懇親会が始まった。

5大学の選手、マネージャー達が一同に集まり杯を交わす。

貴重な機会だ。

みんなそれぞれ酒を飲む、しゃべっては飲む、語っては飲む・・・・・・。

みんなできあがった頃、表彰式があった。

まずは全体の表彰式である。

5位から順に表彰があり、いよいよ優勝杯の授与である。

代表で主将の私が優勝杯を受け取った。うれしいものである。

副賞はビヨンドマックスであった。

いま、我がチームには2本のビヨンドマックスがあるが、そのうち1本は過去のこの大会での優勝賞品である。

今回で3本目となった。

その後、各チームから選出された各賞と全体から1名選出されるMVP賞がある。

今まで15年ほど我が大学の野球部でプレーしてきたが、いままで一度もこの賞を得たことはない。

いつか取ってやる。そのためにも自己鍛錬だ!

結果は、チーム敢闘賞はゴリ、チームMVPはノリ、そして全体のMVPはニシモであった。

妥当といえば妥当だが、敢闘賞のゴリは、今回の大会に関して、様々な事務対応等をしてくれたと言うことらしい。

ゴリは、「なんか、あまりうれしくないですね。野球のプレーでほしいです。」そう、いっていた。

確かにそうだなぁ。副賞はリストバンドであった。

チームMVPのノリの副賞はバッティンググローブ、そして全体のMVPのニシモはグローブであった。

いいよなぁ。。。。。。

その後、優勝監督のコメントがあった。

「私たちは、勝つためにここに来ています。勝たなければ意味がない。」そんな強いメッセージだった。

「勝つ」ために野球をやる。

何とわかりやすいコメントかと思う。ただ、思うことは、今回は全員出場できたから良いものの、もしこの場に試合に出場できなかった者がいたらどうだろうか?この監督のコメントをどう受け取っただろう。

「くっそぉ~、俺もいつか勝ちに貢献できる選手になってやる。」そう思ってくれたらいいが、「お前らで勝手にやっとけや。」と、なってしまうと、どうしようもない。

実は私も、一昔前は、後者の気持ちを感じていた人間だった。

それが積み重なりヤンチャーズの結成に至ったのである。

もし出場できない者がいたとしても、みんなが前者の気持ちで取り組めるようなチームを作りたい。

ほろ酔い気分で、そんなことを考えた。


話は戻って、舞台上を見ると、毎度恒例となっている優勝杯でお酒をのむ儀式が行われていた。

これ、毎年恐怖なのであるが、優勝杯にお酒をつぐと、そこになんかゴミが浮いていることがある。

これを飲まなければならない。その上、飲みにくいのなんのって・・・・・。服の前がべとべとに濡れてしまう。

あぁ、、、、いやだ~。。。。。。


そんなことを言っているうちに宴も終了し、楽しいひとときは終了した。

監督を見送り、選手だけでもう1軒飲み直し、楽しい夜は終焉となった。

本当に楽しい1日だった。

これも「勝ち」を得たからこそだろう。。。。。。

懇親会場まで車で約1時間の道のりであった。

車の中では、リョウタの結婚式の段取りの話や野球ネタで盛り上がった。

その中で、監督が漫画好きであることがわかり、同時に野球漫画ネタで盛り上がった。

特に盛り上がったのは、それぞれの時代の野球漫画のことについてだった。

監督の野球漫画はやはり「巨人の星」をはじめとするジャイアンツ全盛期のものだった。

時代を感じる・・・・・。

私たちはあまり記憶がない。

かろうじて「侍ジャイアンツ」のえびぞりハイジャンプ魔球は絡むことができた。

ただ、巨人の星のストーリーについて、熱く語る監督を見たとき、「この人も俺と同類や。ほんまに野球がすきなんやろうなぁ。。。。」と強く感じた。

それにしても監督は野球もさながら、漫画が好きだ。

「北斗の拳」「課長 島耕作」などの漫画本は全部持っている。と自慢されていた。

私も、「北斗の拳」ははまったなぁ・・・・・。ラオウが死んだとき、本当に悲しかったし、死兆星が見えないか夜空を見たこともあった。(わかる人は「うんうん。」と頷いているはずだ。)


