@連載脚本『聚楽第』…その21 密謀 | ノレンの妄想日記

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好き勝手に綴りまする。

行く川の流れはたえずして、徒然なるままに、男もすなる日記たうものを…って、あたしゃ男やっ!

後、残したいモノを…。

具体的には…自作シナリオの『image画』を残してます。
シナリオのタイトルは『聚楽第 千利休.異聞』です。

○ 聚楽第・一室・(夜)

織部の声「しかし、こうしていた時にも太閤殿下の天下取りは着々と進んでいった」

  秀吉、秀長、利休、そして三成が馬吊(「マーティオ」=麻雀の原型)を興じている。

  脇には日本地図。

  更にその上には、書状の山。

  秀長、紙牌(チーパイ)を打ちながらその書状を指し、



秀長「北条の重臣、また一介の侍大将、同盟武将にいたるまで…、皆…豊臣に二心なく忠心を誓うと言ってきておる。哀れは北条よ。これがかの氏康公の築かれた名家の末路とはな」

三成「しかし、これでようやく全てが終わりする」

  秀吉、話を聞かぬかのように…
秀吉「ポン」
  と、パイを投げる。

秀長「いや。まだだよ、三成さん…」

三成「?」

秀吉「(リーチの意)詰み」

秀長「次の考えがある」

  秀長、書状を払い朝鮮半島を指す。

秀長「朝鮮だ」

利休「…(思いがあるかのように秀長の顔を見つめる)」

  三成は驚愕の様子。

秀長「(三成に)…そうだ。皆に死んでもらう」

三成「…」

秀長「兄が天下を治めようとも腕ばかり覚えがあり、政治、統治に向かん荒武者どうもがいかに多いか?最低五回…いや六回は遠征を行い面倒者の力を殺ぐ。特に家康…そして前田利家だけには何としてでも行ってもらう」

  三成、この秀長の非情さには一言もでない。

秀吉「それ、ロン」

  秀吉、笑う-しかし目は笑っていない。

秀長「政治は仕組みだ。もう力自慢の武者どもはいらん。後は我らの言葉、法を守る官吏さえおれば良い。これで全てが終わる…。後は…(利休に目をやり)この者の知恵がモノを言うという訳だ」

  利休、苦笑す。

  と、漸く秀吉が口を開く
秀吉「…非情なことだ。儂は五代に渡る関東北条の歴史、文化を破壊し、また今度は数多の戦を共にした盟友を葬らねばならぬ。まさに悪鬼…」

利休「(冷静に)藤吉…いや、殿下はその星の元にお産まれになった。お受け入れなされ」

秀吉「気楽に言いおる」

利休「いや、藤吉…それは違う。もし貴様が十年送れて産まれれば、今の世は徳川、前田、あるいは伊達…その者らのものになっておろう。しかし天は貴様をこの世に…この時に落とした。…違うか?」

  秀吉、ジッと下を向いていたがふと顔を上げ、

秀吉「さ、もう一回」

  三成が、横になっている。

秀長「もう人が足りんわ。あんたには付いてゆけん。俺ももう眠い」

  と、襖が開き茶々が入ってくる。

  一同が固まる。



秀吉「どうした?茶々」

茶々「お邪魔かとは思いましたが…お勇ましい男衆の言葉を拝聞いたしますと、心が沸き立ちまする。」

  茶々、それだけ言うとすぐ去ってゆく。

  起きている三人の間に、ふと呆けた雰囲気が残る。

秀吉「御主らどう思う?(ボソッと)」

二人「?」

秀吉「いや、これまでこの日ノ本の歴史を作り続けたのは誰であろうかのう…?そう思っての…」

利休「少なくとも今は、殿下にあらせられましょう」

秀吉「違う…女だ。男共は女の手の平で転がされている。後の世も…そうはあるまいな」

  秀吉、自嘲的に笑う。

  二人も『全く』というように笑う。

  寝ていたはずの三成は、しっかり目を開けている-狸寝入りである。

秀吉「いや、そうでも考えんと…儂も血肉の通った人間だ。とても耐えられん」

  秀吉、三成を起こし、

秀吉「起きんか!三成」

  三成、いかにもフラフラと座りなおす。

秀吉「さ、もう一勝負」

  秀吉、荒々しく牌をこねる。

(続く)