになった私には受け入れられないものだった。
「今から盤星教を潰しに行きます」
「完全にブチ切れてんな。けどオマエがここ離れたら恵を守れる奴がいなくなるから駄目だろ。俺監視されてんだから」
「チッ!!」
そう言われるとここから離れられないじゃねぇか。
確かに家の近くからそこそこ強い呪力を持つ術師が何人かいるのを感じる。
多分雇われた呪詛師だろう。監視されてるのは間違いない。
ご主人様一人なら平気だけど、その標的が恵に向いたら不味い。
「……一応色々考えてる。誤魔化せる方法も探す。殺すのは最終手段にするつもりだ」
「ご主人様……」
「とりあえず行ってくる。恵と津美紀のこと頼むぜ」
「分かった」
仕方ない。恵の命を守るために容認するか。
……って言うと思ったか。
言うワケねぇだろバーカ! 久し振りにゴーストタイプの本領発揮してやるよ。
あの様子だとご主人様は忘れてる。私には人間の心を操る力があることを。
そしてアイツらは私の存在を知らない。意表は十分付ける。
ご主人様が家から出て監視役の呪詛師の注意が一瞬離れた隙に近付き力を使う。
「っ!? あ゛……」
「私が離れている間、恵と津美紀を守れ」
「…………」
呪いに耐性があると効き辛いのはご主人様の件で知ってるからかなり力を込める。
これでこの呪詛師は私の操り人形だ。
体ではなく心を操るから一度操ってしまえば余程のことがない限り解けないし、放置していても問題ない。
残りの呪詛師も無事操れたので行動に移る。
ご主人様と一緒に行動するべきか迷ったが、ここは単体行動の方がいいな。
家に少し留守にすると書置きもしたし、星漿体の少女を守るために暗躍するぜ。
◇◆◇
操った呪詛師から情報を聞き出し、やってきたのは呪術高専だ。
結構遠かったから何日も掛かってしまった。
間に合ってるといいな、と思いながら進んでいたら激しい戦闘の痕跡を見つけた。
かなり真新しい。戦いが終わったばかりだな。
そしてそこには誰かが倒れていた。
近寄ってみると白髪の青年だった。
え? コイツ私を封印した……ワケないか。
だってあれ400年前の話だし。
でもそっくりだ。ということはその子孫か。
腹バッサリ裂かれてるけど一応生きてるな。
ちょっとずつ治ってるみたいだから放置して先に進もう。
ご主人様が近くにいるのが何となく分かるからその感覚に従う。
エレベーターに乗り、意味の分からん空間に辿り着いた途端戦闘音が聞こえてきた。
誰かがご主人様と戦っているみたいだ。
ご主人様は五感が鋭いけどほぼ無機物の私の存在は中々捉えられないらしくて、私が本気で身を隠すと見つけられないと言っていた。
なので物陰から様子を伺う。
ご主人様と戦っていたのはさっき倒れていた白髪の男と同年代くらいの青年だ。
へぇ、結構強いな。
常人ならご主人様には手も足も出ずにやられるのに少し食いついてる。
その近くで少女が頭から血を流して倒れていた。
もしかしてあの子が星漿体か?
結構血が出ているから一瞬ドキッとしたけど……良かった死んでいない。仮死状態だ。
ご主人様が頭に仮死状態にできる何かを打ち込んだらしい。
これなら死を偽造できる。なんとかなりそうだ。
ご主人様は青年を死なない程度に斬りつけると、仮死状態の少女を抱えて依頼主のところへ向かい始めた。
気付かれないように私もその後を追う。
辿り着いた先は盤星教。
ここで少女の引き渡しをするみたいだ。
人が多くて建物に入れない。外で待機するしかないか。
こういう時はヨノワールやゲンガーみたいな影に入れるゴーストタイプが羨ましくなるな。
私は完全に“もの”へ憑りついているゴーストタイプだからそういう力はないんだよね。
しばらく待っていたらご主人様が建物から出て来た。
無事引き渡しが終わった感じかな?
中の様子を確認してるっぽいから多分少女を取り返すタイミングを見計らっているんだろう。
そんなご主人様の目の前に腹を裂かれて倒れていた白髪の青年が立っていた。
あの怪我治ったのか。凄い再生力だな。
でも……何か、様子がおかしい……?
