皆さま
当ブログは霊性に関する心理学的なアプローチを行うことを目的の一つにしています。
その関係上、しばしば心理学的観点からの考察も行っていますし、過去記事には霊性を図るための心理尺度も公開しています。また、その開発に至るまでの理論的な展望も提示しています。
こうした人のパーソナリティ特性などを測る道具を作るには、何をどのように測定するかに関する理論的な根拠に基づいて、項目作りをするための標準的な手続きに従い、得られたデータを解析するための統計学的な手法を駆使します。
適当に思いついた質問を並べてYes-Noで答えるようなものとは違います。心理学に関する高度で専門的な知識とスキルによって、心理尺度としての精錬を行っていくわけです。
ところが、最近は一見して心理テスト風に見せかけている「まがいもの」も横行しているようです。
心理テスト系サイトの問題点も指摘されるようになっています。ネットでお手軽に自己診断ができるというのが売りですが、正規の手続きを踏まずに作成されていたり、オリジナルの心理テストに似せて作り替えたり、心理学的な専門性の欠如している事例も見られます。
上記の記事で論じられていることをまとめておきます。
「MBTIハラスメント」とは、MBTI(マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)という性格診断を用いて他人を不適切に判断し、ネガティブなレッテルを貼る行為を指します。近年、このようなハラスメントが職場や日常生活で問題視され始めています。
MBTIは、個人を16の性格タイプに分類する検査で、元々は自己理解を深めるためのツールとして開発されました。
しかし、これを用いて他人の性格を一面的に評価し、特定のタイプを軽視したり、ネガティブな印象を押し付けたりすることが「MBTIハラスメント」として問題視されています。
例えば、ある人がMBTI結果に基づいて「○○タイプだから無責任だ」と評価されたり、特定のタイプであることを理由に採用を拒否されたりするケースが報告されています。
さらに、診断を受けていないにもかかわらず、他者の性格を推測してネガティブな評価をすることも、ハラスメント行為に該当します。
この問題に対し、一般社団法人日本MBTI協会は、MBTIがハラスメントとして使われることは絶対に許されないと強調しています。
MBTIは、診断結果を自己理解の手助けとすることを目的としており、それを基に他者を不適切に判断する行為は、MBTIの本来の趣旨を逸脱しています。
また、協会には、誤った解釈によるネガティブな評価により精神的苦痛を受けた人々からの相談も寄せられており、深刻な問題として認識されています。
協会は、MBTIを正しく利用するよう呼びかけており、特に公式な資格を持つ専門家の指導のもとで自己理解を深めるプロセスを重視しています。
また、MBTIの商標を守るため、誤った情報を広めるサイトやコンテンツには法的措置を検討する可能性があるとしています。
MBTIをエンターテイメントとして楽しむことは構いませんが、その結果を他者に対する評価や判断に使うことは避けるべきであり、個々人の尊厳を守るために正しい理解と利用が求められます。
……という流れになっています。
筆者も、MBTIについて関連すると思われるサイトを見て回りました。
最初に、ハッキリと申し上げますが、こういう類のサイトは、「MBTIインスパイア系サイト」であり、間違った結果を広める一因になっています。
MBTIに触発された性格診断サイトがブームになっている背景には、いくつかの要因が絡んでいます。これらの要因は、MBTIそのものの人気や特徴と密接に関連しています。
1. MBTIの簡便さ
MBTIはそのシンプルさとわかりやすさから、個人の性格や行動パターンを理解するツールとして広く受け入れられました。この簡便さが、MBTIに触発された多くの性格診断サイトが登場する土壌を作り上げました。
インターネット上の性格診断サイトは、誰でも簡単にアクセスでき、短時間で結果が得られるため、多くの人が気軽に試すことができます。特にSNSやブログで結果を共有する文化が広がり、バイラル的にブームが拡大しました。
2. エンターテインメント性
MBTIに基づいた診断は、結果が具体的な性格タイプとして表現されるため、エンターテインメントとして楽しむことができます。これが、ブームの一因となっています。
