やっぱり、なかなか続きを書く気にはなれなかった。
水卜アナのことを書いていたときは、何も考えずにスラスラと書けていたのに、今回のことは思い出すのもつらく、それを文章にするのはなおさら気が重い。

最終日の朝、スマホのアラームが鳴った。
でも、自分がいつも使っているスマホは枕元にある。鳴っていたのは、営業カバンの中に入れていた、もう一台のスマホ──フワちゃんや水卜アナとやり取りしていた、あのスマホだった。

私は黙ってアラームを止めた。するとアンさんが、「スマホ、2つ持ってるの?」と聞いてきた。
業務用だとごまかそうか一瞬迷ったが、なぜか本当のことを言わなければいけないような気がして(この頃にはもう、正常な判断ができなくなっていたと思う)素直に答えてしまった。

すると彼女は「見せて」と言った。
怖くなりながらも、私はそのスマホを差し出した。
するとすぐに、LINEのやり取りを見せながら「これ、誰?」と聞かれた。画面にはフワちゃんとのやり取りが映っていた。

「いや、それは···以前いたところで付き合ってた人で···」
そう言うと、「どんな人?向こうは結婚してるの?」と、次々に細かいことを尋ねてくる。

もうこの頃には、彼女に対して“本当のことを話さなければいけない”という感覚がすっかり染みついていて、今振り返れば、別にすべてを言う必要なんてなかったのに···
でもそのときの私は、ある程度、本当のことを話してしまった。

するとアンさんは、勝手にスマホを操作し、フワちゃんに「あなたも騙されてますよ、この人に」とメッセージを送った。

少しして、フワちゃんから「どういうこと?どうしたの?」と返信が来た。
またスマホを取り上げたアンさんは、「私は今この人と付き合っている女です。あんたもこいつに騙されてるのよ!あんたとは別れます」と勝手にメッセージを送信した。

フワちゃんは取り乱した様子で、「どういうこと?なんで突然そんなこと言うの?誰なの?」と何度も返信してきた。
その動揺が、文章からでもはっきり伝わってきた。

スマホは彼女に取り上げられていたが、幸いにもアンさんは、フワちゃんが会社の人間だとは知らない。
フワちゃんは普段使っているスマホのLINEにも、会社の同僚として登録されていた。

私はトイレに行くふりをして、そのスマホからフワちゃんにメッセージを送った。
「あとでちゃんと説明するから、もう一つのスマホから届くメッセージは無視して!」と。

するとフワちゃんからは、「どういうこと?どうなってるの?」と、また混乱したLINEが届いた。着信も何度かあった。
でも出ることはできなかったので、ただ「無視して」と繰り返すしかなかった。

その時点で、たしか午前9時頃だったと思う。
ここから私は、これまで経験したことのない状況に陥っていくのだった。