「TOKYOスカイツリーの発想源...」
（澄川喜一 彫刻家・東京芸術大学元学長）
東京スカイツリーの足元は三角形で、
それをそのまま、ずうっと上ると、三角のままですが、
実際には途中から丸くしてあります。
円形にするために、3点を絞り込んでいくと、
それにある形ができます。また三角がだんだん
だんだん丸くなって行くところは膨らんで
見えるんですが、そこは「起り（むくり）」といいます。
だから、左右対称に見える場所は、3箇所しか
なくて、少し横にずれると形が変わって見えます。
見る場所によっては、傾いて見えたりもする。
だから、写真を撮る人は一周しないと、
全景がわからないんです。
そういう不思議さを秘めているところが
魅力なんです。絵でも音楽でもそう。いいものは
不思議な感じがするでしょう。そこに魅力
があるんです。
そもそも、日本の建築物の「そり」というのは、
非常に綺麗なんです。だから僕は、法隆寺とか
飛鳥の木造建築なんかは、すごいアイデアの
宝庫だと、思って学んできました。そういう先人の
残してくれたいいものを学ばないと、自分の
ような凡人には優れた着想は生まれないし、
すぐ種切れしてしまうんです。
スカイツリーにも、昔の建築から学んだことが、
生かされているのですが、法隆寺の五重塔の
心柱工法というのがありまして、構想
段階から設計の超ベテランの方とも、これは
心柱工法しかないということで、話が一致して
いたんです。五重塔は木を組んでしなるように
作ってあって、中心の心柱と違う動きを
するために、地震が起きても倒れないんです。
構造的に説明しますと、心柱が先ず真ん中を
貫いているんですね。その周りには
四天柱という4本の柱、さらにその外側に12本の
側柱が立っているんですが、こうもり傘の
骨が傘の先でくっついているのと同じように、
スカイツリーの四天柱も側柱も、てっぺん
意外の部分は、全部、心柱から離れています。
そのため、心柱と周りが別々の動きをすることで、
免震と制震の役割を果たしているのです。
五重塔の心柱も一番上の屋根の部分しか
周りとくっついていなくて、揺れがきても柔軟に
動いているんです。僕はその構造は人体と
一緒だと言っているんです。
人間のカラダというのは、ものすごく上手くできていて、
206個の骨を輪ゴムみたいな筋肉が
束ねて動いているわけです。
腰から下がとても、
頑丈で、腹の周りは背骨だけで、自由に屈伸
運動や回転運動ができる、
そして、一番上の頭が
重いからバランスが取れて倒れにくい。
これが五重塔の構造にとてもよく似ていて、そう
いう構造がスカイツリーにも応用されたんです...。
備考：この内容は、
令和4-3-25
発行：致知出版社
「1日1和、読めば心が熱くなる
365人の生き方の教科書」
より紹介しました。