PLAY LIST♯136 | EAT THE MUSIC.

EAT THE MUSIC.

とにかくそれが音楽と思しきモノなら
何でも聴いちゃう節操なき超雑食系男子が
日々どのような音楽を「喰らって」生きてるかの
しょうもない雑記です。
共に喰い散らかして頂けたら幸いです。

今日取り上げるのは、マニアックな作品やミュージシャンを恥ずかしげもなく数多取り上げる我がブログに置いても、最たるマニアックさを誇るアイテムかも知れない。

何せ、軽ーくググッてみてもまとまった情報がほっとんど出て来やしない。

付き合う友達を選べるなら、基本的にこの作品が好きな人、或いは面白がれる人が良いなあ。

もっと言えば、コレを知ってるってだけで大分運命だと思うの。

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Gemini"The moon is made of cheese"

発表は'01年。ガールズユニットのデビューミニアルバム。

オレとしては、今で言う「5時に夢中!」の枠でかつてやっていた低予算番組「電リク!BEAT BOX」と言う番組に彼女たちがGAKU-MCと共にMCとして出演していて、そこでオンエアされていたPVと共に当時「コレだ」とか思って、今ほどネットショッピングが整備されていない時代に、今は亡き上野のHMVでわざわざ取り寄せして貰って購入。
もうなんか、昨日のコトのようよ。

で、このジェミニ。グループ名から推察する通り、ヒトミとカオルという双子ボーカルユニット。
で、プロデュースは知る人ぞ知るyes mama ok?・金剛地武志。
そう、一時エアギターでブレイクしかけたあのお方です。

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金剛地武志氏。

かなりマニアかつコアな、カルト的人気を誇るバンドで、ある筋に置いてはちょっとしたレジェンドだったりするyes mama ok?。
そこに属する金剛地が設立に関与した「エチケットレコーディング」と言うレーベルからデビューする予定だったGemini。が、諸事情で頓挫。
数年後、仕切り直され制作・リリースされたのが本作。

ymo?をご存知の方なら音楽性はある程度予想がつく所かも知れないケド、もうとにかくハチャメチャです。
で、ありながら、ほとばしるこのポップネスは何なんだ?

あらゆるスタイルやサウンドやアプローチをブチ込んだ大鍋を煮詰めまくって、シュガーコーティングしたような、奇天烈な世界観。

また嘘が誠か、飲み屋で知り合った可愛い双子を騙くらかして歌手デビューさせてみた、と言う話で、出会い頭からふざけ過ぎ。
ヒトミ及びカオルも、思ックソ素人感に溢れた、危うく気怠くシマリのない歌唱を展開。
伸びねえし、ピッチは怪しいし、どうしようもない。
ただし、ハスキーがかった天性の声質は、何かこう抗えない確固たる魅力があって、ほとんどお喋りしてるみたいなモタついた歌唱が却って彼女たちの「ユルい」「小悪魔」「生意気」感をオリジナルな魅力に昇華。

その後ろで、テクノだったりオールディーズっぽいロックだったり、金剛地によるセンスと遊び心とイタズラ心と、反する抜群のミュージシャンシップが反映された、カッコ良くもコミカルなサウンドが不躾なまでに鳴り響いている。
もう、カオスよ。

でも聴き心地は至ってポップなんだから、もう訳わかんない。

いや、今まさにこの文章を読まされてるこっちのが訳わかんねえよ、と言いいたい所でしょう。
でもこう、キチンとした熟語では筆舌に尽くし難い難儀さこそが本作の、そしてジェミニの魅力なんだから仕方がない。

大昔にAmazonでレビューをシコシコ書いていた時分にも、アホみたいな文章でレビューを書いてしまったモノだケド、さっき久しぶりにチェックしに行ったらまだ残ってて恥ずかしくて死にそうになりました。
で、レビュー数が増えてねえ。
いやいや、こんなイカした音楽が放置で良い訳ないでしょう。

まあ、きっと音楽的な素養や楽器などの知識があれば、それなりにそれっぽく語れるんでしょうケド。
そういう層に見つけて貰えないんだから、これまた仕方がない。

エアギターで金剛地がブレイクの兆しを見せていた時期に飛び火してジェミニも再評価あるか?とか思ってたんだケド。
まあ、そんなに甘くないよね。

で、お気に入りとしてはやはりリード曲"Green Cheese"が超名曲。
70'sな香り漂うオールドスクールなダンスロック。
トラックだけならFranz FerdinandやTHE BAWDIESのボツ曲みたいな。

何ともスウィンギーなメロディとウネる打ち込みギター。
あえてなのか、予算と技術の都合なのか、今のインディーロック的なボンヤリとしたマスタリングも楽曲に割りとマッチしてる。

ちなみに印象的なアルバムタイトルは、「馬鹿げたコトを信じる」みたいなニュアンスの英語の慣用句らしく、そこから転じて「あなたがわたしのコト好きだとしたら、それはまるで月はチーズで出来てるって信じられるぐらい、ミラクル」的な、この上なくロマンティックかつ身も蓋もないバカ歌詞も最高。
金剛地が手掛ける単語選びや言い回しも実にスタイリッシュ。

他にも、ひねくれテクノポップ"JJ"、本作中では相対的に素直なポップロック"ALL OF ME ×2"あたりも悪くない出来。

ポップミュージック好き、特に渋谷系とかチープかつレトロなダンスロックが好きな方、で、尚且つフニャフニャした女性ボーカル物に耐性がある方なら、絶対聴いて欲しい一枚です。

とは言いつつも、本デビューミニアルバムはほんの挨拶代わり。
この後クソみたいな名盤が飛び出してくる訳ですが、それはまた次回。


かつて、ブリーフ&トランクスが出て来た時に「黒いゆず」なんて言われてたケド、ならジェミニは差し詰め「黒いFLIP FLAP」?
で、「黒い小西康陽」・金剛地武志プロデュースによるこのヘンテコリンな世界観、是非味わってえ。