飛行機に乗ると、長距離飛行であれば、頼まなくても機内食が出てくる。最近の
飽食に慣れてしまった人は、
「やあね、こうやって出されると、つい食べて太っちゃうのよね」
「うまいモンが出たためしはないよな」
と、ありがたみを感じていないようだが、中にはこんな素朴な反応を示す人も
いる。
もうずいぶん前のことだが、タレントの斉藤清六さんが後輩の西山浩司クンと
ホノルルに向かった時のことである。飛行機が離陸してしばらくすると、機内食が
運ばれてきた。それを見た清六さんは、さっと100ドルのトラバラーズチェックを
出してスチュワーデスに押し付けた。
「オー、ノーサンキュー!」
と、スチュワーデスが受け取らないと、
「遠慮しないの。こらは日本人の心意気だから、受け取ってよ」
と、太っ腹なことをいう。西山クンがあわてて、
「清六さん、これタダなんですよ」
と、止めると、
「えっ、ホントなの?」
後輩の手前、大枚払ってカッコつけようとした清六さんだったが、どうやら
とんだ勘違いだったようだ。
備考:この内容は、1994年1月5日発行 KAWADE夢文庫 ユーモア人間倶楽部:編
「世にも恥ずかしい人々Ⅱ」より紹介しました。
