【家の中では トドみたいでさ ゴロゴロしてて
あくびして...】。忌野清志郎が歌う
「パパの歌」である。
父親のさえない描写から始まるが
【だけどよ】で、テンポが上がる。
【昼間のパパは ちょっと違う 昼間のパパは
光ってる 昼間のパパは いい汗かいてる】。
1990年に、建築会社のCMで流れた。男の仕事に
だけ焦点をあてる点は、時代を感じるが、当時は、
注目されヒットした。親の働く姿が、子どもの目に
触れないことの、裏返しでも、あったのだろう...。
今は、在宅勤務が広がり、働くパパもママも
子どもの視界に入ってきた。影響は、小学生への
「大人になったら、なりたいもの調査」にも表れて
いるようだ。男子の①位が、前年のサッカー選手から
会社員に、代わった。②位の、YouTuberを、
わずかに上回る。
「在宅で仕事する親を見て、身近に感じたのでは?」
とは、調査した第一生命保険の見立てだ。過去に
サラリーマンが、⑩以内に入ったこともあるが、
このところは、ご無沙汰だった。
今回は、女子も④位が
会社員だ。
職場と住まいの分離は、近代社会の特徴である。
ゲートリー著『通勤の社会史』によると、
19世紀の英国では、時折コレラが
流行るような「ロンドンの不衛生」さが
問題になった。郊外に住みたいとの
欲求が高まり、”蒸気機関車” という新技術が、
それを可能にした。
コロナを避けるリモートワークも、
高速インターネットが支える。
職住の最接近は、大げさに言えば
歴史的な転換なのだろう。
緊急事態宣言下でなくても、
大事にしたい...。
備考:この内容は、
2021-9-30
発行:朝日新聞出版
著者:朝日新聞論説委員室
「天声人語・2021-3-23」
より紹介しました。