診断結果が16の性格タイプとして示され、これにより自分や他者の性格を簡単にカテゴライズできるため、友人や同僚と診断結果を比較する楽しみ方が生まれます。
3. SNSによる拡散
SNSでのシェアや結果の投稿が、MBTIに触発された性格診断のブームを加速させています。
診断結果をSNSでシェアし、他者と比較することが流行し、多くの人がそのブームに乗る形で診断を受けるようになりました。これがブームをさらに拡大させる要因となっています。
4. 疑似科学としての問題点
一方で、MBTIに基づく診断は、その簡便さゆえに過度に簡略化されたり、誤解されたりするリスクもあります。
特に、MBTIをエンターテインメントとして消費する際には、診断結果が誇張されたり、極端な解釈がなされることがあり、これが問題視されています。
診断結果を過信し、それに基づいて他人を評価したり、自己の行動を決定したりすることが問題視されています。
これが、いわゆる「MBTIハラスメント」にもつながっています。
5. 公式MBTIとの違い
MBTIに触発された性格診断サイトの多くは、公式のMBTIとは異なる独自のシステムや質問項目を採用しています。これにより、結果が公式MBTIと異なる場合があり、誤解を生むこともあります。
多くの人がMBTIに触発されたサイトの診断結果を公式MBTIと同一視することがありますが、これには誤りがあります。
公式のMBTIは、厳密な理論と訓練を受けた専門家によるフィードバックを前提としていますが、オンラインの診断はそのプロセスを省略し、簡略化された結果を提供しています。
MBTIに触発された性格診断サイトがブームとなっている背景には、MBTIの簡便さ、エンターテインメント性、SNSによる拡散、そして診断を手軽に楽しめることが挙げられます。
しかし、このブームは同時に、診断結果の誤解や誤用、さらにはハラスメントのリスクをも引き起こしています。
公式のMBTIとこれらの診断サイトを区別し、結果を適切に解釈することが重要です。
前述のYahoo!ニュースには
もしも、「就活の採用のフローの中にMBTI診断を提出させている企業があると聞いて絶句。しかもこれが研修後の配属にも影響するとは。。。」
「某大手メガベンチャーの会社説明会に行ったら採用担当が意気揚々と自分のMBTI紹介してて軽く引いた」
「知り合いの社長が面接でENTJ・ENTPは落としてるって言ってて、このあたり省くと組織化しやすいらしい。。」
といった内容が紹介されていましたが、これが事実であるとするならば、安易にその種の心理テスト?を鵜呑みにしてしまっている企業や採用担当の見識を疑います。
その昔は、ブラッドタイプ・ハラスメントという問題もありましたが、日本ではどういうわけか、今でも血液型性格判断が幅を利かせていています。
これについては、ABO式の血液型と性格特性との間に、一定の関係は認められてはおらず、血液型に基づいた固定観念(ステレオタイプ)が広まっているだけです。
これと同じような状況だと言えるでしょう。
MBTIそのものに対する批判
ところで、MBTI(マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)が「疑似科学的」と評価される理由はいくつかあります。
それらは、主に科学的な基準に基づいた検証が十分でない点や、理論的な基盤が曖昧であることに関連しています。
1. 理論的基盤の問題
MBTIは、心理学者カール・ユングの「心理学的類型」という理論に基づいていますが、ユングの理論自体が厳密な科学的検証に基づいていないという問題があります。
ユングの理論は観察に基づいた仮説であり、その後の実証的な研究やデータに裏付けられていないため、MBTIも科学的な基盤が弱いとされています。
2. カテゴリカルな性格分類
MBTIは、個人を16の固定された性格タイプに分類します。しかし、現代の心理学では、性格特性は連続的であり、二者択一で分けることは現実の人間の性格を単純化しすぎると考えられています。
例えば、外向性と内向性をはっきりと分けるのではなく、連続したスペクトラムとして捉えるのが一般的です。
これに対し、MBTIは性格を4つの二項対立の組み合わせに固定化するため、個人の多様性や性格の複雑性を十分に反映していないと批判されます。
性格をタイプに分けてみる理論の長所短所については、以下のサイトを参照してください。
3. 信頼性の欠如
信頼性は、ある心理テストが一貫した結果を出すかどうかに関する指標です。
