むしおくりはし (廃) (三重県熊野市五郷町桃崎) | 穴と橋とあれやらこれやら

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初めまして。ヤフーブログ出身、隧道や橋といった土木構造物などを訪ねた記録を、時系列無視で記事にしています。古い情報にご注意を。その他、雑多なネタを展開中。

2014年3月8日、父ヶ谷アタック前日の徘徊にて出会った物件。以前記事にした小井隧道の約3時間半後のこと。
 
 
 
 
湯の谷川に沿った行き止まり道を国道309号線へ戻る途中。この奥でもある物件を見つけたけど、それはまたいつか。行きに見つけていた物件に立ち寄るため、ストップ。
 
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超好天だったこの日、白とびしてしまってる部分が道路。こっから湯の谷川へと下っていく。
 
 
 
場所はコチラ。なんでこんなトコ行った?みたいな場所だけども(笑)。
 
 
 
 
 
 下っていくと…
 
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  橋。けど、久しく使われている様子はない。
 
 
 
 
 
 
 
…おいおい。
 
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  なんじゃこりゃ!?ひどい有様やな~。
 
左の親柱が残っていた。もちろん見て撮影もしたけど、ここではあえてスルーしておこう。
 
 
 
 
 
 
 
 
さて、サイドより。
 
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道路から望見した時点でわかっていた通り、さほどそれ自体に味わいのあるわけではない、コンクリート・ガーダー橋。
 
 
 
しかし、
 
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 このくたびれ具合が、それなりに雰囲気出してきてる段階ってとこか。昭和50年代くらいの橋かな?
 
 
 
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 長靴ONだったので、じゃぶじゃぶと真下にも。さほど貴重なもんでもないのだろうが、こういうコンクリ桁、あまり見ないなあ。
 
 
 
 
 
 
 
 
光と影。
 
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かつてはあったはずの欄干も、今やたったこんだけ。幾多の大水で蹂躙され続けた姿なんだろう。まあどう見ても廃橋なんだけど。
 
桁部分のみが陽光をまともに受けて白く輝き、 両端は翳りの中でうずくまっている、そんな感じ。こういう光の当たり方はよくあることだけど、先ほど見た親柱の表記とあわせ、なにかおののくような感覚があった。
 
 
 
 
 
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通行止めを表わすものか、意図的に転がしてあるとおぼしき木。まるで結界のようじゃないか…。そしてその先の道の様子。これは車道だったのか?
 
この奥の様子は撮り忘れてしまったけど、石垣や建物の基礎が点在し、明らかにかつて人の暮らし(あるいは活動)があったようだった。何らかの理由で今は無人となり、自然に帰ってしまっているが。
 
 
 
 
振り返って、正対。
  
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うん、やっぱり雰囲気あるわ。そしてやっぱりあの転がされた木、結界めいてる(笑)。
 
 
そんな印象をわたくしにもたらしたのが、最初の親柱で見たこの橋の名称だった。こちらには二本の親柱が現存。そして向かって左は、先ほど対岸で見たものと同じだった。
 
 
 
 
ご覧いただきましょう。 
 
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「むしおくりはし」。実に日本的、そして土着的な名称ではありませんか。 
 
 
 
 
 そして右側の親柱には
 
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「昭和四十一年 六月竣工」。おや、見立てより古かった。自分より年長じゃないか。
 
 
 
残念ながら漢字表記による橋名が現存していなかったけど…。「蟲送り」または「虫送り」とは、稲田の害虫駆除や豊作を祈願して行われていたという伝統行事。農村における古くからの大切な伝統行事で、夜間に松明を焚き、地域によっては悪霊をかたどった藁人形に害虫をくくりつけて村界へ払ったりといった、多分に呪術的な側面も持ち合わせていたようだ。
 
 
近代に入り農薬が使われるようになるまでは全国で盛んにおこなわれていたよう。現在も虫送りという名の行事が残っているところもあるが、どっちかといえば観光資源やイベント的に行われているものが多いようだ。…言葉の大意だけは知っていたけど、ほとんどは今調べた(爆)。
 
 
 
そんな言葉のイメージと結界めいた木くれ、そしてその奥の人の痕跡。その陽射しの当たり方までもがブレンドされて、得もいわれぬ陰影をこの橋に与えているように思えた。そして、実にいい名前の橋だと思った。心の深いところに響くような。
 
 
 
まあ、あくまで個人の感想。夢見がちなおっさんだから(笑)。…いや、自分としては、決して不快な感覚ではなかった。
 
 
 
 
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むしおくりはし、その全景。
 
 
わたくし(だけ)の琴線に触れた、橋だった。
 
 
 
 
 
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 歳月を感じる護岸の石積み。当然ながらこの橋が初代ではないだろう。かつて、いかなる橋が架かっていたのか。この橋で、蟲を払っていたのだろうか。おっさんの妄想は終わらない(笑)。
 
 
あの突きあたりを左へ登れば、道路へ戻る。
 
 
 
 
 
 
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常世から現世へ。そんな3月の昼下がり。
 
 
 
 
 
 
 
 
以上、完結。