朝の10時ごろまではビジネスホテルにいるケイトさんの居場所をスマホのGPSで確認できていました。ところが、それ以後はスマホのバッテリーが切れたのか、居場所は検出できなくなっていました。どこにいるのか、無事でいるのか不安がよぎります。

 

昼過ぎには診断書と傷病手当金の申請書をケイトさんの会社へ送りました。上司と人事課宛にそれぞれ手紙も同封しました。ダメ元でしたが感謝の思いは伝えたかったし、やはり頂けるものは少額でも今は有難いというのが本心でした。申請しなければ確実にもらえないのだから、不受理を覚悟で申請することにしたのでした。

 

ケイトさんの居所が掴めないのが少し気になり不安に感じつつも、懸案だった傷病手当金の申請を終えた安堵感から、「今夜は大晦日だし、ちょっと奮発して一人鍋にしよう!」と買い物に出かけました。

スーパーは年越しムードで、おせち料理や豪華な鍋の具材があふれていました。

 

とはいえ、金欠の私が買えるのは昆布と豆腐ともやしだけです。

でも、今夜はホットワインも飲むと決めていました。

これはケイトさんが教えてくれたレシピです。寒い夜、自分が飲みたい気持ちを抑えて私に作って飲ませてくれました。甘くてシナモンの香りが良くて、身体もぽっかぽかになる優れモノです。自分で作ってもやっぱり美味しいラブ

 

楽しい思い出が蘇ります。

ケイトさんの笑い声が聞こえて来るみたい。

「これだけで酔っぱらうなんて幸せな人だな~」ってよく言われたっけなぁ。

あの頃もお金には苦しんでいたけど楽しかったな・・。

 

ホットワインも飲んで気持ちもほぐれていたと思います。

避難用のアパートには家電がないため、テレビもありません。大晦日の特番とは無縁で、スマホで「依存症 無料相談」などと検索していました。そんなとき、ある新しい依存症施設のホームページを見つけたのです。そこにはこんな文言がありました。

 

「土日も相談対応します、いつでもご連絡ください。」

「相談料は無料です。」

「電話にでられないときは、こちらからかけ直します」

 

本当に?キョロキョロ

無料!?

 

半信半疑でしたが、年末の夜に藁にもすがる思いで、夢中でメールを打っていました。

それは2018年12月31日の夜でした。そのときは、暗闇の中でも一筋の光を見つけられたような気がして、少しだけ希望が湧いてきたのを覚えています。

 

そのメールには、夫がアルコール依存症であること、私自身も共依存やアダルトチルドレンで悩んでいること、経済的にも精神的にも追い詰められていること……そういった苦しい状況を書けるだけ書きました。

 

返信がすぐ来るとは思っていません。でも「相談できますよ」というたった一行でも返事がもらえたら、そこから一筋の光が差し込むような気がする。そんな期待を胸に抱いていました。

 

ケイトさんが今どこで何をしているのかは、まだわかりません。でも、ほんの少しだけ未来に希望を感じられた大晦日。暗闇のなかでも、もしかしたら光の扉が見つかるかもしれない。そう思えるだけで、今年の最後を少しだけ穏やかな気持ちで過ごせた気がします。

 

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もし興味があれば、ぜひ選択肢のひとつとして考えてみてくださいね。

2018年の暮れ、パート先の市役所が年末年始休暇に入ったため、私は避難用に借りたアパートで、少しずつ溜まってきた荷物を整理していました。

ケイトさんの会社に診断書も送らないといけないし、傷病手当の申請をどうするかも悩んでいます。ダメもとで申請してみるか、それとも諦めるか・・もう決めないと。

相変わらず、頭の中は同じことがぐるぐるしていて抜け出せませんゲロー

 

「iPhoneを探す」を使って、ケイトさんの居場所を確認するのは続けていました。ケイトさんの動向を気にしないようにしようとしても気になって仕方なかったのです。

今夜は町の飲み屋街にいる様子でした。もう長く一軒の店にいるみたいで。

ぐでんぐでんに酔っているんだろうなぁ・・、一緒にいる人に迷惑をかけなければいいけどなぁ。

 

それにしても、飲み代はどうしたのだろう?うーん お義母さんにもらったのかな?