白髪の青年はご主人様と戦い始めた。
どちらも強い。まさに異次元の戦いだ。伝説のポケモン同士の対決見てるみたい。
まぁご主人様が負けるワケないか。
と楽観的に考えていたけど呪力の増大を感じ取って本能的にヤバい、と思った。
あれを食らったら間違いなくご主人様は死ぬ。
私は迷うことなくご主人様の前に飛び出した。
「虚式【茈】」
「【キングシールド】!!」
——ドゴオォォン!!
凄まじい量の呪力の放出、それに見合う衝撃波。
まともに食らったらどんな奴でも死ぬな。
「……なっ!?」
「は?」
まぁ私は大丈夫だけどね。
この世界だと【キングシールド】は防いだ技の呪力を吸収するみたいで、物理攻撃はもとより呪力を使用した技をほとんど無効化できる。
うおあぁ……相当量の呪力吸収したから一気に満腹になった。
ここまで上質で美味しい呪力なんて滅多にありつけないよ。
「“国滅之剣”!? 嘘だろ。何で禪院家の禁庫に保管されてる絶対に封印を解いてはならない特級呪具がこんなところにあるんだよ!?」
あー、やっぱり私有名なんだな。
見ただけで分かるとは人気者は辛いぜ。
「オ、マエ……何でここに……恵と津美紀はどうした?」
「ちゃんと守りはつけてるからモーマンタイだよ。それより早くあの少女を取り戻してきて。私がアイツの相手するから」
「……分かった」
少女がいる場所はご主人様なら簡単に見つけられる。
この戦闘で建物内にいる人間が大騒ぎしているから今なら安全に取り戻せるハズだ。
だからそっちはご主人様に任せて私は白髪の青年と向き合う。
目を見るとなお似てるな。
あの時のリベンジができそうで嬉しいよ。
「喋りやがった……。まさか独立した自我を持ってんのか?」
「本当に知られてないんだね。封印前も結構動いてたんだけど。まぁまぁそんなことどうでもよくてですね」
「どうでもよくねぇだろ」
「その時は私ほとんど何もできずに封印されたんだ。だからリベンジしたいんだよね。君あの時戦った日本人の子孫でしょ? 子孫に悔しい気持ちをぶつけるのは違うのは知ってるんだけど他にぶつける相手がいないからね。
だからさ……
少し私と遊ぼうよ」
「!!!」
ブレードフォルムにチェンジし【かげうち】を放つ。
白髪に青い目と特徴はあの日本人と同じだ。だから多分同じ術式だと思う。
ならば最初からゴーストタイプの技で攻める。
白髪の青年は危険を察知したのか逃げた。
「な、何だ今の……影で攻撃してきた!?」
「【シャドーボール】」
困惑しているうちに追撃。
【かげうち】は避けられたけど【シャドーボール】は見事命中!
けど多分これっきりだな。【シャドーボール】は速度がないからね。
だから出が早い【かげうち】を主軸にする。
「【つるぎのまい】」
そのために攻撃力を底上げする。
これで【かげうち】食らったらめっちゃ痛いぞ。
悟られないように他の技も使いながら立ち回る。
「【ラスターカノン】!」
「術式反転【赫】!」
「【キングシールド】!!」
「くそ! 何だその盾構える技……呪力全部吸収できるのかよ!」
その効果に気付いたようで今度は近接メインで攻撃してきた。
おっと残念。ブレードフォルムならともかくシールドフォルムではまともに私にダメージ与えられないよ。
何せこの状態なら防御も特防もくそ高いからな。
……第6世代ならもっと高かったんだけどなぁ……。
さてと……呪力はたっぷり、腹も満腹なので久々にあの技を使おう。
「ブレードフォルムチェンジ! からの【てっていこうせん】!!」
「!!?」
特殊鋼技で最高威力の技をぶっ放す。
ただしこの技を使うと反動で体力が半分も削られてしまう。
一気に疲労感が襲ってきたけど……それよりも【てっていこうせん】の威力に二人して驚愕。
なるべく被害が少ない方向へ撃ったのに盤星教の建物が半分吹っ飛んだ。
「…………」
「…………」
「……これ弁償私ですか?」
「気にしなくていいんじゃね? この教団くそだし」
「それもそうか。うん、久し振りに使ったけど相変わらずとんでも威力だな」
ご主人様が建物内にいたら危なかった。
もういないから大丈夫だけど。
ということで戦闘再開。
本気出せるの超楽しい!
