オールデン オールソール交換 | rad-kensworks

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起業20年の靴修理人のブログです。

紳士靴は最も古くから製品化されているアイテムの一つです。

欧米では靴はベッドから降りてベッドに入るまで履き続けるのが普通。

革製品が実用化された時からずっと存在しています。

 

人類が文明を取得し工業化されてから様々なアイテムが生まれ、進化し続けていますね。

衣類や機械、文化や農、魚漁業など絶えず進化を続けています。

 

靴もスポーツやファッションに合わせ特化しながら進化しています。

 

ところが紳士靴はというと製法は進化していますが一部の製品は先の大戦あたりから進化をやめています。

というか、もう完成されてしまったのかもしれませんね。

 

店主が愛して止まないTricker'sのカントリーブーツは1926年にはほぼ現在のスタイルが出来ています。

今回ご紹介のAldenも1963年には現在のラインが確率されていますが操業は1884年。

日本のリーガルシューズは1870年操業ですが1945年にはグッドイヤーウエルト製法を確立しています。

 

各国のメーカーは先の大戦で大量の軍需ブーツの製造で一財産を築き会社を安定させたのでしょうが、1960年代には各社とも現在のラインナップの原型を揃えています。

 

多少のスタイリングの変化はあっても基本そのままのスタイルで現在に至っています。

もう60年超えで変わっていないってある意味凄いって思います。

 

そして本題のAldenのオールソール交換。

Aldenは概ねダブルソールが多いので行程も増えますが仕上がりが綺麗にキマるので好きな修理の1つです。

 

まずは#2211

バリーラストのソールはアジア人にはよく合うソールです。そしてノルウィージャンフロントのアッパーはよくあるモカシンやキャップトゥとは違ってとてもスマートながら立体感があって美しいアッパーです。

このお客様は癖なのかつま先がグッと磨り減ってしまっています。

オールソール交換は当然ダブルソールごとの交換なので内部のクッションコルクも交換しています。

よくあるソールのみの交換をするショップのオールソール交換ではクッションコルクは触らないのでソールが真っ平らになってます。潰れたクッションコルクを入れ替えないので潰れたままソールを貼るのでそうなります。

クッションコルクも入れ替えてソールを貼れば綺麗な曲線が蘇ります。当然履き心地も良くなります。

今回はつま先をガードするヴィンテージスティールを取り付けましたが取付位置を若干削ってからソールを縫製していますのであと付け感もなくフィットさせています。

 

そしてフルカラスのブラック仕上げ。

通常のインクより顔料が入った染料で仕上げますので長く黒いままでご使用いただけます。

 

もう1点#9901

定番のコードヴァン プレーントゥです。

プレーントゥは履きシワを付けないように維持するのが大変ですが磨くと一番綺麗に見えるアッパーです。

Aldenのコードヴァンは特に綺麗です。最後に磨いている時間が何故か長くなってしまう位綺麗になります。

こちらもフルカラスで仕上げていますが、綺麗になりすぎるので滑らないかちょっと心配になります。

 

おまけでこんな加工をしています

トップリフトにラスターを取り付けますがここは化粧釘を打ち込みます。

レザークラフトで使う菱目打ちでピッチを揃えて位置決めをして釘を打ちますが当店ではトップの釘以外は釘の頭をカットして打っています。

めんどくさいのですが全部普通に釘を並べると後日滑るんです。

ラスターの革がご使用と共に減ったり痩せたりするのですが、そうすると釘の頭が突出してきて滑っちゃいます。

これは普段からレザーソールの靴を履いていないとわからない所ですね。

店主は365日毎日カントリーブーツなのですが、雨でなくても釘が滑るのは充分経験済みです。

 

見た目はそのまま釘が並んでいる方が良いかもしれませんが滑ったら困りますので面倒ですがカットしています。

 

スニーカーやサンダル履きで作業しているショップのスタッフじゃわからないと思います。

靴屋は自分で靴をしっかり履いていてこそお客様の気持ちがわかるかもって思い、店主は毎日カントリーブーツで過ごしています。雨天のみコマンドーソールですが通常はハーフラバーなしのレザーソールを履いてお客様をお待ちしています。