2023年 第11戦 ハンガリーGP | Glass Labyrinth

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僕の視点からF1での Ferrari のレースと Formula1 Grand Prix について書いてみます。

いよいよ前半戦も最後の1戦、ハンガリーグランプリが開幕しました。連戦でベルギーが終わった後は、待ちに待ったサマーブレイクです。

 

さて、このハンガリーから不振が続くデ・フリースに代わって、昨年限りで契約を途中解除され、マクラーレンを追われたダニエル・リカルドがアルファタウリに加入しました。デ・フリースにとっては久しぶりの高出力フォーミュラマシンで、初めてドライブするトラックも多く、フリー走行時間が減って走行機会の少なくなった近年のグランプリにおいては不利が多かったのかなと思います。でも、おそらくF1以外ではまた成功することができるのではないでしょうか。次のレース人生は上手くいくことを願っています。

 

また、かつてアルファタウリの前身のトロロッソに加入していたリカルドにとっては出戻りの形になり、まさに1からの出直しとなります。グランプリ出走も50回を超えてF1では中堅になりつつあるチームメイトの角田にとっても、リカルドとの対決結果はもはや言い訳できないものとなることでしょう。特に角田は今シーズンのアルファタウリを熟知しているはずなので、尚更厳しく評価されるはずです。にわかに最下位チームが熱視線を浴び始めてきましたね。

 

 

/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/

ハンガロリンク(ブダペスト)

(Formula 1®から抜粋)

 

コース長:4.381 km

レース距離:306.630 km(70 laps)

特徴:・中低速コーナーが多くレイアウトされた中速サーキット

   ・時に猛暑や突然の雨に見舞われることがある

   ・燃料搭載量がラップタイムに大きく影響する

   ・ストレートが短く、オーバーテイクが難しい

   ・主なオーバーテイクポイントはターン1、ターン2

タイヤのコンパウンド:C3〜C5(やや軟らかい〜とても軟らかい)

 

 

/*・・・Qualifying:予選・・・*/

PP 44 L・ハミルトン(メルセデス)

2位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

3位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

4位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

5位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

6位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

7位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

8位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

9位 11 S・ペレス(レッドブル)

10位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

11位 55 C・サインツ(フェラーリ)

12位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

13位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

14位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

15位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

16位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

17位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

18位 63 G・ラッセル(メルセデス)

19位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

20位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

 

Pole Position Time:1:16.609(205.9 km/h)

Fastest Lap Time Throughout the Weekend:PP Time と同じ

 

 

/*・・・Race:決勝・・・*/

WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

3位 11 S・ペレス(レッドブル)

4位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

5位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

6位 63 G・ラッセル(メルセデス)

7位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

8位 55 C・サインツ(フェラーリ)

9位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

10位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

11位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

12位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

13位 21 N・デ・フリース(アルファタウリ・レッドブル)

14位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

15位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

16位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

17位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

18位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

Ret 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

Ret 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

 

Ret:Retire/リタイア。

 

Winner's Time:1:38:08.634(187.5 km/h)

Fastest Lap Time:1:20.504(195.9 km/h @lap 53)

1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

 

 

/*・・・Scope:サプライズ・・・*/

優勝はフェルスタッペン。第5戦マイアミから実に7連勝を達成しました。今の圧倒的なレースペースや、ウェット路面を含めてどんな状況下でも強いことを考えると、これも不滅の記録と思われてきた2013年にセバスチャン・フェテルが打ち立てたグランプリ9連勝も視野に入ってきたのかもしれません。この強さはどこまで続くのか、とても興味深いです。

 

フェルスタッペンが勝ったということは、レッドブルの連勝がまた1つ伸びたことになります。これでレッドブルはシーズンを跨いでグランプリ12連勝、そして開幕11連勝を飾りました。12連勝はF1新記録で、開幕11連勝は最多タイ記録となります。今シーズンが始まった時は、まさかレッドブルがここまでの強さを見せつけるとは思ってもいませんでした。昨シーズン、レッドブルと少しでも争った経験があるフェラーリとメルセデスにとっては、完全にマシンの開発に失敗したシーズンということになりますね。でも、彼らの抱える問題を時間が解決してくれるとは思えません。ある意味、来シーズンも楽しみになってきました。

 

