@連載脚本『聚楽第』…その20(改) 織部と久蔵…そして吟 | ノレンの妄想日記

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好き勝手に綴りまする。

行く川の流れはたえずして、徒然なるままに、男もすなる日記たうものを…って、あたしゃ男やっ!

後、残したいモノを…。

具体的には…自作シナリオの『image画』を残してます。
シナリオのタイトルは『聚楽第 千利休.異聞』です。

○ 織部の庵(朝)

  空舞台。

  と、蹂口から久蔵が出てくる。
  何やら不快そうな様子。

  その蹂口から今度は織部の手が出、久蔵の袴を掴む。



久蔵「…(怒)俺が知るかっ!」

織部の声「…良いから待てっ!」

久蔵「…」

織部の声「(哀願)…待ってくれ」

  久蔵、中へ引きずり込まれて行く。




○ 同・中

  一面に広げられた織部の焼き物。

  織部、にこやかに座している。

  久蔵、憤然としながらも座る。



○ 織部の庵・前の道

  吟が共を連れ歩いてくる。



○ 同・中

  織部、緊張して座している。

  久蔵は不快そう。

男の声「ごめん」

  織部、嬉々と立ち上がり蹂口から出て行く。




○ 同・前

  吟が共と立っている。

織部「…よ…ようこそっ!」

  吟、微笑んで会釈する。

  × × ×
  共の男は外に立っている。

吟の声「(歓喜の声)いやぁ!」

  共の男、庵を見やる。




○ 同・中

  一面に広げられた織部の焼き物。

  吟、楽しげに焼き物を検分している。

  久蔵はそっぽを向いている。

  満足げな織部。

吟「よぉもまぁ…[へうげ]な…」

織部「…お師匠様の教えに感慨を受けました…。そう…幼少 の折より…」

吟「…父の?」

織部「一期一会にございます」

吟「…」

織部「…確かに私の品は奇異にも見えましょう。が…それ も唯一度限りの出会いを大切に…」

吟「(遮り)父の言葉は千年先にまでも残りますやろか…。… しかし…自分にとっては…これまでお会いになった殆どのお人は… 一回こっきりで沢山や…」

織部「えっ…?」

  久蔵もピクリと耳を立てる。

吟「…自分の運は秀吉のお父はんに拾われて…それでお終いや…」

織部「…」

久蔵「…お父君はもうお一人おられよう?」

吟「…」

  織部、慌てて

織部「(久蔵を指し)これなるは…と…友です。…そ…その… (言葉に困り)」

久蔵「(冷徹に)おられますでしょう?」

織部「(怒鳴る)黙れ!貴様っ!」

  吟、ふと寂しげに笑い
吟「そうですなぁ。そのお方のおっしゃりの通りでした わ。父に…利休に怒られますなぁ」

  一同の間に気まずい沈黙が漂う。





○ 同・庵前

  織部、久蔵が見送る中、吟が共と去ってゆく。

  と、織部、久蔵をー
織部「(怒りを込め)貴様ぁっ!」
  と、拳を振り上げる。

  が、織部の拳が止まる。

  久蔵が寂しげに織部を見つめている。

織部「…(謎)」

久蔵「…(寂しげに)貴様…あの娘を想うのなら…」

織部「…」

久蔵「…大切にしてやれ」

  織部の腕が垂れる。

  久蔵、黙って去ってゆく。

  風が寂しげに吹いてくる。



(続く)