皆さま
昔話ならいざ知らず、現代にも怪奇伝説はあります。神仏の住まいを犯す者にはバチが当たると本気で恐れる人は今ではすっかり少数派になってしまったように思います。
ですが、私たち巫師の世界では、身をもって神仏の怒りに触れたときの恐怖を味わった方が何人もいらっしゃいます。
そういうお話を一つご紹介しましょう。
ある夜、夕食をすませてお風呂へ入ろうと席を立ったとき、現役の女性巫師Gさんは玄関の戸を誰かが叩く音に気づきました。「誰だろう。こんな夜更けに」いぶかしく思ったGさんが戸を開けると、そこには20年来の親友であるHさんが立っていました。
Hさんは気性が激しく、勝ち気なところがあり、まず彼女が涙を人前で見せるなどという姿を目にしたことはなかったのですが、そのときは目を泣きはらして放心状態になっていました。Gさんは、とりあえず「ここでは何だから……」と彼女を自分の家に上げて話を聞くことにしました。
家に上がり込んだHさんは急にGさんにすがりつき「助けてほしい!」と泣き叫びました。
彼女の家族は4人ですが、この一ヶ月の間に夫が交通事故に遭って意識不明となり、つぎに長男が目の病気にかかって右目が光を失い、続いて次男も交通事故にあって長男と同じ右目に傷を負い、視力が危ない状態になり、ついにはHさんの右目に異変が起こりだしたと言うのです。
よく見るとHさんの右目の周囲が腫れているではありませんか。
Tさんは「これはただの障りではない」と直感し、急に何とも言えない寒気に襲われました。
「今から除霊をするけんね」そう言って急いで準備を始めました。早く対処しなければ手遅れになると直感したそうです。
Hさんを横に寝そべらせ除霊をはじめて5分もしないうちに、Hさんが苦しそうにもがきはじめました。
「許さぬぞ」、「目が痛い!」そう言う言葉を何度も繰り返すのです。
Hさんが叫びだしたかと思うと、今度はGさんの身体にこれまでに感じたことのないような重みを感じはじめ、続いて目を開けることができないほどの強い光が上の方から降りてきたそうです。
その光の中に何かが見えるのですが、それが何なのかわからないまま「どうか教えて下さい。どうしてHさんがこうなったのか。何が原因なのでしょうか……」と心の中で問いかけ続けていました。
何十分経ったのか、いや何時間経ったのか、Hさんの身体にものすごい勢いで何かが飛び込んできたかと思うと、次に憑依(降霊)が始まったのです。
「我はHの家の横にある地蔵菩薩である。Hが家を建て直したときに屋根を突き出して建てたがために、雨水が屋根を伝って流れ落ち、我の目にその滴が当たり、冷たく痛くてたまらぬ。何とかならぬか……」そうHさんの口から言葉が出てきました。
これを聞いたGさんは次の日、Hさんを伴って自宅横のお地蔵様の様子を見に行くことになりました。
すると、確かに言われたように塀から屋根が突き出しており、屋根がお地蔵様の頭を直撃する格好になって当たっているではありませんか。屋根の先端はお地蔵様の右目の上方に突き当たっていました。
原因はこれだと納得したHさんは深く反省し、お地蔵様に申し訳ないことをしたと思い、すぐにお地蔵様用の祠を建て、雨風をしのげるように祀り直しました。
そうして、毎日お地蔵様の祠の前で祈りを捧げ、謝罪と懺悔をしました。
祈りはじめて7日目の夜。
Hさんの夢枕に黄金の光の中にお地蔵様が現れ、何とも言えない柔和な微笑みを見せてくださったそうです。
この夢を見たその日から夫の意識が戻り,やがて二人の子どもたちの目も奇跡的に治り、Hさんの目も回復しました。
今では自分の家の加護仏として、とても大切にされてます。
Hさんの近所に住む人々もこの話を聞いて、次々と願掛けに訪れるようになりました。
目の病気で悩んでいる人は、このお地蔵様にお助けを願いにやってくるそうです。
註.このエピソードは実話に基づいて再構成されています。
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