ハマは「バッテリー」を見て感動したという。

これは漫画ではない。あさのあつこのベストセラー小説である。

最近映画化され、ハマは涙を流したという。

私も見た。

ただ、私は先に小説を読んでいたし、映画化に対する期待が大きかったせいか、それほど感動しなかった。残念である。ちょっと端折りすぎではないかと悔しい気持ちにもなった。。。


また、私の野球漫画のおすすめは「やったろうじゃん!」である。

原 秀則の野球漫画は面白い。

最近では「ダイヤのA」や「大きく振りかぶって」なんかが面白い・・・・・。

ま、漫画の話はこれくらいにしておこう。きりがない。

さらに車の中では最近ハマが空手を習っているという話から、監督の「空手バカ一代」?の話で盛り上がった。

正直、私はどんな漫画かぜんぜんわからなかった。


そんなこんなのうちに京都市内にある懇親会場に到着した。

到着後、お風呂に入り、その後、懇親会までの時間、大広間でくつろいだ。

車の中といい、今の何もないひとときは、贅沢過ぎる時間であった。

試合終了後、みんなグラウンドを出て荷物を整理していた。

一様に笑顔があふれていた。

やはり勝つことはいい。特に今日は人数がぎりぎりだったということもあり、全員が出場して、全員で勝利を勝ち取った。


決して、楽しむことなどできない試合だった。

プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、みんな一生懸命戦った。

でも、振り返るととっても楽しい試合だった。


なぜだろう・・・・・?


簡単なことである、「勝った」からだ。

これに気づくまでにかなり遠回りをしてきたと思う。

でも、その遠回りに無駄なものは一つもなかったと強く思う。

また、今回は勝利以上に8連覇という、すばらしいお土産までついてきている。

8連覇だ。8年間、ずっと我が大学は優勝してきたのだ。

たかが草野球の試合だが、決して簡単なことではない。

全員がそれぞれの役割を果たし、その役割が一つになって初めて手にできるものである。

そう考えると、我々の偉業はすごいことなんだと感じた。

新生職員野球部になって、初めての充実感だった。

ずっと、この充実感の中で野球をしていたい。

そう、強く思った。


その後、懇親会場に行くため、車に分乗した。

ゴリの車には、私とゴリ、ハマそして監督の4人で乗り込んだ。

さて、ここで気になったのが体のケアである。

いつも野球の後は、肩と肘をアイシングしている。

最近は100球投げようが、10球投げようが、どちらも一緒でアイシングを怠ると次の日はえらいことになる。

痛くてたまらないのだ。

ただ、今日は、1回しか投げていない。

30球くらいだろうか?

そのような状態で、かつ監督の前で、氷を買うためにコンビニに寄ってくれとは言いにくかったが、次の日や今後のことを考えるとどうしてもケアをしておきたかった。

ボソボソと車の中で「アイシングのための氷を買いたいのでコンビニに寄ってもらっていいですか?」と、そういった。

案の定、監督には「えっ!?お前が!?」と、驚きのような口調でちゃかされた。

悔しかったが、笑ってごまかすしかなかった。

早く、堂々とアイシングができるようになりたい。

監督から「アイシングしておけ。」といわれるようなピッチャーになりたい。

ささやかな願いである。

同点にされた裏の回、いやなムードを振り払うためにも、この回で突き放したい。

いや、突き放さなければならない。

その願いが通じたのか、相手投手の制球が定まらない。

9番イクと1番ヒデキが連続で四球を選び、出塁した。

2番ニシモが左翼フライで倒れ1死1・2塁となったものの、続く3番はリョウタだ。

十分期待できる。

そのリョウタ、フルカウントからの6球目を見事にセンター前に打ち返した。

勝ち越しだ。

その後、ノリが四球、ハマが1塁フライで2死満塁となった。

ここで私に打順が回った。


「初球だ!」


全く周りの声が聞こえなかった。ただただ相手投手をにらみ、ボールに集中した。

初球が投じられた。ねらい通り、高めの甘いストライクだ。

思い切り振り抜くと打球はレフト横に見事に突き刺さった。

2点タイムリーだ。

私の手でとどめを刺した。そうだ、私のひとふりだ!

