MASTER PIECE♯27 | EAT THE MUSIC.

EAT THE MUSIC.

とにかくそれが音楽と思しきモノなら
何でも聴いちゃう節操なき超雑食系男子が
日々どのような音楽を「喰らって」生きてるかの
しょうもない雑記です。
共に喰い散らかして頂けたら幸いです。

昨晩に続いて、知る人ぞ知る「残念なFLIP FLAP」Geminiを。

知る人ぞ知る、そして知らない人は一生知り得ないマニアックさを誇る彼女たちの音楽。

でもこんなネットの片隅で、こんなクソブログを覗いてしまったのも何らかのご縁よ。
お付き合い下さい。

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Gemini"ジェミニ計画"

yes mama ok?・金剛地武志がプロデュースに関与する双子のガールズユニット・ジェミニが、'01年に発表した最初で最後のフルアルバムがこれ。

ちなみに、金剛地と共にプロデュースにクレジットされてるMiztani Yukimasaなる人物は、軽ーくネットで調べた所、これと言って掻い摘まむ程メインストリームな実績は皆無ながら、まあ、色々オモロげなコトをやってるミュージシャンみたい。

で、本作。
とにかくあらゆるアイデアやアプローチやジャンルをゴッタ煮に煮詰めまくって、ふざけまくった一枚。
で、ありながら聴き心地は至ってキャッチーかつポップ、と言う部分は先んじてリリースされていたミニアルバム"The moon is made of cheese"と延長線上。
ただ、前作がアメリカのインディーロックバンド的な、あえてパキパキしてないボンヤリしていたマスタリングだった所が、よりメジャー感に寄せられていて聴き易くなってる。
まあ、あくまで相対的な話だケド。

ただし、それでも純J-POPに埋没しない圧倒的な個性、と言うよりは寧ろ、嫌でも浮き上がるイロモン感?それこそが武器。

全体的にはテクノポップの意匠で纏め上げられているんだケド、その中でロックしてたり、ジャズっぽかったり、ヒップホップっぽかったり、渋谷系っぽかったり、四つ打ちなダンスポップしてたり、ブルージーだったり、パンキッシュだったり。もう訳がわからない。
しかもそれが一曲単位の中でない交ぜになってたりするモンだから、ただただ脱力。
でもそれが最高に楽しいポップミュージックに昇華されてる点は、やはりプロデューサー勢の采配の妙。
そして技巧と知識とセンスと、ユーモアと遊び心と悪ノリ。
良くやるよね。

更には、伸びねえしピッチも怪しいながらも、ハスキーがかった声質が抗えない魅力を放つヒトミ&カオルのボーカルがまた、このふざけた音楽をよりもうワンランク上のバカバカしさに押し上げている。
生意気、小悪魔、白け感、気怠さ。素人臭さが却って魅力的。

コレ、何もかもが計算ずくなら怒るよねえ。

ついでに、歌詞が抜群に良い。なんて妙ちきりんなセンスなんでしょう。
単語の一つ一つや言い回しは抜群にバカバカしくもスタイリッシュ。

"Pussycat Disco"に見られる「皆の前では仔猫 ちぎれる若さ娘ッ子 案外純情なのよDisco!Disco!!」
「コガネムシ 金持ちだ 君でもいつかはなれるんだ」
「アブラムシ 大家族 こどもは全員クローンだ」。

"沖のニシン"に見られる「だいたい男はただ乗りヘブン 狭いシート乾く間もねえ分 救いもあるわ 殺すなら今よ」
「当分女は馬乗りヘブン フッたスッたトントンでイーブン また出直すわ 口説くなら今よ」
「沖のニシンは波乗りヘブン 竿を垂れりゃ入喰いのヘブン 飲みかけた針 もどすなら今よ」。

なんなんだよ、これ。センス良過ぎ。

メロディーとのハマり具合も宜しく、ライミングの妙で、こちらの対応能力を大幅に飛び越えるメッセージの数々が津波のように耳に飛び込む様は、ちょっとしたエクスタシーよ。

