映画と自転車と私。 -3ページ目

映画と自転車と私。

京都で飄々としながら、映画(99%)や自転車旅行(1%)のことを綴ります。

【5+】
アッバス・キアロスタミの最新作です

キアロスタミの作品は「5 five ~小津安二郎に捧げる~」と他監督とのオムニバス映画「明日へのチケット」しか見たことなかったんですが、予告編を見て、

「全部日本で撮ってる?しかもキャストも日本人?お爺さんとお姉さんのピュアな恋?わ!このお姉さん綺麗!」

となり、観に行ったのです

「明日へのチケット」でもそうだったんですが、キアロスタミはガラスを使っての反射に関してはもう、天才としか言いようがありませんね

タカシの寝室にて下着姿のアキコが、消したTVに反射する様子は「今までみた何よりもエロい・・・」と思ってしまいました

そして一夜明けてアキコを大学へと送り届けるタカシの車のフロントガラスに朝の青空がくるくると回転しながら映る様子がなんとも綺麗

これは二人の出会いとこれからの様子がクルクルと変わっていくことを暗示しているのでしょうか

二人の出会いはアキコは自分がコールガールとして呼ばれたので、その役目を全うしようとする

しかしタカシはどうやらアキコのことを以前から知っていた(彼女のとっている講義の教鞭をとっていた)?

そして一夜を共にし(実際は共にしていないことが映画の端々で感じ取れます)、二人の間に甘い信頼関係のようなものが流れ始めます

そしてあの衝撃のラスト

これは俳優たちにも教えていられなかったようで、タカシを演じる俳優さんは本当に腰をぬかしてしまったのだとか

どうしてもあのラストが意味することは分からないのですが、人生の経験を十分につみ、人々(観客)に安心感を与える神のような存在として登場していたタカシもやっぱり普通の人だったんだなぁ、とよく分からない安堵を覚えました

この映画で初めて高梨臨という女優を知ったのですが、本当にどうしようもないくらいのフォトジェニックですね

この映画に出演するにあたってキアロスタミに「演技をするな」と指導されていたらしく、この映画の映るアキコが高梨臨そのものだとしたら、完全にもうノックアウトでした

彼女の今後の活躍にも期待です

DVDが出たらもう一度見たい作品です
【5-】
どうしてここまでガラスのように繊細な物語が描けるのか

CanonのEOSで撮ったであろう映像がその儚さを助長しています

音もときどき割れてしまったり、突然大きくなったりしますが、それが更に物語の世界を作り上げている

殺人が目的ではなく、他人の血をただ飲むことだけを欲する主人公

そして自分の存在意義を見出せず、孤独の中に生きている女性

そんな二人が出会い、相手を探していたピースのようにカチリとはまり合う

優しいけれど、苦しい、そんな二人の触れたら壊れてしまうような恋模様に涙、です
【5+】

松たか子の目の演技が素晴らしい

夫に料理の指示をするがごとく、次に狙う女性を阿吽の呼吸で指示していく

なぜ夫の阿部サダヲだけが汚れ仕事を引き受け、松たか子は自分の身体を汚さずに普通のバイトをしているのか、と指摘している人がいましたが私の予想としては、

・松たか子は子どものできない身体であり、ゆえにそれに至る行為自体もしない
(作中で子宮がんである、と偽るシーンがありましたが、あながち嘘ではないと思います)

・故に夫が自分よりも不細工な重量挙げ選手とそのような行為をもつことが許せない
(外見的には自分よりも劣っている女性にさえ、自分は女としての機能を果たせないがために負けている)

・家でひとり自慰をするシーンはささやかながらの抵抗である

・子どもを作ることができない身体でありながらも、月経はしっかりとくる自分に嫌気がさしている

と、こういう風に推測しました

ラストの漁港のシーンで彼女が一体、なにを見たのかが気になります