普通の女の子に戻りたい | 錦鯉春助の冒険

錦鯉春助の冒険

日常の恐ろしき風景

 10代の終わりに東京の大学に入り29歳で今の妻と結婚するまでの10年間、僕はまったくテレビを観ていない。部屋にテレビはなかったし、見る暇もなかった。

 

 バイト、酒、女の子、旅行、レコード、映画、読書、コンサートや芝居や絵画の鑑賞とテレビを観る暇がない。

 

 だからキャンディ―ズもピンクレディもテレビで観た事はなかったがラジオで知っていた。

 

 当時はロックンロールを聴くにはその手の喫茶店かレコードを買うかラジオしかなかった。

 

 ラジオから流れる歌謡曲はメロディもリズムもあり好きだった。だが今日の和製ポップスはどうしちまったのか?念仏か童謡のどちらかにしか聴こえない。

 

 当時はアーケード街や商店街には必ず個人経営の映画館があった。2番館や3番館ぱかりだが。映画はテレビに押され斜陽だった。映画人はテレビ界でバイトしてた時代だ。

 

 このときに映画人がテレビ局で作った記念碑的作品がある。藤枝梅安を緒方拳が演じた必殺仕掛人だ。

 

 後にシリーズ化されどんどんつまらなくなるが、シリーズ化されたら007シリーズもつまらなくなるのは宿命だ。

 

 最初の緒方拳主役の仕掛人は原作の池波正太郎をシナリオに使っていたし画面が素晴らしい。

 

 テレビ局が作ると画面は平板の2次元にしかならないが、映画人なら遠近法や陰影を駆使して奥行のある3次元に変える。

 

 大阪環状線、寺田町で降り、源が橋商店街の裏通りに映画館がある。名前は電気館。中でクコ・コーラやフアンターンとバッタモノのコーラ売るのが楽しい。

 

 今日は電気館で原田芳雄主演の「祭りの準備」を見にきたのだ。新人の竹下景子の巨乳にたまげた!

 

 もう一本は何か知らなかつたがピンクレディだった。僕は初めてピンクレディを観て迫力に圧倒された。

 

 25歳前後になると辞めたいと思う。とくにグループに所属に所属すると解散の道を辿る。

 

 ピンクレディもキャンディ―ズも、あのBEETLEだってそうだ。

 

 解散をひた隠しにしていたキャンディ―ズのランの解散すると云う言葉は正しい。そしてあの名言が生まれる。

 

 普通の女の子に戻りたい。この時代にしたら強烈な言葉だ。勇気のいる言葉だ。

 

 この言葉は次々に真似される。普通のオジさんに戻りたい。普通の会社員に戻りたい。普通の主婦に戻りたい。普通の公務員に戻りたい。普通の変態に戻りたい。

 

 40歳過ぎてもアイドルをやらねばならなかった嵐やSMAPは気の毒であったし、良く我慢したと思う。だが彼等の努力は無駄ではない。