というか今気付いたけどこの青年、王の素質があるな。
久し振りに見た王の素質を持つ人間だ。
このままどの程度の素質があるかどうか確かめさせてもらおう。
「五条!!」
「!? は!? オマエ生きて……」
「え?」
ここで星漿体の少女がやってきた。
仮死状態を無事解除できたみたいだ。
少し血が付いてるけど元気そう。
あ、ヤバい。
それに気を取られて動きが止まった青年に思いっきり【シャドークロー】使っちゃった!
技の発生が止められない!!
——ザシュ!!
「が!?」
「あ」
「ひっ!?」
肩から脇腹にかけてザックリ深い斬り傷がついて青年は倒れた。
想定外の出来事に持っていた盾を落とした。
「え……どうしようご主人様。私王の素質を持つ子殺しちゃった……」
「普段見ねぇくらい動揺してんな。安心しろ、死んでねぇよ。心臓動いてる」
「そ、そっか……」
なら大丈夫かな……?
ま、まぁあの怪我を負って生き延びた子だし……でも早く病院連れて行こう。
その後もう一人の青年がやってきて大騒ぎになったり、盤星教の教団幹部全員操って組織の根幹をまるっと変えたりとしていたら一週間も時間を要してしまった。
こんなに長く留守にしたことないから恵も津美紀も心配してる。
一刻も早く帰ろう。
って思ってたのに帰してくれませんでした。
「……どうやら死にてぇようだな。さっさと家に帰せや。【てっていこうせん】ぶっ放すぞ」
「ギルガルド口調昔に戻ってるぞ」
今にも沸騰しそうなくらいイライラMAX。
この場にいる呪術師と呪術界上層部を殺意マシマシで睨みつける。
何人かビビって青い顔してるけど知るか。
くだらねぇ内容の話だったら全員斬り殺してやる。
「無理だ。かつて大国を滅ぼした禁忌の特級呪具を野放しにすることはできない。自我を持っているのならなおさらだ」
「確かにそうだけどオマエらに迷惑かけた覚えはねぇぞ。今回動いたのだって家族を守ろうとしただけだ。オマエらが俺の家族に何もしなければ俺もオマエらに何もしねぇ。それでいいだろ!」
「落ち着けギルガルド。下手に縛りを結ぼうとするな。後で不利になるぞ」
ご主人様が俺をなだめてくれているお陰でまだ完全に激昂していない。
ちなみに私がバッサリ斬っちゃった青年、五条悟は元気です。
もう一人の青年、夏油傑と一緒に私の目の前にいます。
星漿体の少女は同化を拒否したから解放されて、普通の人間として生きていくことが決まったからここにはいない。
「こんなに知性がある呪具があるなんてね。もしかして他にも君のような呪具があるのかな?」
「うーん……多分私だけだと思う。結構長く生きてきたけど会ったことないから」
「生きてきたって言い方も気になるな。オマエ本当に何者だ?」
「この剣に殺された人間の魂が合体して誕生した存在だよ(ヒトツキの図鑑説明から抜粋)」
「成程。それなら明確な自我を持っていることにも納得できる。通常の呪具は呪術師が使っていた道具に呪いが宿って生まれるものだからな」
「どうします? ここまで明確な自我を持ってる上に400年前のことも覚えてるんじゃ再封印するのは不可能に近いですよ」
「そうだな……。さっき家族と言ったが、その家族とは何だ?」
「ご主人様の子供達のことだよ。あ? まさかその子達を人質にして私を再封印しようってか? 上等だオラァ!! ここにいる全員ぶった斬った後この国終わらせてやる!!」
「ま、待て待て落ち着け!」
「ははははは! 一週間もあいつらに会えてねぇから殺意高ぇな。マジ面白れえ!」
「貴様も笑っていないで止めろ!! 持ち主だろ!!」
ブチ切れ寸前の私と呪術師とのやり取りを見てゲラゲラと笑うご主人様。
こんなに笑ってるの見るの久し振りだな。
今まで自分を見下してきた呪術師が右往左往しているのが余程面白いみたいだ。