MBTIに関しては、同じ人が異なる時期にテストを受けると異なる結果が出ることがあり、再テスト信頼性が低いとされています。
これにより、MBTIの診断結果が持続的で信頼できるものかどうかが疑問視されています。
4. 妥当性の問題
妥当性は、ある心理テストが測ろうとしているものを正確に測っているかどうかを示します。
MBTIが本当に性格を測定しているのか、そしてその結果が実生活にどれだけ反映されるのかについての証拠が不足しています。
多くの研究では、MBTIのタイプ分類が職業選択やパフォーマンスなどの実際の行動と一致しない場合があるとされています。
5. エビデンスに基づいた支持の欠如
MBTIに対して、科学的研究から得られたエビデンスによる支持が不足しています。
多くの心理学者は、MBTIのタイプ理論を支持するためのデータが不十分であり、他のより科学的に支持された性格測定法(例えば、ビッグファイブ理論)の方が優れていると考えています。
6. 普及の背景にある商業的要素
MBTIは広く普及しており、企業や教育機関でよく使われていますが、その普及の背景には商業的な要素が大きく関与しています。この点から、MBTIが科学的というよりもビジネスとして成功したツールと見られることがあります。
商業的成功が科学的妥当性よりも優先されているのではないか?という批判もあります。
以上のことから、MBTIが「疑似科学的」とされるのは、科学的厳密さに欠ける理論に基づいており、性格を固定的に分類することによる限界、信頼性と妥当性に対する問題が指摘されているためです。
また、エビデンスに基づいた研究の不足や、商業的要素が普及の背景にあることも疑似科学とみなされる要因となっています。
ユングのタイプ論の発展形としてのMBTI
さらに解説を加えておくと、ユングのタイプ論とMBTI(マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)は深い関連性があります。
MBTIは、基本的にユングのタイプ論に基づいて発展したものです。以下に、ユングのタイプ論とMBTIの関連性を説明します。
外向性と内向性
ユングのタイプ論では、外向性(Extraversion)と内向性(Introversion)の概念が重要な要素として取り上げられています。
外向的な人は心的なエネルギーを外部の世界(他者との交流や外的環境)から得るのに対し、内向的な人は内部の世界(思考や内省)から心的エネルギーを得るとされています。
MBTIでもこの外向性と内向性の区別が重要であり、これがMBTIの最初の要素(EまたはI)に対応します。
したがって、ユングのこの概念がMBTIに直接的に取り入れられていると言えます。
4つの心理機能
ユングは4つの主要な心理機能を提唱しました。
これらは、思考(Thinking)、感情(Feeling)、感覚(Sensation)、直観(Intuition)です。
ユングによれば、人間はこれら4つの心理機能を使って世界を認識し、判断しますが、それぞれの人はこれらの機能のうち一つを主に使う傾向があるとしました。
MBTIでは、これら4つの心理機能を組み合わせて性格タイプを決定します。具体的には以下のように関連しています。
思考(Thinking, T) vs. 感情(Feeling, F)
この対立は、判断の仕方に関するもので、MBTIの2番目の要素(TまたはF)に対応します。
思考型(T)は、論理的で客観的な基準に基づいて判断することを好みます。
感情型(F)は、感情や価値観に基づいて判断することを好みます。
感覚(Sensation, S) vs. 直観(Intuition, N)
これは、情報の収集方法に関するもので、MBTIの3番目の要素(SまたはN)に対応します。
感覚型(S)は、五感に基づいて具体的で現実的な情報を重視します。
直観型(N)は、抽象的で全体的なパターンや未来の可能性を重視します。
3. MBTIの追加要素⇒判断型と認知型
ユングの理論には明確に含まれていないが、MBTIに特有の概念として、判断型(Judging, J)と認知型(Perceiving, P)があります。
これは、個人が外界にどのように接するかを示すもので、MBTIの4番目の要素に対応します。
判断型(J)は、構造や計画性を重視し、決断を下すことを好む傾向があります。
認知型(P)は、柔軟性を重視し、状況に応じて対応することを好む傾向があります。