看護師をしている親戚が言うように、イネイブラー(依存を助長してしまう人)がいるかぎり、治療に向かうことはないのかもしれない。本当に命がどんどん短くなっているというのに、ケイトさんは何をやっているんだろう。

 

相変わらず考えることはケイトさんのことばかり

いわゆる共依存症の典型的な状態でした。

 

そんな中、ケイトさんの勤務先の人事課宛に手紙を書きました。

結局、傷病手当金はダメもとで申請してみようと決めました。

ただ、申請書を送る際にはやはり一筆添えないわけにもいかず、どう書けばいいのか分からないまま、いたずらに時間だけが過ぎていきます。

あぁ、明日はケイトさんの上司にも連絡を入れなきゃ。嘘は書けないから、でも礼は尽くさないと・・・。しんどいな・・えーん

 

面接用の履歴書も完成させないといけないし。

やりたくないことばかりでなかなか手が進まず、時間だけがかかるし、気持ちが晴れない。

重い。辛い。

泣けたら少しは楽になれるのかなと思うけど、不思議と涙が出てこない。

もう枯れたのかな。

 

寝ようかと思った深夜1時41分、電話のベルが鳴り始めました。

何十回鳴っていたでしょう。酔いつぶれてくだを巻きたいだけなんだろうな、どうせ今話したところで1分後には忘れてしまうんだろうな...と思いながら、着信画面に映るケイトさんの写真をただ見つめます。

しばらくして、実家に帰ったかどうか気になり再度確認してみると、どうやらビジネスホテルに泊まったようでした。

そんなお金、どこから出たんだろううーんと思った次の瞬間、お義母さんに(飲み代だけでなく)小遣いもねだったのだろうと気づき、落胆していました。

 

昨日も一昨日も深夜にケイトさんからの着信がありました。

きっと飲んでいるのだろうし、愚痴をこぼす相手にされるだけだとわかっていたので、着信画面を見つめるだけで応じませんでした。

 

でも、今日は何となく「電話に出てみようかな」と思ってしまいました。

久しぶりに聞いたケイトさんの声は、意外にも溌剌としていました。

 

ケイト「元気だった?」

飲んでいる様子ではなさそうでしたが、夜に飲んでいないとも限りません。

ケイト「正月、こっちの実家には帰って来ないの?」

ぶらうす「帰りません。」

ケイト「給料入った?」

ぶらうす「入って、支払いをしました。」

ケイト「あー、そうね・・わかった」

 

続けて、傷病手当金のことを聞かれました。

 

ケイト「あれ、入った?」

ぶらうす「あなたが通院していないから、申請できません。」

 

たったこれだけの会話でした。

あれほど待ち焦がれたケイトさんとの会話なのに・・・、せっかくケイトさんが泥酔していなくて話せるチャンスなのに、私は感情を表に出さず、ただ淡々と事実だけを伝えるだけ。

そんな自分の態度に、誰よりも私自身が驚いていました。

 

「あなたは好き勝手に逃げてお酒を飲んでお金のことは私に任せ、何もかも自由にしているけれど、私がどんな気持ちでお金のやり繰りをして耐えているのか、何もわかろうとしてくれないんだね・・ムキー

 

そんな怒りが、心の底から湧き上がってきました。

 

この会話をつまみにしてまた飲むのだろうかと思いつつ、もしそうだとしても私が関与することじゃないとも思いました。

それよりも、年末年始をどう乗り切るか考えないと。

 

頭の中は、ケイトさんとお金のことばかりがメリーゴーランドのようにぐるぐる回っていました。

 

翌日、ケイトさんからLINEが届きました。

「今日、(傷病手当の)診断書もらえる日だよ」

 

まるで私が受け取りに行くことが当たり前のような認識に違和感を感じた私は、その後ケイトさんからの着信に応じませんでした。

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初めての家族会からの帰り道。思ったほどの収穫を感じられず、モヤモヤした気持ちを抱えながらも職務経歴書を作成するため、地元の自治体が設置している無料パソコンコーナーに立ち寄りました。

 

我が家にはパソコンもネット環境もなく、どうやって職務経歴書を作成するか悩んでいた時に自治体が提供している無料パソコンコーナーがあることを知り、就活を初めてからはその施設を時々利用していました。お金の不安が増大している私にとって無料で利用できることは本当に有り難いニコニコ

 

 

ここ1〜2か月で預金残高が一気に減り、とにかくお金に追われる感覚に押しつぶされそうでした。一日でも早くフルタイムで働かなければ、と焦りばかりが募ります。

 

