税理士試験の合格発表と合わせて
今年の受験者数などが発表されています。
あくまで自分なりの理解になりますが、
受験者の傾向から受験生のメンタルを推察します。
◆近年の受験者増
今回正直驚いたのが簿記論財務諸表論の受験者数です。
私が受験生だった頃は概ねどちらも1万人ぐらいの数で
横ばいで何年も推移していた記憶があります。
3年前ぐらいから上昇に転じましたが、
今回は簿記論で1万8千人を超えました。
来年は2万人時代になるのでしょうか・・・
受験者数が増えても合格率は変わらないかといえば、
そうでもないように思っています。
昔は簿記論財務諸表論の合格率は税法よりやや高めで、
年にはよりますが、税法10%程度のところ15%程度
になる年が多かったと思います(特に財務諸表論)。
この当時は、税理士の本職たる税法の方で厳しめにして
受験の入口になる傾向にある簿記論や財務諸表論を緩め、
受験者の確保と受験生の質の両方を見ていたと思います。
(当時学校でそのように伺った記憶が残っています)
簿記論・財務諸表論の受験生がここまで増えてくると、
話は変わってくるように思います。
今回簿記論は10%台とかなり渋めになっていました。
受験者数の確保は自ずとできるようになったと思われ、
そうなると出題ミスの年などを除けば、
簿財は渋めの傾向になってくるのかもしれません。
◆動機がネガティブなら心配
さて、こうした近年の簿財受験者増について、
まず考えられる増加理由をいくつか推測します。
一つ目は、終身雇用時代の終焉にあると思います。
大企業などでの黒字リストラなども続き、
令和に終身雇用がなくなったことは浸透しているように
感じます。自分の会社でまだ起きてなかったとしても、
今後起きるかもという不安が高まります。
そのため防衛本能や転職のために有利でかつ
実用的な資格に走る人がいらっしゃると推測します。
二つ目は、転職が当たり前になってきたことです。
私が五科目合格した頃は転職は30代のうち、
といった感じで、大きな税理士法人や企業などは
35ぐらいまででないと入れない印象がありました。
今では45ぐらいまででも転職可能になったと思います。
また、国家資格所有者は即戦力と見られるだけでなく、
企業や税理士法人では有資格者が多くいることによって
他の優秀な人材を募集・採用しやすくなる面があり、
他社で評価されやすい面もあるように思います。
転職のハードルが相当下がってきているうえ、
特に税理士の場合は科目合格でも経歴に書けますので、
価値を高めるべく資格に走る方がいるものと推測します。
三つ目は、リスキリングの推進だと思います。
企業のリスキリング推進によって社会人は自分で目標を
見つけて達成する方向付けをされつつあると思います。
会計事務所・税理士法人なら資格取得は奨励されやすく
そこで働く人も自ずとそのつもりでいる人が多いわけ
ですが、企業勤めでもその傾向は出つつあると思います。
また、企業がリスキリングを推奨する理由に、
その企業での終身雇用崩壊を察している人
もいらっしゃるのかもしれません。
いつまでもこの会社に残れない、と思って、
資格取得に走る人は一定数いるのではと推測します。
受験生の年齢分布を見るとついに40代が最大勢力です。
昔は20代後半や30代前半ぐらいが多かったと思いますが、
長く受け続けている方は税法に進んでいるはずで、
入口の簿記論と財務諸表論の異常な受験数を見ると、
40代受験が多い理由は受験長期化だけではないはずです。
最後四つ目に、キャリア感の醸成と思います。
学校では学生に対してこのような終身雇用がなくなる
ことや転職が珍しくない時代になっていることは
就職にあたりしっかりと教えているように思います。
同時に、自分自身でキャリアメイクしていくことを
学生に促しているようにも思います。
反応する学生とそうでない学生はいると思いますが、
自分のキャリアは自分で作るが浸透しているとすると、
資格は努力目標としてはものすごく設定しやすいので、
特に国家資格の受験者が増えることになると思います。
さて、このように傾向を推測してみて気になるのは、
ネガティブな動機になっていないか、という点です。
この分野に興味があって、の延長ならよいのですが、
必要に迫られて強迫観念的に受験しているのなら、
簡単には受からないので途中辛くなるかもしれません。
受験の動機はいかなるものでもよいとは思うのですが、
長く勉強を続けるにはぐらぐらすると厳しいと思います。
資格を取ったらどのように活躍していきたいか、
など取得後の自身のイメージを描いてみたり、
勉強の中で興味を持てる分野として認識できたり、
など動機付けをしっかりとされればと思っています。
国家資格は特に長期戦になりやすいですから、
動機付けが緩いと、続けるのは大変になりがちです。

