ロシアの銀貨といえばコレクターの方は双頭の鷲が描かれた大型銀貨が浮かぶと思いますが、実はロシアでルーブル単位の大型銀貨が製造されるようになったのは1700年頃から。
それまでは、ワイヤーマネーと呼ばれる不恰好で小さな銀貨が貨幣経済の主役でした。
ロシア ワイヤーコペイカ銀貨
ボリス・ゴドゥノフ銘 1598~1605
平均重量0.68グラムという非常に小型な銀貨。
銀の針金(ワイヤー)を輪切りにしたものを叩き伸ばして作るためワイヤーマネーと呼ばれます。これは1コペイカですが、半分の重量のヂェンガ、更に半分のポルシュカ等更に小さな単位も存在します。
実物は見たことないですが1/8コペイカまで存在したようです。
表には馬に乗り槍(真ん中の斜め線)を持った騎手の図、裏には「ロシア全ての皇帝であり大公、ボリス」みたいなニュアンスの一文が書かれています。コインに対して刻印が大きすぎるため、まともに読めるほどちゃんと入っているのは中々ありません。この個体は裏表共にかなりマシな方です。
ワイヤーコペイカの銘文は5列になっていまして、だいたいどの種類も単語の並びは以下のような感じです。文字が潰れていたり文字数が少なすぎなかったりしなければイスラム系のコインよりは余程読みやすいです。あちらと違って一文字一文字がちゃんと分離してますしね…
一列目 「皇帝」「←
二列目 大公→」
三列目 「←ーー皇帝の名前
四列目 ーーーーー→」「←
五列目 ロシア全て→」
今回紹介している品は一列目が完全に欠けていて、残り四列の右側七割くらいがコインに収まっています。上側はだいたいみんな同じなので下側が入っている方が多少判別しやすいです。
このボリス、暴君として有名な「雷帝イヴァン4世」の息子である先代皇帝、フョードル一世の執政から皇帝になった人物で、統治期間も短めなのでワイヤーコペイカの中でも中々出てこない種類です。この頃はロシア国内が非常に混乱していた時代なのもモノが出てこない一因かもしれません。
一見小さくてみすぼらしいですが、ロシアの貨幣史の影の主役とも言えるワイヤーマネー。
選ばなければ一枚500円くらいからありますので、ロシアの近代銀貨の引き立て役にでも一枚いかがでしょうか。
ちなみに、こちらはイヴァン4世のワイヤーマネー。ヂェンガ(半コペイカ)銀貨です。
恐らくワイヤーマネーの中で一番 判別しやすい種類がこれなんですが、最下段が何となく「イヴァン」と読めるのが判りますでしょうか?