ケイトさんが入院するはずだったアルコール専門病院から傷病手当金を申請するために診断書をもらってきたのですが、処方された薬の量や通院実績が合わず、申請書の記入もどう記入して良いか悩みますネガティブ(そもそも私が治療を受けてるわけじゃないので、書きようがないアセアセ

本来ならケイトさんがすべき手続きなのに!という思いもあり、いろいろ考えているうちに「もう傷病手当金は諦めるしかないのかな…」という気持ちにもなってきました。

いろんなモヤモヤが頭の中を駆け巡るので、思考がまとまらず「今日はもうやめ!」と途中で投げ出してしまいました。

 

そして明日は今年最後の出勤日。お弁当を作って持って行こうかと思っていましたが、その意欲もすっかり失せてしまい・・・。

 

なんだか疲れた絶望

毎日やることが山ほどあって、バイトをしようと思っていたのに、結局そこまで手が回らない。

 

今日ケイトさんの会社に、休職中の社会保険料を送金したので、通帳残高は30万を切りました。

いよいよ心細いえーん

早く働かないとびっくりマーク

 

わかってるの。何をすべきか。

でもシンドイ。気持ちが奮い立たない

 

ケイトさんからの電話もかかってこなくなりました。

ケイトさん、今、どうしてる? 何を思ってる? 

私は毎日貴方のことを想っているよ。

毎日、辛いよ。

一人で頑張りたくないよ・・。

断酒に向かう貴方とならやり直したいよ・・。

 

どこまでも他力本願な自分から脱却できず、ぐちゃぐちゃな感情の日々が続きます。

年の瀬も迫る2018年12月27日。

ケイトさんが東北の実家に帰ってから10日が過ぎていました。ケイトさんを求める一方で、私はいつ戻るかわからないケイトさんに怯えるよりもと思い、自分を守るために避難用として借りたアパートで過ごすようになっていました。

 

共依存症に苦しむ中、何か行動しなければならないという思いに駆られ、その日初めて「アラノン」に参加する決心をしました。

アラノンはアルコール依存症の家族を支援する自助グループで、予約不要、参加費もなく、任意の寄付制という仕組みがホームページで紹介されていました。

 

私が初めての会場に選んだのは自宅からは1時間ほど離れた都内の会場でした。自助グループなのだから別に誰に会ったところでどうということではないのに、当時の私は「知り合いに会ったら恥ずかしい」と思っていたのです。

 

ドキドキしながら初めての会場に行くと、皆さんあたたかく迎えてくださいました。そこに悲壮感はなく、むしろアットホームな感じで少し安心しましたニコニコ

ただ、ご参加の皆さんはかなりのご高齢の方が多く、既にご主人(依存症当事者)がお亡くなりなって長い方が数名いらいらしていて。

アルコールに関するお話は期待したほど聞けず、飼っている猫の話しや病院での出来事など日常の愚痴話のような会に感じてしまいました。

それでもせっかく来たのだから、何か成果を残さないと損をするような気持ちでいた私は、これまでの出来事をかいつまんで話しました。

 

私が話し終えると、それまでじっと聞き入ってくださっていたお一人のおばあちゃんが、思いがけないことを言ったのです。

「久しぶりに昔のことを思い出しました。あぁそうだった、私も同じ思いだった、同じようなことを経験してきたと思い出しました。今は辛いですよね。でも、私の旦那はさんざん飲んで死んじゃったから、今は平和だけどね(笑)」

 

!?と思いました。

「言いっ放し、聞きっぱなし」じゃないの?

しかもそういう感想なの?

私の気持ちは・・?

 

同じ経験をしてきたなら分かってもらえる・・と勝手に思っていた私は落胆していました。

 

 

今の私なら、もっと素直に受け取れるかもしれません。冷静に振り返ってみると、その方は、初めて来た私に何とか言葉をかけようとしてくれていたのだと思います。

ですが、当時苦しみの中にいた私にとっては、その言葉はあまりに私の気持ちに寄り添うものではないと感じてしまいました。

 

その後、少し若そうな方(それでも私よりは年配のように見えましたが)が

「ぜひまたいらしてくださいね。お一人で抱え込まないでね。待っています。」

と声をかけてくださいましたが、私の正直な気持ちとしては、交通費を考えると今後も参加するかどうかは迷うなぁと思うほろ苦い自助会デビューでした。