一方、昨シーズン中団に溺れたマクラーレンにとっては、大成功のシーズンと言えるでしょう。たとえフェルスタッペンには勝てなくても、もう1台のレッドブルや他のワークスチームにことごとく勝ってしまったからです。ぼくは、ハンガリーはシルバーストン(イギリス)やレッドブルリンク(オーストリア)のような高速サーキットではないので、マクラーレンは苦戦する確率が大いにあると聞いていたのですが、蓋を開けてみれば予選で2-3、レースでも2-5と、苦戦どころかもはやレッドブルに次ぐ2番手チームの地位を確立しつつあるように感じました。

 

しかも、コストキャップ(チームの運営予算制限規則)のため、ワークスチームと言えども、シーズンのこの時期から大規模なアップデートを投入するのは難しくなります。下手したら、このままマクラーレンがチャンピオンシップ2位を勝ち取ることすらあながち、という状況ではないでしょうか。フェラーリとメルセデスにしてみれば、プライドをかなぐり捨てて来シーズンの開発に集中するのか、あるいはプライドを守るために今シーズンのコンストラクターチャンピオンシップのポジションを死守しにいくのか(メルセデスは2位、フェラーリは3位も可能)、あるいは上手く両方を実現しにいくのか、それとも両方とも失うのか。マクラーレンとしても本当にシーズン2位を目指すのか、あるいは今シーズンよりも来シーズンに焦点を当てて更なる飛躍を狙うのか。各チームの思惑が交錯します。

 

惜しむらくは、ここにアストンマーティンが入ってこないことです。ぼくはこの議論に、現在チャンピオンシップ3位のアストンマーティンをあえて外しました。彼らもシーズン初期は大活躍でグランプリを席巻しましたが、ここにきて失速傾向が強く、失地回復は難しそうに見えるためです。そこには、得意と言われたここハンガリーでの低迷も加味しています。しかもアストンマーティンと言っても、第5戦マイアミ以降で機能しているのはアロンソ1人だけですから、2台ともに活躍するマクラーレンには及ばないだろう、ということもあります。今後アストンマーティンは復活するのか、ここも見所となりそうです。

 

フェラーリも、チャンピオンシップではアストンマーティンに追いつきそうだとは言え、やはり物足りない結果でした。ルクレールが、ほとんど最後尾と言ってもいいグリッドからスタートしたラッセルに追い詰められてしまうのは(確かにピットストップでの遅れがなければ負けはしませんでしたが)、やはりメルセデスに比べてレースペースが遅いことを表していると言えるでしょう。抜きにくいと言われるハンガリーですが、それでも予選結果(レーススタート直後の失速したアルファロメオを除けば5位相当)をレース結果に結びつけられませんでした。

 

反対にサインツは、毎度のことながらいいリカバリーを見せてくれました。ここ数戦、サインツのレースペースがルクレールのそれを上回っているのは心強いことです。ただ、サインツにしてもこの結果が今の限界で、とてもマクラーレンやメルセデスには太刀打ちできません。そして、最近たまに起こすミスが自身の足を引っ張ることも多いように思います。上手く週末をまとめられるようにしてもらいたいものです。

 

最後に、新たな試みとして今回始まったATA(Alternative Tyre Allocation/もう1つ別のタイヤ割り当て)に対しても一言だけ。正直、今回の経緯を見るとまだまだ改善点が多いように感じました。今回は1回目のフリー走行が雨だったため元々走るドライバーは少なかった訳ですが、次からは予選やレースに関係ないこの時間帯は晴れていても誰も走らない可能性があり、大いに改善の余地があると言えるでしょう。

 

 

/*・・・Best Overtaking:アロンソ・・・*/

VS ボッタス(@lap 23/ターン1)

 

今回のベストオーバーテイクは、少し地味に見えるかもしれませんが、アロンソのオーバーテイクから選びました。今回のレースも、かつてのハンガリーでは考えられないほどたくさんのオーバーテイクが見られましたが、このバトルのアロンソほどストレートスピードに頼らない、そして運に頼らない、ロジカルなアプローチをしたものはなかったと思います。

 

アロンソというドライバーは、バトルの巧さでは本当にF1でもトップです。それはアロンソがターゲットを観察し、それに対して自分のアプローチをロジカルに判断し、相手を自分の思う通りに上手く誘導してしまうからだと思います。ぼくはビリヤードが好きなのでそれで例えると、かつてそのトップ・オブ・トップに君臨したエフレン・レイズというプールプレイヤー(プロのビリヤードプレイヤー)のいるのですが、白球(手玉)を自在にコントロールすることからついたニックネームがマジシャン。白球ではないですが、生身の競争相手を自在にコントロールしてしまうことから、アロンソもF1界のマジシャンであるかのように感じてしまうほどです。

 

