ついにこの日が来てしまった。
私もさして違いはしないが、いつこの日が来てもおかしくない年齢ではあった。でもショックだ!
メンバーが次々と亡くなるたびに寂しく思っていたが、彼の死は特別だ。
ザ・バンドの音楽は私にとっての第二の音楽人生の始まりでもあった。
クラシック、特にバッハやルネサンスなどの古い時代のヨーロッパ音楽に夢中であった私が、ある意味、挫折とともに、サラリーマン(放送業界)として生きていく中で、最初に出合ったショックが、初任地でふらりと入った喫茶店でBGMとして、ずっとかかっていたザ・バンドの曲であった。
彼らの曲を聴いたのは初めてだった。
当時、すでに映画「イージー・ライダー」に使用されて評判になっていたはずの「ザ・ウェイト」すら知らなかったと思う。
最初は、彼らのどちらかといえば地味な曲調に特に関心を払ったわけではなかったのだが、30分、1時間と聞かされているうちに、明らかに「これは何だ?」と興奮してきたのを覚えている。
クラシック好きとはいっても、もちろんラジオのFENにかじりついていた経験も少なからずあった私はポピュラーミュージックも黒人音楽もそれなりに聴いていたつもりだったが、ザ・バンドのロックの独自性と、経験に裏打ちされた緊張感とおおらかさのバランスが絶妙なアンサンブルは、それまでの人生のすべてといってもよいはずの音楽から離れようと思っていた当時の私には実に新鮮でショッキングな音楽であった。
1972年の年末のことであった。
その後のことをくだくだ書くと数十ページにも及びそうなのでやめるが、ロビー・ロバートソンはそのザ・バンドの要の人物であった。5人のメンバー誰が欠けてもザ・バンドではないが、それでも、要といえば彼だろう。曲作りの中心でもあった。
ギタリストとしてうまいかどうかはプレイヤーではない私には評価できない。しかし間違いなく極めて印象的な存在感を放つギタリストでもあった。
5人編成であるのに、ギターは彼一人、だからリズムも刻みながらソロもとる。そこでは独自のピッキング・ハーモニクスも生きる。
彼らの曲から1曲選ぶなどというのは、到底できる話ではないが、あえて「これもロビーらしいかも」という1曲を。
「Northern Lights- Southern Cross(南十字星)」(評価が高いとはいえないアルバムではあるが、私はやや脱力した感のあるこのアルバムも好きだ)から「OPHELIA(オフェリア)」。