これで7対4となり、8連覇がぐぐっと近づいた。


その裏、時間の関係で最終回とのこと、何とも消化不良の試合だったがしかたない。

ノリが3人できっちりしとめてゲームセット。

見事、優勝となった。


試合終了後、打てて良かった。ということ以上に優勝できて良かったと心底思った。

そう思った瞬間、何とも言えない疲労感が襲ってきた。

優勝と言うプレッシャーから解き放たれたのだろう。

東京ほどではないが、やはりプレッシャーというのはしんどい。

でも、この感覚になれてこそ本当の力がつき、そしてさらに、東京遠征で本当の力を発揮できるようになるんだと感じた。

もっともっと、この感覚を全身で感じ、試合になれると同時に、プレッシャーを楽しめるくらいになりたい。

「よしっ!」そう自分に声をかけた。

心地よい初秋の休日だった。

3点ビハインドの1回裏の攻撃は、ヒデキからである。

さすがヒデキである、きっちりボールを見極め、四球で出塁した。

2番はニシモ。若手の筆頭だろうか?思い切りの良さはずば抜けていると思う。

そのニシモ、追い込まれてからの5球目、右翼線に見事に安打を打った。

3番リョウタの時にヒデキとニシモが一緒に盗塁を決め、無死2・3塁となった。

チャンスだ!一気にいけ!

と、その時、相手投手が暴投を投げ、1点をいただいた。ラッキー。


さらにリョウタが1塁線に安打を放ち、見事に期待に応え、あっという間に1点差とした。

4番ノリは投手ゴロに倒れたが、続くハマが左翼線に安打を放ちチャンスを広げた。

ここで私が打席に入った。粘りに粘ってフルカウントとなった8球目、内角を思い切り引っ張ったが、悔しくも遊撃ゴロに倒れ、2死となる。

7番はゴリだ、ゴリはチャンスに強い。みんなの期待が集まる。

1S1Bからの3球目、ボテボテの遊撃ゴロだったが、な、なんと1塁手が送球を後逸してしまった。

またまた、ラッキー。

この間にハマと私が帰還し、見事に逆転に成功した。

そして、やはりゴリはチャンスに強かった。(笑)

その後、まっちゃんが倒れこの回4点とり逆転に成功した。


次の回、ノリは逆転した勢いをそのままに、先頭打者を三振に切って取った。

その後、1番に返り、その打者が3塁線にセーフティーバントをした、ノリが捕球し、私に投げる。

送球は高くそれたが、私も背を伸ばしボールを取りにいった。

「バシッ!」捕球したつもりが、なんとボールは転々と後ろに反れていた。

「あいたぁ~!」失策である。やってしまった。

しかしノリは崩れることなく2番を遊撃ゴロに打ち取り2死2塁となった。

迎える3番。先ほどの回でも3塁打を打っている。要注意の打者だ。

ファールの後の2球目、これまた見事にとらえられ、打球は右翼線に転がるタイムリー3塁打となってしまった。

私の失策がなければ・・・・・。

そう考えてしまったが、こう考えることがいけないんだ!そう言い聞かせた。

しかし、その後ノリは4番をきっちり打ち取り、チェンジとなった。


手に汗握るシーソーゲームとでも言おうか、取ったら取り返すの試合展開だ。

乱打線のため、必要以上に時間を要している。このままでは、5回どころか、3回もできないのではないかと思った。


早めに点を取って引き離さなければ。

気合いを入れて、裏の攻撃にうつった。

軽く練習した後、試合に備えた。

天候が危うかったが、何とか回復し、いよいよ決勝戦が始まった。

私は6番ファーストでスタメンであった。

と、いうより人数が9人しかいないため、やはり全員スタメンとなる。(笑)