「ただの確認だ! 我々はオマエと敵対するつもりはない!」
「てか敵対したらヤバいでしょ。そこそこの呪力量のある呪詛師と盤星教の幹部全員操ってるのにギルガルドはピンピンしてるんです。ノーリスクで人間を操れる証拠だ。そんな奴を敵に回したらマジでこの国終わりますよ」
だろうな。
特級呪術師も倒せるって分かったんだ。私に勝てる呪術師は多分いない。
その私を敵に回したらどうなるかなんて猿でも理解できる。
「だから敵対関係にならないために縛りを結びたい。もう一つ確認だが、禪院……いや伏黒甚爾。貴様は何故星漿体の暗殺依頼を受けたのだ?」
「本当は受けるつもりなかったんだが受けねぇとガキを殺すって脅されて仕方なく受けたんだよ」
「その割には天内殺さなかったよな。わざわざ仮死状態にして死を偽造するなんて面倒なことまでして……何でだ?」
「ギルガルドと約束してんだ。もう人を殺さないって。コイツには何かと助けてもらった。約束くらい守らねぇと罰が当たる」
「意外と義理堅いんだね。何でギルガルドの封印を解いたんだ?」
「本家への嫌がらせ」
「えぇ……」
「ご主人様が今までされてきたことを考えれば可愛いもんでしょ。こんな顔面国宝を呪力がないからなんて理由で虐げていたんだ。殺されないだけ儲けものよ? 私だったら問答無用で禪院家の人間皆殺しにしてる」
話に聞いただけだけど禪院家かなり腐ってるからね。
ご主人様の実力を何も見ずに幼少期の頃から虐げていた連中なんて万死に値するよ。
「随分その男に肩入れしてるんだな」
「そりゃ肩入れするでしょ。私ご主人様のこと大好きだもん」
最初は呪力が全くない人間を初めて見たから興味本位で主に選んだ。
でも今は自分から望んで傍にいる。
だから王の素質を持つ人間が目の前にいても仕えようと思わない。
ギルガルドとしては駄目な選択かもしれないけど後悔はしていない。
「……オマ、……。こんなに大勢いるとこで堂々と本心語るなよ……」
今にも消え入りそうな声で言ったから気になってご主人様を見たら、顔だけじゃなく耳まで真っ赤になっていた。
「わっ、ご主人様がこんなに照れてるの初めて見た! 可愛い! もっと見たいからこっち向いて!」
「止めろ! ふざけんなオマエ! 離れろ!」
「なんか急にイチャイチャし出したんだけど……」
おっと、いかんいかん。
ご主人様があまりに可愛くてつい大勢の前でギュッとしてしまった。
一旦落ち着こう。
「ま……まぁそういうことなら今後同じことは起こらないな。縛りも問題なく結べよう」
「その前にもう一個訊きたいんだけどさ。オマエ持ち主ってことはソイツ扱うんだよな?」
「ああ」
「そんな馬鹿デカい剣どうやって扱うんだ? 普通に考えたら逆に動きにくくなるだろ」
「あーそれは……使ってみるか?」
「は?」
「口で説明すんの面倒なんだよ。実際使わせるのが一番手っ取り早い」
「そりゃそうだけどギルガルドはいいのか?」
「一時的なら所有権を移してもいいよ。ご主人様の言う通り実際に使ってもらった方が説明の手間省けるし」
なにせ本来のギルガルドにはない特殊仕様とかがあるからね。
恐らく転生者特典であろう特殊仕様も国が滅んだ原因の一つだ。
その力欲しさに私の所有権を巡って結構血みどろの争いしてたから。
色々話し合った結果、傑が私を使うことになった。
校庭に集まり早速実演開始。
「それじゃあ傑。束と盾を持って」
「分かった」
傑が束を持つと手が離れないように布状の腕で傑の腕をグルグル巻きにする。
それに傑はちょっとびっくりしたみたいだけど、この段階では呪力を吸わないから大丈夫よ。
「どうだ傑」
「全然重さを感じない。紙でできているのかと思うくらい軽い」
「片腕で50Kg超えの剣持っているのにか?」
「ああ、それに…………本当にこれできるのかい?」
「今傑が感じている通りだよ」