御託はここまでにしておいて、バトルに目を向けましょう。アロンソは22周目の時点でボッタスにピッタリとくっついていて、いつかわすかを狙っていました。そしてボッタスがターン13でのブレーキングが突っ込み気味になっていたのも目にしていたと思います。次のホームストレートでDRSを効かせてボッタス追いかけますが、アストンマーティンのストレートスピードの遅さとホームストレートの短さからボッタスに並ぶのが精一杯。でも、ボッタスはここでもポジションを守ろうと必死にブレーキングを遅らせて突っ込みすぎ、案の定コーナー出口でアンダーステアを出してしまいました。ボッタスがイン側でブレーキングをがんばっている間、さっさとブレーキングを済ませたアロンソはボッタスのアンダーを見透かしたかのようにターン1のイン側に切り込み、いわゆるクロスラインでかわしてみせました。おそらくこれはアロンソが、ストレートに戻ってくる以前にイメージしていたオーバーテイクそのものだったのかな、と思います。

 

あまりにも簡単に見えるオーバーテイクなので誰でもできるのかと思いきや、なかなかそうはいかない、本物のプロの技です。アロンソの完璧なマシンコントロールに加えて、冷静な予測と判断力、実現力が合わさった完璧なオーバーテイクだと感じました。

 


/*・・・Next Battle:ベルギー・・・*/

次回はサマーブレイク前のラスト1戦、ベルギーグランプリです。ハンガリーから2連戦の2戦目となります。ベルギーグランプリと言えばサマーブレイク後の初戦の位置付けで例年8月末の開催でしたが、今シーズンから7月末に移動となりました。と言ってもこの時期はベルギーは完全な雨季で、2年前の記憶もあり、レースはちゃんと開催できるのかなと心配でもあります。最近のマシンは雨に弱い、というか視界が確保できずに危険だと言われていますからね。

 

舞台はお馴染みのスパ・フランコルシャンです。全開区間と高速コーナーが大部分を占める有名な高速サーキットです。また、2箇所ある非常に長い全開区間のおかげでオーバーテイクも比較的多く、言ってみればバクー(アゼルバイジャン)のセクター3が2箇所あるようなイメージです。また、スパ・ウェザーと言われる天候の急変も度々起こり、予選やレースが驚くような展開になることもあります。

 

今までのレースの傾向とコースの特徴から考えると、ここでもレッドブルに並べるチームはないでしょうね。そして、ここでもマクラーレンが強そうですね。彼らは特に高速コーナーで強さを発揮するので、ダウンヒルのセクター2が速そうです。メルセデスとフェラーリは微妙ですね。それぞれ予選とレースに弱みがあるので、メルセデスはもっとスターティンググリッドが良ければな、フェラーリはもっとペースが良ければな、という展開が予想されます(あくまでドライの場合ですが)。

 

ただ、今回はスプリントがあるので、イニシャルセッティングの出来次第で大番狂わせが起こる可能性はあります。たった1回のフリー走行が雨だった場合は、その確認もできずぶっつけ本番になるので、もしセッティンを外した場合は取り返しのつかないことが起こるかもしれません。いかにレッドブルとはいえどもすべての準備を完璧にこなすことは困難なので、相手チームというよりはこのフォーマット自体が連勝記録への最大の障壁となることもありえます。もしそこをクリアできれば、自ずと開幕からの最多連勝記録が見えてくることでしょう。

 

そしてスプリントに関してですが、やはりぼくは今のやり方は少し違うのかなと思います。グランプリ用の予選、レースと別けるのであれば、もっと徹底的に別けるべきでしょう。ぼくはROC(Race Of Champions/レース・オブ・チャンピオンズ)を見習って、スプリントをチーム対抗戦にしてみるのもいいのかなと思います。その代わりこの場合、ポイント付与はコンストラクターズポイントのみにするのは言うまでもないでしょう。シュートアウトはそのままでもいいのですが、スプリントレースは2ヒート制にするか、リレー形式にするかが考えられます。リレー形式だと色々ピット周りが大変なので工夫が必要かもしれません。各チームのシュートアウトの上位ドライバーを無条件に第1走者にするとか、どちらを第1走者にするかはチームが勝手に決められるとか、色々面白い試みができると思います。まあ何にせよ、グランプリレースの短縮版ということだけは是非避けるべきだと強く感じます。前回のように運よくスプリントの時だけ雨が降って、晴れた日曜日と違う展開になる、という運任せではダメだと思います。

 

ワクワクするレースが見られればいいなと思います。