ちなみに上記2曲を含め、作詞は基本的に金剛地。やるよねえ。

どうでしょうか。ここまででも随分と聴いてみたい欲求を刺激されて来てるんじゃないでしょう。

ダメ押しで、お気に入りナンバーを抜粋。

"Pussycat Disco"
アルバムど頭を飾るのは、スウィンギーなストロークから幕を開け、途端に荒くれブルースハープとブレイクビーツが絡みつく四つ打ち。
で、サビになると唐突にストリングス。
で、前述した歌詞が合わさればもうカオス。
ジェミニの小悪魔的な色っぽい歌唱もマッチ。

"ジェミニの落第ソルフェージュ"
一曲目のせいで影が薄いケド、パンキッシュなサウンドとキャッチーなメロディで展開する怒涛の勢いがハウシーな一曲。

"ゴロツキストバー"
ヒップホップっぽいパターンと歪んだサウンドがスタイリッシュな、地味ながらもキャッチーな佳曲。
LOWな歌唱が、唐突に椎名林檎っぽい。
ちなみに共作ながら、作詞作曲にジェミニ自身も関与。

"沖のニシン"
ご丁寧に先行でシングルカットもされたマイナースロー。
ノイジーな歪んだギターサウンドと、ほとんど感情なく気怠い歌唱と、淡々としたメロディ。
サビでのちょっとした美メロで、ファッと風景が切り替わる感じがツボ。
まあ、美メロと言うても相対的な話だケド。
で、これまた前述したふざけた歌詞が絡みつく訳だからね。もう、またまた訳がわかんない。
更にもっとわかんないのは、こんなふざけた楽曲の大サビで涙腺を刺激され、無性に泣きそうになってるオレ。

いや、理屈じゃないのよ。

"第二次成長KING"
所謂"Walk This Way"的なノイジーかつラウドなヒップホップ的パターンに、ヒトミ&カオルの歯切れの良過ぎるライミングに圧倒されまくり。
で、これまたサビでは突拍子もなくクリアかつピュアな美メロシーケンスへ。
これも無駄にウルッと来るんだよなあ。

思うに、金剛地さんは普通にカッコ良くわかりやすいポップソングも作れるんだと思うの。
もう、性とか業の世界だよね。

更には、ちょっとPUFFYみたいなわかりやすいパンクロック"YASASHISAロケット"も悪くない。

前トラックの小粋な留守電風インタールードからスムーズに繋がる"双子の美人秘書"は、木村カエラとかが歌ってても違和感がないぐらい例外的にわかりやすいダンスロック。
一般のミュージシャンのアルバムで言う所の、箸休め的な遊び曲しかない本作に置いては却ってこれが、箸休め?

ヒトミとカオルのレコードブースでの一コマが楽しいエンディング"始まりの光"も小品ながら、聴き所たっぷり。

更にはインタールードに挟まれる"胸キュン!ジェロニモ学園。"全3話も、くだらな過ぎて最高。
ヴァンヘイレンをバックに、所謂ビバヒル的な?架空の学園ドラマの予告編のような体裁の短いトラック。
「恋も勉強も、ジェロニモがあるジェロ」って、舐めてんの?

とまあ、気付けば全曲取り上げてしまった。
頭からオケツまで、聴き所、と言うよりはツッコミ所に塗れた怪作。

ここまで読み進めてしまったなら、どうにかして手に入れるべきよ。是非。


ちなみにジェミニはこの後、天地真理カバー"ひとりじゃないの"をシングルでリリースした後、消息不明に。

ヒトミもカオルも今頃は恐らくいい歳でしょ?
幸福に暮らしてるコトを祈るわよ。

ちなみに"ひとりじゃないの"のジャケは、当然のコトながら同じ顔した双子のおねえちゃん2人。
で、「ひとりじゃないの」のタイトル文字。
所謂「出落ち」だケド、キャリアの最後まで「おふざけ」を貫いた姿勢に超リスペクト。

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でも、好みの別れる顔だよね。