「ダイハード 2」(1990年)アメリカ映画
【14対15の野球の試合見てるようで、
バカにゃぴったりのアクション物だ。】
大金を使った映画を見せられて、もうたまん
なかったね。お金持ちが、次から次に札びら切って
料理を持ってこさせたみたいで、もう参ったよ。
制作費が120億円だっていうんだから、
それだけでいやだね。角川さんはこの『ダイ・ハード 2』
の話を聞くだけでも、怒っちゃうんじゃないの?
きっと、制作費の数字で勝負していると、
すぐに、その上をいかれるんだ。金額自慢は、
ビンボー自慢と同じこと。世界にはすごい金持ちが
いくらでもいるからな...。
こういう映画に比べると、日本の映画って
足元にも及ばない。50年は遅れているって感じ。
金額も違えば、映画に対する国をあげての
協力体制も違うじゃない。社会的な協力なんて、日本の
場合ゼロでしょ?なんでもない路上撮影だって
警察のOKが、なかなかおりないし...。
オレの映画なんて、ちょっとした爆発シーンを撮ったら
さんざん怒られちゃって、この映画に比べたら、
ノミの屁みたいなもんだよ、オレの爆発は...。
団地でボンとやって誰も被害者が出たわけでも
何でもないのに、よってたかって「ウルセー」
だって。マスコミもその尻馬にのりやがって。
そのくせ、アクション映画は「ダイハード」
みたいじゃないと貧弱でダメ!」なんてほざくんだぜ。
そういう連中は、もう少し映画の製作に
協力しろっていうんだよ。文句ばっかりいわないで。
前もっていっておくけど、オレの映画を見てだな、
「アクション場面に迫力がない」なんて
いったら招致しないからな。今から釘を刺して
おくぞ。絶対に文句いうなよ。あれこれ批判
しちゃダメだからな。まぁ、これだけいっておけば
大丈夫だろう...。
ちょっと、前ふりが長くなったけど、こういう
映画ってのは、見てからどうのこうのいうもんじゃ
ないんだ。そもそもの話。007シリーズに
ついてあれこれいうヤツがいないのと同じで、
「あぁ、面白かった」
「つまんねーの」
の2つしかない。
「ナウイとダサイ」の
2分法しか、判断の方法を満たないバカな若者向けの
映画だからな。
それに、この映画の設定には無理があるとか
なんとかいっても、しょせん部外者の遠吠え
になってしまう。コンピューターゲームの設定に
文句いっても、仕方ないように、いうほうがヤボ。
文句いうのは、買わないヤツの買わない理由だよ。
そもそもシリーズものの、プラスマイナスというのがある。
主人公が、どういうヤツか、2作目からは
わかっているから、単純な客ならば、
「こんどはどんな頑張りをするかな?」という安心と期待で
進めちゃう。ハッピーエンドだから見るっていう
客だな...。
その点、オレみたいなひねくれた客は、
主人公が、どんな危機にあっても絶対助かるんだ
とわかっているから、ドキドキのしようがない。
首しめられても、「はぁ、そうですか?」
って感じで見ちゃうから、いろいろなアラが
余計に目についちゃうんだな。
スリルとサスペンスというより、新作では、
どんな小道具をつかうのか? 何人、人が●ぬのか?
ということが楽しみのポイントになって、
いきつくとこが、ジャッキー・チェンの映画に
なっちゃうんだよな。シリーズものの宿命だよ...。
つづくかも...?
備考:この内容は、
1991-12-18
発行:太田出版
著者:ビートたけし
「仁義なき映画論」
より紹介しました。