人間が出す「体液」にはたくさんの物質が含まれており、その「体液」があるからこそ、人間は外敵から身を守ることができます。
濁って見えるほどの細菌が繁殖した培養液に『ある液体』を一滴垂らすと、細菌が死滅し、数分のうちに透明になることを発見し、その後「奇跡の薬」と言われる「ペニシリン」を発明した人物がいます。
細菌学者「アレクサンダー・フレミング」です。
そして、その『ある液体』とは「彼自身の鼻水」であり、その「鼻水」に含まれる殺菌成分が『リゾチーム』という分解酵素だったのです。
1922年、フレミングは「細菌だけを殺す物質」を探していました。
それまでの消毒薬(フェノール)は、細菌は殺すけど、白血球にも作用してしまい、最悪、症状が悪化する場合もあるものでした。
フレミングは思いつくまま、さまざまな物質を培養中の細菌に加えてみましたが、コレというようなものは見つかりませんでした。
ある日、風邪を引いたフレミングは、たまたま「くしゃみ」をし、たまたま「鼻水」が飛び、たまたま「細菌を培養したシャーレについて」しまいました。
翌日、そのシャーレを見てみると「鼻水」の周囲だけ細菌が増殖しなくなっていました。
それに気づいたフレミングは、「自分の鼻水」を濁って見えるほどの細菌が繁殖した培養液に一滴垂らします。すると、細菌が死滅し、数分のうちに透明になること発見。その後「涙」や「唾液」、「血清」などでも殺菌作用があることを発見し、生体にも「細菌を殺す物質」があることを発見しました。
その物質が『リゾチーム』です。
(「溶菌」をあらわすlysisと、「酵素」をあらわすenzymeから「Lysozyme」と命名されました。)
『リゾチーム』は病気の治療薬になるようなものではなかったのですが、この経験が後の「ペニシリン」発見につながります。
『リゾチーム』発見から6年後、フレミングはブドウ球菌の一変種を観察するため、シャーレでこの菌の培養を行っていました。
培養後、家族旅行をしており、長期研究室を空けました。
シャーレはいくつかあり、その中の一つに偶然「アオカビ」の胞子が飛び込んだらしく、フレミングが旅行中に「アオカビ」が繁殖し、旅行から帰ってきたフレミングは「アオカビ」の周りにブドウ球菌が生えていないのに気づきます。
フレミングはそれを見て「アオカビが何らかの抗菌物質を作っているからではないのか?」と考えます。
フレミングは、「アオカビ」がペニシリウム属に属するものだと知り、この抗菌物質を「ペニシリン」と名付けたというわけです。
なお、『リゾチーム』は、「塩化リゾチーム」として、卵の白身から作られ、気管支炎などの喀痰喀出困難に用いていましたが、現在は「医療上の有用性は確認できない」との見解が出たため、各社が販売中止・自主回収を数年前からしています。
しかし、フレミングは「もし『リゾチーム』の時の経験がなければ、私はこの発見の価値に気づかず、培地を捨ててしまっただろう」と言っています。
偶然の「くしゃみ」「鼻水」からの『リゾチーム』の発見は、たくさんの命を救う、人類にとって重要な発見だといえるでしょう。
参考資料:
世界史を変えた薬(著:佐藤 健太郎)
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