監督:アン・フレッチャー

出演:キャサリン・ハイグル、ジェームス・マースデン、エドワード・バーンズ

(2008年/アメリカ映画)

英語題:27dresses

お勧め度:★★☆☆


人に頼まれたら嫌とは言えないお人よしな性格が災いして、今迄27人もの友達のブライド・メイド(花嫁付添人)を務めてきたジェーン(キャサリン・ハイグル)は、NYで暮らすキャリア・ウーマンだが、実は誰よりも結婚に対する憧れがあり、新聞の結婚式の記事を切り抜いて集めているほどであった。職場の上司であるジョージ(エドワード・バーンズ)に密かに憧れていた彼女は、いつの日か自分も・・・と想いを募らせていた。


そんなある日、彼女のもとに妹のテス(マリン・アッカーマン)が転がりこんで来る。美人で奔放、男にモテモテのテスにいつも振り回されてきたジェーンだが、こともあろうかテスがジョージと恋に落ち、結婚を前提に付き合いだしてしまった。ショックを隠しきれないジェーンだが、そんな彼女のもとに、ジョージとテスの記事を書くために新聞記者のケビン(ジェームス・マースデン)が現れる。彼こそがジェーンが憧れる新聞の結婚式欄の記者だったのだが、予想に反し、彼は結婚に夢も希望も抱かない男だった・・・。


『プラダを来た悪魔』のスタッフが製作に携わったというだけに、とにかく女の子が喜びそうなロマンチックな要素がいっぱい。NYのお洒落なレストランや趣向に富んだ結婚式の場面など見ているだけでも楽しい。


一昔前なら確実にメグ・ライアン、キャメロン・ディアスのどちらかがやっていたであろう、典型的なロマコメの主人公を古典的美人のキャサリン・ハイグルが知的に演じている。この人の顔立ちって上品だからちょっとばかり下品なことをしても下品になりすぎないのが良いのかも。『無ケーカクの命中男/ノックト・アップ』『男と女の不都合な真実』など、下ネタ系コメディに使われてきたのもこのヘンが理由なのかもしれない。


ケビンを演じるジェームス・マースデンは『魔法にかけられて』の王子様役の印象が強いハンサムだが、ハンサムなのにどこかヌケた役をやらせたら、ピカイチ!という感じでまさに↑のハイグルとともに、今後のラブコメ界を担う存在なのかも・・・。


ストーリー展開は正直最初から最後まで予想通り!で何のドンデン返しも、裏切りもないので物足りなく感じる人も多いだろうが、精神的に疲れているときとかはこういう素直に楽しめる作品を見て女子力を上げるのも悪くないかなと思ったりしました。ヘビーな内容の映画を観ると疲れそう・・という気分のときにお勧め。


ところで、たまたま最近このキャサリン・ハイグルのインタビューを読む機会があり、彼女の知的なコメントの数々に魅了されました。


彼女は韓国から心臓の弱い赤ちゃんを養子に貰ったり、自身も養子であった姉とよい関係を気づいていること、産後仕事を失うのを覚悟で3ヶ月もの長期休暇を取ったこと・・等々を語っていたのですが、『ブラピやトム・クルーズの家庭のように子供のファッションに情熱を費やす気持ちがわからない』等、共感できるコメントがいっぱいでした。


ペットシェルターにいる動物をとトレーニングして里親を探すファウンデーションを設立されていたり、ただの美人ではない芯の通った女性の強さ感じさせ、すっかりファンになってしまった・・・のがこの映画を観たきっかけです。


監督:ロドリゴ・ガルシア

出演:アネット・ベニング、ナオミ・ワッツ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン

(2009年/アメリカ映画)

英語題:Mother and Child

お勧め度:★★★★


看護師として働くカレン(アネット・ベニング)には人知れず抱える心の傷があった。彼女には僅か14歳のときに妊娠し、養子として手放した娘がいたのだ。年老いた母親を自宅で介護しながら、誰にも心を開かず毎日会えるはずのない娘に対する気持ちを日記に書くのが日課になっていた。


そんな彼女の職場に新しくパコ(ジミー・スミッツ)というラテン系の男性がやってくる。オープンでフレンドリーな彼に戸惑いつつも、カレンは少しずつ心を開いていく・・・


いっぽう、37歳になる弁護士のエリザベス(ナオミ・ワッツ)は、L.Aにある法律事務所の面接にやって来ていた。事務所のボスであるポール(サミュエル・L・ジャクソン)は、彼女のように能力のある女性が職場を転々としているのを不思議に思い、色々聞いてみると、彼女は実の母親に養子に出され、養父母とも折り合いが悪かったことから、誰にも心を開けずに生きてきたことを知る。父親のように彼女を大切に守ってくれるポールと惹かれあうまでに時間はかからなかったのだが、彼女はひょんなことから他の男性とも関係を持ってしまい・・。


