全ては、とある生徒さんのミスから始まった。
本来藤川に渡るはずだった義理チョコが、女友逹のA子ちゃんに渡った。
これだけなら問題はさしたることはなかった。
そのチョコには、「飲みすぎないように」という、これ以上にない心温まる文言が書かれていただけだから。
宛名が「アル中」であったことは、この際無視しよう。
問題は、本来渡るはずだった友人の女の子の名前を仮にA子ちゃんとしよう。
事件はバレンタイン当日に起こった。
その教え子は、知り合いの男の子と遭遇した。
そのこは、目茶苦茶モテるにもかかわらず、その教え子にチョコをこう要求した。
「オレ、一個ももらっていないんだよね。」
お人好しの教え子は、そんな甘い誘いにのって、本来藤川に渡るはずだと思っていたチョコを、彼にあげた。
彼の名前を仮にAとしよう。
しかし、そのチョコは本来A子ちゃんに渡るはずだった。女の子の名前はA子ちゃん。もらったのはA君。
そして、そのチョコにはA子ちゃんのリクエストで、
「Aちゃん、愛してる」
と書いてあった。
その後、どうなったかは、想像するに余りある。
彼女は先日までの約一週間、誤解を解くために奔走する羽目になる。
藤川への義理チョコを、他人にやったバツだ。
というのは、大人氣ない感想だと思うのは藤川だけではあるまいorz