「そう……なんだ」
「? どうかしたのか?」
「……悟」
「あ?」
「【ラスターカノン】」
「!!?」
傑が悟に向かって技をぶっ放した。
おおう。見ていた呪術師全員見事に逃げたな。
「は!? 何だよそれ! ギルガルドがあん時使ってた技じゃん! まさかギルガルドが使える技傑が使えるのか!?」
「そうみたい。君が使えて私が使えない技ある?」
「私自身が操作したり突っ込む技が使えないって感じ。他の斬るとか放つとか補助系の技は使えるよ」
凄いだろー。私の意思ではなく所有者の意思でポケモンの技が使えるんだから。
ご主人様によると使える技は所有者の頭の中に「この技が使えます」みたいな感じで表示されるらしい。
「攻撃技じゃないのもいくつかあるね。【つるぎのまい】ってどんな技?」
「剣舞を踊って集中力と攻撃力を上昇させるんだ。上昇時間は5分くらいだね」
「【ワイドガード】は?」
「相手の全体攻撃を防ぐ技だよ。単体に向けた攻撃が防げない代わりに全体攻撃をほぼ完全に無効化できる。ちなみにこの技は味方も守れるよ」
「……【とおせんぼう】」
「相手を逃げられなくする技だね。非術師であろうが呪霊だろうが効くよ」
「…………【きんぞくおん】」
「めっちゃ耳障りな音を鳴らして、それを聞いた相手の呪い耐性を下げる技さ。近距離でしか効果ないけど」
「破格すぎるだろ!! 何だそのヤバい効果の技オンパレード!! デメリットないのか!?」
「私の呪力が減るだけで使用者にデメリットはないよ」
PPの代わりに体力で技を放っている感じだね。
だからご主人様も問題なく使える。私の残り呪力量も所有者には分かるらしい。
減った呪力も術師か呪霊を斬るか、【キングシールド】で呪力を使った技を防げば復活するから、立ち回り次第でそれを気にせず戦える。
ご主人様はその立ち回りが上手い。歴代の持ち主の中で一番私を使いこなせている。
「ただ私の呪力が少ない状態で技を使うと足りない分の呪力は所有者から吸い取るんだ。だから私の呪力が枯渇しているのに技を使うと、持っている呪力量と使用した技によっては所有者は即死する。実際それで死んだ人が何人かいる」
「取り扱いには十分な注意が必要だね。これがかつて大国を滅ぼした“国滅之剣”の力か」
「状況に応じてギルガルド単体でも行動できるし、これは相手にするの骨だぞ」
「これだけの性能を持つ呪具は存在しない。ギルガルドを巡って国単位で争うのはむしろ当然だ」
「……そうですね」
「? 傑どうした? 変な顔してるぞ」
「いやこれ……一度使うと、この力に魅了されるのか手放したくなくなる。ギルガルド。このまま私に所有権移さないかい?」
「嫌ですよ。お断りします」
王の素質がない奴が私を使うと一瞬で私の力の虜になるからそう言うと思ったけどね。
ご主人様がそうならないのは天与呪縛でその身体が特別だからだろう。
するりと傑の手から離れてご主人様の元へ戻った。
「ぶぷっ。傑フラれてやんの」
「……本当に今の主人が大好きなんだね」
「うん。恵も津美紀も好きだけど一番はご主人様だよ」
「だから堂々と本心語るなっつうの!!」
(((伏黒甚爾がこちらのせいで死んだら確実に敵に回るな……)))
そして私の実力や身辺状況を考えていくつか縛りが設けられた。
一つ目。恵と津美紀の身の安全を高専が保証し、金銭的な免除をすること。
これは私が絶対に譲らなかった奴だ。
私のことより子供達の安全の方が優先だ。
二つ目。私の主人である伏黒甚爾を特級呪術師と認定し、今後呪術師として活動すること。
やったぜ。まともとは言えないけどやっとご主人様が定職に就けた。
そして呪力なしを特級呪術師と認定すると決まった時の禪院家の人間の顔マジで面白かった。
ざまぁ! 私ありきの実力だと思ってるだろうけどご主人様はそうじゃないんだからな!
