07) 白亜の寺ワット・ロン・クン再訪 | BIG BLUE SKY -around the world-

07) 白亜の寺ワット・ロン・クン再訪

第七話) 白亜の寺ワット・ロン・クン再訪

Pop に頼んで、チェンラーイ郊外の、白亜の寺ワット・ロン・クンを訪ねる。
2010年 7月27日以来、六年振りの再訪だ。
前回は、改修中の本堂の周りに足場が組まれていて、全貌を見ることは適わなかった。
いつの日か再訪したいと考えていた。

2014年には、チェンラーイ県内を震源とした大地震に遭い、尖塔が折れ曲がる等の被害を受けた。
しばらく閉鎖して修復工事が行われていたが、二年が経ってそれも完了済みだ。
今回は、本堂の白一色の全景を、十分に拝観することができた。
修復にかけた人々の労苦に敬意を表したい。



[白亜の寺ワット・ロン・クン,チェンラーイ] (2016)
Wat Rong Khun "White Temple",Chinag Rai, Thailand


このワットをデザインしているチェンラーイ出身のアーティスト Chalermchai Kositpipat 氏は、禁酒・禁煙を熱心に訴えていると見える。
六年前に比べると、禁酒・禁煙に関わる像やピクトグラムが、とても増えている。
ウィスキー・ボトルや各国の煙草を配した作品に、氏の訴えを感じる。
また何年後かに再訪して、新たな建屋・展示物を鑑賞することにしたい。



[禁煙のピクトグラム,ワット・ロン・クン] (2016)
One of remarkable pictograms, Wat Rong Khun, Chiang Rai, Thailand


ところで、本堂入り口前の助けを求める衆生の手の中に、赤いマニキュアが塗られた指が一本見えた。
一体、誰がこのようなことをしたのだろうか?
自国の文化を大切にする、この国の人とは考え難い。
信仰篤い Erika に言ったところ、唖然として言葉も出ない様子だった。



[助けを求める衆生の手,ワット・ロン・クン] (2016)  中央部やや右寄り (236, 185) に赤い爪の指が見える
A finger with red manicured nail. Who done it?


もう一つ、ここを訪ねるならば、是非とも見たいものがあった。
ワット・ロン・クン前からバス通りに向かう途中に置かれていた、大きな木の根を使った彫像である。
木の根の元の形状を活かして、数え切れないくらいの象を彫り込んだものだ。
象は、ねじれた鼻を伸ばし、身体を寄せ合って、苦悶の表情を浮かべているように見えた。

タイを代表する芸術家による白亜の寺ワット・ロン・クンのすぐ近くに、おそらくは無名の作者の手による木の根に彫った象が、ただ打ち置かれていることに衝撃を受けた。
ワット・ロン・クンの本堂へと向かうスロープの両側には、天に向かって伸びる無数の灰色の手が有った。
木の根に彫った象の苦悶は、無数の灰色の手にも勝る迫力であった。
この国の文化の奥深さを感じるとともに、おそらくは無名の作者に畏敬の念を覚えた。



[木の根に彫った象] (2010)
Numerous Elephant Images Carved in Wood, Chiang Rai, Thailand


木の根の彫像は、六年前に在った場所から姿を消していた。
残念ではあるが、おそらくはどこか相応しい場所に展示されているのだろう。
いつの日かどこかで再会できることを望む。


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