我が大学は後攻である。

初回をきっちり押さえて、裏の攻撃で先制点をいただきたいものだ。

しかし、先頭打者にいきなりセンター前に安打を放たれた。

続くバッターを三振に打ち取ったものの、その間に盗塁で進塁された。

3番打者に対し、2S1Bと追い込んだ後の4球目を見事に打たれ、打球は無惨にも左中間のど真ん中を破っていった。

こちらがいただく予定だった先制点を先に取られてしまった。

その後、ノリは動揺してしまったようだった。

続く打者にもボールが先攻する。ストライクが入らない、結局四球を出してしまいランナーをためた。

すかさず1塁走者に盗塁を決められ、1死2・3塁のピンチは続いた。

ここで、まさかの捕手後逸。3累走者が帰り、さらに1点取られてしまった。

続く打者を3塁ゴロにしとめ、2死までこぎつけた。

迎えるは6番打者。1S1Bからの3球目、打球は三塁へのボテボテのゴロだった。

三塁手のハマが華麗にさばき、チェンジ・・・・・といきたいところだったが、やはり緊張していたのか、中途半端な送球となってしまった。

私もこの送球にはタイミングを合わすことができず、結局後ろにそらしてしまい、この回、3点目を献上してしまった。

いやなムードだ。。。。。続く7番にも四球を与えてしまい、なおもピンチが続く。

しかし、さすがノリだ、気持ちを切り替え、8番打者をきっちり三振に打ち取った。

いきなり3点のビハインドとなってしまった。


しかし、負けるわけにはいかない。

今から、優勝への逆転劇が始まるんだ。

そう信じた。

試合を終え、私たちはメイングラウンドに移動した。

これから13:50まで約3時間ほど時間をつぶさなければならない。

みんなスタンドに座り、寝ころび、それぞれ他愛もない話をしている。

プロ野球の話、ヤンチャーズの話、家族の話、夏休みの話、下ネタなど、皆それぞれ言いたいことばかり言って笑いあっていた。

本当に無駄だが、とても貴重で、なんとも気持ちの良いひとときだった。


そんな中、私がトイレに行こうとするとリョウタが監督と話していた。

目が合うと私に向かって「今、監督に籍を入れることを伝えました。」そう教えてくれた。

うれしそうにニコニコしていた。

監督は私に向かって「おい、なんかしたれよ。」そういった。

私は「もちろんしますよ。その際は心に残る感動スピーチをお願いします。笑いじゃなく、涙を取ってください。」そう答えた。

監督はニヤニヤしながら遠くに目をやった。


再度、スタンドに戻り、他校の試合を観戦する。

しばらくすると弁当が運ばれてきたので、みんなで昼飯をとった。

ただ、過去この同立校杯では、まともに昼飯を食べたことはない。

そうだ、いつも投手をして、制球が定まらず、バカみたいに球数を投げていたせいで、ゲロゲロになり、昼飯どころではなかった。

今年は違う、弁当の漬け物一つ残さず平らげた。

寂しいような、うれしいような、そんな昼下がりだった。


昼食後、みんなとリョウタの結婚式のことで話した。

すべて会費制で、結婚式と披露宴をしたいことを伝えると、皆一同に賛成してくれた。

私の思いとしては、11月頃に結婚パーティーを行いたいと考えている。

これから、ここにいる連中と協力して、心に残る結婚式をプレゼントしてやりたい。


そんな話をしていると、知らないうちに試合開始1時間前になっていた。

さっ、8連覇めざしてぼちぼち練習を始めよう。

対戦相手はO大学であった。

相手にとって不足はない。

いざっ!

マウンドに立った。

やはり東京の悪夢がよみがえる。

ただ、その時とは何か違っていた。

「投げてやる。思いっきり投げてやる。それで当たるなら後悔はしない。むしろ当ててやる。顔に!」そんなことを思っていた。

しかし、バッターボックスに立っていたのは女性プレーヤーだった。

えっ・・・・・!

言葉を失った。

相手チームからいろんな言葉が飛び交う。

「当てたらシャレにならんでぇ~。」「手加減なしなんてことはないよなぁ~。」

正直、耳障りだった。

「お宅らにとっちゃ捨て試合かもしれないが、俺に取っちゃ結構重要な場面なんです。ちょっと黙ってください。」

相手ベンチの前でこういってやろうかと思った。

ただ、今の自分の中では女性だろうと美人だろうと関係なかった。

「当てたる・・・・・。」

そう思い、第1球を投じた。


「ストライック!」外角高めに決まった。

「よっしゃぁ!」俺がそう発する前に後ろでヒデキが叫んだ。

続く2球目はボール、3球目はファールだった。

下手な男性選手より、よっぽど上手だった。

バットに当てやがった、くそったれ!そう思い、4球目を投じたがボール。

これで2S2B。フルカウントになるのはいやだ。

そう思って投じた5球目、どん詰まりの一塁ゴロに打ち取った。

よしっ!1人打ち取ったり!