とき同じくして、カレンの養子問題に関わった修道院にあるカップルが訪れていた。ルーシー(ケリー・ワリントン)とジョセフの若い黒人のふたりである。彼らは子供が欲しいと何年も願い続けてきたのだが、子宝に恵まれず、ついに養子縁組を申し込むことにしたのだ。運よく、レイ(シェリーカ・エップス)という若い女性が面接してくれることになり・・・。


原題は『Mother and Child』、母と子、という今時珍しいシンプルなタイトルだが、このタイトルこそがすべてを物語っていると思う。母親であるすべての女性、母親を持つすべての女性、そして母親になりたいと望むすべての女性に見て欲しい、と思うような作品。アルモトバル監督の『オール・アバウト・マイ・マザー』に続く女性賛歌といっても過言ではないかも・・・。


物語はカレン、エリザベス、そしてルーシーの3人の女性を軸に描き出されていくのだが、彼女らを演じる女優達の演技が素晴らしく、まさに引き込まれる、という感じ。特にカレンを演じたアネット・ベニングの表情の変化には圧巻された。


介護やトラウマとの葛藤で疲れ切った一人の女性から、愛を知って輝いていく女としての魅力、そして子供に対する愛情を知り母性に目覚めたときの母親としての顔を見事に演じ分けている。『キッズ・オールライト』でのレズビアンの女性の演技が高く評価されたばかりの彼女だが、こちらの役も負けないぐらい輝いていて、まさにいまが旬の女優なんだなぁ、と納得させられた。


複雑な問題を抱えるカレンとエリザベスに比べ、一言多い母親に辟易しながらも相談を求めるルーシーと母親の関係は誰もが一番共感を覚えるのでは?特に、子育てで弱音を吐く娘に喝を入れるシーンの母親の台詞『弱音を吐くのは止めて母親になりなさい!』は母だけが言えるであろう単純ながらも力強い台詞で、自分も叱られた気になりました・・(苦笑)。


ともあれ、命の大切さ、というか母親になることの重さをこれだけストレートに描いた作品も珍しいかも。少なくともいかにも今時のチャラチャラした感じの『JUNO』よりは余程共感出来ました・・・。(←実はこの映画嫌いなんです。)


素晴らしい女性ばかりで男性の存在感が薄ぅーい映画ですが、是非とも女性の、母の有り難味を知るために、男性に見ていただきたく思いました。


ところで、監督のロドリゴ・ガルシアは男性なのにどうしてこんなに繊細に女心を描写出来るのだろう?と不思議に思っていましたが、あの作家のガルシア・マルケスの息子さんと聞き、妙に納得・・・。










監督:ジョエル&イーサン・コーエン兄弟

出演:マイケル・スタールバーグ、リチャード・カインド

(2009年/アメリカ映画)

原題:The Serious Man

お勧め度:★★★★


アメリカの片田舎のユダヤ人コミュニティで数学教師として暮らすラリー(マイケル・スタールバーグ)は、妻と息子、そして無職の兄とともに、これといった事件もなく平凡な日々を過していたが、妻のジュディス(サリ・レニック)が自分の親友と浮気をし、離婚を切り出してきたのを皮切りに、つぎつぎと不幸に見舞われ始める・・・。



『ノー・カントリー』、『トゥルー・グリッド』と、もはや賞レースの常連となりつつあるコーエン兄弟の作品。丁度前出の2作の間に撮られたこの作品は、ユダヤ人である彼らがユダヤ人を主人公に撮ったある意味パーソナルな作品とも言える。(もっとも、自伝的要素はないらしいですが・・。)



最近はジョージ・クルーニーやブラピなど、スター俳優を起用することも多くなってきた彼らが、無名の俳優ばかりで撮った地味な作品にもかかわらず、『アバター』『ハートロッカー』などの話題作と並んでアカデミー作品賞にノミネートされたことからも、作品の質の高さが伺える気がする。



タイトルどおり、真面目だけが取り柄で、生真面目に生きてきた彼が、周りに翻弄され、自分は何も悪いことをしてないのに、次々不幸に見舞われていく様子は、本来なら悲しいのだけれど、コーエン兄弟ならではのブラックユーモアでついついくすくす笑ってしまう。主人公ラリーを演じたマイケル・スタールバーグの飄々とした演技も素晴らしく、もはや地なんじゃ?と思うぐらい自然。



どこにでもいる平凡な男、平凡な家庭をテーマにしただけに、誰もが共感できるところが他の作品にはない強みともいえる。実際、人間、大変なことって続くものだと思いませんか・・?日常に起きる悲劇を喜劇に変えるユーモアのセンスはなんとなくジョン・アーヴィングの小説的でもある。



ユダヤ人である彼がカウンセラーやら、弁護士、ラバイに次々相談に行く場面は同じくユダヤ人であるウディ・アレンの映画を彷彿とさせる。アレンは好んでギリシャ悲劇を映画に取り入れているが、この作品の立て続けの不幸もある意味、ギリシャ悲劇的なのかも・・・。



60年代が舞台なので当時のキッチュなインテリアや衣装も良い。


地味だけど個人的にはかなり好みの作品でした。