ジェーン・エア(1983年版) | Untitled

 

 

ジェーン・エア(’83)イギリス

 

原作:シャーロット・ブロンテの同名小説

 

監督:ジュリアン・エイミーズ

 

 

上・下巻の原作を、がっつり読ませていただきました。

 

これまで何度となく映像化され、どれを観ようかと悩みましたが

 

ひとつ言えるのは、2時間そこそこにまとめられている作品には

 

絶対に満足できないと・・・・・・・・

 

なにせ、上巻の前半部分だけで、心を鷲掴みにされてしまったもので

 

あった、ありましたっ! BBC製作のTVドラマシリーズ。 

 

トータル240分! なんて素敵な長さなんでしょう(笑) 

 

もっと長くてもよかったですよ。

 

 

あらすじは・・・・・・・ いりませんよね(笑)

 

ジェーン・エアの幼少期から順を追って丁寧に、時代考証や台詞も

 

原作に忠実に描かれていて、原作の余韻に浸っている私にとっては

 

視覚と聴覚であの世界観を追体験できたのはこの上ない喜びですっ!

 

よくぞ、ここを描いてくれた!っていうシーンが、幼少期のジェーンを

 

虐げていた伯母ミセス・リードが病に倒れ、彼女を看取るために

 

ソーンフィールドを離れたジェーンが久々に当主ロチェスター

 

(ティモシー・ダルトン)の元へ帰ってくるくだり

 

「疲れたその小さな足を休めるがいい。」

 

「あなたのおいでになるところが我が家です。

                     たったひとつの我が家です。」

 

あああ、しびれた。 素晴らしいシーンだった。

 

 

“ジェーン・エアは美人であってはいけない”

 

映像化するにあたって、ヒロインが不美人であることは

 

製作する側とすれば頭の痛いところでしょう。

 

過去にはジョーン・フォンティン(「レベッカ」)が演じていましたが

 

ちょっと綺麗すぎますよね。それに比べて、今作のジェーンが

 

まあ地味なこと(笑) ゼラ・クラークという女優さんなのですが

 

他に出演している映像作品が見当たらないので

 

舞台を主戦場としている女優なのかもしれません。

 

ただ、地味で華のないゼラ・クラークという英国人女性が

 

物語が進むにつれてどんどん魅力的な女性になっていくんです。

 

この人こそ “ジェーン・エア” だ!

 

ロチェスターを射るような目で見つめ、彼のぶしつけな質問に対して

 

絶妙な返しをして、一見、変わり者のように見えて

 

知的でかつ意志の強さを見せる。

 

原作では、ジェーンの絶妙な返しに思わず吹き出してしまった。

 

強いて注文をつけるとしたら、ゼラ・クラークは、どう見ても

 

18歳には見えない(笑) 実際は、28~9歳だったようです。

 

でも、それを差し引いても余りある演技です。

 

それを言ったら、ティモシー・ダルトンのロチェスター役も格好良すぎる。

 

でも、粗野で紳士らしくないところは、しっくりハマっていたのでは?


 

「おいとまいたします、永遠に!」

 

「愛情に対するあなたの考え方を私は軽蔑します!」

 

ロチェスターと牧師セント=ジョンに放った二つの言葉が

 

“ジェーン・エア”という尊厳を失わず強い意志を持って生きる

 

女性を端的に言い表していたのでは?

 

 

この2つの台詞を言ってくれれば、あとは何にもいらない。

 

ぐらいの勢いだったのですが(240分も観といて、笑)

 

前者はジェーンの心の中の叫びだったことが、原作に戻ってみて知り

 

劇中で都合よく、心の叫びとして発せられることはなかった。

 

後者はセント=ジョンに対して表に出した言葉だったが

 

捨て台詞のように言い放つとまではいかなかった。

 

そんな細かいところにまで、いちいち、こだわってしまうのが

 

「ジェーン・エア」 の “ジェーン・エア” たる所以なのかもしれない。

 

で、4時間もの長い時を費やしたにも関わらず、勢いに任せて

 

すでに記憶が飛んでた、2011年版 『ジェーン・エア』  を

 

続けざまに一気に鑑賞(どんだけ、ジェーン・エアなん?)

端折って端折って2時間にまとめられている割には

 

物足りないという印象はあまり感じなかった。

 

ミワ・ワシコウスカの “ジェーン・エア” も悪くないです。

 

地味すぎず、綺麗すぎず(一応、褒めてます、笑)

 

彼女の最新作は 「ボヴァリー夫人」 ですから

 

“文芸キラー” という異名を持つ日も遠くないかも。

 

’84年版はTVドラマであるゆえ、セットや家具、調度品がこじんまりしている。

 

要は安っぽいっていうことですが(笑)

 

’11年版では、屋敷は広いし天井は高いし家具や調度品も豪華!

 

しっかりお金かけている。ソーンフィールド館はこうでなくっちゃ。

 

あと、ローウッド養育院でのジェーンの親友ヘレン・バーンズとの別離が

 

’84年版よりも濃く描かれていた。シャーロットはブロンテ三姉妹

 

1番上の姉ですが、更にその上に2人姉がいて、学校の寄宿舎の

 

不衛生により、11歳と10歳で亡くなっている。

 

シャーロットがヘレン・バーンズと2人の姉とを重ね合わせているのは

 

明らかでここは非常に重要(と私は位置づけている)

 

ヘレンのお墓だけ見せてお終いの’84年版はいただけない。

 

4時間もかけてるんだから・・・・・・・・

 

なにせ、上巻の前半部分だけで、心を鷲掴みにされてしまったもので(笑)

 

ただ、’11年版のロチェスター役とセント=ジョン役は絶対に違う! 

 

明らかに違う! マイケル・ファスベンダーはマスクが甘すぎるし

 

ジェイミー・ベルに至っては、お前もしや  『ニンフォマニアック 』  で

 

シャルロット・ゲンズブール を縛りつけてスパンキングした変態男だろ。

 

結局、あちらを立てればこちらが立たず

 

すべてを満たしてくれる映像作品は、やはりないのか・・・・・・?

 

’11年版の監督キャリー・ジョージ・フクナガが

 

「映画「ジェーン・エア」の決定版はどれかと聞かれても誰も答えられない。

だから、あえて挑戦した。」

 

と語っていましたが

 

真の決定版を見い出すためには、原作本を再び手に取るしか方法はないのかもしれない。

 

 

 

 

 

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