航空業界なんて、外から見れば「華やかそう」だとか、「女の世界」って思う人が多い。


まさに「女の世界」そのもの。

そこはまるで戦場。

新人たちはお局にいじめられ、いじめられた新人はいずれ後から入った新入社員をいじめる。

そういうサイクルができている。


しかも、他人を蹴落として自分が這い上がろうと思っている人達が多い。

お客様の前では、笑顔でも、係員同士だと、顔が鬼のよう。

そんな人が何人いたことか・・・


自分がいじめられた分、新人が入ってきたらいじめてやろうとか、そんなことは考えもしなかったけれど、ここにいたらきっとわたしもそうなってしまっただろう。


GHの間でこんな有様なんだから、CAの間ではもっとすごいのかな。

ちょうど去年のGWの繁忙期を追えた頃、たしか土日だったような・・・。


その日はたまたまカウンターが混雑していた。

わたしのアサインされた場所はバゲージカウンター。


並んでいるお客様を手際よくさばき、手荷物のチェックインを受ける。


ある一人の旅客から宅空便で送りたいとの申し出があった。

宅空便というのは、飛行機に搭乗する旅客の荷物を到着空港ではなく、自宅まで宅配するサービス。

たとえば、羽田→福岡に搭乗するのであれば、九州ほぼ全域に翌日荷物を宅配できる。

そしてスーパー宅空便なら当日配達ができる。

ただし、その場合は到着空港に12:00までに着く便が対象。しかも配達区域が限られる。


宅空便を受託するのが2回目くらいで、少し不安があったので、マニュアルを広げようとした。

そばにいた先輩が「スーパーでいけるよ」と一言。

先輩は配達先を聞かずに受託し始めた。


配達可能地域なのか、不安になってマニュアルを広げようとしたところ、ものすごい勢いで怒られた。

「スーパーは12:00までの到着便が対象だって知らないの?」

何も言いかえせず、したがった。

そばで黙って受託手順を見ていた。

最後に、印鑑をちょうだいといわれた。

(なんでわたしの印鑑を押すんだろう?自分が受託したんなら自分の押せばいいのに・・・)

手渡してしまった。


これが大きな間違いだった。


数時間後、営業所が大騒ぎになった。

その時わたしはゲートを担当していた。

ゲートに電話が鳴った。


「すぐに営業所に戻れ」


恐る恐る戻ると、インチャージが福岡空港との電話のやり取りをしている。


わたしが受託した(ことになっているが実際は先輩が受託した)宅空便は配達先が熊本だった。

よって、当日配送は不可能であるということ。


福岡空港と旅客を巻き込んだ大騒動になっていた。

受託伝票にはわたしの印鑑が押してあった。

よって、全てわたしの責任になった。


反論したいことは山ほどあった。

こんなことなら自分で最初から最後まで受け付ければよかった。

自分のミスじゃないのに、印鑑ひとつでわたしの責任は納得できない。


「まだ新人だから手伝ってあげよう」という先輩の好意からのミスだから、責めることも、受け入れることもできない。


結局事情を説明したが、男性社員から

「印鑑はたとえ先輩でも絶対に貸したらだめだ。今回はお前のミスってことにしろ。」


余計に腹が立つ。

その事件以来、先輩も、他の人も誰も信用できなくなった。

どこがチームワークなの?

全然なってないじゃないか。


この職場にチームワークという言葉はふさわしくないんじゃない?

わたしがまだ入社して間もない頃、母親から一通の手紙が届いた。


封を切ると、中には一枚の新聞記事のコピーが入っていた。


それは、パイロットになりたいという夢を叶えた、ある一人の女性の記事だった。


「夢に向かって頑張れる人と、そうでない人がいます。わたしは頑張れる人だったんだと思います」

その女性の言葉に、しっかりとマーキングしてあった。


わたしがCAになりたいという想いを打ち明けてから、今まで両親は一度も賛成しなかった。

最終試験を終えて、選考結果の電話をもらえず、内定がもらえなかったとわかったとき、父親は喜んでいた。

CAになってほしくない両親の気持ちはわからなくもない。

だけど、それでもなりたいという想いを諦めることは1度もなかった。


その記事はおそらく父がみつけて、母に送るように指示したんだろう。

口では反対していても、内心は応援してもらえている気がした。


今でもその手紙は大事にとってある。