巫師の日常は怪奇現象、不思議な体験の連続です。

 

人には見えないものが見え、聞こえるはずのない声が聞こえます。

 

それに、同じ体質のもの同士が一つ家の屋根の下に暮らし始めると、見たくもないものの存在に悩まされる毎日を過ごすことになるのです。

今回は、ある夫婦が経験してきた怪奇現象についてお話しいたします。

 

夫の名前をEさんとしておきましょう。彼の家系は代々巫師をしていました。

 

そして妻であるFさんもまた、母親と祖母が巫師という一族です。

 

別に巫師の家同士で見合いをしたわけでもなく、偶然に知り合い、たまたま同じ学校だったためつきあい始め、結婚することになりました。

 

二人はともに30代で「一般人」として暮らしています。

 

ただ、この夫婦の周囲にはもちろん霊現象などは当たり前のように起こります。

 

彼らは毎日、朝と夕方に神仏と先祖に対する礼拝と供養は揃って欠かしたことはありません。

 

二人とも霊媒体質で霊視や透視の力は幼い頃から備わっていますが、親たちの苦労を見て育っているため、自分たちは絶対に巫師にはならないと心に強く決めています。


そんなある夜のこと……Fさんの母親が家に泊まりに来た日の話です。

 

夜中にEさんが「ワーッ」と大声を上げて飛び起きたところから怪奇体験は始まりました。

 

 

Fさんが異変に気づいて「どうしたの?」ときくと、「いや…さっき急に目が覚めて、目を開けたら実は白い服を着て銀色の光を放つ男の人が現れたかと思うと、その生首だけが部屋中、いや家中を出たり入ったりして飛び回るのが見えたんよ。その生首の目は何とも言えない悲しい、悔しそうな目つきをしよったんよ」と言うのです。

 


するとFさんが「私も変な声が聞こえたのよ。お母さんの眠っている方から男か女かわからないけど、『助けてあげて』って声がはっきり聞こえたの」と言うのです。

 


こうして2人が恐ろしくなって夜中にワーワー騒いでいたにもかかわらず、隣の部屋で寝ていた母親は目覚めることもなく、死んだように眠り続けていたそうです。


Eさんが言うには、その生首の男性は部屋中をフワフワと飛び回り、家で眠っているみんなの顔をのぞき込むようにしてうろつき、今度は自分の方に戻ってくるのだそうです。

 

霊が近寄ると、鼓膜が破れるのではないかと思うくらいに耳鳴りが激しくなり、霊が離れると耳鳴りがしなくなるといいます。

 

結局、2人はあまりの恐ろしさに朝まで眠れず、朝になってこのことを夫婦がFさんの母親に話したところ、全く気がついていなかったそうです。


そこでFさんは彼女の祖母に相談することにしました。

 

祖母は今では巫師を引退しているのですが、何か気になることがあったらしく「それなら霊を呼び出してきいてみよう」と言って早速Eさんの身体に向かって拝みはじめました。

 

すると急に祖母が憑依状態になり、オイオイ泣き出して、「中の霊」が語りはじめたのです。

 

 

自分はEの叔父にあたる者であること。

 

Eが小さい頃からかわいがっていたこと。

 

よく頭を撫でてやったものだ。

 

今でもEのことを心配している。

 

自分の子どもたちが、自分のことを忘れてかけている。

 

代わりにEにお経をあげてほしい。

 

Eは信仰も篤く、自分のことに気づいてくれそうだから出てきた、というのです。

 

「必ずお前のことを守ってやるぞ……」そう言って祖母の口を借りて出てきたのです。
 

 

それを聞いたEさんはハッと気がつきました。

 

彼が小さかった頃に自分をとてもかわいがってくれた叔父さんの顔を思い出しました。確かに叔父さんの子供たちは巫師の家を嫌い、あまり信仰心もないらしいのです。

 

EさんはFさんの祖母の言葉に従って、叔父さんの霊を丁重に供養し、今でも叔父さんのことを忘れることなく過ごしています。

 

それ以降、二度と生首が現れることはありませんでした。
 

では、K子さんの母親の方から聞こえてきたという「助けてやって」と言う声は一体何だったのでしょう?

 

祖母の霊視によれば、Fさんの母親の生霊が夫の叔父さんの霊に問いかけた声がそう聞こえたのだそうです。
 

二人がこの体験談を話してくれた後に、「僕たちは霊的な世界のことはよく知っている。知っているからこそ、こういう世界には入りたくはないのだ」ときっぱり言い切りました。

 

何も見えたり、聞こえたりしない生活の方がどんなに平穏だろうか、自分たちの気持ちは誰にもわかってはもらえないだろうと……。

 

 

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