歴史の専門家が旧来の俗説を正してくれる新書。
総じて言えば、生き残って後の世の顕職に就いた人達、
就けなくて意趣を含んだ人達、
面白く書くことが商売になる人達、
そういう面白さ、分かり易さを求めてしまう大衆(これは私の持論)
の都合で俗論が生まれるのですね。
それは幕末に限らず、太古から今現在も変わらない。。。
いくつかなるほどをメモ。
大鳥圭介
「常敗将軍」ではなく「弁明をしない豪傑」
”戦上手”と言われる土方歳三も立見鑑三郎も大局的に見れば負けた訳ですからね。
大鳥本人が全く弁明をせず、「俺はいつも負けてばかりだった」と自虐ネタにしていた。
戦闘に負けても笑って帰ってくる大鳥の落ち着いて動じない人柄に、配下の兵は魅了された
わかりやすい「戦犯」を仕立てることで、負い目から救われる人たちもいたはず
郷土の偉人、自信を持って自慢していこうと思います。
桐野利秋
斬った人はひとり、西南戦争の主戦派ではなかった
これは私のイメージに合って来る方へ修正できました
さっぱりと颯爽とした好人物。「人斬り」が全然しっくりきてなかったのです。
「人斬り半次郎」の呼び名含め、西南戦争後に西郷さんの負のイメージを背負わされたのかも、とのことでした。
奇兵隊
・非武士ではなかった。農民出身者40%、武士出身者50%
・精強な軍隊に作り上げたのは赤根武人や山県有朋
大村益次郎
この人だけはイメージが変わって欲しくなくこわごわでしたが、大丈夫でした
新説は、
豆腐以外にも、カツオ、クジラ、アワビを食する美食家
『豆腐ばかり食べていた』は司馬遼太郎の創作ではなく、第二次大戦中の伝記にあったとのこと。陸軍の祖が質素倹約でないととの想いがあったとか。
まあ、豆腐だけ食べてたとは誰も思ってないので、全然想定の範囲内です(笑)
鋳銭司郷土館での『実は馬に乗れた』の方がよほどインパクトありました。
おイネさんとのロマンスは「!?」付きだったので否定的ながらもなかったとも言えないのでしょう。(良かった)
「お琴さん悪妻説」は相続を争った益次郎の弟が吹聴したとのこと
と、彼の話になるとやはり長くなります。
好き過ぎてブログに書けなかった小説「花神」。そろそろじっくり読み直して書こうかな
そんなキッカケも与えてくれそうな、なかなか良い本でした