今日のこの日は一瞬なんだ

ついこんな日が永遠と勘違いして 

時を簡単に消費するけど

もう2度と取り戻せない

遠いあの日になってしまう

 

窓の外の緑の木々や

風の音や鳥の鳴き声

川を流れる水の音も鮮明に心に焼き付いて

2度と会えないあの人の涙のように

 

この店のこの場所が好きだった

仲間が歌う声とギターが遠く響いて

こだまになって消えていく

外の光で顔は見えないけど

笑い顔はずっと覚えてる

 

ウイスキーの氷が溶けて

だんだん薄くなっていく

溶けた氷の水滴がテーブルを濡らす

ハンカチでも拭えない涙のように

 

天井からさがる茶色い電球が

キラキラとにじむ

ここはいつも夕暮れ

セピアに染まった時が優しく流れる

今何が欲しいと聞かれたら

新しいギターはいらないし

きれいなお家もいらない

高級料理は食べなれないし

 

今どこか行きたいところはと言われて

美しい景色は世界中にあるだろうけれど

エステ付きのホテルで優雅に過ごすイメージではないし

インドに修行に行く気にもなれない

 

暑くもないし、寒くもない

お腹も減ってないし、

屋根があってカギがかかる平和な暮らしで

何もやることがなく 時間を無駄に使っている

 

何もやらなくてもいいし、
何をやってもいい

 

これが自由というものかぁ

 

でも、これだと眠れないんだよ

 

あなたの優しい声も

そのほほえみも

こんなに近くにあって

互いにみつめあう

 

手を伸ばして指を絡め

その胸の鼓動に耳を当てて聞きたい

あなたのすべてが

そこにあるのに

 

冷たいガラスのこちらと向こう

吹く風は違うのか

無いように見える透明なガラス

どんなに求めても触れることができない

 

雨が降る音が聞こえる

暖かい部屋で

入口も出口もなく

隠すこともなく

 

どちらかが壊してしまえば

粉々に割れるのはガラスではないこと

あなたも私も

知っているから

 

冷たいガラスのこちらと向こう

吹く風は違うのか

無いように見える透明なガラス

どんなに求めても触れることができない

 

コンクリートの白い道を

母と歩く夢を見た

少し右に傾いて 足を引きずって

母は笑って歩いていく

母が内側に、私は少し離れて道路側を歩く

 

車も来ない田舎道

少し左にカーブしている道を

前を見て一生懸命歩いている

先の見えないカーブを

一生懸命歩いている

 

 

傾いたからだで歩くので

だんだんと右に寄ってくるので

私はそっと押し返す

 

道路側は危ないよと

体をそっと押し返す

私に同じ話を繰り返しながら

前を見て歩く母が

どんどん私に近づいて肩を寄せてくる

 

それは体のせいなのか、

私に寄りたいだけなのか

私に頼ってきているのか

でも、私はそっと押し返す

 

それでもせっせと歩く母

カーブを先へ 先へと歩く母

私はゆっくり母を追っていく

 

母の肩が触れるたび

母の腕が触れるたび

私は母を押し戻す

小さくなっていく母を 押し戻す

 

人の名前を聞いても全然覚えられなくなった
立ち上がるときどっこいしょ、というようになた
夕飯に何を食べたか思い出せなくなった
今やろうとしてたことも忘れるようになった
 
大切にしまったはずがその場所がわからなくなた
朝目が覚めるのが早くなった
何でもかんでもメモしないと忘れるようになった
でも、メモしていたことすら忘れるようになった

手を引いてもらってこの坂を上る
見知らぬ人や変わっていく風景
加速して過ぎていく時間の中に
美しかった過去がよみがえる
 


昔はよかった、が口癖になった
すぐにあきらめるようになった
約束した時間を間違えるようになった
ぼーっとしている時間が長くなった
 
涙もろくなった
お酒も前ほど飲めなくなった
笑うことも少なくなった
聞こえなくても聞こえてるふりするようになった
 
振り向けば手を振る人達がいつもいる
忘れていくことを恐れたくはない
そぎ落とされる心と魂
ただひとつだけ失わず迷わずに

春よ もうすぐ終われ

桜が散り

水が緩み

空気は暖かく

空は明るく雨が降る

春よ もうすぐ終われ

 

美しい日本が

最も美しく咲く季節

鳥たちが歌い

木々が青々と伸びる

春よ もうすぐ終われ

 

誰もが春を望んでいるわけではないのだ

 

そんなときが早く過ぎ去って

ただ、熱いだけの夏

淋しい秋

冷たい冬を望む

そんな人々がいることも 忘れないでほしい

 

春よ もうすぐ終われ

入道雲

 

今は生きることにつかれただこうして空を見ていたい

風の行き過ぎる町や、鳥の飛び交う音を

ただじっと見ていたら僕は鳥になった

どこまでいくのだろう

どこまでいくのだろうー

そんな僕の問いかけに雲は何も答えずとおりすぎていった

この春はもう何度目の春か

毎年この時期に

この風が吹くと感じる

懐かしさとさみしさの

ああ、このにおい

昔から同じ

風が連れてくる

私の生きた時間を

 

この春はあと何度来るのか

流れていく景色が

だんだんと灰色になっていく

 

昨日は忘れ去られ遠くにいってしまけど

時は永遠とさらに続くのだろう

一人、そしてまた一人

そこにおいて 

どんどんと道を伸ばしていく

 

窓を開ければそこに見える

流れていく時間が

だんだんと早くなっている

 

本当はほしかった暮らしがそこにあり

ほしかったあの人がそこにいるか

ひとつ、そしてまたひとつ

そこに消えて

果てしなく時は先を急いでいく

 

あたたかい唇

やわらかい頬

あなたが私を力強く

抱きしめてくれる

 

あふれてくる涙

熱くなる心

手の平の少し湿った

感触がここちいい

 

熱い吐息

ぬけていく力

私の心は体になり

ぽっかりと浮かんでいる

 

もうどうでもいい

あなた以外の世界なんて

もうどうでもいい

あなたがいれば

もうどうでもいい

あなたの鼓動を聞いていたい

宙に浮くあなたの車は

ターボエンジン

爆音と体に響く振動が

心地よくて

隣で私は夢心地

 

どこでも連れてって

いつまでも走っていて

遠く果てまで続く道の向こうに

たくさんのまぶしいきらめきが見える

ずっと向こうの夢の国まで

 

あなたの自慢のシートに

背伸びする私

邪魔するのはチェンジギアー

バックミラーで

あなたの顔を確かめる

 

どこまでも連れてって

いつまでも走っていて

窓に映る景色が次々変わる

赤や黄色の街並みと光

ずっと遠くの夢の国まで