若い頃は何故か壮年男性にもてた。あ!誤解してはならない。そちらの方ではない(笑)
飲み屋で知り合うのが圧倒的に壮年男性だった。彼等は殆どが零細企業や中小企業の社長や重役だった。
そして彼等からミナミのクラブによく連れて行って貰った。
大阪と云えば北新地が代名詞だがミナミにも格式あるクラブは存在する。
断わっておくが、クラブのホステスは美人だらけと誤解されがちだが美人は殆どいない。
もし昼間に会えば平凡な娘が殆どだ。しかし名のあるクラブでは給料も高いが教育も厳しい。
化粧も服装もちゃんとしてるし背筋もピンと伸びている。手を抜いた接客はしない。女を全面に出すが決して女を武器にしない。
当時20代の僕が相手に出来る女じゃない。
逆にスナックのママは正反対だ。良いように解釈すると自由奔放なのだ。
何軒かのママからお誘いを匂わせる言葉を受けたが僕は愚鈍なふりをして無視した。
僕が人よりもてた分けではない。僕もバーテンをやってたから同業者なら後腐れないからだ。
ラブホへ行くより酒を飲んで馬鹿話する方が面白いママばかりだった
だがひとりだけ僕好みのママがいた。歳の頃は30代半ばか。
僕は美人でも美人でなくとも関係ない。目元が涼しくて、やや痩せ形が好みだ。
人の話しはちゃんと聴き、媚びを売らず涙を武器にせず出来たら知的な女が良い。
ママはそんな女だった。20代の始めで離婚してからはずっと独身だった。
1年ほど通うとママから飲みに行かないかと誘われた。
その日は会う前に風呂に入り徹底的に身体を洗った。新品のパンツを穿き、何度も齒を磨き、爪をヤスリで研いだ。
彼女は膝が見える水色のワンピースを着てきた。シンプルなワンピースが良く似合う。
谷町筋にあるBARに入った。ママはソルティドッグを飲み、僕はカナディアンウィスキーを頼んだ。飲みやすいが酔いがスキップを踏んでやってくるウィスキーだ。
気がつけばママはテキーラに変えていた。テキーラを飲む女は初めてだ。
「錦鯉君は彼女いるの?」
「今は居ません」
「今は居ないか」
「1年の内に半年彼女が居て、もう半年は独りが理想ですが、アパートには2年も同棲してる猫がいます」
彼女は声を挙げて笑うと、ショットグラスのテキーラを飲み干した。いったい何杯飲むのだろう?
「ねぇ、今夜は猫ちゃんの代わりに私を抱いて眠って欲しいの」
「はい。光栄です」
店を出ると激しく抱き合いキスを繰り返した。こんな女と出来るなんて新品のバンツの中が痛いほと膨らんだ。
しかし異変は直ぐ来た。上六のラブホに向かったが、肩を抱いた彼女の腰がカクカク落ちかけた。
「オシッコ」
「はぁ?」
彼女は道の端でしゃがむとワンピースを託し挙げた。形の良い太腿が僕の目を射るように白かった。
ワンピースに合わせた水色のバンツを膝下まで引き下げると擦過音を立て放尿した。
慌てた。まだ人通りもある。とにかく人に見られないように彼女の前に立った。放尿は長かった。
大量の水溜りが側溝に向って流れる。彼女は拭かずにバンツを挙げた
明日になり酔いが覚めたら彼女はオシッコしたのも忘れるだろう。
これからホテルに入ってもベッドを見ただけで倒れ込み意識を失ったように眠るだろう。
僕にも小さなプライドがある。意識をなくした女を裸にして死んだように動かぬ小便まみれ女と性行為は出来ない。
断腸の思いで今夜彼女を抱くのを諦めた。恐らく今夜諦めたら二度と彼女を抱く機会はあるまい。
僕は苦労して彼女のマンションを聞き出し部屋に入るまで見送った。
残念だが泥酔した女を抱くより猫を抱いて寝る方が良い。
以後、彼女の店には二度と行かなかった。