パンプス かかと修理 | rad-kensworks

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起業20年の靴修理人のブログです。

ビジネス、カジュアル共にレディスシューズの中心に使われるパンプスやミュールのかかと修理は靴修理の中で一番普及している修理ですね。

駅ビルの一角や百貨店、郊外型スーパー等には必ず出店しています。

 

靴修理の店でレディスシューズのかかと修理をやらないショップはまず無いですが修理の仕方や資材もショップにより違います。

 

交換はトップのラバーからピンが突き出た専用資材で交換します。

 

 

大きさや形状が色々あるのはヒールの形状になるべく近くなるようにメーカーが意図して作っています。

同じメーカーの同じラインであれば素材は基本同じでサイズのみ違っています。

大きさの近い材料をヒールに打ち込んで余分な部分を削り取るのがピンヒールの修理ですが、素材のサイズがヒールに近いと取り付ける際に削る時間が短縮されます。時間も重要ですがもっと重要なのは削る際の発熱です。

 

削るのは最終的に紙ヤスリを回転させる機械で削りますので長時間の研磨は素材が発熱してしまいます。

素材はラバーですので発熱が過ぎると溶解しますのでラバー全体の強度が落ちます。

ヒールに固定する金属のピンが埋め込まれているのでそのピンとラバーの密着度も落ちますので、結果的にもぎ取り強度が落ちてとれやすくなってしまうのですね。

 

また、外部からは見えませんがこのピンも重要です。ピンが抜けにくいよう画鋲のような形状になっているものと釘程度のものとあります。

埋まっている部分の話ですが釘の頭と画鋲の頭とでは引っ張った時の強度が違うのは当たり前。価格の安い物ほど内部のピンの構造も簡素化しています。なので磨り減りが進むと簡単にもげてしまうのですね。

 

また、取付にも工夫がないとです。

ヒール本体には新品時のラバーが打ち込まれていますので抜くと穴が残ります。細いピンヒールは金属のパイプが埋まっていてそこに新しいラバーを打ち込みますがちょっと大きめの物は穴も大きくなります。

その穴にプラスチック又はウッドの専用資材を打ち込んで塞ぎます。

このヒールは3本穴が有るので真ん中はプラスチック、両サイドはウッドで埋めていきます。何故素材を変えるかというと真ん中は固定用のピンを打ち込むので強度確保でプラスチック、両サイドは釘用にウッドです。

このヒール場合、固定はピンの打ち込みで、釘は回り止めです。打ち込み固定で接着はしませんので回り止めを付けないと修理部材が固定ピンを中心に後日動いてしまって取れやすくなってしまうから回り止めをします。

 

そして真ん中のブラスチックに固定ピン用の穴をあけます。

その穴にピンを落として打ち込みます回り止めの釘を打ちます。

そのまま打ち込むと釘の頭が残りカチカチ音がしたり滑る原因にもなるので頭をカットします。

そして余分なラバーを落として仕上げます。

一見一番簡単な修理の1つなのですが細かい部分に手をかけることで修理の間隔が広がりランニングコストが良くなるのです。

 

ついでにこだわりの部分をもう1つ。

 

釘打ちはハンマーで打ちます。釘打ち機は使いません。

釘と言えば大工仕事ですが最近は大工さんも釘打ち機メインです。でもボードの固定は四隅はハンマーで打ちます。

 

釘打ち機は圧搾空気で釘を打つのですが、強大なパワーで打つため釘自体が打ち込んだ力でバウンドして若干戻ってしまうためほんの少し浮いてしまうそうです。なので全部釘打ち機で釘を打つと裏からボードを押せば簡単に抜けます。釘自体も戻りにくいよう表面や頭が加工されていますが手打ちの釘には敵いません。

靴修理は材木より固いプラスチックや逆に柔らかいレザーに対して釘を使うので素材に合わせて手打ちが基本です。

チェーン店やクイック修理のショップは釘打ち機を多用しますが使う釘もホッチキスの芯の太いような資材です。

また、靴用ハンマーは打面が曲面なので釘を打つときに打面を変えて使い、素材によって釘の種類や太さ、長さをチョイスしますのでしっかりと抜けにくく仕上げます。

結構熟練の技になりますがハンマーを使いこなすのも仕事の内ですね。愛用のドイツハンマーもボチボチ20年使っています。