こんにちは。
渡邉ひとしです。
企業事例の「第343話」は
『業績悪化の懸念からの突破口』です。
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製薬事業の選択と集中を進める
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2005年9月に
<三共>と<第一製薬>と経営統合して
純粋持ち株会社<第一三共>を発足しました。
統合した段階で<第一三共>は
病院向けの医療用医薬品に特化しましたが
2006年4月に
大衆薬などのヘルスケア事業は新会社の
<第一三共ヘルスケア>を設立しました。
2007年4月に
純粋持ち株会社であった<第一三共>を
事業会社へと移行しました。
2008年10月に
<第一三共>はインドの製薬会社である
<ランバクシーラボラトリーズ>を
連結子会社としました。
2014年に
米国の<Ambit Biosciences>を
グループ化しました。
2015年3月に
インドの製薬会社である<サンファーマ>が
<ランバクシーラボラトリーズ>を
吸収合併しました。
2015年4月に
保有していた全株式を売却して
<ランバクシーラボラトリーズ>を
連結子会社から外しました。
2015年11月に
<第一三共ヘルスケア>が
香川県の<アイム>を子会社化しました。
化粧品などの通信販売を手掛ける<アイム>を
子会社化することで
マーケティングノウハウや物流基盤
コールセンターなどの顧客サポート体制など
通信販売の事業基盤を速やかに構築して
スキンケア領域の強化を図る考えです。
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<第一三共>のビジネスモデル
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2017年11月に
<北里第一三共ワクチン>を
完全子会社化したと発表しました。
学校法人<北里研究所>との共同出資会社で
ワクチン事業を手掛けていましたが
ワクチンの自主回収や
新製品の開発の遅れが響き
経営の基盤が揺らいでいました。
完全子会社化することで
意思決定の速度を上げて
再建を円滑に進める考えです。
2017年12月に
多額の研究開発費を投じて
抗がん剤の開発を加速すると表明しました。
2020年度までに総額9000億円の
研究開発費を投じて
2025年度までに7つの大型新薬を発売して
同事業の売上高を現在の20倍の
3000億円に引き上げる計画です。
「あらゆる資源をがんに傾斜配分する」
「資金が足りなければ
M&Aなどの予算枠になる事業開発費の
5000億円も投入する」と
<第一三共>の中山譲治会長は
研究開発部門の戦略説明会で強調しました。
<第一三共>を歴史的に見れば
循環器系の治療薬大手ですが
2008年に買収した
インドの後発薬大手<ランバクシー>は
品質不正などの不祥事を繰り返して
巨額損失の計上に追い込まれました。
経営が混乱して新薬の開発も停滞し
大型治療薬の特許切れを迎えるなど
厳しい経営の状況にありました。
中山譲治会長が2016年に
英国の<アストラゼネカ>から
がん領域の研究部門の責任者に迎えた
アントワン・イヴェル氏が手腕を発揮して
新薬候補品が揃ってきました。
2018年3月に
<日立化成>と再生医療製品の製造で
提携したと発表しました。
<日立化成>は再生医療製品の新工場で
<第一三共>の治験薬を製造します。
2018年4月に
創薬支援ベンチャーである
米国の<ダーウィンヘルス>と
がん治療薬の標的になる
がん細胞だけに現れるたんぱく質などの
物質を探し出す共同研究を
始めると発表しました。
<第一三共>が持つ創薬の知見と
<ダーウィンヘルス>の解析技術を
組み合わせることで
がん標的の候補物質を探索・評価・検証して
がん治療薬の開発につなげます。
2018年4月に発表した
「2018年3月期」の連結決算は
純利益が13%増でした。
同時に発表した
「2019年3月期」の連結純利益は
前期比9%減の見込みと発表しました。
欧米で特許が切れた高血圧症治療薬
「オルメサルタン」の特許切れや
国内の薬価引き下げなどで
採算が悪化すると予測しています。
2018年5月に
1つの抗体で2種類の抗原に結合する
「二重特異性抗体」に関して
カナダのバイオベンチャーである
<ザイムワークス>との
共同研究を広げると発表しました。
2016年に<ザイムワークス>と
共同研究契約を結びましたが
「二重特異性抗体」の作製技術について
新たに2種類の抗体の権利を取得しました。
通常の抗体は1つの抗体につき
1種類の抗原としか結合しません。
二重特異性抗体の特長を生かせば
従来の抗体では
実現できなかった作用が期待できます。
2018年7月に
特許切れ医薬品の一部を医薬品卸大手の
<アルフレッサ・HD>へ譲渡すると発表。
特許切れ医薬品は薬価制度改革で
価格を引き下げる仕組みが導入され
収益環境が厳しくなっています。
限られた経営資源を
次の成長の柱として取り組む
がん事業に振り向ける考えです。
2018年10月に
白血病を対象に開発中の抗がん剤
「キザルチニブ」の製造販売承認を
日本国内で申請したと発表しました。
厚生労働省から希少疾病用医薬品に指定され
迅速な審査が受けられる見通しです。
同じく2018年10月に
開発中の抗がん剤について
ドイツの<メルク>と米国<ファイザー>の
2社と提携したと発表しました。
<第一三共>が開発中の抗がん剤で
2社の医薬品と併用する効果を
確認する臨床試験を始めます。
2018年12月に
がん治療薬の開発を加速するため
世界で臨床試験支援を手がける
米国の<サラ・キャノン研究所>と
提携契約を結んだと発表しました。
がん治療薬候補について
治験施設のネットワークを利用して
患者を素早く集められるほか
日米欧など主要国で
同時に治験を進められるようになります。
2019年3月に
英国の製薬大手である<アストラゼネカ>
との提携を発表しました。
売上高の30%をがん領域で稼ぎ
世界70カ国以上に販売網を持つ
<アストラゼネカ>との提携は
本格的に抗がん剤に参入する
<第一三共>にとって
強力なパートナーになります。
<第一三共>の中山譲治会長は
<アストラゼネカ>について……
「がん治療薬で豊富な経験があり
単独の場合より薬の価値を高められる」
と記者会見で述べています。
<第一三共>は「特許の崖」と呼ばれる
特許切れによる業績悪化の懸念から
中山譲治会長の事業の英断により
『がんの新薬開発』という
新たなビジネスモデルへの転換に取り組み
市場関係者から注目される
有望企業へと変身することができました。
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株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役
未来志向型経営コンサルタント
愛知産業大学 非常勤講師
中部大学 非常勤講師
渡邉ひとし
E-mail:mirai-design@ogaki-tv.ne.jp
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