デイヴ・グルーソン著『サイレント・アース』を読んで(1) | フォノン通信

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☆イギリスの生物学者デイヴ・グルーソンが書いた『サイレント・アース』(NHK出版)の重要な箇所を抜粋したいと思う。『サイレント・アース』は、400ページほどある本で、全部で21章からなっている。

備忘録、読書ノートとして要点をまとめていきたい。

☆著者のデイヴ・グルーソンは、イギリスのサセックス大学教授。
専攻は、進化生物学、行動生物学、生態学である。特にマルハナバチの生態研究と保護を専門としている。

☆この本は、昆虫の地球規模での減少が人類や生物界にどんな影響をもたらすのか詳しく論述している。

初回は、第2章からポイントとなっている箇所をまとめてみる。
ときどき僕の感想も書くことにする。

第2章 昆虫の重要性

☆生態学者と昆虫学者は、昆虫がきわめて重要な存在だということをこれまで一般の人々にきちんと説明してこなかったことを深刻に受け止めるべきだ。

 

昆虫は地球上で知られている種の大部分を占めるから、昆虫の多くを失えば、地球全体の生物多様性は当然ながら大幅に乏しくなる。

さらに、その多様性と膨大な個体数を考えると、昆虫が陸上と淡水環境のあらゆる食物連鎖と食物網に密接にかかわっているのは明らかだ。

◇著者は、昆虫食について述べている。

☆食物連鎖から昆虫が失われることは、野生動物にとって大惨事となるだけではない。人間の食料供給にも直接影響を及ばすだろう。

☆現代でも、世界的に見れば昆虫を食べるのは普通で、国によっては昆虫が食生活でかなりの割合を占めている。

 

世界の人口のおよそ八割は日常的に昆虫を食べ、とりわけ南アメリカやアフリカ、アジアの人々のほか、オセアニアの先住民のあいだではよく食べられている。

◇世界の人口の8割が昆虫を食べていることは知らなかった。地球に食糧危機が来ることは確実なのだから、いまから昆虫食に慣れておくのがよいのだろう。

☆昆虫は牛肉よりも必須アミノ酸が多く、飽和脂肪がはるかに少ないので、体によい動物タンパク源となる。

☆昆虫食の利点はほかにもある。

 

たとえば、昆虫には人類と共通する病気が知られておらず、脊椎動物と比べて、食べたときに病原体に感染する可能性がはるかに小さいと考えられる。

☆食料源としての役割に加え、昆虫は生態系でほかにも多数の重要な役割を果たしている。

 

すべての植物種の87パーセントが受粉を動物に頼っているが、花粉運びのほとんどを昆虫が担っている。

 

ほとんどすべてと言ってもいいほどで、昆虫に頼っていないのは草本と針葉樹ぐらいだ。(これらは送粉を風に頼っている)

☆花粉の運び屋がいなければ、野花は結実せず、やがて大半が姿を消すだろう。

☆送粉者がいなくなることは美しい花の喪失よりもはるかに甚大な影響を生態系に及ぼすことになる。

 

植物はあらゆる食物連鎖の基礎をなす存在だから、膨大な数の植物種が結実できなくなって死滅すれば、地上のあらゆる生物群集(特定の地域にすむ生物種をひとまとめにとらえたもの)が一変し、貧弱になってしまうだろう。

☆花粉を運ぶ生物がいなければ、世界で増加する一方の人口を支える食料を生産できないだろう。

 

私たちの食料の大部分は小麦や大麦、米、トウモロコシといった風媒受粉する作物が占めているとはいえ、パンやご飯、ポリッジ(粥)ばかりの食事で過ごしていれば、体に必要なビタミンやミネラルが不足した状態に陥ってしまうだろう。

☆送粉者がいなければ、人間に必要だという「一日5種類」の野菜と果物を生産することなど、とても不可能だろう。

☆送粉者がいなければ、昆虫ではなく風で受粉する数少ない作物に頼らなければならないが、そうなると年によって栽培する作物を替える輪作をしにくくなり、その結果、病害虫の問題がいっそう深刻になるだろう。

◆備忘録、読書ノートの1回目はここまでにしよう。