このJとPの区別は、ユングの理論をMBTIが発展させた部分であり、ユングの原著にはない概念です。
ユングのタイプ論は、MBTIの基礎となっており、特に外向性-内向性や4つの心理機能(思考、感情、感覚、直観)に関する考え方がMBTIに取り入れられています。
MBTIは、これらの概念を組み合わせて16の性格タイプを定義することで、ユングの理論をより具体的な性格分類システムとして発展させました。
ただし、MBTIはユングの理論に新たな要素(判断型と認知型)を加えることで、独自の構造を持つ性格診断ツールとして完成しています。
まとめ
心理テストに関連して指摘される問題点の一つとして、バーナム効果や確証バイアスがありますが、これに加えて他の認知バイアスも心理テストの評価や解釈に影響を与えることがあります。これらのバイアスを理解することで、心理テストの結果を適切に扱い、誤解や誤用を避けることができます。
1. バーナム効果(Forer効果)
バーナム効果とは、人々が曖昧で一般的な性格記述を自分に当てはまると感じる心理的現象です。この効果は占星術や占い、性格診断テストなどでよく見られます。
MBTIの診断結果が、誰にでも当てはまりそうな曖昧な記述である場合、受け取った人は「これは自分の性格をよく表している」と感じやすくなります。このため、テスト結果が過度に信頼されることがあります。
2. 確証バイアス(Confirmation Bias)
確証バイアスは、人々が自分の信念や期待を裏付ける情報を優先的に探し、反対する情報を無視する傾向のことです。
心理テストを受ける際、自分が期待している性格タイプや、すでに信じている自己像に合致する情報を強調して受け取り、反する情報を無視しがちです。これにより、テスト結果が正確であるかのように錯覚することが多くなります。
3.自己成就予言(Self-Fulfilling Prophecy)
自己成就予言とは、特定の予測や信念が、その信念に基づいた行動を引き起こし、結果的にその予測が現実になる現象です。
心理テストの診断結果が「あなたはこのタイプだからこうすべきだ」といった具体的な行動指針を示した場合、受け取った人がその行動を無意識に選び、それが結果的に予測を裏付けることがあります。これがさらに診断結果の正当性を信じる根拠となり得ます。
4. アンカリング効果(Anchoring Bias)
アンカリング効果は、最初に提示された情報に強く影響され、その後の判断がそれに引きずられる傾向のことです。
心理テストの結果が一度与えられると、そのタイプに関する情報が他の性格診断や自己評価において基準(アンカー)となり、それに基づいた自己判断や行動が形成されることがあります。
5. 帰属バイアス(Attribution Bias)
帰属バイアスは、自分の行動や他人の行動の原因を誤って認識する傾向のことです。これは特に内的要因(性格や意図)に過度に原因を求める傾向を指します。
MBTIの結果が自己や他者の行動の理由を説明するために使われることがあります。例えば、「私は内向的だからこの行動をした」といった形で、自分や他者の行動を単純化して理解しようとすることがあります。
6. ハロー効果(Halo Effect)
ハロー効果は、特定の一つの良い(または悪い)特性が、その人の他の特性に対する評価にも影響を与える現象です。
心理テストの結果で「リーダーシップが強い」や「クリエイティブである」といったポジティブな特性が示された場合、その人全体が他の側面でも良く評価される傾向があります。逆にネガティブな特性が強調されると、他の特性まで悪く評価されることもあります。
7. ステレオタイプ化(Stereotyping)
ステレオタイプ化とは、特定の集団やタイプに属する個人に対して、固定化されたイメージや特徴を適用することです。
心理テストの結果に基づき、「このタイプの人はこうである」といったステレオタイプが形成されると、それに基づいて他者を判断することがあり、個人の特性や状況を無視することになりかねません。
MBTIやその他の心理テストは、多くの認知バイアスに影響されやすいものです。これらのバイアスにより、診断結果が過度に信頼されたり、誤解されたりすることがあります。
以上のことから、心理テストの結果は、あくまで自己理解の一助とし、他の情報や視点と組み合わせてバランスよく利用することが大切です。
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