昨年から、転生型事例についての記事をアップしていますが、そのリサーチの過程で「胎内記憶」にまつわる言説が出てくるので、今回はそれに特化した話をします。

 

胎内記憶(prenatal memory)とは、母親のお腹の中にいたときの記憶のことを指します。陣痛から誕生までの「誕生記憶」、お腹に来る以前の「中間生記憶」などにも分けられますが、一般的には「産まれる前の記憶」を総括して「胎内記憶」と呼ばれています。

胎内記憶は科学的な根拠はいまだ解明されていませんが、3人に1人の割合で胎内記憶が残っているという研究データもあります。実際に育児雑誌やSNSでは、しばしば胎内記憶に関するエピソードが掲載されています。

胎内記憶に関する研究は主にアメリカで発展してきた歴史がありますが、これは広い意味での<魂のライフサイクル>に関わる分野でもあって、転生型事例、臨死体験、体外離脱の研究との接点もあります。

 

今回は、日本における胎内記憶をめぐるさまざまな動きを中心に学びを深めていきたいと思います。

 

よろしくお付き合いください。

 

 

参考文献・参考情報源

 

池川明 2015 胎内記憶から考えられる生死 日本保健医療行動科学会雑誌, 29(2), pp.15-19.

 

 

調査概要
〈期間〉
諏訪市2002年8月〜9月
塩尻市2003年12月
〈対象〉
諏訪市(人口約5万2000人)市内の全保育園 17カ所
塩尻市(人口約6万5000人)市内の全保育国 19カ所
〈平均年齢〉
母親:33.7±4.4歳、子ども: 4.0±1.4歳
〈アンケート発送・回収数〉
諏訪市 発送数1773 回収数838 回収率 47.3%
塩尻市 発送数1828 回収数782 回収率 42.8%
合計発送数3601 回収数1620 回収率 45.0%
〈アンケート内容〉
※ 母子の年齢
※ 子どもの性別
※ 胎内記憶・誕生記憶があるか
※ 記憶がある場合は、何歳のとき、どんな状況
※ 語らない場合は、ただ忘れているからか
※ 妊娠中の母親の状態
※ 安産だったか難産だったか
※ 分娩の方法(自然分娩、帝王切開、吸引器
※ 母親本人に胎内記憶・誕生記憶はあるか

調査結果

 

  • 対象者の子どもの3分の1に記憶がある
  • 語り始める時期は2-3歳が圧倒的に多い
  • 年齢が進むと語る子は少なくなるが、成長に伴い語彙が豊富になるので内容の豊かさは増す
  • 5歳頃になると詳細な聞き取りも可能になる
  • 調査結果からは成人になっても1%の人には記憶が残る

 

といった特徴を挙げることができます。

 

池川氏によれば、子供たちは自分で人生を決め、それぞれに最適な両親、場所、時間を設定して生まれてくると言います。
 

子供たちの語りを大きくまとめるならば

 

1.宿命⇒初期設定。産まれた場所、時間、両親など変えられないもの。

 

2.運命⇒人生の生き方。生き方は自分で選べる。自分の意志で変えることが出来るもの。その人生の選択肢は生まれる前に決めてくる。

 

3.天命⇒本来自分の生まれてきた目的。人の役に立つためと多くの子は言う。

 

となります。


胎内記憶を知ることによるメリットとしては、妊婦は胎児に話しかけることなどの行動を通じ、妊娠期から母子の絆を深めることができることが挙げられます。また、胎内記憶を知ると、父親もわが子を胎児期から意識するようになり、親になるための心の準備を整えることができるとも言われています。
 

胎内記憶は、胎児にも人格があるということ、赤ちゃんはおなかの中にいる時からちゃんと意識があり、外の世界の様子を見たり聞いたりしている可能性を示唆しているとされます。
 

 

さて、この胎内記憶に関する言説ですが、批判的なものもあります。

 

 

 

 

 

 

かなり激しい批判にさらされている様子が伺えます。これは罵詈雑言のレベルでしょう。

 

とりわけ、こうした批判で問題視されている点は、胎内記憶の言説が「虐待肯定」ではないかというものです。

 

理屈としては、「子どもが親を選んできた」のならば、どのような親に育てられても、選んだ子どもの自己責任になります。ならば、虐待を受けている子どもは、わざわざ苦難の待ち受けている環境を選んで生まてきたというのか?というのです。
 

 

これについて、池川氏の著書を読んでみると、次のような記述が見つかります。

 

 

 

 

