【墓守:武蔵】 | 【実録・倒産社長の奮闘記】~こうして店は潰れた!~小林久ブログ

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老舗スーパー三代目→先代の赤字1.5億円を2年で黒字化→地域土着経営で中小企業の星に→中小企業診断士試験に出題→早過ぎたSDGs →2017年まさかの倒産→応援団がクラファンで3,000万円支援→破産処理後は「笑って泣かせる」講演講師に。『現代ビジネス』コラムニスト

 

彼岸、お墓参りに行く人が多い。墓地に行けば競うようにたくさんの花とお供物が並んでいる🌸🍡🙏🏻

私が子供の頃、近くの市営墓地には地元で有名なホームレス(浮◯者)が住み着き、そのお供物の和菓子や食べ物で日々食い繋いでいた。みんな「人を◯した前科がある」と噂していたが、実際のところ危害は及ばさないし悪さもしないので、警察もたまに来て指導する程度。そしてその風貌から市民は彼のことを「武蔵」と呼んでいた。


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我が家が墓参りに行った時、ちょうどその武蔵に遭遇した。私を含め家族は目を合わさないようにして足早に墓へ向かった。

武蔵はそ〜っとついてくる…🚶🏻…


我が家がスーパーをやっていて、お供物も他の家より贅沢であることを知っていたのだ。
子供心に怖かったことを覚えている。

そこで我が父は武蔵を呼びつけこう言った。

「一緒に来い!これがウチの墓だ。お供物もそこら辺の墓とは訳が違う。お前も食いたいのは分かる。食ってもいいから今日だけは手を付けるな!」

そう言ってポケットから一万円札を出し、武蔵にそっと手渡した(°_°) 武蔵は少し会釈してそれを受け取り、どこかに去っていった💨

⭐️「名前を売るにも金がいるな、ハハハ(^_−)−☆」父は笑う。

その墓地は子供たちの遊び場でもあり2、3日してからまたお墓に行ってみた。そこには…、

我が家の墓は落ち葉一つなくキレイに清掃され、墓石も磨かれ、花も墓参りの時より明らかに増えていた。もちろんお供物のご馳走は消えていたが(笑)それ以降、いつ墓地に行っても我が家の墓だけはキレイになっていた。

「小林さんの家はご先祖を大切にするから商売が繁盛してるのね!」近所の評判が立つ。
(墓参りなど年に1〜2回の我が家、話題はいつも先祖の悪口ばかり)

亡き父と武蔵とのやり取り…。もう二人ともこの世にはいない。
ビジネス書には書いてないが、これが経営者としての「帝王学」だとすれば、私にはしっかり引き継がれた気がする。

令和には通用しない昭和の昔話🙏🏻