3つ目。こちらが要請した場合、ギルガルドは一時的に所有権を他の呪術師に渡し、戦力を供給すること。
……これは仕方ないか。
ご主人様以外に使われるのは嫌だけど、その要請も高専の戦力が足りなくなった時だけにするって言ったから吞むことにした。
四つ目。ギルガルドが要求した時、呪術師はギルガルドに呪力を提供すること。
駄目元で言ってみたんだけど吞んでくれて嬉しいよ。私だって美味しいもの食べたいからね。
というワケで縛りはこの四つで決まった。
やっと家に帰れる。
「あ、そうだ。五条」
「何だよ」
「これから家に帰んだけど、オマエちょっと来てくれねぇか?」
「は? 何でだよ」
「俺のガキ見て欲しいんだよ。それでできれば後ろ盾になってもらいてぇんだ」
「……何かあんのか?」
「それは見れば分かる。俺も正直驚いたからな」
あー、あのことか。私もご主人様から聞いた時驚いたな。
知られたら絶対に禪院家が何かしてくるだろうってかなり警戒していたんだよね。
悟はまだ子供っぽいところあるけど、数百年ぶりの六眼と無下限の抱き合わせで次期当主。
頼らない手はない。
というワケで悟を連れて家に帰宅。
「お母さん!」
「……母さん」
家に着くとすぐ恵と津美紀が抱き着いてきた。
恵が不貞腐れた顔してるけど態度はもろ「寂しかった」って言ってる。
普段家にずっといる存在が一週間もいなかったんだ。そりゃ寂しいよ。
「ごめんね。思ったより時間がかかっちゃってね」
二人をギューッと抱き締めて安心させる。
ほとんど私が育てたから年相応に成長しているか少し心配だったけど、この分なら問題なさそうだ。
「え、オマエ母親なの?」
「違うよ。恵の本当の母親は恵を生んですぐに死んじゃって、代わりに私が育てていたんだ。津美紀は引き取った養子。私の姿はこんなだし母親って呼ぶの止めてって言ってるんだけど止めてくれなくてね」
「へー」
「おーい恵。俺のとこに来ないか?」
「親父はいつも母さんを困らせてるからやだ。今回も親父のせいで母さん帰れなかったんだろ」
「ちげぇよ。ったく生意気に育ちやがって」
「それに関してはあんまり恵に構わないご主人様が悪い」
家に帰るの大体夜だし、休みで家にいてもたまにしか恵と遊ばない。
最近は体術の稽古してるけど禪院家基準のご主人様の稽古がかなり厳しいものだから懐かれていないのはまぁ当然というべきか……。
「母さん、この人誰?」
「五条悟。ご主人様の仕事仲間になる人だよ」
「ふーん。じゃあ強いの?」
「当たり前だろ。つか……おい。コイツ術式、十種影法術じゃねぇか!」
「そうだよ」
見ただけで分かるなんて便利な眼だな。
でもそうなんだよね。
恵の術式がよりにもよって禪院家の相伝である十種影法術。
しかもこの相伝も長い間生まれていなかったそうだから、禪院家に知られたら恵がどうなるかなんて考えたくない。
「それで俺に後ろ盾になって欲しいってことか」
「そういうことだ。一番いい手は五条が金払って恵を買うことだな」
「人身売買反対!!」
「けど他の手だと裏かかれるぞ。この方法なら出し抜けると思うぜ。まさかあっちも五条が金払って恵を買うとは思わねぇだろうし」
「そうだけど……でもそれだと恵は呪術師にならないといけないじゃんか。恵に危険なことさせたくないよ」
この辺りの感情は完全に母としてのものだよね。
母と呼ばないようにと言っていても、本気で止めろと言っていないのもそういうことなんだろう。
赤ん坊の頃から育てているからそう想っても無理ないけど……。
「それは根本的に無理だ。もう力持っちまってるんだから」
「それは……」
「オマエも分かってるだろ。禪院家に連れて行かれるより五条に買ってもらった方が全然いいって。あそこに行ったら俺達じゃ守ってやることもできねぇんだからな」
「……分かった。じゃあ悟、恵をお願いします。代わりと言っては何だけど、悟は王の素質を持つものだから何かあった時、私は悟の味方をすると約束します」
素質を持つ悟なら私を使っても虜になることはないし、六眼のお陰で呪力調整も簡単にできるからご主人様の次に私を使いこなせると思う。
もし呪術界から要請が来たら積極的に悟に就こう。
「何だ? 王の素質って」
「ギルガルドにはそういう力があるんだとよ。本来は王様になれる人間だけを主に選ぶらしいぜ」
「妙な力持ってんな。けどまぁ味方になってくれんのは嬉しいぜ。それじゃ、早速準備するか」
「え?」
「こういうのは早い方がいいだろ。悪いようにはしないから安心しろ」
「はぁ……」
後日、悟が10億で恵を買いました。
いや金額の桁がちげぇ!!