「子どもは親を選んでいる」と言うと、必ず「虐待される子どもも自分で両親を選ぶのですか」という質問が出されます。 答え は「 イエス」。―――― 後で紹介しますが、ある小学生のお嬢さんは、「子どもは、虐待されることも全部知って生まれてきます。それは、親に『 そんなことをしてはいけないよ』と教えるためです。もし役目に失敗しても、何度でも生まれ変わって同じことを繰り返します」と語っています。(上記著書より)

 

さらに、小学生の女子とのインタビューの中では、以下のような具体的なやりとりが示されています。


Q.人間はどうして生まれてくるんだと思う?
A.「いろんなことに役立つように、生まれてくるんだと思います」


Q.最初に役に立ちたいのは、お母さんかな?
A.「お母さんとか、お父さんとか」


Q.流産しちゃう赤ちゃんもいるけれど、その子たちは何のために生まれてくるんだろう。
A.「流産の場合は、外の世界を早く見たいっていう気持ちから生まれちゃうことが多くて。それから、命の大切さとか、そういう のを知らせ たくて」


Q.流産したお母さんが、 赤ちゃんに「 ずっとそばにいてね」とお願いすることについては、どう思う?
A.「一年くらいは、お母さんのそばにいてもいいんです。その後も、いったん戻って神さまにお願いしてから来るなら、もう一年 くらいいられるし、毎年頼むようにすれば、ずっとそばにいられます。流産の場合は、世界を早く見たくて先に生まれてきちゃって、それでまた帰っていき ます。赤ちゃんは、命の大切さを伝えようとしているんだと思います」


Q.じゃ、赤ちゃんは流産することでお母さんの役に立っているのかな。
A.「そう思います。それに、役に立ってうれしいっていう気持ちがあります」


Q.途中で虐待で亡くなる子もいるよね。そういう子は、なんのために生まれてきたのかな。
A.「そういうことはしてはいけないんだよ、って教えるためです。親がそのメッセージを理解できない場合は、その子は夢の中に 出てきて、そういうことはだめだよって、言葉ではっきり伝えます。

 


このように、一貫して語られていることは、流産や死産も、虐待される家を選ぶのも、全部意味があり、子どもたちは自分でそのような環境を選んで生まれてくるということです。これが子どもたちの天命だというわけです。
 

 

批判的な見解は、こうした「記憶」を子どもの空想、想像の産物であり、胎内記憶について医師が主張すること自体が大人に「癒し」や「生きる力」を与えるために、子どもたちを利用しているのだと言います。特に「不幸や不遇も自分で決めた」という点に反応しています。


参考文献


大門正幸 2020 「胎内記憶」とそれに関連する言説をめぐって~感情的な反発から理性的で建設的な提案へ~ 人体科学,29(1),Pp.22-31.

 

 

これに対して言えば、転生型事例の研究者たちは、子どもを含む近親者、関係する証人のインタビューを積み重ねながら研究を行なっています。その際に、人物や発言内容に虚偽がないかを慎重に検討する手続きを取ります。

 

その結果、①記憶を語る子供たちが「詳細な過去生記憶」をもっている、②さらに自分で両親を選んだという「中間生記憶」に関する発言をした、③その「中間生記憶」の中には本人が知らないはずの事実と一致する点が含まれていた、ということが共通して見いだされているので、子どもの語り自体の信憑性は高いと評価できるのです。

 

しかし、このような手順を踏まずに得られた「胎内記憶」のデータには子どもが成長するあいだに得た情報の影響が含まれる可能性が生じてくるわけで、これを「胎内記憶」だと公言してしまうのは違うと思います。

 

池川氏の報告で示されているように、年齢が進むと記憶を語る子は少なくなるが、成長に伴い語彙が豊富になるので内容の豊かさは増すし、5歳頃になると詳細な聞き取りも可能になるということは、そこに後付け的な情報が加わっているからだとも言えるかもしれません。

 

個人的な見解を示すならば、池川氏の著書に出てくる子供たちの「あの世の描写」には「妖精」「天使」がよく出てきます。

 

妖精(ようせい)とは、神話や伝説に登場する超自然的な存在で、人間界に密接した世界に住むとされています。人間の姿をした精霊で、超人間的能力を有し、いたずらで遊び好きなものとして、西洋の説話・伝説に多く登場します。

 

天使とは、神の使者として人間に神意を伝えたり、人間を守護したりすると信じられている存在です。また、神を称賛し、神の唯一性や啓示の正しさを確証する存在ともされています。

 

これは西洋的な天国のイメージにつながるわけですが、なぜ子供たちがこのような表現を多用するのでしょうか?

 

もう少し、文化による違いが反映されるのかと思ったわけですが、この点は私たちが持っているデータとは大きく異なります。

 

今回はここまでとします。

 

 

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