本の紹介『なぜ宇宙は存在するのか』(2) | フォノン通信

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◇前回に続き、野村泰紀著『なぜ宇宙は存在するのか』の内容を紹介します。

 

★第2章 ビッグバン宇宙Ⅰ 宇宙開闢約0.1秒後「以降」

 

◇今回は第2章がどんなことを扱っているのか、重要と思われるところをまとめてみようと思います。(本書からの抜粋が多いです)

 

★宇宙がどのように始まって、どのように変貌してきたのかを知るためにエネルギーに注目して考察することが重要である。

 

そのエネルギーとしては、物質のエネルギー(質量エネルギー、運動エネルギーなど)、真空のエネルギー、放射のエネルギーがある。

 

☆放射のエネルギーは、光やニュートリノ等からなる「放射」によるエネルギーのことである。

 

ここで、「放射」とは光の粒子である光子など、静止質量(仮想的にその粒子が「止まった」状態で持つ質量)が無視できる粒子で構成されるものを指します。

 

★この放射のエネルギー密度は、現在の宇宙では全エネルギー密度のおよそ0.1%程度であり、非常に小さいものです。

 

しかし、初期の宇宙(約138億年前)では現在の宇宙でよりも、放射のエネルギー密度は、物質のエネルギー密度や真空のエネルギー密度に比べて重要な要素だったのです。

 

★物質のエネルギー密度、真空のエネルギー密度、放射のエネルギー密度は、138億年にわたる時間の変化とともにどのエネルギー密度が優勢なのかが変わります。

 

ビッグバンから約5万年までは、放射のエネルギー密度が他の2つのエネルギー密度よりも高く、ビッグバンから約5万年から約100億年までは物質のエネルギー密度が他の2つのエネルギー密度よりも高い。そしてビッグバンから約100億年から現在の約138億年までは真空のエネルギー密度が他の2つのエネルギー密度よりも高いことが分かっています。

 

★初期の宇宙(5万歳以前の宇宙)は、非常に高いエネルギー密度の「放射」で占められていたことが分かっています。

 

ここでいう「放射」を具体的に説明すると光(電磁波)やニュートリノなどのことであり、初期の宇宙ではそれらがものすごい速度(エネルギー)で飛び回っていた(散乱していた)と考えるといいでしょう。

 

その後、約5万歳から約100億歳までは放射よりも物質優勢(物質のエネルギー密度が優勢)の宇宙だったことが分かっています。

 

そして物質優勢の宇宙から真空のエネルギーが支配的な宇宙へ移ったのは比較的最近の約100億歳の時です。

 

★私たちは宇宙のどの年齢まで時間を遡ることができるのでしょうか。

 

宇宙誕生約0.1秒後、温度が300億度程度であった時点までは正しく遡ることができることは分かっています。

 

多くの科学者は様々な理由から、もっと初期の段階、たとえば宇宙誕生後10-38秒から10-26秒くらいまで、時間を遡っていけると考えています。

 

いずれにしても初期の宇宙、少なくとも誕生0.1秒後以降の宇宙が、高温の放射で満ちた「火の玉」であったことは確実です。

 

☆宇宙背景放射とは何か。

僕は、この宇宙背景放射についてなんとなく分かったつもりでいました。では説明してくださいと言われたら、うまく言葉を選んで解説する自信がないことに気づきました。

 

そこで本書の『なぜ宇宙は存在するのか』村山斉著『宇宙は本当にひとつなのか』の解説を参考にして説明を試みます。(ほとんどが引用です。一部、僕が脚色しているところもあります)

 

たとえば地球から100光年離れた星を見たとすると、観測した光は100年前にその星が発した光になります。

 

つまり、遠くの宇宙を見ることは、宇宙の昔の姿を見ることと同じなのです。

 

地球から10億光年先の銀河を見るということは、10億年前に銀河が発した光、つまり、10億年前の宇宙の状況を知ることになります。

 

そうやってどんどん遠くの宇宙をみていくと何が見えるでしょう。

 

実は、ビッグバンが起きた時に発生した光を見ることができるのです。しかも、この光(電波)は観測することができました。

 

約138億年前にビッグバンが起きた時は、私たちの目で見ることのできる光がたくさん出ましたが、138億年の間に宇宙は膨張を続け、大きくなりました。

 

そうすると、宇宙の中にある光の波も引っ張られて伸びてしまいます。

 

その結果(ドプラー効果により)、ビッグバンの光は目に見えない電波(詳しくはマイクロ波)になってしまったのです。

 

「もの」でもエネルギーでも、温度があるものは光(電磁波)を出します。

 

☆COBE衛星などの探査機による観測結果から、宇宙全体に「温度をもっているもの」が広がっていることが分かりました。

 

この温度は絶対温度で2.75K(ケルビン)になります。これをセ氏に換算するとマイナス270.4度Cになります。

 

この絶対温度2.75Kで広がっているビッグバンの名残の電波のことを宇宙背景放射といいます。電波としてはマイクロ波になるので「宇宙マイクロ波背景放射」ということもあります。

 

 

☆38万歳の宇宙に何が起こったのか?

 

ベル研究所でアンテナの研究をしていたペンジアスとウィルソンによって発見された宇宙背景放射は、年齢が約38万歳、温度が約3000度であった頃の宇宙の「スナップ写真」であると考えることができます。

 

では、なぜ宇宙背景放射が宇宙誕生後約38万年後の姿を映しているのでしょうか?

 

言い換えると、38万歳の宇宙に何が起こったのでしょうか。

 

実は38万歳以前の宇宙の温度はあまりにも高すぎて、通常は原子を構成する原子核と電子がバラバラに飛び回っていました。

 

高温による激しい運動が、原子核と電子が束縛状態になるのを防いでいました。

この状態では、光は電荷をもった電子に散乱され、まっすぐに進むことができません。

 

しかし、宇宙の誕生から38万年経って宇宙の温度が3000度以下になると、もはや原子核と電子はそれぞれが持つ電荷による引力に逆らってバラバラに飛び回ることができなくなります。

 

より具体的には、原子核は電子を捕捉し、現在私たちの周りにあるような、電荷をもたない中性の原子の状態になります。

 

こうなると、中性である原子は光を散乱しないので、光は散乱しないで、直進できることになります。

 

この宇宙誕生から38万年後に起こった、宇宙が光に対して不透明から透明な状態に変わった出来事を「宇宙の晴れ上がり」という。

 

現在私たちが宇宙背景放射として見ているのは、この誕生後38万年の時点の宇宙から伝搬してきた光(電波)なのである。

 

◇第2章の重要なところはまだあるのですが、長くなったので今回はここまでにします。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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