どんだけ金持ってんだよ五条家!!
でもお陰で禪院家にドナドナされる心配はなくなった。
こればっかりは私とご主人様じゃ無理だったからね。
しかし腐ってるなぁ……呪術界。
聞いてはいたけど改めて見ると腐りすぎてて暗君が可愛く見えてくるわ。
だって非術師の家庭の出だからって学生でまだ呪術師としては未熟な子に等級違いの任務割り当てて殺そうとするんだもん。あり得ねぇわ!!
私とご主人様が近くにいたからあの子達助かったけどこれはヤバい。
根本的に組織改革しないと恵も殺されるかもしれない。
「というワケで何かあった時と前に言ったけど、私は全面的に悟の味方をすることにします。よろしく悟!」
「お、おう」
「いいのかギルガルド。コイツも大概クズだぞ」
「まぁ悟も性格ひん曲がってるけど、錆びだらけの老害に比べたら1億倍マシだからね。老害全部操るのはちょっと骨だし、正規の方法で改革しないと将来的に大変だからそうすることにした」
「さらっと上層部全員操れるって言ってんのマジウケるな。本当に敵に回したくない奴だ」
この時、私が悟の味方についたことを知った額に縫い目のある術師が発狂していたようだ。
数年後にそれを知ることになるが、大体オマエのせいだともその時には知っているので容赦なく叩き斬ります。
◆◇◆◇◆
・ギルガルド≪呪術界での呼び名—国滅之剣—≫
人気投票でも上位に入るカッコいい王剣ポケモン。
元は術師として生まれた転生者だった。しかし膨大な呪力を持っていながらも術式を持っておらず、戦闘センスもなかったため同じ術師から出来損ないだと執拗にいじめられていた。
その強い憎しみからかつて自分が好きだったギルガルドと同じ形の呪具を作成。
相当量の呪いを込めて作り出したその呪具で自分をいじめた術師を殺そうとしたが、逆に呪具を奪われて斬り殺された。
しかし殺されることも想定済みであり、隠していた術式により呪具と自分の魂を合体させ、本物のギルガルドとして新しく誕生した。
だが代償としてそれまでの記憶がほとんど消失。
残っているのは呪具に刻み込んでいたギルガルドとしての性質および生態。
なので今はほぼギルガルド。
だが記憶を失ったことが逆にいい方へ働き、今まであった憎悪も消え去ってギルガルドとして自由奔放に生きてきた。
でも本能のまま生きていたせいで国が滅んだ。
実際に国家転覆を成し遂げた特級呪具として恐れられるようになり、何とか現地の術師が封印しようと試みたが全員返り討ちにされた。
そのためわざわざ日本まで命からがら渡来し、救援を求めた。
封印後は色々あって禪院家の禁庫に保管されていたが禪院甚爾が本家への嫌がらせ目的でその封印を解放。
400年前欧州全土を恐怖で震え上がらせた禁忌の特級呪具が現代に降臨した(なお本人にその自覚なし)
呪力のない人間に興味があって甚爾を主としたが今は甚爾が好きなので自ら望んで傍にいる。
一番が甚爾なので判断基準のほとんどが甚爾由来。
なので甚爾に嫌がらせした呪術師はもれなく斬られて呪力全部吸い取られます(主に禪院家)
恵が高専に入学してから恵を守るために傍にいるようになる。
赤ん坊の頃から恵の面倒を見ていたので心境は完全に母親のそれ。
そのため宿儺が恵を乗っ取る機会が全く訪れない。
というか呪力を糧とするギルガルドは呪物である宿儺の天敵でもあるため身動きさえ取れない。