その後はあまり覚えていない。

必死で投げていた。

あとでスコアを見ると三塁ゴロと三振できっちり3人で打ち取った。

時間の関係で、これでゲームセットとなり、我が大学は見事1回戦を勝った。

整列のとき、みんなが声を揃えて「ナイスピー!」と讃えてくれた。

うれしかった。


あんなに1死が遠かった東京が嘘のようだった。

心を鍛えなきゃ。

新たな挑戦が始まった。

「次の回から投げろ。」

監督が私にそういった。


うれしかった。

さらに「4点までならゆるす。それ以上取られたらその場で交代だ。」

監督はさらにそう付け加えた。

なぜかすごく気分が楽になった。なぜだかわからない。

ただ、3点取られてもいいや。。。。という気持ちになったのは確かである。

それに加え、キャッチャーもゴリに交代であった。

ゴリとバッテリーを組むのも久しぶりだ。

なんかとっても落ち着くのは気のせいであろうか。

ゴリが言う「当てたりましょ。デッドボール7つまで大丈夫ですよ。(笑)」

この一言でさらに楽になった。私の心境を見事に和ませてくれる一言である。


正直、あの東京以来、野球が嫌いになっていた。

煮え切らないまま、この1ヶ月過ごしてきたように思う。

ほんの数日前に練習を始め、今日のこの日を迎えている。


その後、投球練習の時間は多くあった。

なぜなら、我が大学の攻撃はさらに続いたからである。

先頭の9番イクが死球、1番ヒデキが遊撃ライナー、その後、四球、右翼安打、四球、一塁失策、左翼安打、中翼安打、とどめの四球・・・・・気がついたら5点いただき、点差は12点開いていた。

「これなら8点まで大丈夫だ・・・・。」勝手にそんなことを考えていた。(笑)

でも、そんなつもりはさらさらなく、きっちり3人で終わらせてやると心に決めていた。

44日ぶりのマウンドが目の前に近づいていた。

ただ、東京遠征とは気持ちが全然異なり、不思議なほど落ち着いていた。


やってやる。

そう、思っていた。

我が大学の職員野球部は攻撃の手をゆるめない。

次の回、先頭の9番イクが四球で出塁し、1番に戻ってヒデキが投手ゴロに打ち取られたが、併殺を焦った二塁手が失策し、さらに2番のニシモが四球を選び出塁して無死満塁のチャンスである。

3番のリョウタが投手ゴロで本塁アウトとなり、一死となるが、ここで4番のノリである。


この回が始まるとき、ノリが私に「大量得点をつけて、キャップの登板機会を作ります。がんばってくださいね。」と言ってくれた。

なんてかわいい後輩なんだ。正直、心底うれしかった。

東京大炎上をした先輩に、まだこんな声をかけてくれるなんて。

でも、そんなことよりまずは勝つこと。

投げられるかどうかなんてどうでもいい。私のことより、まず勝つことが今の自分にとっては重要であった。

投手より、主将として、このチームを勝利に導く。

それが私の仕事である。


そのノリが、有言実行だ。

見事期待に応え、右翼線にタイムリーを放つ。

その後、5番のハマが四球を選び押し出しで1点もらった。

続く打者は私である。

ノリもこれほどまでがんばってくれている。先輩として、先ほどの様に簡単にアウトになってはと、気合いを入れて打席に入った。

1S3Bからの5球目をたたき、左翼犠牲フライとなった。

とりあえずは最低限の仕事は果たせた。(ほっ。。。)

その後、ゴリが四球で出塁するもののまっちゃんが凡打に倒れ、この回、結局3点で終了した。

しかし、この時点で7点もの大量得点差がついた。


登板できるかもしれない、チャンスがほしい。

こんな気分はいままで初めてだった。


次の回もノリは完璧な投球だった。

3人できっちり終了し、私たちの守っている時間は本当に短かった。

さっさと守備を終えてベンチに帰ってきた。

その時であった。

「次の回から投げろ。」監督が私にそういった。