愛する肉親を失い、悲しみに暮れているときにその人が幽霊になって現れ、守護霊として護ってくれるというストーリーは、映画でもしばしば取り上げられているテーマです。でも、このような話は決してフィクションではなく、単に悲しみが幻影を作り上げているというものとは限らないように思います。

 

巫師の日常は怪奇現象、不思議な体験の連続です。

現役の女性巫師Dさんの体験談です。Dさんは家庭の事情から両親と一緒に住むことがなく、母方の祖母に育てられ、祖母が亡くなるまで一緒に暮らしていました。祖母も巫師であり、四国霊界の仕事人として活躍していた人でした。昔は神仏や死者との交信を行い、人々の悩み事の相談を受ける人のことを四国では一般に「タユウ」と呼んでいました。


さて、Dさんは両親の愛情もなく育ち、もっぱら祖母が親代わりになって愛情を注ぎました。Dさんも本当の親のように甘え、他人の目から見ても実際の親子以上に強い絆で結ばれていました。


ところが、Dさんが20代の頃、恋愛関係や対人関係のことで悩んでいたとき、祖母は病気になりDさんのことをとても気にしながら亡くなってしまいました。Dさんは二重三重のショックに打ちひしがれ、それこそ気が狂わんばかりに泣き暮らす毎日だったそうです。そんなある日の夜のこと……。


Dさんはその日も泣き疲れて眠りに入っていました。誰かがDさんの頭を撫で、お茶をわかし、台所で料理をしている物音が聞こえていたのを覚えています。音は聞こえているのですが、何故か身体が動きません。そのまま、Dさんは再び眠ってしまいました。


朝方になってDさんは目が覚めました。台所で誰かが料理を作っている物音がします。おみそ汁のにおいも漂ってきました。バタバタ、ガタガタ音が鳴っています。Dさんは「ああ、そうか。お母さんが来ているのか。やっぱり親も心配してくれているのだな……」と思って、少し嬉しくなりました。


そっと目を開け、起きあがり、台所に行って人影を見ると、そこには何と亡くなったはずの祖母が立っているではありませんか。「Dちゃん、起きたんか。ばあちゃん、ご飯を作りよったんよ。」Dさんは驚きでその場に呆然と立ちつくしました。ついに頭がおかしくなったのかもしれない。これは夢かうつつか……Dさんがまじまじと祖母の姿に見入っていると、祖母はにっこりと微笑みながらスーッと消えていきました。

この日を境に、祖母の霊はしばしばDさんの目の前に現れるようになり、Dさんと死んだ祖母との奇妙な共同生活が始まったのです。

毎朝、祖母の霊が「Dちゃん、起きんかね。」と声をかけてくれます。祖母の霊が出現する直前になると家の中の空気が一瞬のうちに変化し、ラップ音が鳴る、部屋の電気が点滅を始めるなどの兆候が必ず現れました。また、Dさんに仏壇で手を合わせ、拝むように催促もしました。

これが単に個人的な体験であるならば、Dさんの祖母に会いたい一心で幻覚(幻視;幻聴)を作り上げたのだと解釈することもできましょう。ところが、Dさんの場合、周囲の人々が次々に祖母の霊体を目撃するようになっていったのです。

ある日のこと、Dさんの近所に住む主婦が氷枕をもってDさんの家を訪ねてきました。その日、Dさんは熱を出して寝込んでいたのですが、そのことを誰も知る由はありません。主婦がいうにはDさんの祖母がその主婦の家に出てきて、Dさんが熱を出してしんどそうにしているからで熱を冷やすために氷枕を用意してもっていってやってくれというので、薄気味悪いと思いながらも気になるのでもってきたというのです。


また、ある日のこと、隣の人が「雨が降るから、はやく洗濯物を中に入れなさい…」という声が聞こえます。Dさんの家の垣根の方を見ると垣根の向こうに祖母が立ってニッコリ微笑んでこちらを見ていたというのです。隣の人はビックリ仰天しました。やがて雨がポツリポツリと降り始めました。

Dさんの家族はもちろん、友人も祖母の姿をはっきり目撃したり、声を聞くようになりました。とうとう近所でもあの家は幽霊屋敷だという評判が立ってしまいました。


たまりかねたDさんの親が、このまま放置できないからということで、家を売却する段取りを始め、Dさんに家から出るように強く言った夜のこと、Dさんの親の家にも祖母が現れ、恐ろしい形相で時期が来るまで余計なことをするなと迫ってきたそうです。

祖母の死から約一年が過ぎた頃、Dさんは気持ちの整理もつき、仕事の関係で別の場所へ引っ越しすることになりました。引っ越しの段取りが決まった頃から、祖母の霊体は出てこなくなったということです。今でもDさんは祖母の位牌を大事に供養しているとのことです。


私たち巫師の世界では、死者の姿や声を見聞きするのは日常茶飯事です。巫師の一族の間で誰かが亡くなると、お通夜やお葬式はさながら交霊会に様変わりしてしまいます。参列した人が亡くなった人と話をしたり、集まってきた先祖の霊体と対話を始めてしまうのです。生前巫師をやっていた人の霊体は亡くなった後も強烈で、はっきりした形で遺族の前に出現して参ります。中には子孫のことが気がかりで、そのまましばらくの間守護霊となってこの世にとどまることもあるようです。

 

 

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