津美紀の呪いも早々に解呪しているのですでに原作崩壊レベルのことをしている。
ギルガルドが覚える技は全て使用可能。(チャンピオンズ基準)
ギルガルドを人間が持つとギルガルドが使用できる技の大半を使える。
使う技の威力が高ければ高いほど使用呪力量も多くなっていくので、ギルガルドの呪力が足りない時に【てっていこうせん】なんて使おうものなら所有者の呪力量によっては使った瞬間呪力が全て消費され即死する。
人間を操る力もあり、呪い耐性が高いと多少抵抗されてしまうが術師であろうが問題なく操れる。
非術師であれば一気に複数人支配下に置くことが可能。
しかも体でなく心を操るので一度操られると余程強い衝撃がない限り解除されない。
転生者なのでこの辺りの力が軒並み強化されている。
その代わり呪力を自己生成できないので外部から吸収しなければいけない。
もし呪力が尽きた場合、活動が停止する……のではなく呪力が満タンになるまで暴走する。
見境なく手当たり次第に呪力を吸収しようとするため暴走したら都市がほぼ壊滅すると思った方がいい。
国滅之剣の名の通り一歩間違えば国が滅びるとんでもない呪具である。
・伏黒甚爾
皆さんご存じのフィジカルゴリラ。
本家への嫌がらせで禁忌の特級呪具の封印を解いちゃった人。
普通の術師なら触ることもできないほど強い封印だったが呪力ゼロのこの人は解けてしまった。
でもギルガルドのお陰で奥さんを亡くしても踏み止まれたし、ストレートに気持ちを伝えてくるギルガルドが傍にいるので原作より自己肯定感が強い。
大きな声では言えないがギルガルドに絶大な信頼を寄せている。
天与呪縛の特別な体なのでギルガルドを使ってもギルガルドの力に飲まれることはないし、なんならめちゃくちゃ使いこなしてる。
【キングシールド】や【ワイドガード】といった守る系の技が使えるため遠距離技も広範囲技も怖くない。まさに最強。
恵が高専に入学してから恵を守るためにギルガルドが自分から離れたので実は結構寂しい。
だからちょくちょく高専に来るようになる。
それを口には出さないが勿論ギルガルドには気付かれているため会うとめっちゃ甘やかされる。
恥ずかしがっても嫌がらない様を悟にからかわれて喧嘩を始めるまでがデフォになる。
・伏黒恵
ギルガルドに育てられた本編ヒロイン。
物心ついた頃からギルガルドが傍にいたのでしばらくの間ギルガルドが本当の母親だと思ってた。
なので成長したら自分は剣に変身できるようになると本気で信じてた可愛い子。
赤ん坊の頃からギルガルドの呪力に触れていたのでギルガルドの力に耐性ができており、その陰で王の素質はないにも関わらずギルガルドを使っても力に飲まれることはない。
とても大事に育てられていたから本編より穏やかな気質。
反抗期はあったけどそこまで荒れてない。
というより怒ったギルガルドが怖かったから荒れられなかった。
母さんのガチ説教マジ怖い。
・伏黒津美紀
恵の義姉。甚爾にストーカーしていた母親に置き去りにされた。
引き取られた先で剣が動いて喋っているのを見て驚きのあまり固まってしまったが怖がってはいない。
男好きで家を留守にすることが多かった実母だったので、引き取られてから初めてまともな愛情を与えられ、実母よりずっと母親らしいギルガルドにすぐ懐いた。
本編通り呪いをかけられたが、ギルガルドがすぐ解呪したので元気に過ごしている。