風のない洞内をさらに奥へ。
前述の通り、抜けるべき伊東側坑口ははるか昔に崩落閉塞している。澱みきった空気は土臭く…そして別の臭気も。気づかれるだろうか?画像で洞床に堆積しているのは、蝙蝠の糞、いわゆるひとつのバット・グアノってやつである。
振り返り。
この隧道の延長は67mであったとのこと。ここから程なくして閉塞していたので、伊東側の約20m程が崩落、閉塞しているようだ。
閉塞点がコチラ。
じっとりと湿った空気が充満している。そして床にはバット・グアノ。
閉塞確認!こんな危険な穴に長居は無用。戻ろうか…。
この辺まで戻ってきて…
右側の壁面を見たその時!
な、何アレ!?
うおお
おおお
何じゃこりゃぁあ!!!
洞内壁面に刻まれた、扇形の謎の文様。その中央に○で囲まれた「工」の文字。漢字の「工」なのか、カタカナの「エ」なのか?その左には「キクチ」?と読める。右側は…読めそうで読めない…。ひと文字目は「原」だろうか?
131年前に穿たれた、往古の隧道。
その剥き出しの土壁に刻まれし、先人
の痕跡。
隧道掘削を手掛けた職人の紋章であると思いたくなるような、極上の遺構である。
大いなる満足感とともに、脱出。
いつからこの状態なのかわからないが、賞味期限はいつ切れてもおかしくない。要石も持たないこの脆弱な欠円アーチが、あと何度も年を越えられるとは思えないのである。
明治15年掘削という我が国屈指の古隧道が、人知れず自然に還ろうとしている。行政には何らかの保存の手立てを打っていただきたいものだが、どうも期待はできなさそうだ。
洞内の謎の意匠、あの謎も永久に封印されてしまうのだろうか…。
以上、完結。